K-ABCとは?基礎知識や検査方法や見方について分かりやすく解説

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

どうしても周りの子と比べてしまい、お子さんの学習障害が心配になることもありますよね。K-ABCという検査について聞いたことはありますか?

これは子どもの知的能力を評価し、得意と苦手を明らかにできる検査です。結果をうまく活用することで、教育や学習指導に生かせるでしょう。

この記事では、K‐ABCの基礎知識や検査の見方について分かりやすく解説します。この記事が学習指導の参考になれば幸いです。

他の知能検査は、下記の記事で紹介しています。

目次

K-ABCの基礎知識

K‐ABCをうまく活用するために、事前にどのような検査なのかを知っておく必要があります。

この章では、K‐ABCの概要KABC-Ⅱとの違いを解説します。

K-ABCとは

K‐ABCは「カウフマン・アセスメントバッテリー・チルドレン」の略であり、子どもの指導や教育に活用するために作成された検査です。適用年齢は、2歳6ヶ月から12歳11ヶ月までとされており、保育園から小学校高学年までが対象です

K‐ABCを受けることで、子どもの認知処理力や基礎学力を数値化できるため、教育や指導に役立てられます。それぞれが持つ得意分野を見つけ、効率的に学習を進められることがK-ABCの強みです。[1]

得意を伸ばしてあげることもできますね♪

K-ABCとKABC‐Ⅱの違い

KABC‐ⅡはK‐ABCの改訂版です。2013年には日本版が発行され、徐々に国内でも普及し始めました。

K-ABCとKABC‐Ⅱの大きな違いは、対象年齢の上限が18歳11ヶ月まで引き上げられた点です。またKABC‐Ⅱ検査では、K-ABCにあった3つの検査項目が削除され、新しく9つの項目が追加されるなど、内容も大きく変わりました。

K-ABCⅡでは、認知処理力と継次処理のほかにも、学習能力と計画能力が追加されて4つの側面から測定ができるようになっています。それぞれの能力は以下の通りです。

  • 認知処理能力:物事を正しく理解し判断する力
  • 継次処理:順を追って情報を処理する力
  • 学習能力:新しい情報を習得して活用する力
  • 計画能力:課題解決のためのプロセスを組み立てる力

4つの側面から測定することで、従来のK-ABCよりもこまかい評価が可能となったのです。[2]

K‐ABC検査の結果からわかること

続いて、検査結果から何がわかるのかを見てみましょう。

子どもの得意・不得意を把握できる

K-ABCでは子どもの知的能力を数値化できるため、得意分野と不得意分野を見いだせるのが特徴です。知的能力を数値化すると、勉強でつまづいている箇所が把握でき、どのような教育方針で進めればよいかがわかります。

強みと弱みを把握し、最も効果的な方法で勉強を進められるのです。[3]

子どもに合った教育方針を考える参考になりますね。

基礎学力や学習障害の傾向があるかがわかる

K-ABCは、基礎学力や認知処理力の発達度を評価できるため、検査結果によって学習障害があるかどうかを客観的に評価することが可能です。発達障害の確定には至りませんが、そのような傾向があるかを見つけるきっかけになるでしょう。

さらにKABC‐Ⅱの検査では、学習の項目(語彙力、読み書き、算数など)を細分化して測定できるので、どの能力が低い傾向にあるのかも判断できます。[3]

K-ABCⅡを構成する2つのモデル

日本語版K-ABCⅡは「カウフマンモデル」「CHCモデル」の2つで構成されており、それぞれ異なる視点から知的能力を測定します。
それぞれのモデルについて解説します。

カウフマンモデル

カウフマンモデルは、認知能力と基礎学力の両側面から子どもの知能レベルを評価します。

認知尺度(認知処理力)と習得尺度(基礎学力)の2つに分かれています。

認知尺度(認知処理力)11下位検査
継次尺度:3下位検査
同時尺度:4下位検査
学習尺度:2下位検査
計画尺度:2下位検査
習得尺度(基礎学力)9下位検査語彙尺度:3下位検査
読み尺度:2下位検査
書き尺度:2下位検査
算数尺度:2下位検査

認知処理力が表す結果は、現在持っている知識の量ではなく、新しく知識や技能を獲得する際に必要な力を示しています。

対して習得尺度は、語彙力や読み書き、算数のような基礎学力による知能の評価です。現在どの年齢レベルの学力があるかを示しています。[3]

習得尺度で基礎学力を数値化できますが、必ずしも現状の学力と一致するわけではなく目安での学力です。

CHCモデル

CHCモデルは、3つの異なる心理測定(一般能力、広範囲能力、限定的能力)による研究成果が統合された理論です。日本語版CHCモデルでは、10個の広範的能力のうち、以下の7つに分類して測定します。

CHC尺度19下位検査長期記憶と検索尺度:2下位検査
短期記憶尺度:3下位検査
視覚処理尺度:3下位検査
流動性推理尺度:2下位検査
結晶性能力尺度:3下位検査
量的知識尺度:2下位検査
読み書き尺度: 4下位検査

CHCモデルは、知能を複数の広範的能力に分類し、知的発達の総合的な能力を評価します

カウフマンモデルとの両側面から評価することで、一人ひとりが持つ強みや弱みを適切に把握し、それぞれの項目においての能力の差を確認できます。[3]

K-ABCⅡの検査方法

K-ABCⅡは、総合病院やクリニックなどの医療機関、または自治体が運営する教育支援センターや子育てセンターなどで検査できます検査時間はおよそ30分~2時間ほどであり、年齢によって個人差があります。[2]

検査は基本的に子ども一人で受けるため、家族は別室で待機します。ただし、年齢や子どもの状況によっては家族同伴のケースもありますので、事前に確認しておくと安心です。場合によっては、数回に分けて検査することもあります。

検査してから結果が出るまでには、3~4週間程度の期間がかかります。検査結果は、心理士から伝えられ、必要に応じて後日専門の医師によって診察の時間が設けられることもあります。この診察は、検査結果をもとに発達障害の可能性の有無や、今後の診療方針について主治医と話し合う時間です。[4]ただし検査を受ける場所によって、検査後の流れは変わりますので、確認してみましょう。

多くの専門家が丁寧に分析してくれます。

KABC‐Ⅱの結果の見方

KABC‐Ⅱの結果を理解するには、下位検査それぞれの意味を理解しておく必要があります。

それぞれの項目に関する説明を表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。[5]

カウフマンモデル
認知尺度習得尺度
継次尺度連続した刺激を1つずつ順に処理する力語彙尺度語彙に関する知識の量や理解する力
同時尺度複数の視覚的な刺激をまとめる力読み尺度文字を読み理解する力
学習尺度新しいことを学ぶための力書き尺度文字の書き方や文章を作成する力
計画尺度課題に対して、適切な方法で選択・決定・実行するための力算数尺度計算能力や数字に関連した処理能力
CHCモデル
長期記憶と検索尺度学習した情報を必要に応じて引き出す力
短期記憶尺度短時間で記憶する力
視覚処理尺度視覚的な情報を適切に把握し、処理する力
流動性推理尺度推理力や応用力を活用し、課題や問題を柔軟に対応する力
結晶性能力尺度これまでに獲得した知識の量
量的知識尺度これまでに獲得した数字的知識や数学的推論に関する力
読み書き尺度文字の読み書きおよび理解力

まとめ

K-ABCは、さまざまな方向から子どもの能力を評価でき、教育や指導の際に活用できます。現在では、改訂版であるKABC‐Ⅱの使用により、学習に関する能力をより細分化して評価が可能です。

子どもの向き不向きの把握だけでなく、発達の遅れがあるかどうかも確認できます。子どもの学習方法や知能について悩みがあれば、ぜひK-ABCを検討してみましょう。

【参考文献】
[1]日本K-ABCアセスメント学会/K-ABCとは

[2]丸善出版株式会社/『日本版KABC-II』の概要
https://www.maruzen-publishing.co.jp/info/n19532.html

[3]株式会社千葉テストセンター/心理検査 日本版 KABC-II
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=76

[4]独立行政法人国立病院機構 下志津病院/発達検査・知能検査・心理検査を受けるご家族の方へ
https://shimoshizu.hosp.go.jp/center/ryouhatsu/shinri_kensa_gokazoku.pdf

[5]日本K-ABCアセスメント学会/日本版 KABC-II の取り扱いと検査結果報告についての【注意点】

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