ADI-Rとは|質問項目や評価、活用方法を解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
ADI-Rとは
ADI-Rとは、自閉スペクトラム症の診断評価のための検査です。
自閉スペクトラム症の疑いがある2歳0ヶ月以上〜成人を対象としています。
いずれの場合も養育者に対象者(子ども)の様子について質問する「他者評定式」をとります。
ADI-Rの特徴は、本人の「過去」に注目して評価する点です。
質問内容のほとんどは過去の行動に関するものであり、本人や家族の生活にどの程度の支障をきたしたかが重要視されます。
検査時間(回答や評価、採点)は1時間半〜2時間半程度です。[1][2]
他者評定式の検査は「うちの子…検査できるかな」という心配がなく実施できますね!
ADI-Rの質問項目
ADI-Rの質問項目は、以下の6つの領域に関する93項目です。(表1)
領域 | 質問内容 |
①対象者の背景情報 | 家族構成、教育(学校、就学前)、診断、薬物治療など |
②行動の全体像を捉える導入質問 | 現在における心配ごと |
③初期発達と重要な発達指標に関する情報 | 言語や行動の異常に両親が初めて気づいた兆候・年齢など |
④言語・その他のスキルの獲得と喪失 | 言葉を話した年齢、目的にかなった手の運動など |
⑤自閉スペクトラム症に関する機能領域(「言語と意思伝達機能」、「社会的発達と遊び」、「興味と行動」) | 言葉の使い方、遊び方、限られた興味や繰り返す行動など |
⑥その他の臨床的意義のある行動全般 | 養育者や家族以外に対する攻撃性など |
これらの質問について、過去の対象者(子ども)の様子を振り返りながら4段階(0〜3点)で回答します。
すべての質問で「どの時点の様子について回答するのか」が指定されています。
- 「うなずき」に関する質問:子どもが4〜5歳のときに会話の中で頷いていたか
- 「普通でない没頭」に関する質問:現在までの生活の中で繰り返す普通でない没頭(生活に支障をきたすほどの過剰な集中)が見られたか
このように「4〜5歳」と「今まで(現在に至るまでのすべての年齢)」のどちらかが設定されています。[2]
細かく設定があるので詳しく検査ができるでしょう。
ADI-Rの評価
質問の回答結果をもとに、以下の4つの領域に異常があるかどうかを評価します。
A. 対人相互性の質的障害
B. 意思伝達の質的障害
C. 行動や興味の制限と反復的・常同的行動様式
D. 3歳以前の発症
93項目の質問のうち自閉スペクトラム症に強く関連する42項目は、A〜Dのいずれかに振り分けられています。
質問の合計得点が各領域のカットオフ値(異常があるかどうかの境界値)を超えた場合、その領域には異常があると判定されるのです。
例)「A.対人相互性の質的障害」のカットオフ値:10点
→Aに関連する回答の合計が15点の場合:子どもに「対人相互性の質的障害」がみられると判定
A、B、C、Dのすべての領域の得点がカットオフ値を超えた場合「自閉症が強く示唆される」と判定されます。
一方で、カットオフ値を下回る領域がひとつでもある場合は「自閉症が強く示唆されるわけではない」と解釈されます。
ただし、この結果だけでは診断を確定させられないため、診断の確定には医師の診察が必要です。[2]
1つの検査だけで判断するのはキケンです。
先生に相談し、総合的にみて判断する必要があります。
ADI-Rの注意点
ADI-Rの注意点として、養育者の考え方や記憶力によって得点に偏りが生じる点があげられます。
偏りが生じやすいのは以下の2つのパターンです。
- 幼少期の子どもの行動をすべて自閉スペクトラム症に関連づけるパターン
- 子どもの幼少期をまったく思い出せないパターン
①では得点が高くなる(自閉症と判定されやすい)傾向があり、②では得点が低くなる(自閉症と判定されにくい)傾向があります。[2]
ADI-Rの活用方法
ADI-Rの活用方法として以下の2つが挙げられます。
ひとつずつ解説します。[2]
家族の不安を軽減する
ADI-Rは、家族の不安を軽減するために活用できます。
自閉症の診断を告げられるだけでは「自閉症と診断された理由がわからない」「診断名はついたけど、子どもの状態がよくわからない」と家族が不安を抱きやすいでしょう。
ADI-Rでは、医療者と養育者で情報を共有したり、子どもの行動を数値化したりしながら子どもの状態を評価します。
検査を通して子どもの行動を客観的に捉えるため、子どもの状態や診断に対する納得感が生まれます。
不安の軽減は医療者への信頼感にもつながるため、その後の治療に対する取り組みも高まりやすいでしょう。
医療者と一緒にお子様に合った支援を考えていきましょう。
子どもへの理解を深める
ADI-Rは、子どもへの理解を深めるために活用できます。
検査で子どもの発達歴や行動の特徴を細かく振り返ることで、育児中に感じた違和感と向き合えるのです。
たとえば「言葉が遅い」「視線が合いづらい」などの自閉スペクトラム症の特徴は、異常なのか個人差の範囲なのか判断しづらいことがあります。
ADI-Rでは、過去の特徴をひとつずつ数値化するため「これは発達の遅れなんだ」「これは普通でもみられることなんだ」と子どもの発達への理解を深められます。
検査結果では子どもが苦手な分野も数値化されるため、取り組むべき課題も明確化できます。
検査を通して子どもの状態と課題を理解することで、療育や育児にも前向きに取り組めるようになるでしょう。
数値化されることで受け止めやすくもなるでしょう。
まとめ
ADI-Rは、自閉スペクトラム症の疑いのある2歳以上を対象とした診断評価のための検査です。
ADI-Rの特徴は、対象者の「過去」に焦点を当てて自閉スペクトラム症の評価をする点です。
検査内容も対象者の過去の行動に関するものが多く、養育者の特性(「子どものすべての行動を自閉スペクトラム症に関連付ける」「子どもの幼少期を思い出せない」)によっては結果に偏りが生じやすい点に注意しましょう。
検査を通して子どもの状態を客観的に評価し、家族の不安を軽減したり子どもへの理解を深めたりするときに活用できます。
子どもの状態と課題を明確化し診断への納得感を得ることで、今後の治療や療育、育児への取り組みを前向きなものにしてくれるでしょう。
参考文献
[1]金子書房
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b183697.html
[2]発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン|自閉症診断面接改訂版(ADI-R)日本語版
https://www.as-japan.jp/j/file/rinji/assessment_guideline2013.pdf