うつ病の心理検査(GSD・SASS-J・DSRS・GDS₋15₋J・SRQ-DⅡ)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

うつ病の心理検査

うつ病の心理検査は、うつ病の有無や重症度を測るために使用されます。

心理検査の結果はあくまでも心の状態を知る手掛かりであるため、診断の確定には医師の診察が必要です。

今回はGSD、SASS-J、DSRS、GDS₋15₋J、SRQ-DⅡについて解説します。

セルフチェックをする場合は、自分の状態を客観的に知り「疲れてるからちょっと休もう」「誰かに相談した方がいいかも」と対策をたてるために使用しましょう。

セルフチェックをして不安になりそうな方は「質問項目」についての解説は読み飛ばし、検査の概要だけに目を通してくださいね。

うつ病に関する他の心理検査については、下記の記事をご覧ください。

GSDグローバルうつ病評価尺度

GSDグローバルうつ病評価尺度は、うつ病の有無や類型(メランコリー型か非定型か、どちらでもないか)を判断する検査です。

以下の二段階においてうつ病について判定します。

  • 第一段階(17項目):うつ病であるかどうか
  • 第二段階(13項目):うつ病の類型(メランコリー型か非定型か、どちらでもないか)

総計30問あり、重症度についても測定できる簡単さが特徴です。

自己記入式(患者さん自身が記入する形式)と観察者記入式(精神科医や臨床心理士などの専門家が面接する形式)が設けられています。

どちらか一方のみの実施も可能ですが、両方を比較することで患者さんが訴えるうつ症状が妥当なものであるかを検討しやすくなります。[1]

活用場面

GSDグローバルうつ病評価尺度の活用場面は以下のとおりです。[1]

  • 精神科初診時におけるうつ病の重症度測定
  • 病院や企業におけるうつ病のスクリーニング(病気の疑いがある人を見つける検査)
  • 非定型うつ病のスクリーニング、重症度測定

従来の心理検査では評価が難しかった非定型うつ病にも対応しているため、幅広い対象者に適応できます。

結果

GSDグローバルうつ病評価尺度の結果は以下の二段階で評価されます。[2]

■第一段階:うつ病であるかどうか(17項目)
第一段階の総得点は17〜51点であり、うつ病と判断されるのは30点以上のときです。

■第二段階:うつ病の類型(13項目)
総得点は-13点~⁺ 13点で評価され、以下のように分類されます。

  • ‐3 点以下:「非定型 (Atypical) 」
  • +3 点以上:「メランコリー型 (Melancholic)」
  • -2 点以上+2 点以下:「どちらでもない (Neither/Nor)」

第一段階でうつ病と判定された場合、第二段階の評価と合わせた結果は以下のとおりです。

  • 「非定型うつ病」
  • 「メランコリー型うつ病」
  • 「どちらでもないがうつ病」

第一段階でうつ病と判定されなかった場合は、第二段階の結果により以下のように判定されます。

  • 「うつ病ではないが、非定型病像を呈している」
  • 「うつ病ではないが、メランコリー病像を呈している」
  • 「うつ病ではないが、メランコリー型、非定型のいずれもの病像も呈していない」

以上は、自己記入式も観察者記入式でも同様です。

SASS-J 自記式社会適応度評価尺度

SASS₋J 自記式社会適応度評価尺度は、うつ病の社会復帰に特化した心理検査です。

産業医学や就労準備支援でよく使用されます。

SASS-Jで評価する社会機能は、以下に関する20項目です。[3]

  • 対人関係(家族や他人などとの人間関係)
  • 興味や好奇心(仕事や人間関係、社会活動)
  • 自己認識(自身や周囲に対する認識)

得点が高いほど社会適応に対する自己評価が高い状態と判断されます。

10分程度で実施できる簡便さが特徴的です。

検査時間が短いと実施しやすいですね!

検査内容

SASS₋J 自記式社会適応度評価尺度の質問項目は以下のとおりです。[4]

  • 今の仕事に興味がありますか?
  • あなたは今の仕事や家事を楽しんでやっていますか
  • あなたは趣味・余暇に興味がありますか
  • あなたの余暇は充実していますか
  • あなたはどのくらい頻繁に家族とコミュニケーションをとりますか
  • あなたの家族関係はよいですか
  • 家族以外であなたが親しくしている人はどれくらいいますか
  • あなたは他人との関係を積極的に築こうとしますか
  • 全体として、あなたと他人との関係は良いですか
  • あなたは他人との関係にどのくらい価値をおいていますか
  • あなたの周りの人たちはどのくらい頻繁にあなたとのコミュニケーションを求めますか
  • あなたは社会のルールや礼儀や礼節を守りますか
  • あなたは地域社会の生活にどのくらい参加していますか
  • あなたは物事や状況や人をよりよく理解するために、それらに関する情報を集めるのが好きですか
  • あなたは化学や技術や文化に関する情報に興味がありますか
  • あなたは自分の意見を述べるときに、どのくらい頻繁に困難さを感じますか
  • あなたはどのくらい頻繁に、周囲から受け入れられていない、また、疎外されていると感じますか
  • あなたは自分の身体的外観をどのくらい気にしますか
  • あなたは財産や収入の管理に対してどのくらい頻繁に困難を感じますか
  • あなたを周りの環境をあなたの思うままに、また必要に応じて調整することができると感じますか

引用:厚生労働省

SASS-J 自記式社会適応度評価尺度は、20項目の質問に0₋3点の4段階で回答し、合計点が高いほど社会適応が良好とされます。

一般平均は36点で、うつ病患者での「就労している群」と「就労していない群」のカットオフは25 点/26 点とされています。[5]

DSRS₋C バールソン児童用抑うつ性尺度

DSRS₋C バールソン児童用抑うつ性尺度は、小中学生を対象としたうつ病の評価尺度です。

子どものうつ病をスクリーニングできるほか、子どもを理解するときにも役立つツールとしても役立ちます。

ここ1週間の状態について18問の質問に「いつもそうだ」「ときどきそうだ」「そんなことはない」の3段階で答える自己記入式です。

約10分で簡単に実施できるため、低学年の子どもにも適用できます。[6]

子どもが答えやすい仕様になっています

検査内容

DSRS₋C バールソン児童用抑うつ性尺度の質問項目は以下のとおりです。[7]

  • 楽しみにしていることがたくさんある
  • とてもよく眠れる
  • 泣きたいような気がする
  • 遊びに出かけるのが好きだ
  • 逃げ出したいような気がする
  • お腹が痛くなることがある
  • 元気いっぱいだ
  • 食事が楽しい
  • いじめられても自分で「やめて」と言える
  • 生きていても仕方がないと思う
  • やろうと思ったことがうまくできる
  • いつものように何をしても楽しい
  • 家族と話すのが好きだ
  • 怖い夢を見る
  • ひとりぼっちの気がする
  • 落ち込んでいてもすぐに元気になれる
  • とても悲しい気がする
  • とても退屈な気がする

引用:新潟小児科医会

DSRS₋Cの回答は3段階(2点、1点、0点)で評価し、フルスコアは36点です。

カットオフ値は16点とされています。[8]

GDS-15-J 老年期うつの検査-15-日本版

GDS-15-J 老年期うつの検査₋15₋日本版は、55〜92歳を対象としたうつ病のスクリーニング検査です。

GDS-15-Jには以下の特徴があります。

  • 認知症患者のうつを検出できる
  • 認知症だけではなく身体疾患があっても使用できる
  • 15問の短い質問による検査のため5~7分で実施できる
  • 「はい」「いいえ」で回答するため、答えやすく採点が簡単である

妥当性・信頼性ともに高く、うつ病のスクリーニングとして世界でもっとも使用されている検査です。[9]

質問項目

GDS-15-Jの質問項目は以下のとおりです。[10]

  1. 毎日の生活に満足していますか
  2. 毎日の活動力や周囲に対する興味が低下したと思いますか
  3. 生活が空虚だと思いますか
  4. 毎日が退屈だと思うことが多いですか
  5. 大抵は機嫌よく過ごすことが多いですか
  6. 将来の漠然とした不安に駆られることが多いですか
  7. 多くの場合は自分が幸福だと思いますか
  8. 自分が無力だなあと思うことが多いですか
  9. 外出したり何か新しいことをするより家にいたいと思いますか
  10. 何よりもまず、もの忘れが気になりますか
  11. いま生きていることが素晴らしいと思いますか
  12. 生きていても仕方がないと思う気持ちになることがありますか
  13. 自分が活気にあふれていると思いますか
  14. 希望がないと思うことがありますか
  15. 周りの人があなたより幸せそうに見えますか

引用:日本老年医学会

採点・結果

GDS₋15₋Jの採点方法は以下のとおりです。[10][11]

■質問1、6、8、12、13
→「はい」:0点、「いいえ」:1点

■質問2、3、4、5、7、9、10、11、14、15
→「はい」:1点、「いいえ」:0点

フルスコアは15点で、結果は以下のように判定します。[10][11]

  • 0~4点:正常
  • 5~9点:うつ傾向
  • 10点以上:うつ状態

高得点の場合は専門医が診察してもうつ病の可能性が高い状態であるため、早めに医療機関を受診しましょう。

SRQ‐D(東邦大学方式抑うつ尺度)

SRQ-Dは、仮面うつ病のスクリーニングを目的とした検査で、軽症のうつ病や身体症状を訴える方に有効です。

SRQ-DⅡの利点として、以下が挙げられます。[12]

  • 対象者が回答しやすい
  • 使用料が不要であり使用しやすい
  • 多くの回答者がうつ尺度であると気づきにくい

短時間で効率よくうつ病の可能性を調べられるため、外来診療や企業のメンタルヘルスチェックなどで使用されています。

質問項目

SRQ-Dの質問項目は以下のとおりです。[13]

  1. 体がだるく疲れやすいですか
  2. 騒音が気になりますか
  3. 最近気が沈んだり気が重くなることがありますか
  4. 音楽を聞いて楽しいですか
  5. 朝のうち特に無気力ですか
  6. 議論に熱中できますか
  7. くびすじや肩がこって仕方がないですか
  8. 頭痛持ちですか
  9. 眠れないで朝早く目ざめることがありますか
  10. 事故やけがをしやすいですか
  11. 食事がすすまず味がないですか
  12. テレビをみて楽しいですか
  13. 息がつまって胸苦しくなることがありますか
  14. のどの奥に物がつかえている感じがしますか
  15. 自分の人生がつまらなく感じますか
  16. 仕事の能率があがらず何をするのもおっくうですか
  17. 以前にも現在と似た症状がありましたか
  18. 本来は仕事熱心で几帳面ですか

引用:綾瀬市

採点・結果

SRQ₋Dの採点は以下を参考にしてください。

  • 「いいえ」:0点
  • 「ときどき」:1点
  • 「しばしば」:2点
  • 「つねに」:3点

※質問2、4、6、8、10、12はダミー項目であるため、加点しない

SRQ-Dの結果は以下のとおりです。[12][13]

  • 10点以下:正常
  • 15~11点:境界域(精神的疲労がたまっているため休養が必要)
  • 16点以上:臨床域(うつ症状があるため専門家への相談が必要)

フルスコアは36点で、得点が高いほど抑うつ傾向が高いことを示しています。

あくまでもうつ病傾向なので、診断には受診しましょう

まとめ

今回は、GSD、SASS-J、DSRS、GDS₋15₋J、SRQ-DⅡについて解説しました。

うつ病の診断には医師の診察が必要であるため、心理検査だけでうつ病の有無や重症度を確定させることはできません。

セルフチェックで「うつ病ではない」という結果になっても、自分では症状に気づけていない場合があります。

「最近疲れているな」「眠れていないな」など、何かおかしいと思ったときは必ず専門家に相談しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、あなたのご相談をお待ちしております。ぜひお気軽にご相談ください。ご自宅からの相談を希望されるときは、オンライン診療のご利用がおすすめです。

【参考資料】
[1]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=137

[2]非定型うつ病の臨床心理学的研究

[3]うつ病患者のうつ症状と社会適応状態に関連する要因の 検討一自動思考とストレス対処方略および社会的スキルを関連要因として一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/36/2/36_KJ00008938242/_pdf/-char/ja

[4]厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/113081/201122118A/201122118A0007.pdf

[5]気分障害患者に対するリワークプログラムの有効性の検討
https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2010/08/Sagyoryoho37syoureisyou2.pdf

[6]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=140

[7]新潟小児科医会
http://www.npa-niigata.jp/gya-dsrsc.htm

[8]小学生の問題行動と抑うつ状態の関連

[9]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=256

[10]日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_11.pdf

[11]国立長寿医療研究センター
https://www.ncgg.go.jp/ri/labo/07.html

[12]大学生および社会人における抑うつ症状とスピリチュアルな態度との関連
http://mhs.or.jp/report/docs/Res%20Rep%20MOA%20Health%20Sci.%2020%2C%203-14.%202016.12.23%EF%BC%88%E6%9C%A8%E6%9D%91%E5%8F%8B%E6%98%AD%EF%BC%89v2.pdf

[13]綾瀬市
https://www.city.ayase.kanagawa.jp/material/files/group/25/sinkokoro.pdf

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