AQ(自閉スペクトラム指数)とは|検査の内容と結果の見方を解説

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

この記事では以下の内容について、詳しく解説します。

目次

AQ(自閉スペクトラム指数)とは 

AQとは、ASD(自閉スペクトラム症)のスクリーニングに使われる心理検査のことです。

世界中で行われている心理検査のひとつであり、その人のASD傾向を知るために用いられています。
他のASD心理検査は下記の記事よりご覧ください。

AQでは、以下の5つの項目について評価します。

  • 社会的スキル
  • 注意の切り替え
  • 細部への注意
  • コミュニケーション
  • 想像力

AQの評価項目は、ASD症状の特徴を反映するものです。ASDに当てはまるかどうか」「ASDの症状の程度はどのくらいなのか」「より詳しい検査をするべきなのかについて、医師が判断するのに役立ちます。[1]

被験者の症状と特徴について知るために用います

AQの検査方法と採点方法

AQは、成人用と児童用の2種類があります。成人用AQの対象は「16歳以上」であり、自己評価式の検査です。
児童用のAQは「6歳から15歳までの子ども」を対象としており、保護者が回答する他者評価式です。

計50問の自己記入式の質問で構成され、10~15分で回答できます。[2]

子どもから大人まで幅広く使えますね

各質問に対して「そうである」「どちらかといえばそうである」「どちらかといえばそうではない」「そうではない」の4段階で回答します。

AQの採点は、ASD傾向がある回答に対して1点が加算されます。

50点満点で採点し、33点がカットオフ値(陽性か陰性かを判断する値)です。つまり、AQが33点以上であれば、一定以上のASD傾向があると判断されます。[1]

AQの結果から分かること

AQの結果は、5つの評価項目の得点で示されます。

ここでは、評価項目ごとに結果の意味を説明し、得点の高低による特徴の違いを紹介します。

社会的スキル

社会的スキルとは、人との関わりや交流に必要な能力のことを意味しています。

AQ得点が高い人の特徴
  • 社交的な場面が苦手である
  • 自分の置かれている状況が理解できない[3]
AQ得点が低い人の特徴
  • 人と良好な関係を築くのが得意である
  • 自分の感情や考えを適切に表現できる

注意の切り替え

注意の切り替えとは、状況に応じて注意の対象を別の対象に移すことができる能力のことです。

AQ得点が高い人の特徴
  • 2つ以上のことを同時にできない
  • 今までやっていたことを中断して別のことができない
  • ひとつのことに没頭する[3]
AQ得点が低い人の特徴
  • 複数のタスクを効率的にこなせる
  • 環境の変化に柔軟に対応できる

細部への注意

細部への注意とは、物事の細かい部分や特徴に気付く能力のことです。

AQ得点が高い人の特徴
  • 他の人が気づかないような物音に気付く
  • 数字や時刻表などへのこだわりが強い[3]
AQ得点が低い人の特徴
  • 物事の全体を捉えるのが得意である
  • 抽象的な概念や理論に興味を持つ

コミュニケーション

コミュニケーションとは、言葉や身振りを使って自分の考えを伝え、相手の思いや意図を理解し、伝え合う能力のことです。

AQ得点が高い人の特徴
  • 言葉のニュアンスや皮肉を理解できない
  • 相手の表情や視線を読み取れない[3]
AQ得点が低い人の特徴
  • 言葉やジェスチャーを使って、自分の気持ちや考えを効果的に伝えられる
  • 相手の気持ちを感じ取れる

想像力

想像力とは、現実には存在しないものや状況を思い描いたり、創造的なアイデアを出したりできる能力のことです。

AQ得点が高い人の特徴
  • 物語の登場人物の背景を想像できない
  • 他人の視点に立って物事を考えるのが苦手である[3]
AQ得点が低い人の特徴
  • 空想や創作に熱中できる
  • 他人の気持ちが理解できる

AQの活用方法と注意点

AQは、その人のASD傾向と症状の特徴を知るのに役立つ検査です。

ただし、症状の程度を評価することはできません。よってASDの診断はできないため、注意が必要です。[1]

また、結果の個人差は大きく、たとえ同じ点数であっても対処法が異なります。

ASDの診断できる検査ではありません

AQの結果が示すのは、あくまでASD症状の傾向です。自分の特性や能力の全てをあらわしているものではないことを、理解しておきましょう。

ただし、ASDの症状が日常生活に大きな支障をきたしている場合、AQの結果が診断に役立ち、よりよい治療につながることもあります。

おおかみこころのクリニックでは、AQを実施しています。

周りにASDの検査を受けたいと考えている人がいる方は、こちらのページをご覧ください。

まとめ

AQとは、ASDの傾向を測定するための心理検査です。
ASDは、社会的なコミュニケーションの難しさやこだわりの強さなどの特徴を持つ発達障害のことです。AQでは、ASDの症状に関連する5つの項目(社会的スキル、注意の切り替え、細部への注意、コミュニケーション、想像力)について評価します。

各項目の合計得点が33点以上の場合は、一定以上のASD傾向があるとされますが、これだけでASDを診断できるわけではありません。

医師はAQだけでなく、問診や他の検査の結果を踏まえて、総合的にASDを診断します。

参考文献

[1]自閉症スペクトラム指数(AQ)目本語版の標準化 高機能臨床群と健常成人による検討|The Japanese Journal of Psychology2004, Vol. 75, No. 1, 78-84

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/75/1/75_1_78/_pdf

[2]AQ 日本語版 自閉症スペクトラム指数 Autism-Spectrum Quotient|saccess bell

https://saccess55.co.jp/aq_nihongoban_jiheisyousupekutoramu.html

[3]ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット

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