新版S‐M社会生活能力検査でわかる3つのこと|特徴や検査のやり方を解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
子どもの知能や能力を把握するための検査のなかでも「新版S‐M社会生活能力検査」は「社会生活を自立して送るための能力(社会生活年齢)」を確認できる検査です。
この記事では、新版S‐M社会生活能力検査について解説します。検査を受けたあとの流れもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
他の発達検査については、下記の記事よりご覧ください。
新版S‐M社会生活能力検査では「社会生活年齢」を確認できる
新版S‐M社会生活能力検査では、子どもの普段の様子から社会生活における発達能力を把握できます。そのため、生活での行動や言動が検査の対象です。
S-MとはSocial-Maturityの略語であり、「社会的成熟度」との意味を持ちます。社会生活能力とは、自立して社会に参加するために必要な能力のことです。社会生活能力を知ることで、普段の生活にどのくらい適用できるのかを把握できます。
対象年齢は乳幼児~中学生(目安は1~13歳)です。[1]現在第3版まで改訂されており、現代の子どもに合うよう換算表が新しく作成されました。[2]
本来の子どもの様子で検査するので、本当の能力を知ることができますね♪
新版S‐M社会生活能力検査でわかること
新版S‐M社会生活能力検査は、学習能力ではなく社会生活における能力を把握できるのが特徴です。
新版S‐M社会生活能力検査では、子どもに対する以下のことがわかります。
- 社会生活における発達課題
- 発達遅れの有無
- 子どもにあった支援や活動目標
当検査は後述する6つの分野ごとに評価するため、年齢における社会生活能力をこまかく確認できます。これにより、自閉症といった発達障害を見つけるきっかけになるだけでなく、社会生活での自立を目指した支援に役立てることも可能でしょう。
通常子どもは、成長するにつれ社会に順応していきます。しかし、発達や知的に遅れがある子どもに関しては、大人による適切な支援や学習指導が重要となるのです。当検査によって領域別の特徴を捉え、発達課題を明確化することで、今後の支援計画の質を向上させられます。[3]
社会生活での発達課題を把握すると、集団生活で必要な支援も見えてきますね。
新版S‐M社会生活能力検査を構成する6つの領域
新版S‐M社会生活能力検査は、身辺自立、移動、作業、意志交換(コミュニケーション)、集団参加、自己統制作業の6つの領域に分かれています。[1]
それぞれの領域を見てみましょう。
領域 | 特徴 | |
身辺自立 | SH(Self-Help) | 日常生活を自立するための能力(食事や着替え、排泄など) |
移動 | L(Locomotion) | 目的地に行くための能力(道路の渡り方や公共交通機関の乗り方など) |
作業 | O(Occupation) | 作業を進めるうえで必要な能力(道具の使い方や作業動作など) |
意志交換(コミュニケーション) | C(Communication) | 言葉や文字による意思疎通(コミュニケーション)の能力 |
集団参加 | S(Socialization) | 社会に参加するための能力(ルールの理解や順番待ちなど) |
自己統制作業 | SD(Self-Direction) | 図形や数の理解や処理といった数学的思考や、問題解決のための思考能力 |
上記の領域ごとに問題が用意されており、全部で129項目の質問で構成されています。領域ごとに検査結果を分析できるため、社会生活において苦手なことや能力が遅れている部分が一目瞭然です。
回答結果をもとに、領域別の社会生活年齢(SA)と社会生活指数(SQ)が算出できます。これによって、それぞれの領域による能力の差を把握することも可能です。
普段の生活や学校生活だけでは分からない視点で能力を評価することで、具体的な支援内容を検討することにつなげられるでしょう。ただしこの検査では、知的能力を評価することが目的ではないため、ほかの知能検査と組み合わせて実施されることもあるようです。
領域ごとに検査することで分析しやすくなります。
新版S‐M社会生活能力検査のやり方
検査は受ける本人(子ども)ではなく、普段の生活を知る保護者や学校のクラス担任などが回答します。そのため、本人が検査に集中できない、不安が強く回答できないなどの状況であっても、検査を進められるのが利点です。本人がうまく回答できず、ほかの試験が受けられない場合に、当検査が選択されることがあります。
質問に対して〇×で回答するだけなので、検査時間はおよそ15分ほどです。〇は「できる」「機会があればできると思う」、×は「できない」「機会があってもできないと思う」として、どちらか該当するほうを選択します。質問は、「簡単な命令がわかる」「コップを持ってひとりで飲む」など、日常生活に関連したものが多いです。
最後に各領域の合計点を計算して、社会生活年齢(SA)と社会生活指数(SQ)を算出します。すぐに回答を評価できるのも、特徴の一つです。[1]
実施時間も短く、〇✕形式で答えやすいですね!
新版S‐M社会生活能力検査を受けたあとにすべきこと
新版S‐M社会生活能力検査などの知的検査や心理検査は、受けて終わりではありません。検査によって発達の遅れに気づいた場合には、専門(発達障害をあつかう)の医療機関や児童発達支援センターなどに相談し、今後について話し合うことが大切です。
発達障害を持つ子どもに対しては、早期に療育を始めることが重要です。療育とは、発達の遅れや障害がある子どもに対する支援を指します。個々の特性を理解したうえで、困りごとの解決や将来の自立などに向けて、さまざまな視点から支援内容を検討します。[4]
うまく社会生活が送れずにいると、本人が生きづらさや困難をストレスに感じてしまうことも。ストレスを受けている状態が長く続くと、引きこもりや意欲の低下などの二次障害につながるおそれがあるため注意が必要です。[5]
また療育は、両親だけが関わるのではなく、保育所や学校と協力してあらゆる角度から支援することが大切です。検査結果は今後の方向を決める大きな指標となり、より具体的な支援内容を考えるうえで大いに役立つでしょう。さらに、家庭と学校との共通認識にもつながります。
困ったことや悩みがあれば、まずは専門機関に相談してみよう。
まとめ
新版S‐M社会生活能力検査は、社会生活の自立に必要な能力を把握するための検査です。6つの領域に分けて能力を確認でき、発達の遅れや子どもに合った支援内容を知るきっかけにつながります。
検査を受けるには、専門の医療機関や心理相談室、各自治体の特別支援教育課などに相談してみましょう。
【参考文献】
[1]千葉テストセンター心理検査専門所/心理検査 S-M社会生活能力検査 第3版
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=238
[2]サクセス・ベル株式会社/S-M社会生活能力検査 第3版
https://saccess55.co.jp/kobetu/detail/sm.html
[3]株式会社 関口心理テストセンター/S-M社会生活能力検査 第3版
https://sekiguchi-test.co.jp/products/detail/62
[4]日本福祉大学 リカレント教育/自閉スペクトラム症(ASD)への療育とは?治療法やトレーニングについて【専門家監修】
https://www.n-fukushi.ac.jp/recurrent/topics/2023101303/
[5]内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン/発達障害って、なんだろう?
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/