ロールシャッハテストで何がわかるのか|検査の信頼性と結果の見方も

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

ロールシャッハテストは、性格検査のひとつである投影法の心理検査です。

性格検査では、検査を受ける人の「性格」「欲求態度」「情緒」などを調べます。 抽象的な質問や課題に回答してもらい、被験者(検査を受ける人)の深層心理を調べるのが投影法です。[1]

今回はロールシャッハテストの信頼性結果の見方などについて解説します。

目次

ロールシャッハテストの概要

ロールシャッハテストは、スイスの精神科医であるヘルマン・ロールシャッハが『精神診断学ー知覚診断的実験の方法と結果』の中で公表しました。10枚のインクのしみが「何に見えるか」を被験者に連想させて、人格を捉えます

ロールシャッハテストのメリットは「被験者の深層心理を把握できる」「反応を数量化しやすい」「精神症状の重さを把握できる」などが挙げられます。[2]

投影法にはロールシャッハテストのほかにも、バウムテスト、PFスタディなどがあります。[1]

ロールシャッハテストの信頼性

ヘルマン・ロールシャッハは、ロールシャッハテストを発表した9か月後に、37歳の若さで亡くなりました。そのため、ロールシャッハテストの真の意図や解釈が明確でないため、ロールシャッハテストの信頼性については議論が繰り返されています

村上,江見(1956)の調査によると、ロールシャッハテストにおいて被験者から得られた反応はでたらめなものではなく、相当の信頼性をもつものであることが示されました。[3]

一方で、ロールシャッハテストは診断ツールとしてはほとんど妥当性を持たないという意見もあります。全体像を引き出すには不十分であり、被験者に関する知識、パーソナリティ理論の知識、精神病理や不適応の理論が重要であると考えられています。[4]

まだまだ信頼性が議論されている検査です

ロールシャッハテストの方法

ロールシャッハテストには、クロッパー法、片口法など種類がありますが、ここでは包括システム(エクスナー法)について解説します。

テストを受けるときは、検査者と被験者は横並びに座るようにしましょう。インクのしみが描かれた図版を見て、何に見えるかを回答していきます。テスト中に検査者が被験者の回答について質問をする場合もあるため、それにも答えるようにしてください。

検査が終わった後に、「あなたを含めて、家族のそれぞれのイメージに合う図版を選んでください」と質問するケースもあります。結果の解釈に役立つ質問なので、もし不安などがなければ回答するといいでしょう。[4]

となり同士にならん座ります。
狭いスペースでもできますね♪

ロールシャッハテストの結果の見方

ロールシャッハテストの結果の見方は、包括システム(エクスナー法)について解説します。

人格の特徴は、以下の7つのクラスターに分けられます。クラスターとは、パーソナリティの特徴を表す側面のことです。[4]

  • 統制力とストレス耐性
  • 感情の特徴
  • 認知的媒介
  • 思考
  • 情報処理過程
  • 対人知覚
  • 自己知覚

7つのクラスターと、クラスターを解釈する順番を表す「鍵変数」を合わせて、結果を解釈していきます。クラスター解釈の順番はいつも同じではなく、影響力の大きいクラスターから決まるのです。

ロールシャッハテストでは、被験者に対してフィードバックすることが提唱されています。フィードバックの方法は、クラスターについて書かれた表を置き、それを見ながら話し合っています。結果の解釈が被験者にとって納得できるか、確かめ合いながら進めていくのです。[5]

受け取り方が合っているのか確認しながら進めていきます

フィードバックの注意点として、被験者の具体的な回答を引用して、解釈を伝えてはいけません。再検査をする際に、被験者が前回のフィードバック内容を受けて意図的な回答をしてしまう可能性があるからです。

フィードバックには、以下のメリットがあります。[5]

  • 被験者がより主体的に自分自身を見つめるようになったこと
  • 意欲的な行動変化が見られたこと
  • 共同作業の雰囲気を醸し出し、それ自体が相互的な対人交流の練習になったこと

テスト結果のフィードバックの仕方に気をつければ、自分自身と向き合うことにつながるでしょう。

ロールシャッハテストのデメリット

ロールシャッハテストのデメリットは、被験者が不安を感じる場合があることです。[1]

ロールシャッハテストを含む投影法では、被験者に検査意図が伝わりにくいため、あいまいな状況に置かれてしまいます。被験者の様子次第では、検査を中止するケースもあるでしょう。

治療の一環としてロールシャッハテストを使用する場合、治療の介入をより良いものにするためにも、被験者に対する気遣いを忘れないようにしてください

不安そうだったらやめましょう💦

まとめ

ロールシャッハテストとは、被験者の深層心理を把握して、人格を調べる心理検査です。

おおかみこころのクリニックでは、性格検査・知能検査など目的に合わせた心理検査を実施しています。検査を希望される方は、以下のお問い合わせページからお願いいたします。

【参考文献】
[1]面白いほどよくわかる!臨床心理学,下山 晴彦,西東社
https://amzn.asia/d/bonNkMY

[2]ロールシャッハ法と精神分析ー継起分析と防衛解釈を中心にー
https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000000300/7-401.pdf

[3]ロールシャッハ・ランキング・テストに関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/27/3/27_3_185/_pdf

[4]ロールシャッハ法の解釈の歴史ー法則定立的か個性記述的かー
https://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000004150/19-149.pdf

[5]ロールシャッハ・テストのフィードバックに関する研究
https://www.gakushuin.ac.jp/univ/let/top/publication/JI_23/JI_23_006.pdf

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