ASRSとは|ADHDの診断に役立つ心理検査について解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
この記事では以下の内容について、詳しく解説します。
ASRSの概要
ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)とは、大人のADHD(注意欠陥・多動症)のスクリーニングに使用されるアンケート形式の質問票です。
近年、発達障害が広く認識されるようになり、大人になってはじめてADHDと診断されるケースも増えています。ASRSは世界中で広く使われている心理検査であり、日本語に翻訳されたものは、日本でも多くの施設で活用されています。
ASRSはADHDの診断基準に基づいて作成されており、質問に対する回答パターンからADHDの診断や重症度の判定に役立てられているのです。[1]
ASRSの質問内容
ASRSは、ADHDの診断基準に基づく18項目の質問で構成されています。
ここではADHD自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)の中にある質問項目を紹介します。
パターンA 6問
パターンB 12問
合計18項目で構成されています。
パターンAの質問項目
- 物事を行うにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 計画性を要する作業を行う際に、作業を順序だてるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 約束や、しなければならない用事を忘れたことが、どのくらいの頻度でありますか。
- じっくりと考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることが、どのくらいの頻度でありますか。
- 長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが、どのくらいの頻度でありますか。
- まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることが、どのくらいの頻度でありますか。
パターンBの質問項目
- つまらない、あるいは難しい仕事をする際に、不注意な間違いをすることが、どのくらいの頻度でありますか。
- つまらない、あるいは単調な作業をする際に、注意を集中し続けることが、困難なことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 直接話しかけられているにもかかわらず、話に注意を払うことが困難なことはどのくらいの頻度でありますか。
- 家や職場に物を置き忘れたり、物をどこに置いたかわからなくなって探すのに苦労したことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 外からの刺激や雑音で気が散ってしまうことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 会議などの着席していなければいけない状況で、席を離れてしまうことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 落ち着かない、あるいはソワソワした感じが、どのくらいの頻度でありますか。
- 時間に余裕があっても、一息ついたり、ゆったりとくつろぐことが困難なことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 社交的な場面でしゃべりすぎてしまうことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 会話を交わしている相手が話し終える前に会話をさえぎってしまったことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 順番待ちしなければいけない場合に、順番を待つことが困難なことが、どのくらいの頻度でありますか。
- 忙しくしている人の邪魔をしてしまうことが、どのくらいの頻度でありますか
ASRSの回答の仕方と評価方法
ASRSでは過去6ヶ月間の自分の行動パターンや感じ方について「全くない」「めったにない」「時々」「頻繁」「非常に頻繁」の5段階で回答します。
ADHDは、症状があらわれる頻度が高いほど重症度も高いと考えられているため、症状が出現する頻度に最も近いものを回答します。
ASRSはパートAとパートBに分かれており、それぞれ評価の目的は別です。
パート別の評価目的の違いを、以下にまとめました。[1]
パート | 目的 | 質問数 | 質問の種類の例 |
---|---|---|---|
A | ADHDの診断を最も鋭敏に予測する質問群。 スクリーニングとして最適。 | 6問 | ・ 詰めが甘くて仕上げるのが困難 ・計画性を要する作業の順序だてが困難 ・約束や用事を忘れる |
B | パートAから検出された症状に関するさらなる情報を提供。 ただし、診断的な意義はない。 | 12問 | ・不注意な間違いをする ・ 注意を集中し続けることが困難 ・直接話しかけられても注意を払うことが困難 |
ASRSはADHDの診断に役立つだけでなく、あらわれている症状の理解にもつながるのです。
自分の症状を知ることで今後の生活にも役立ちます
ASRSの結果の解釈
ASRSの結果は、ADHDの可能性や重症度を示すひとつの指標です。
ASRSでは、パートAとパートBで結果の解釈が異なります。
パートAでは、6問中4問以上「時々」または「頻繁」、「非常に頻繁」(チェックリストのグレー部分)のどれかに当てはまる場合は、ADHDの可能性が高いと考えられます。
パートBは、その人の持つADHD症状を詳しく知るための質問です。こちらはADHDの診断には直接関係ありません。[1]
ADHDの診断の参考にするのはパートAですね!
パートBは症状を知るために使います。
ASRSの注意点
ASRSはADHDのスクリーニングによく使用されていますが、それだけでADHDを診断できるものではありません。ADHDはASRSの結果だけでなく「日常生活でどれだけADHD症状に困っているのか」「幼少期からの症状の有無」などの要素を考慮して、総合的に診断されます。[2]ADHDの症状には個人差が大きく、症状のあらわれ方や日常生活への影響度合いは人によって異なるのです。
自分の症状に気付くきっかけとしてASRSを活用し、不安や疑問を感じたときには医師や心理士などの専門家に相談しましょう。
おおかみこころのクリニックでは、LINEでいつでも相談を受け付けております。
まとめ
ASRSは、大人のADHDのスクリーニングに使用されるアンケート形式の質問票であり、自己評価に基づいた心理検査として世界的に広く利用されています。ただし、ASRSだけではADHDの診断を行うことはできません。ADHDは、医師との問診や他の検査結果を組み合わせて総合的に判断されます。
ASRSは、ADHDを診断するための一つのツールとして理解しておきましょう。
参考文献
[1]Adult ADHD Self-Report Scale-V1.1 (ASRS-V1.1)Symptoms Checklist|Department of Health Care Policy, Harvard Medical School
https://www.hcp.med.harvard.edu/ncs/ftpdir/adhd/18Q_Japanese_final.pdf
[2]ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット