遠城寺式乳幼児分析的発達検査とは|特徴と結果の見方について解説

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

遠城寺式乳幼児分析的発達検査とは、心身に障害のある子どもの発達状況を調べる検査です。

今回は遠城寺式乳幼児分析的発達検査の特徴、結果の見方などについて解説します。

他の発達検査については、下記の記事をご覧ください。

目次

遠城寺式乳幼児分析的発達検査の特徴

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は、1960年に遠城寺宗徳氏、梁井昇両氏によって発表されました。[1]

子どもの発達傾向を広く分析し、その子の個性を発見できる発達検査です。心身に障害のある子どもの発達状況を、簡単に検査できるのも特徴です。発達グラフにあらわした検査結果から、発達障害の部位や程度を理解できます。[2]

発達検査とは、子どもの知的発達の問題を見つけるための検査です。子どもの年齢や検査目的によって、さまざまな種類の検査があります。[3]遠城寺式乳幼児分析的発達検査のほかにも「新版K式発達検査」「新版S‐M社会生活能力検査」「MSPA」などがあります。

遠城寺式乳幼児分析的発達検査の目的

遠城寺宗徳氏と梁井昇両氏は、遠城寺式乳幼児分析的発達検査の目的を「子どもの発達障害の部位や程度を的確に把握すること」としています。

心身に障害のある子どもに対して適切な治療をおこなうには、子どもの発達についての知識と理解が必要です。障害のある子どもは「運動」「言語」「知能」などの発達はそれぞれ均一ではありません。遠城寺式乳幼児分析的発達検査を利用すれば、発達の程度の差を把握できるのです。[1]

子どもを対象とする発達検査では、「知能」だけでなく「運動」「言語」なども含めて検査をします。指標となるのが、検査結果をあらわす「発達指数(DQ)」と結果が何歳何ヶ月程度の水準に該当するか「発達年齢(DA)」です。子どもが実際の年齢に対して、どれくらい発達できているかを確認できます。[3]

小さい子どもは特に発達の差が大きいですね。

遠城寺式乳幼児分析的発達検査のやり方

遠城寺式乳幼児分析的発達検査のやり方は、検査者が選んだ項目に対して、子どもがその項目を実施できるかを見ていきます。たとえば「2~3歩歩く」「ボールを前に蹴る」などの項目があります。

検査項目は、以下の6つの領域です。[1]

  • 運動:「移動運動」「手の運動」
  • 社会性:「基本的習慣」「対人関係」
  • 言語:「発語」「言語理解」

以下の表は具体例となっています。[4]

スクロールできます
6ヶ月1歳2ヶ月2歳6ヶ月4歳
移動運動寝返りをする2~3歩あるく足を交互に出して階段を上がる片足で数歩飛ぶ
手の運動手を出してものをつかむコップの中の小粒を取り出そうとするまねて直線を引く紙を直線にそって切る
基本的習慣ビスケットなどを自分で食べるお菓子の包み紙を取って食べるこぼさずにひとりで食べる入浴後、ある程度自分で身体を洗う
対人関係鏡に映った自分の顔に反応する褒められると同じ動作をくり返す友だちと喧嘩をすると言いつけにくる母親に断って友だちの家に遊びに行く
発語人に向かって声を出す2語言える自分の姓名を言う両親の姓名、住所を言う
言語理解なし「おいで」「ちょうだい」などの要求を理解する「大きい」「小さい」の意味が分かる本、鉛筆などを指さしできる

年齢によって区分が分けられていて、1歳までは1ヶ月ごと、1歳から1歳6ヶ月までは2ヶ月ごと1歳6ヶ月から3歳までは3ヶ月ごと3歳から4歳8ヵ月までは4ヶ月ごととなっています。どの年齢区分においても、発達指数が10になるように設定されているのです。[1]

遠城寺式乳幼児分析的発達検査の結果の見方

遠城寺式乳幼児分析的発達検査の結果は、項目ごとに出来たら「P」、出来なかったら「F」、半分出来たら「△」をつけます。

項目につけた印から発達指数=発達年齢÷実際の年齢×100を計算します。

たとえば4歳の子どもが、年齢区分4歳の項目にある「片足で数歩飛ぶ」ができた場合、発達指数=48ヶ月÷48ヶ月×100=100となるのです。

領域ごとの発達指数の平均が、全体の発達指数となります。

先生が計算してくれるので大丈夫ですよ!

遠城寺式乳幼児分析的発達検査の注意点

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は、1960年に発表されて以来、1977年の一度しか改訂がおこなわれていません。そのため項目によっては、時代や子どもに合わせて検討すべきとされています。[1]

実際の質問項目にある「ブランコに立ちのりしてこぐ」「友だちと喧嘩をすると言いつけにくる」などは、未経験の割合が高い項目です。これらの項目は4歳4ヶ月までの年齢区分にありますが、安全のために保護者が子どもに経験させる機会が減っている可能性があると考えられています。

子育て環境の変化ですね。

また「手の運動」の領域において「ボタンをはめる」というボタンを使う項目があります。現在では、ボタンのある洋服から着脱しやすい洋服へと変わっている可能性があるでしょう。このように時代や子どもが使うものの変化に対応して、検査項目を作成する必要があるのです。[5]

まとめ

遠城寺式乳幼児分析的発達検査とは、心身に障害のある子どもの発達状況を理解するための発達検査です。

おおかみこころのクリニックでは、遠城寺式乳幼児分析的発達検査を実施していませんが、その他の知能検査、性格検査などを受け付けています。

検査を希望される方は、以下のお問い合わせページからお願いいたします。

【参考文献】
[1]遠城寺式乳幼児分析的発達検査法について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/23/2/23_45/_pdf

[2]㈲教育評価研究所|遠城寺式乳幼児分析的発達検査
http://www.test.co.jp/products/detail.php?product_id=251

[3]面白いほどよくわかる!臨床心理学,下山 晴彦,西東社
https://amzn.asia/d/bonNkMY

[4]新潟県医師会 乳幼児健康診査の手引 改訂第5版
https://www.hapiny.niigata.jp/download/h27_sannkousiryou5.pdf

[5]発達におけるスクリーニング検査開発に向けた予備的研究
https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/record/6865/files/CP2100_0023.pdf

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