SCT(文章完成法)とは|検査の目的や解釈をわかりやすく解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
この記事では以下の内容について、詳しく解説します。
SCT(文章完成法)の目的
SCT(Sentence Completion Test)とは、文章完成法と呼ばれる心理検査です。この検査では、未完成の文章(刺激文)が提示され、自分の思いついたことや感じたことをもとにその続きの文章を書きます。
たとえば「私は今日_______」という文章が提示された場合は「私は今日楽しかった」「私は今日疲れた」など、自分の気持ちに合わせて文章を完成させます。
SCTは自分の言葉で書きかけの文章を完成させることを通して、「パーソナリティ」を把握するための検査です。
パーソナリティとは、その人の人格や個性を広く表す言葉です。人はそれぞれ、性格や欲求、価値観が異なります。
SCTでは、文章で自分の内面を表現することで、自分の性格や価値観を知り、総合的な人物像を知ることができます。
SCTは、医療機関や教育機関、企業の面接などで幅広く利用されている検査です。自分のパーソナリティを知るだけでなく、他者との関係性や社会的適応力を測るためにも役立ちます。[1]
自分を知るための検査ですね!
SCTのメリットとデメリット
SCTは、日本でもっともよく使われる文章完成法の検査のひとつです。
ここでは、SCTのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
SCTのメリットは、文章完成法の検査の中では比較的簡単な検査であるという点です。[1]
時間制限や回答数の制限もないため、受検者は自分のペースで検査を受けられるでしょう。
さらに、SCTは家に持ち帰って「宿題」としてできる検査でもあります。[2]自分の落ち着いた環境で検査を行うことで、より自分の本音を表現しやすくなります。
制限が少ないので実施しやすい検査になります
デメリット
SCTのデメリットとして、客観性に欠けることが挙げられます。
SCTの回答には正解が無く、採点して得点を評価するものではありません。結果は検査者が回答を解釈し、受検者のパーソナリティや心理的特徴を把握します。そのため、結果の解釈には検査者の思考や主観が入りやすく、検査者によって回答の解釈が異なる可能性があるのです。
SCTの検査方法
SCTの検査方法は、成人用、中学生用、小学生用の3種類があります。成人用SCTの適用範囲は、16歳以上です。種類によって、刺激文の内容や難易度が異なります。
SCTの刺激文は、全部で60項目です。受検者は、自分の思いついたことや感じたことをもとに刺激文の続きの文章を書きます。回答は、短くても長くても構いません。
SCTの検査時間は、30~60分程度を目安としています。検査時間は、受検者の回答速度や回答数によって異なります。[1]
国語のテストみたいですね♪
SCTの採点方法
SCTの評価方法は採点形式ではなく、得られた情報から検査者が総合的に評価します。検査者が回答を評価する基準として、以下の2つの分析方法があります。
- 形式分析:検査にかかった時間や文法的誤り、筆跡などを指標として解釈する方法
- 内容分析:被検者の書いた文章を読んだ印象からパーソナリティを捉える方法[3]
形式分析では、回答の内容よりも形式に注目します。
たとえば、字が大きい場合は自己主張が強い傾向があるといった評価の仕方です。[4]
一方、内容分析では、回答の形式よりも回答の内容に注目します。
「私は友達と_______」という刺激文に対して「私は友達と楽しく遊ぶ」と回答した場合は、受検者が社交的で明るい傾向を示していると考えられます。
SCTの解釈のポイント
SCTの解釈は素人では難しく、経験豊富な専門家による評価が必要です。[4]
SCTの評価は形式分析に加えて、内容分析では「パーソナリティ」と「決定要因」の2つの指標を用いています。
それぞれ見ていきましょう
パーソナリティ
パーソナリティは、以下の4つの側面から評価します。[3]
〈知的側面〉
精神面での発達を見ています。また、先を見通せる能力やリーダーシップも知的側面として評価します。
〈情意的側面〉
その人の性格や気質(几帳面、自意識過剰など)を評価します。
〈指向的側面〉
目標や価値観といった、その人が人生において重要視するものを評価します。
〈力動的側面〉
精神的な不安定さや攻撃性がないかどうかを評価します。
SCTは回答した文章の内容から、4つの指標をもとにその人の持つ心理的特徴を評価しています。
決定要因
決定要因とは、その人のパーソナリティに影響与えている要因のことです。
おもに、以下の3つがあります。[2]
〈身体的要因〉
自分自身の容姿や性格から想像する自己イメージを評価します。「自分自身のイメージを肯定的に捉えているのか否か」が重要なポイントです。
〈家庭的要因〉
「幼いころに祖母に預けられ、寂しい思いをした」「陸上が得意で全国で1位をとるほどの実力だった」などの家庭環境や生い立ちが、パーソナリティにどう影響しているのかを評価します。
〈社会的要因〉
家族や学校、職場、異性における対人関係を評価します。「他者に対して肯定的なイメージを抱いているのか否か」「どの程度肯定的(否定的)に捉えているのか」という他者に対するイメージについて評価するものです。
パーソナリティは3つの決定要因に大きく影響を受け、その人の心理的な特徴として捉えられるのです。
おおかみこころのクリニックでSCTは実施していませんが、その他の性格・人格に関する心理検査を実施しています。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
SCTとは、未完成の文章を自由に完成させることで、自分のパーソナリティを探ることができる心理検査です。SCTでは、自分の性格や欲求、価値観などを知り、そのパーソナリティに影響している要因を把握できます。自分自身をより深く理解するきっかけとなるでしょう。
参考文献
[1]SCTとトータルパーソナリティの把握|一般社団法人 日本SCT学会
http://jscta.tokyo/jscta/haaku.html
[2]SCT(Sentence Completion Test:文章完成法)の臨床的活用について |山梨英和大学紀要 16(0), 44-64
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yeiwa/16/0/16_44/_pdf/-char/ja
[3]SCT(文章完成法テスト)|三重大学
https://www.gakko.edu.mie-u.ac.jp/comp_ed/2k/okumura/report3.pdf
[4] SCT筆跡からみえる筆跡印象と身体的印象の関連|日心第83回大会(2019)https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/83/0/83_1D-004/_pdf/-char/ja