グッドイナフ人物画知能検査とは?検査の目的や対象年齢を解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
子どもの発達障害や知能発達の遅れは、可能な限り早期の発見と療育が望ましいとされています。それを知るには、知能検査を受けるのもひとつです。
この記事では、3歳の小さい子どもでも実施可能な知能検査である「グッドイナフ人物画知能検査」について解説します。検査の目的や内容を知りたければ、ぜひ参考にしてください。
グッドイナフ人物画知能検査とは
グッドイナフ人物画知能検査は、子どもの精神年齢や知能指数を簡易的に確認できる検査です。アメリカの心理学者、フローレンス・ローラ・グッドイナフ氏によって作成されました。
グッドイナフ人物画知能検査は、書いてもらった人物画をもとに知能を評価します。難しい指示や長い検査時間を必要としないため、発達遅れの発見やほかの知能検査のウォーミングアップとして気軽に実施できる検査です。[1]
この章では検査の特徴や目的、対象年齢について詳しく見ていきましょう。
簡単な検査は子どもの負担にならないので良いですね!
グッドイナフ人物画知能検査の特徴と目的
グッドイナフ人物画知能検査は、子どもに人物の絵を描かせる「描画テスト」です。回答するのに言語を必要としないため、難聴や言語障害を抱える子どもに対しても実施可能です。また検査時間が5〜10分と短く、遊び感覚で実施できることから、小さい子どもでも大きな負担がかかりません。
この検査の目的は、子どもの「人物画知能」を検査することです。人物像を正しくとらえ、絵にあらわせるかがわかります。結果から、精神年齢と知能発達の程度を把握できるのです。
一方で、人物画知能のみでは精神発達をこまかく測ることはできません。しかし、発達の遅れの有無をおおまかに把握でき、検査自体のハードルも低いという点はこの検査の特徴といえるでしょう。
対象年齢
グッドイナフ人物画知能検査の対象年齢は、健常児で3歳〜8歳6ヶ月です。検査の指示や内容が簡単であるため、年齢が低いうちから実施できます。[1]
年齢が大きくなるにつれ、絵を書く際に「芸術性」や「描画技術」が加わってしまう可能性があり、精神年齢のテストとしての信頼性が失われてしまいます。そのため、絵の指導を受けている児童は、対象年齢以下でも正確な検査結果が出ない可能性がある点に注意しましょう。
グッドイナフ人物画知能検査のやり方と評価
グッドイナフ人物画知能検査の方法は非常に簡単であり、採点や評価もそれほど複雑ではありません。検査を検討している方は、指示の方法や検査の手順、採点・評価方法を理解しておきましょう。
この章では、グッドイナフ人物画知能検査の検査方法と評価の方法・基準などを解説します。
検査方法
引用元:千葉テストセンター心理検査専門所/心理検査 DAMグッドイナフ人物画知能検査 新版
グッドイナフ人物画知能検査では「紙」と「鉛筆(1色のみ)」を使用します。
児童に対して「人の絵を描いてください。頭の先から足の先まで、なるべく全身を描いてください」と指示します。口頭ではなく、文章での指示でも問題ありません。
この検査では男性像のみを評価対象とするため、最初の指示で女性を描いたときには「次は男性の絵を描いてみてください」と伝えましょう。
描いた絵を50個の採点項目に当てはめ、1項目1点(+と評価した項目)として採点します。以下に採点項目と採点基準の例を記載しますので、参考にしてください。
採点項目 | 採点基準 |
頭 | 頭があればよい |
顎の輪郭 | 単純な円、楕円、四角、三角などでなく、頭の形として描出されていること |
頭の割合 | 頭の面積が胴の1/10以上、1/2以下であること |
髪の毛の有無 | 頭から髪が生えていればよい |
眼 | 1つでも、2つでもよい眼らしいものでもよい |
採点基準には「描けていればよい」とする項目と「うまく描けていれば加点」とする項目がこまかく記されており、簡単に採点可能です。採点表に採点例として絵が書いてあるので、書いた絵がどの採点例に似ているかを判断するだけで評価できます。
評価方法
採点結果を「MA換算表」に当てはめることで、およその精神年齢を算出できます。
2017年に改訂された日本版「グッドイナフ・ハンドブック」には、男女別のMA換算表が記載されており、性差を考慮した精神年齢の算出が可能です。
検査後は算出した精神年齢と生活年齢(実際の年齢)を使用し、知能指数(IQ)がわかります。
IQは「精神年齢÷生活年齢×100」で算出され、70以下であれば軽度の知的遅延の傾向にあると考えられます。[2][3]
ただし、発達障害などを確定するものではないので、あくまで傾向があると認識するものとなります。
グッドイナフ・ハンドブックに付属している記録用紙には、MA換算表とIQ算出法も記載されており、1枚あれば検査から評価まで対応可能です。
簡単にできて、おおよその精神年齢やIQも出せる使いやすい知能検査ですね。
グッドイナフ人物画知能検査と発達障害の関連性
グッドイナフ人物画知能検査は、子どもの発達や精神の遅れやおよその知的能力を把握できる検査です。ほかにも、検査自体を実施できない、または「描きたくない」との拒否が見られた際は、自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠陥/多動障害(ADHD)などの発達障害を判断する材料にもなります。
人物像の描画には、人物の部位を正確に捉える力や絵を描くための筋力や集中力などが求められます。グッドイナフ人物画知能検査の実施により、知能や運動発達のレベルが年齢相応であるかを判断するきっかけになるでしょう。
グッドイナフ人物画知能検査によって発達の遅れに気づいたら、より詳細に知的能力を評価できる検査を検討してみましょう。「田中ビネー知能検査V」や「WISC検査」などは、いくつかの分野に分けて知的能力を評価できるため、その子どもの得意不得意を把握できます。
「必要なら他の検査もやってみる」という感じで、きっかけにしてみるのも良いでしょう。
ほかの心理検査については、こちらの記事もあわせてお読みください。
まとめ
グッドイナフ人物画知能検査は、子どもの知的能力や精神発達のレベルを簡易的に確認できる検査です。人物画を描くテストなので、小さな子どもや聴力や言語などに障害のある子どもでも実施しやすいのが特徴です。
ただし、精神発達の程度や発達障害は、ひとつの検査結果から判断できるものではありません。正しい診断には、専門医による検査や診断が必要です。
子どもの発達に疑問があるなら、専門の医療機関や各自治体の発達支援センターなどに相談してみましょう。
【参考文献】
[1]千葉テストセンター心理検査専門所/心理検査 DAMグッドイナフ人物画知能検査 新版
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=253
心理検査出版 三京房/グッドイナフ人物画知能検査
https://www.sankyobo.co.jp/adamr.html
[2]厚生労働省e-ヘルスネット/知能指数 / IQ(ちのうしすう)
[3]厚生労働省/知的障害児(者)基礎調査:調査の結果
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html