燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは

燃え尽き症候群とは
目次

燃え尽き症候群の定義

バーンアウトシンドロームは、精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガー(Herbert J. Freudenberger)によって1974年に定義された症候群です。日本では「燃え尽き症候群」という名称で知られています。[1]

世界保健機関(WHO)の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)第11版(ICD-11)」では「雇用および失業に関連する問題の項目」にて、以下のように定義されました。[2]

燃え尽き症候群は、職場での慢性的なストレスがうまく管理されなかったために生じるものとして概念化された症候群です。
~中略~
燃え尽き症候群は、特に職業上の状況での現象を指すものであり、人生の他の分野での経験を説明するために適用されるべきではありません。

疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)第11版(ICD-11)

基本的には「仕事に関連したストレスが身体に影響を与えるもの」として認識されています。

また、厚生労働省では以下のように解説しています。[1]

意欲を持ってひとつのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態のこと

バーンアウトシンドローム|e-ヘルスシンドローム 厚生労働省

「やる気があった人が急に意欲を失ってしまった状態」が燃え尽き症候群として考えられているのです。

燃え尽き症候群の代表的な3つの症状

燃え尽き症候群の代表的な3つの症状

燃え尽き症候群は主に3つの症状があらわれます。この症状は、社会心理学者であるクリスティーナ・マスラーク(Christina Maslach)が提唱した「マスラーク・バーンアウト・インベントリー(Maslach Burnout Inventory:MBI)」にて定義されています。[3]

  • 情緒的消耗感
  • 脱人格化
  • 個人的達成感の低下

情緒的消耗感

「仕事を通じて, 情緒的に力を出し尽くし, 消耗してしまった状態」

情緒的消耗感は、MBIにおいてこのように定義されており、燃え尽き症候群のメイン症状です。残り2つの症状は、情緒的消耗感によって引き起こされる症状とも言われています。

情緒とは「感情の変化のこと」を指し、消耗とは「気力や体力が減ること、使い果たすこと」を意味します。つまり「仕事によって感情の変化がおこり、精神的に疲れてしまい、心に余裕がなくなっていく」のが、情緒的消耗感です。

「身体が疲れた」といった肉体的な疲れではありません。「しんどい」「やる気が出ない」などの心の疲れが、症状としてあらわれます。

このような精神的な症状は、うつ病と間違われることもあります。
うつ病との違いについてはこちらをご覧ください。

脱人格化

「クライエントに対する無情で, 非人間的な対応」

具体的には以下のような症状が見られます。

  • お客様に冷たい態度をとる
  • 相手と話そうとしない
  • 周りへの悪口が増える

周囲に対して「思いやり」がなくなり、相手のことをまったく考えず、興味がないような対応をとってしまうのです。

脱人格化があらわれるのは「自分の心を守るため」とされています。情緒的消耗感によって疲れた心が、これ以上「悪くならない」「疲れない」ために、周りと関わらないようにしているのです。

周りの人からすると「冷たい人」「ロボットみたい」などと言われたりします。ただ、本人からすると自分を守るために欠かせない症状です。

個人的達成感の低下

「職務に関わる有能感, 達成感の低下」

情緒的消耗感によって心が疲れると、やる気が低下し仕事の質が下がりやすいです。

有能感や達成感はなにかを「成功する」「クリアする」ことで得られます。燃え尽き症候群では、達成すべき目標がクリアできず、ネガティブに考えて自信を失ってしまいます。仕事の質も高まらず悪循環に陥ってしまうのです。

  • 仕事の成果がどうでもいい
  • やっていることに意味がないと感じる
  • ノルマを達成しても嬉しくない

このような症状があると、個人的達成感が低下しているかもしれません。

周囲からすると仕事をしないため「やる気がないな」「周りに甘えている」などと、言われることもあります。ですが、燃え尽き症候群はWHOでも症候群とかて定義されており、決して甘えではありません。

甘えと勘違いされやすい理由についてはこちらをご覧ください。

燃え尽き症候群になる原因

燃え尽き症候群は、職場でのストレスが直接的な原因になりやすいですが、性格も関係しています。

例えば、まったく同じ職場で同じ条件で働いていても「Aさんは楽しそうに仕事をしている」「Bさんはやる気がない」と見られることがあります。

このように燃え尽きやすいかどうかは、性格による影響も考えられるのです。

まじめな人ほどなりやすい

燃え尽き症候群になりやすい人の性格には、以下のような特徴があります。

  • まじめで正義感が強い
  • 完璧主義で責任感が強い
  • 人当たりが・愛想が良い

物事に対して手を抜かない人や「頑張ろう」と仕事に対して熱量がある人は、燃え尽きやすいでしょう。

ストレスを解消できない人も注意が必要です。仕事で感じたストレスをプライベートで発散できず、心に残りつづけます。その結果、燃え尽き症候群になる可能性が高まります。

コミュニケーションが多い仕事でなりやすい

お客様やクライアントとのコミュニケーションが多い職場は、燃え尽き症候群になりやすいです。

対面でのコミュニケーションが多い仕事は、以下のようなものがあります。

  • 医療職
  • 営業職
  • 飲食スタッフ
  • 学校の先生

このような仕事では、相手の要望に応えることがもっとも大切です。相手が気持ちよく過ごせるように気を遣っていると、いつのまにか自分の心が疲れてしまいます。

ときには、クレームやひどい言葉を投げかけられることもあるため、精神的なダメージをうけやすいです。

他にも「プライベートを確保できない職場」や「自分で考える機会が少ない職場」でも、燃え尽きやすい傾向があります。

燃え尽き症候群になりやすい性格や職場に関してはこちらもご覧ください。

女性や高校生でもなりやすい

WHOの定義では「燃え尽き症候群は仕事に関係する問題」とされています。ですが、最近では仕事をしていない「主婦」や「学生」の間でも、燃え尽き症候群のような症状が見られています。

PSNetによる報告では「燃え尽き症候群の発症率は男性(36%)に比べて、女性(51%)の方が高い」と言われています。[4] また「世界の女性と比べたときに日本の女性の方が燃え尽きたと感じる割合が高い」とも報告されています。[5]

世界の中でも日本の女性は、燃え尽き症候群になりやすいと言えるでしょう。

女性は仕事以外に家事や育児などの役割を任されることが多いです。さまざまな面からストレスを感じてしまい、発散できなくなると燃え尽きやすくなります。

女性と燃え尽き症候群の関係について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

高校生や大学生でも燃え尽きる人が増えています。

学生時代は「部活」や「勉強」などに頑張って取り組む機会が多いです。部活では「大きな大会の後」に、勉強では「テストや受験の後」に目標がなくなり、燃え尽きてしまうケースがあります。

高校生に多い症状や対策などを知りたい方はこちらもご覧ください。

燃え尽き症候群の診断・チェックリスト

燃え尽き症候群かどうか気になる場合は、チェックリストで確認してみましょう。

世界ではMBIを指標として使っていますが、日本ではMBIを日本人向けに翻訳した「チェックリスト」が使われています。[3]

抜粋したものは以下のとおりです。

  • こんな仕事、もうやめたいと思うことがある
  • 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある
  • 出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある
  • 同僚や患者と、何も話したくなくなることがある
  • 体も気持ちも疲れはてたと思うことがある

全部で17項目あり点数化していくことで、燃え尽き症候群のレベルが分かるようになっています。

詳しくチェックしたい人はこちらをご覧ください。

また、燃え尽き症候群では以下のような前兆があらわれることもあります。

  • 眠れない
  • お酒を飲む量が増える
  • 集中力が切れやすい

これらの症状が出ている場合は、燃え尽き症候群の可能性があるでしょう。

以下の記事で、燃え尽き症候群の前兆について詳しく解説しています。

燃え尽き症候群から回復するには【予防・治療方法】

燃え尽き症候群について知識をつけておけば、未然に防ぐこともできます。また、燃え尽き症候群になってしまった後にも、しっかりと対策をすれば回復に近づくでしょう。

未然に防ぐ方法
  • 考え方をポジティブにする
  • 自分優位に考える
  • ストレス発散方法を見つける

ストレスを感じやすく、溜め込む傾向にある人は燃え尽きやすいです。

自分らしくポジティブに考えることで、ストレスは感じにくくなるでしょう。また、自分なりのストレス解消法やメンタルを回復する方法を知っていると、落ち込んでも回復しやすいです。

なったあとに回復する方法
  • ストレス源から離れる
  • 精神薬を使う
  • しっかりと休む
  • 職場を変更する

もし、燃え尽き症候群と診断されても焦らずにゆっくり回復を目指しましょう。回復するには、燃え尽き症候群になった原因を解決してしっかり休むことが大切です。

病院やクリニックで専門家のカウンセリングを受けると自分にあった解決策を提案してくれます。ひとりで悩まず、誰かに相談してみてくださいね。

燃え尽き症候群を回復する方法について知りたい方はこちらもご覧ください。

参考記事
[1] バーンアウトシンドローム|e-ヘルスシンドローム 厚生労働省
[2] WHO|『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)』第11版(ICD-11)「雇用および失業に関連する問題」
[3] バーンアウト(燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス 日本労働研究雑誌、558,54-64.
[4] PSNet|Burnout
[5] デロイト調査:働く女性のストレスレベルが上昇、50%が「燃え尽き症候群」であると回答|ニュースリリース|デロイト トーマツ グループ|Deloitte

目次