ウェクスラー式知能検査についてわかりやすく解説|種類と結果の見方
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
ウェクスラー式知能検査とは、ウェクスラーが開発した知能検査のことで、知的能力を調べるために使用されます。
今回はウェクスラー式知能検査の種類、結果の見方について解説します。
他の知能検査は、下記の記事よりご覧ください。
ウェクスラー式知能検査の種類
ウェクスラー式知能検査とは、1939年にウェクスラーが開発した知能検査です。知能検査では、被験者(テストを受ける人)の知的能力を調べることができます。[1]
ウェクスラー式知能検査には、3種類あります。
- WAIS-Ⅳ(成人用)
- WISC-Ⅴ(児童用)
- WPPSI-Ⅲ(幼児用)
WAIS-Ⅳの対象年齢は、16歳0ヶ月〜90歳11ヶ月です。改訂前の『WAIS-Ⅲ』からの変更点は「適用年齢の上限が上がった」「検査時間が短縮した」などがあります。[2]
WISC-Ⅴでは、5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月が対象です。改訂前の『WISC-Ⅳ』からは、検査内容や指標が変更になりました。[3]
WPPSI-Ⅲの対象年齢は、2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月です。[4]
年齢に応じた検査があるので、そのときに合った検査ができますね♪
ウェクスラー式知能検査の方法
ウェクスラー式知能検査では、図形、数字、言語、絵などを用いて、さまざまなテストをおこないます。[1]
試験時間は、検査の種類によって異なります。
- WAIS-Ⅳ:60~90分[2]
- WISC-Ⅴ:45~80分[3]
- WPPSI-Ⅲ:40~70分[4]
WPPSI-Ⅲは、2歳6ヶ月〜3歳11ヶ月と、4歳0ヶ月〜7歳3ヶ月の2部構成です。そのため、検査内容や試験時間がそれぞれ違います。
試験時間は、2歳6ヶ月〜3歳11ヶ月では40分、4歳0ヶ月~7歳3ヶ月では50~70分となります。
小さいうちは1,2歳差でも、成長が目まぐるしいので2部構成でそれぞれに合った検査があります。
ウェクスラー式知能検査の結果の見方
ウェクスラー式知能検査の結果の見方は、種類によって異なります。
WAIS-Ⅳ、WISC-Ⅴ、WPPSI-Ⅲのそれぞれを見ていきましょう。
WAIS-Ⅳ
WAIS-Ⅳは10個の基本検査と、5個の補助検査で構成されます。
検査の結果から、特定の認知領域の知能を表す4つの合成得点「言語理解指標」「近く推理指標」「ワーキングメモリー指標」「処理速度指標」と、全般的な知能を表す合成得点「全検査IQ」を算出します。
全検査IQ(FSIQ) | ||||
合成得点 | 言語理解指標(VCI) | 知覚推理指標(PRI) | ワーキングメモリー指標(WMI) | 処理速度指標(PSI) |
基本検査 | ・類似 ・単語 ・知識 | ・積木模様 ・行列推理 ・パズル | ・数唱 ・算数 | ・記号探し ・符号 |
補助検査 | ・理解 | ・バランス(16~69歳のみ)・絵の完成 | ・語音整列(16~69歳のみ) | ・絵の抹消(16~69歳のみ) |
補助検査をしなくても、基本検査だけですべての合成得点を求めることが可能です。
WISC-Ⅴ
WISC-Ⅴには、10個の主要下位検査と、6個の二次下位検査の2つのカテゴリーがあり、以下の11個の合成得点を算出します。
以下の表は、10個の主要下位検査と合成得点をまとめたものです。
指標レベル | 合成得点 | 検査 |
(全般的な知能を表す) | 全検査IQ全検査IQ(FSIQ) | |
主要指標 (特定の認知領域の知能を表す) | 言語理解指標(VCI) | ・類似 ・単語 |
視空間指標(VSI) | ・積木模様 ・パズル | |
流動性推理指標(FRI) | ・行列推理 ・バランス | |
ワーキングメモリー指標(WMI) | ・数唱 ・絵のスパン | |
処理速度指標(PSI) | ・符号 ・記号探し | |
補助指標 (子どもの認知能力やWISC-Vの成績について 付加的な情報を提供する) | 量的推理指標(QRI) | ・バランス |
聴覚ワーキングメモリー指標 (AWMI) | ・数唱 | |
非言語性能力指標(NVI) | ・積木模様 ・パズル ・バランス ・絵のスパン ・符号 | |
一般知的能力指標(GAI) | ・類似 ・単語 ・積木模様 ・行列推理 ・バランス | |
認知熟達度指標(CPI) | ・数唱 ・絵のスパン ・符号 ・記号探し |
「全検査IQ」「主要指標」「補助指標」の3つの指標レベルの結果から、知能を測定します。
WPPSI-Ⅲ
WPPSI-Ⅲのうち、2歳6ヶ月〜3歳11ヶ月では4個の基本検査を実施し、「全検査」「言語理解指標」「知覚推理指標」「語い総合得点」を算出します。
2歳6か月~3歳11か月の下位検査は、以下の通りです。
言語理解指標(VCI) | 知覚推理指標(PRI) | 語い総合得点(GLC) |
・ことばの理解 ・知識 | ・積木模様 ・組合せ | ・絵の名前* ・ことばの理解 |
4歳0か月〜7歳3か月では5個の基本検査を実施し、「全検査」「言語理解指標」「知覚推理指標」「処理速度指標」「語い総合得点」を算出します。
4歳0か月~7歳3か月の下位検査は、以下の通りです。
言語理解指標(VCI) | 知覚推理指標(PRI) | 処理速度指標(PSI) | 語い総合得点(GLC) |
・知識 ・単語 ・語の推理 ・理解* ・類似* | ・積木模様 ・行列推理 ・絵の概念 ・絵の完成* ・組合せ* | ・符号 ・記号探し* | ・ことばの理解** ・絵の名前** |
※太字は全検査IQの算出に必要な基本検査です。
※*補助検査、**オプション検査です。
5歳0ヶ月〜7歳3ヶ月の子どもは、認知能力や背景情報によって、WPPSIかWISCを選択できます。認知能力が平均を下回る可能性があったり、言語障害があったりする子どもには、適切な臨床的判断のもとWPPSI-Ⅲの実施が推奨されています。
ウェクスラー式知能検査の注意点
ウェクスラー式知能検査は、試験時間が長く被験者に負担をかける可能性があります。
WAIS-Ⅳにおいて、基本検査・補助検査を合わせると試験時間は最大で90分です。そのため、知的発達が遅れている方に使用するのは難しいとされています。[5]
高齢者が検査を受けることも、身体的・心理的の負担が大きいと懸念されています。検査目的によっては、実施する下位検査を選択する場合も、視野に入れてもらいましょう。[6]
検査時間の関係で実施が難しいときは、主治医の先生に相談してみましょう。
まとめ
ウェクスラー式知能検査では、年齢に合わせた種類の検査を受けることで、大人や子どもの知能を調べることができます。
おおかみこころのクリニックでは、WAIS-Ⅳを実施しています。検査を希望される方は、以下のお問い合わせページからお願いいたします。
【参考文献】
[1]面白いほどよくわかる!臨床心理学,下山 晴彦,西東社
https://amzn.asia/d/bonNkMY
[2]WAIS™-IV知能検査 | 製品一覧 | 心理検査を探す | 日本文化科学社
https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wais4.html
[3]WISC™-V知能検査 | 製品一覧 | 心理検査を探す | 日本文化科学社https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wisc5.html
[4]WPPSI™-III知能検査 | 製品一覧 | 心理検査を探す | 日本文化科学社https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wppsi3.html
[5]精神科診療におけるWAIS-Ⅳの有用性についてー成人期の発達障害に関する検討ーhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/keidaironshu/73/6/73_63/_pdf
[6]日本版WAIS-Ⅳー高齢者に対する使用をめぐってー
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcgp/4/0/4_36/_pdf/-char/ja