M-CHAT-Rとは|検査内容や流れ、結果の活用方法について解説

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

M-CHAT-Rとは

M-CHAT-Rは、16〜30ヶ月の乳幼児を対象とした自閉症チェックリストです。

自閉スペクトラム症の可能性にまだ気付かれていない乳幼児の集団から、リスクの高い子どもを見つけることを目的としています。1歳半検診や2歳相談会などで使用される機会が多いでしょう。

M-CHAT-Rで「自閉スペクトラム症の可能性が高い」と判定された子どもは、1〜2ヶ月後のフォローアップ調査でさらに詳しい聞き取りがされます。[1]

検査後に詳しく聞き取りをすることで、より明確にできるでしょう。

他のASDの検査は、下記の記事よりご覧ください。

M-CHAT-Rの質問項目

M-CHAT-Rは、子どもの普段の様子について保護者に質問します。

全部で20項目あり、社会性発達に関する項目と自閉スペクトラム症の特徴に関する項目に分かれています。(表1)

社会性発達に関する項目共同注意(他者と同じものに注意を向けるか)
模倣(他者を真似するか)
社会的参照(物事を判断するときに親の反応を見るか)
対人的関心(他の子どもへの関心があるか)
対人情動反応性(関わりの中で感情的な反応を見せるか)
自閉スペクトラム症に関する項目音への過敏性(騒音への過剰な反応があるか)
常同性(特徴的な動きがみられるか)
感覚没頭(感覚刺激に集中するか)
表1:M-CHAT-Rの質問項目

1歳半頃までに社会性発達に関する項目をクリアできない場合、発達に問題があるとみなされます。自閉スペクトラム症に関する項目にあてはまる場合は、年齢に関係なく発達の問題が疑われます。

ただし、自閉スペクトラム症に特徴的な行動は、通常の発達過程でも一時的にあらわれる点に注意しましょう。

自閉スペクトラム症かどうかを見極めるためには、特徴的な行動が「持続するか」「成長とともに消失するか」を注意深く観察することが大切です。[2]

成長過程の問題なのか、自閉症の症状によって生じているのかを見ていきます。

M-CHAT-R実施の流れ

M-CHAT-R
図1:M-CHAT-Rの流れ

M-CHAT-Rは、2段階のスクリーニング検査です。

第1段階のスクリーニングは、子どもの普段の様子について保護者に質問します。

この段階で自閉スペクトラム症が疑われる子どもは、第2段階のスクリーニング(フォローアップ調査)に進みます。

乳幼児期は発達の個人差が大きいため、フォローアップ調査は第1段階のスクリーニングから1〜2ヶ月あけて複数回実施されます。自閉スペクトラム症がない場合は、この間に正常な発達がみられるためです。

一方、自閉スペクトラム症がある場合は短期間では様子が変わりません。そのため、1〜2ヶ月の経過を観察して判定の参考にします。

フォローアップ調査でも自閉スペクトラム症の可能性が高いと判定された場合は、より詳しい検査へと進みます。[1][2]

小さい頃の成長は個人差が大きいので、周りと比べすぎるのもよくありません💦

M-CHAT-Rの結果

M-CHAT-Rの結果は「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3段階に分かれています。(表2)

スクロールできます
評価合計スコア対応
低リスク0~2点観察により自閉スペクトラム症の可能性がなければ、追加の処置は必要ない
中リスク3~7点フォローアップ調査を実施する
フォローアップ調査のスコアが0~1:観察により自閉スペクトラム症の可能性がなければ、追加の処置は必要ない
フォローアップ調査のスコアが2以上:追加の発達検査で診断的評価や早期介入の準備を行う
高リスク8~20点フォローアップ調査なしで診断的評価や早期介入の準備を行う
表2:M-CHAT-Rの結果

M-CHAT-Rは「より多くの自閉スペクトラム症を見つける」ことを目的としています。

そのため、自閉スペクトラム症ではない子どもが「中リスク」や「高リスク」と判定される「偽陽性」も多く見られます。

M-CHAT-Rで自閉スペクトラム症の可能性があるとされた場合は、追加の検査や医師の診察で診断を確定させましょう。[1]

主治医の先生に相談しましょう

M-CHAT-Rの活用方法

M-CHAT-Rを活用することで、子どもの発達を促すことができます。

今回は、以下3つの関わりについて解説します。

ひとつずつ見ていきましょう。

子どもが喜ぶ遊びを見つけて繰り返す

子どもが喜ぶ遊び(「高い高い」や「いないいないばぁ」など)を繰り返し楽しみましょう。

遊びを通して大人に「もっとやってほしい」という気持ちが高まります。

その結果、長い時間遊びを楽しんだり人への働きかけが増えたりするでしょう。

大人は疲れますが、子どものは大喜びです♪

子どもの行動や遊びを真似する

子どもがどのような行動や遊びをしているか観察し、真似してみましょう。

真似を通して、大人への注目や関わりが増えるとされています。

「この人は何をしたいのだろう?」

「同じようにしてみたらどうなるのだろう?」

このように、相手の気持ちを考えたり行動の意味を共有したりするきっかけを作れるでしょう。[3]

子どもができなかった項目の手本を見せる

M-CHAT-Rで子どもができなかった項目のお手本を見せましょう。

お手本を見せることで、他者と同じものに注目する「共同注意」の機会を作れます。

おもちゃの使い方のお手本を見せるのもよいでしょう。

子どもに無理やり真似させる必要はありません。

繰り返しお手本を見せるうちに子どもが自発的に真似するようになり、成長発達を促す効果が期待できます。

まとめ

M-CHAT-Rは、16〜30ヶ月の乳幼児を対象とした自閉スペクトラム症のチェックリストです。

子どもの普段の様子について保護者に質問し「正常な社会性発達がみられるか」や「自閉スペクトラム症の特徴があるかどうか」を確認します。

結果は「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3段階で示されますが、M-CHAT-Rには偽陽性(自閉スペクトラム症がない子どもが「中リスク」「高リスク」と判定されること)が多い点に注意しましょう。

M-CHAT-Rの結果は、子どもの成長を促すきっかけとして活用できます。

保護者が意識して丁寧に関わることで、子どもが対人的コミュニケーションに触れる機会を増やすことができます。

M-CHAT-Rを通して子どもの特性に気づき、発達の助けになる関わりを取り入れていきましょう。

参考文献
[1]改訂 乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(フォローアップ調査付き)(M-CHAT-R/F)TM(©2009 Robins, Fein, & Barton)
https://mchatscreen.com/wp-content/uploads/2021/08/M-CHAT-R_F_Japanese.pdf

[2]臨床心理検査の現在(5)発達障害関連②M-CHAT|3.M-CHATの項目の内容

[3]赤ちゃんの模倣行動の発達 ―形態から意図の模倣へ―5.意図模倣
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/29/1/29_1_3/_pdf

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