DN-CAS認知評価システムでわかることとは?検査内容を解説

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

子どもの知能を把握するための検査はいくつかあり、「DN-CAS認知評価システム」もそのうちのひとつです。

子どもの認知機能を把握して、効果的な学習方法を考える手がかりとして活用できます。さらに発達が遅れているかどうかの指標にもなるため、発達障害の傾向があるかを確認することも可能です。

この記事では、DN-CAS認知評価システムについて解説しながら、ほかの検査との違いをご紹介します。
ほかの知能検査は下記の記事よりご覧ください。

目次

DN-CAS認知評価システムとは

DN-CAS(ディーエヌ・キャス)認知評価システムとは、1997年にアメリカで出版された検査です。心理学モデルのひとつであるPASS理論を基礎としていることが特徴であり、理論に基づいた診断が可能です。おもに、子どもの認知機能を評価する際に用いられます。

対象年齢は5歳0ヶ月〜 17歳11ヶ月までと、幅広い年代に対応可能です。一度の検査で評価するだけでなく、再検査することで認知機能の変化を長期的に評価できるともいわれています。[1][2]

子どもは成長に合わせた変化をしることができます。

DN-CAS認知評価システムを構成する4つの尺度(PASS)と下位検査

DN-CAS認知評価システムはPASS理論が採用されており、以下の4つの尺度(認知機能)で構成されています。

4つの尺度で評価することで、各側面から子どもの認知機能や発達レベルを捉えることが可能です。それぞれの尺度ごとに3つの下位検査が用意されており、計12の下位検査を実施することになります。

DN-CAS認知評価システムの検査では、12種類の下位検査を実施するのが基本です。状況に応じて8種類で行う簡易実施も可能となっています。検査時間は、40分~60分程度です。

なお、用意された問題を解くだけでなく、検査中の子どもの反応も記録しておく必要があります。[3]

では、それぞれの尺度について解説します。

プランニング

「プランニング」は、提示された情報に対して、どの解決方法が効果的かを選択したり決定したりするための認知プロセスです。

ここでの下位検査は以下の3つです。

  • 数の対探し
  • 文字の変換
  • 系列つなぎ

注意

「注意」は、提示された情報が適切か不適切かを判断する認知プロセスです。

ここでの下位検査は以下の3つです。

  • 表出の制御
  • 数字探し
  • 形と名前

必要な情報だけに、注意を向けられるかどうかを判断する指標となります。

同時処理

「同時処理」は、提示された複数の情報を、1つのまとまりとして認知できるかを判断する認知プロセスです。情報全体から、必要な要素を自由に取り出せるかを見ています。

ここでの下位検査は以下の3つです。

  • 図形の推理
  • 関係の理解
  • 図形の記憶

複数の情報から関係性や規則性を見つけたり、それらの情報のことを同時に考えたりできる能力を指します。

継次処理

「継次処理」は、提示された複数の情報を系列としてまとめる認知プロセスです。必要な要素を順番に取り出せるかを判断しています。

ここでの下位検査は、以下の3つです。

  • 単語の記憶
  • 文の記憶
  • 発語の速さ/統語の理解

物事を順序立てて考えたり、時間の流れを理解したりできる能力を指します。

DN-CAS認知評価システムでわかること

DN-CAS認知評価システムを受けることで、子どもにおける以下のことがわかります。

  • 認知機能の把握
  • 発達障害の可能性の有無
  • 課題の明確化

前述した4つの尺度の評価によって、子どもの認知機能だけでなく、発達の遅れがあるかを確認できます。自閉症スペクトラム障害や学習障害(LD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)などの傾向があるかを見つけるきっかけとなるでしょう。

どの分野が得意なのか、どの認知機能の発達が遅れているのかなどが詳細に区別できるのが、DN-CAS認知評価システムの特徴です。

たとえば「プランニング」と「注意」の点数が低い場合、ADHDの傾向が強くあらわれるとされており、読み書きが苦手とされるLDの場合、「継次処理」の点数が低くなる傾向にあるとされています。

さらに検査結果より、認知的な偏りの傾向を捉え、今後の学習や支援に効果的なサポート方法を検討できるでしょう。[1]

得意と苦手を知ることは、その子に合った支援を考えるために大切です✨

DN-CAS認知評価システムと「K-ABC」「WISC」の違い

知能検査にはいくつか種類があり、混同される方もいるかもしれません。

この章では、比較されることのある「K-ABC検査」「WISC検査」について解説します。

K-ABC検査

K‐ABCは、子どもの基礎学力と認知処理力を数値化できる検査です。適用年齢は、2歳6ヶ月~12歳11ヶ月まで(KABC‐Ⅱの場合は、対象年齢の上限が18歳11ヶ月まで)です。

K-ABCⅡでは、以下の4つの側面から評価できます。

  • 認知処理力
  • 継次処理
  • 学習能力
  • 計画能力

子どもの知的能力を「情報を処理する過程や速さ」と「知識・技能の習得度」の双方から評価できることが特徴です。これにより、子ども一人ひとりが持つ得意分野を見つけ、効率的な学習方法を見つけられるでしょう。[4]

WISC検査

WISC検査もほかの2つの検査と同じく、子どもの認知機能における得意不得意を把握して、今後の学習や支援方法の手がかりを得ることが可能な検査です。対象年齢は5〜16歳です。

WISC検査は、以下の4つで構成されています。

  • 言語理解
  • 知覚推理
  • 処理速度
  • ワーキングメモリー

4つの指標にそってそれぞれの知能指数を評価するため、より詳細に知的能力を把握できるとされています。[5]

どの検査が有効かは、検査する人によっても異なります。迷うことがあれば、専門の医療機関や各自治体にある特別支援教育課などに相談してみましょう。

まとめ

DN-CAS認知評価システムでは、子どもの認知機能を把握するだけでなく、発達の遅れがあるかどうかも評価できます。結果から、子どもの得意不得意がわかり、課題の明確化につながるでしょう。

検査は、精神科や発達障害をあつかう医療機関で受けられます。自治体によっては、特別支援センターや特別支援教育課などで相談を受け付けているところもあります。子どもの知能に関して不安があれば、上記の専門機関に相談してみましょう。

【参考文献】
[1]千葉テストセンター 心理検査専門所/心理検査 DN-CAS 認知評価システム (ディーエヌ・キャス)
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=82

[2]岡田総合心理センター/DN-CAS認知評価システム
https://www.okada-shinri.com/rin/other/NBK9DNCA.html

[3]日本文化科学社/DN-CAS認知評価システム
https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/dn_cas.html

[4]日本K-ABCアセスメント学会/K-ABCとは

[5]山口県/研修用テキスト「支援をつなぐ-研修編-」
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/77079.pdf

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