パーソナリティ障害の心理検査(PFスタディ・YG性格検査・SCT・ロールシャッハテスト・MPI-3)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

パーソナリティ障害の心理検査における目的

パーソナリティ障害の心理検査には、3つの目的があります。

  • 治療方針を決める
  • 治療の進捗を確認する
  • 患者さんが自己理解を深める

まず、治療方針を決めるために心理検査は大切な役割があります。心理検査によって、患者さんの性格特性や症状の程度を客観的に評価し最適な治療法を選べるのです。

次に、治療の進み具合を確認するためにも心理検査は活用できます。治療による改善の度合いを数値化して把握し、必要に応じて治療内容を見直せます。[1]

さらに、患者さん自身が自分の性格や対人関係のパターンを理解するためにも心理検査は役立つのです。検査結果を通じて、自分では気づけなかった特徴や傾向を知ることができます

心理検査をすることで治療に役立ちます

パーソナリティ障害の心理検査一覧

パーソナリティ障害の診断を確定する際に、補助的な検査として使われる5つの検査があります。

それぞれ詳しく説明していきましょう。

PFスタディ

PFスタディは、イラストを使って個人の性格や行動傾向を調べる心理検査です。別名「絵画欲求不満テスト」とも呼ばれています。

日常生活でよくある24場面が描かれた絵を見ながら、登場する人物がどのように反応するかを、吹き出しに言葉を埋めていく方法です。[2]たとえば、車で事故に遭う場面、恋人と喧嘩する場面などが出てきます。

PFスタディは回答の幅が広く意図的に回答できないため、患者さんの無意識の部分を理解するのに適しています。[3]

次の記事ではPFスタディについて詳しく解説しているので、参考にしてください。

YG性格検査

YG性格検査は、質問に答えることで性格の特徴を明らかにする心理検査です。患者さんの性格傾向を測定し、5つのタイプに分類します。[4]

120個の質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3つで答えていきます。たとえば「人前で話すのは得意ですか」「新しいことに挑戦するのは好きですか」などの質問があるのです。

情緒の安定性や社会的な適応度、活動性などの12の性格特性を測定でき、個人の性格を総合的に理解するのに役立ちます。YG性格検査は臨床の場だけでなく、採用試験や人財育成でも使用され、向いている部署や職種を判断する材料にもなるのです。

次の記事ではYG性格検査について詳しく解説しているので、参考にしてください。

SCT(文章完成法)

SCTは、未完成の文章を完成させることで心理状態を探る心理検査です。別名「文章完成法テスト」とも呼ばれています。

「私の母は_______」「将来は_______」など書きかけの文章を60個提示され、自分なりに完成させるのです。たとえば「私の母は優しい」「将来は穏やかに暮らしたい」など感じたことを自由に書きます。[5]

SCTでは、書きかけの文章を自分の言葉で完成させることで患者さんのパーソナリティを把握します。また、社会への適応力を測るためにも役立つのです。

次の記事ではSCTについて詳しく解説しているので、参考にしてください。

ロールシャッハテスト

ロールシャッハテストは、インクのしみを用いて心理状態を分析する心理検査です。

左右対称のインクのしみ10枚を見て、それが何に見えるかを答えていきます。同じしみを見ても、ある人は「蝶」と答え、別の人は「コウモリ」と答えるといった違いが出るのです。

ロールシャッハテストの結果から、患者さんの思考や感情などパーソナリティを理解できます。[6]

次の記事ではロールシャッハテストについて詳しく解説しているので、参考にしてください。

MMPI(ミネソタ多面的人格目録性格検査)

MMPI-3は、質問紙を使って精神的な健康状態を調べる心理検査です。別名「ミネソタ多面的人格目録性格検査」とも呼ばれています。

335個の質問に「あてはまる」か「あてはまらない」で回答された結果を評価し、多面的に人格を調べるのです。

MMPI-3では心理状態を測定するために、次の5種類の基準から構成されています。[7]

  • 妥当性尺度:全10項目あり、回答の妥当性を検証
  • 高次尺度:感情・思考・行動の3つの領域について測定する項目
  • 再構成臨床尺度:全8項目あり、デモラリゼーション・身体的愁訴・被害念慮などの項目
  • 特定領域の問題尺度:次の4つのカテゴリに分けられる
    • 身体的・認知機能尺度:全4項目あり、身体的不調、摂食の問題などの項目
    • 内在化尺度:全10項目あり、自殺念慮、ストレス、強迫性などの項目
    • 外在化尺度:全7項目あり、物質乱用、衝動性、攻撃性などの項目
    • 対人関係尺度:全5項目あり、支配性、社交回避などの項目
  • パーソナリティ精神病理5尺度:全5項目あり、精神病理に焦点を当てた項目

DSM-5に対応したパーソナリティ障害の項目があり、最新の心理学や精神医学の知見を取り入れた内容となっています。

パーソナリティ障害の心理検査における注意点

パーソナリティ障害の心理検査を受ける際には、2つの注意点があります。

  • 検査の内容を事前に調べないようにする
  • 性格検査では、質問項目に正直に答える

まず、検査の内容を事前に調べてはいけません。検査内容を知った上で受検すると、無意識のうちに回答を操作してしまい、正確な結果が得られなくなるリスクがあります

また、検査では必ず正直に答えることが大切です。中には「良い印象を与えたい」という気持ちから、実際の自分とは異なる回答をしてしまう方もいます。しかし、適切な診断や治療に結びつかない可能性があるため、ありのままを答えるようにしましょう。

正確に検査することが大切です

まとめ

パーソナリティ障害の補助的な心理検査には、PFスタディやロールシャッハテストなどがあります。

検査を受ける際は、事前に内容を調べずに正直に回答するようにしましょう。これらの注意点を守ることで、より正確な診断と効果的な治療につながります。

心理検査は、より良い治療のための大切なステップとして活用されています。医師から心理検査を勧められた際は、不安にならずに受けてみてください。

【参考文献】
[1]精神科診療のための心理検査,深津千賀子
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1090030282.pdf

[2]P-Fスタディにみる社会的表象としての攻撃反応のジェンダー・バイアス,湯川隆子
http://repo.nara-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/AN00181569-20100300-1012.pdf?file_id=2234

[3]面白いほどよくわかる!臨床心理学,下山 晴彦,西東社
https://amzn.asia/d/bonNkMY

[4]YG性格検査|竹井機器工業株式会社

[5]SCT(Sentence Completion Test:文章完成法)の臨床的活用について,黒田浩司
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yeiwa/16/0/16_44/_pdf/-char/ja

[6]ロールシャッハ法の解釈の歴史ー法則定立的か個性記述的かー,中野昭徳
https://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000004150/19-149.pdf

[7]MMPI-3ミネソタ多面的人格目録性格検査|千葉テストセンター
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=318

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