燃え尽き症候群は甘えではない!周囲はなぜ「甘え」と言ってくるのか

燃え尽き症候群は甘えではない!周囲はなぜ「甘え」と言ってくるのか

仕事がなかなか進まないのは自分が悪いのかな?

親から「勉強しないのは甘え」と言われた

それは甘えじゃなくて燃え尽き症候群かも!

どうして甘えと言われるの?教えて!

仕事や勉強が進んでいないと、周りから「甘えている」「サボっている」などと言われることはありませんか?

燃え尽き症候群の症状には、周りから「甘え」と思われやすい症状がいくつかあります。

燃え尽き症候群の症状なのに、周囲から強く言われると「自分が甘えているだけ」と思い込んでしまうことも…

そんな悩みを解決するために、この記事では「燃え尽き症候群が甘えではない理由」や「甘えと言われる背景」について詳しく説明します。後半では「勘違いされやすい症状」も解説しています。自分があてはまっているかチェックしてみてください。

最後まで読むことで、周囲の言葉を気にせず、カウンセリングや治療をうける後押しになれば幸いです。

目次

燃え尽き症候群が甘えではない理由

燃え尽き症候群が甘えではない理由

「急にやる気がでない」「任された仕事がすすまない」このような症状は決して甘えではなく、燃え尽き症候群かもしれません。

燃え尽き症候群が甘えではない理由には、以下のようなものがあります。

それぞれ解説していきます。

理由➀ WHOで症候群として認められているから

燃え尽き症候群(バーンアウト)は世界保健機関(World Health Organization:WHO)で症候群として認定されています。[1]

燃え尽き症候群は、職場での慢性的なストレスがうまく管理されなかったために生じるものとして概念化された症候群です。それは 3 つの側面によって特徴付けられます: 1) エネルギーの枯渇または疲労感。2) 仕事からの精神的距離の増加、または仕事に関連した否定的または冷笑的な感情。3)無力感と達成感の欠如。燃え尽き症候群は、特に職業上の状況での現象を指すものであり、人生の他の分野での経験を説明するために適用されるべきではありません。

WHO『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)』第11版(ICD-11)の「雇用および失業に関連する問題」日本語訳[1]

明確な原因など現時点で分かっていないことも多いですが、症状や対策への理解も進んでいます。
そのため「甘え」という曖昧な表現ではなく、病気という認識をもつことが必要です。

理由② 最初から症状が出ているわけではないから

燃え尽き症候群の人はひとつのことに没頭していて、あるとき急に意欲を失います。[2]
そのため、これまで「できていた・やれていた」ことができなくなります。

以下は、燃え尽き症候群と甘えの具体的な例です。

燃え尽き症候群の人
  • 5年目の会社員
  • A社とB社でプロジェクトを任されていた
  • 自分で頑張ってA社のプロジェクトを成功させた
  • A社への仕事に満足してB社へのやる気が失われて、周囲の助けが必要になった
甘えている人
  • 5年目の会社員
  • A社とB社でプロジェクトを任されていた
  • 自分からは動かず、初めから他人の助けをあてにしている
  • 先輩にほとんど手伝ってもらいプロジェクトを完成させた

甘えている人は最初から「他人がなんとかしてくれるだろう」と他人任せであったり、自分から動こうとしません。

一方、燃え尽き症候群では始めは自分で努力しますが、急に意欲が失われ他人の手を借りないといけない状況になるのです。

仕事のやる気が失われるのが「始めからなのか」もしくは「途中からなのか」といったようにタイミングを見極めると、甘えか燃え尽き症候群かの判断に役立ちます。

燃え尽き症候群=甘えと言われる4つの背景

燃え尽き症候群=甘えと言われる4つの背景

燃え尽き症候群が甘えと言われる背景として、燃え尽き症候群について「理解されていない・受け入れられない」ことが挙げられます。

それぞれ解説していきます。

背景➀ やる気がないように見られる

燃え尽き症候群の主な症状である「情緒的消耗感」は身体だけでなく、心もエネルギーが失われます。

仕事へのエネルギーがなくなると業務を雑にやるようになり、周りから低く評価されてしまうのです。仕事がうまくいかないため、自己肯定感も下がるという悪循環につながります。

周りからすると始めからやる気がなく、仕事に取り組まないように見えてしまうため甘えと勘違いされがちです。

背景② 価値観が合わず共感できない

甘えと言ってくる人と、燃え尽き症候群で悩んでいる人は価値観や考え方が違うことが多いです。

甘えと言ってくる人は以下のような考えを持っていることがあります。

  • 自分が同じ状況だったら働ける
  • 昔はそんなことあたりまえだった
  • 仕事ができないのは気合が足りない

自分の価値観を相手に押し付けるため、相手のことを理解しようとせず症状に共感できないのです。そのため、本来は燃え尽き症候群なのに「甘え」と言ってしまいます。

背景③ 病気とわかる明確な基準がわからない

燃え尽き症候群やうつ病などの精神的な疾患は、はっきり「病気だ!」と分かりにくいです。

整形外科疾患では骨折や捻挫、脳血管疾患では片麻痺のように、見た目から分かりやすい症状があらわれます。

精神疾患では、メンタル的な症状を主に診断基準として用いています。そのため、他者から見たときに「この人は健康なんだな」と判断されやすいです。

症状が目に見えて分かりにくいのも、燃え尽き症候群が甘えと言われやすい背景のひとつでしょう。

背景④ 過去と現在の自分の違いを受け入れられない

自分のことを「甘えじゃないか」と思ってしまう人の特徴として、過去と現在で自分自身の変化に気づいていないことがあります。

精神的な症状が出ていても「同じことが過去に出来ていたのに、なぜか今は出来ない」と自分ができない理由に気づきません。そのため現在の自分を受け入れられず、自信がなくなります。

自分の気持ちや能力をしっかり理解していると「今の自分ならこれが妥当だな」と思えるため、自分が甘えているとは思わないでしょう。

燃え尽き症候群で甘えと勘違いされる症状4選

燃え尽き症候群で甘えと勘違いされる症状4選

燃え尽き症候群のなかには甘えと勘違いされやすい症状がいくつかあります。

症状のうち主に「情緒的消耗感(エネルギーが消耗・不足する)」「個人的達成感の低下(達成感・やりがいを失う)」が関与しています。

仕事や勉強へのエネルギー不足によって、行動しないように見えてしまうのです。

以下が甘えと勘違いされやすい症状です。

症状➀ 行動しない

行動しないと「甘え」と指摘されやすくなります。

燃え尽き症候群では行動に使うためのエネルギーが消耗し、意欲がなくなるため動けなくなってしまいます。また「昇進を目指す」「良い結果を残す」ための努力もしなくなるのです。

本人は「動けない」と感じているのに、周りの人からすると「やるべきことがあるのに何も動いていない」という印象をうけるでしょう。その認識の違いから甘えと勘違いされるのです。

症状② 集中力が続かない

燃え尽き症候群では、集中力が続かず仕事や勉強に没頭できないことがあります。やる気がなくなると、仕事以外の別のことに注意が向きやすいです。

集中できていないときは以下のような症状が多くなります。

  • 周囲が気になってそわそわする
  • 休憩の回数が多い
  • 作業を始めるまで時間がかかる

集中力が続いていないと「周りばかり気にして、やる気があるのかな?」と勘違いされやすいため注意が必要です。

症状③ 途中でやめてしまう

燃え尽き症候群では、今まで意欲的にやっていた仕事を急に投げ出してしまいます。

とくに完璧主義の人に多く、すべての業務を自身でやろうとしてしまい、気持ちに余裕がなくなっていきます。余裕がなくなると精神的に疲れてしまい、仕事が進まなくなるのです。

そのため、周りからは「どうして最後までやらないのか」と思われやすいです。

中途半端になった仕事は誰かが代わりにカバーするため、周りからは「仕事をせずに別の人に甘えている」というふうにみられてしまいます。

症状④ 目標設定ができない

仕事や勉強を達成するために目標設定ができないことも、甘えと勘違いされやすい症状のひとつです。

燃え尽き症候群は仕事やキャリアアップに対して意欲が低いため、長期的な目標や行動計画を設定できなくなります。

目標がないため業務に関して「今やるべき仕事なのか」「来週までにやる仕事なのか」といったように優先順位をつけられません。

そのため「作業が中途半端で放置されている」「納期までに間に合っていない」などの事態が発生します。

目標を立てないうえに、やるべき仕事ができていないため甘えと思われてしまうのです。

燃え尽き症候群の症状について詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。

燃え尽き症候群へのカウンセリング

燃え尽き症候群へのカウンセリング

周りから甘えと言われる人や自分自身を責めてしまう人は、我慢せず病院やクリニックでカウンセリングをうけましょう。

カウンセリングでは会話から自分の気持ちを整理できるように導いてくれます。

よく聞かれる質問
  • 自分が何に悩んでいるのか
  • 周りがどんな環境なのか
  • どういった経緯で行動できなくなったのか
  • 行動できなくなったときはどんな気持ちだったのか

自分の状況をひとつずつ整理するだけでも心の負担は減り、気持ちが楽になります。

カウンセリングをうけているうちに、自覚していない症状が見つかり、燃え尽き症候群だけでなく他の精神疾患の診断がつくかもしれません。

迷っている方は1度クリニックや病院を訪れてみてください。

燃え尽き症候群の対処法をさらに知りたい人はこちらをご覧ください。

まとめ

今回は、燃え尽き症候群が甘えではない理由や勘違いされやすい症状について解説しました。

燃え尽き症候群と甘えは似たような症状が多いため勘違いされやすいです。また周りの人と価値観が合わないと、症状が出ていても理解されずひとりで悩んでしまうこともあります。

燃え尽き症候群はWHOより症候群として認められており、決して甘えではありません。

おおかみこころクリニックでは、ひとりひとりの背景に合わせてカウンセリングを実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献
[1] WHO|『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)』第11版(ICD-11)「雇用および失業に関連する問題」
[2] バーンアウトシンドローム|e-ヘルスシンドローム

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この記事を書いた人

保(たもつ)のアバター 保(たもつ) 編集者・ディレクター

理学療法士として働きつつ医療・健康分野を
中心にライターとして活動中。
「燃え尽き症候群」や「うつ病」などの
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