不安に関する心理検査(社交不安障害検査(SAD scale)・LSAS-J リーボヴィッツ社交不安尺度・CAS不安測定検査・SCAS スペンス児童用不安尺度)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

不安に関する心理検査とは

不安に関する心理検査は、本人が感じている不安やまだ気づいていない不安を数値化し、客観的に理解しやすくするためのものです。

社交不安障害の診断に役立てられたり、うつ病や統合失調症などの治療効果を見たりするときに役立てられます。

今回は、以下の心理検査について解説します。

不安に関するほかの心理検査については、こちらの記事をご確認ください。

社交不安障害検査(SAD scale)

社交不安障害検査(SAD scale)は、15歳以上を対象に過去1か月における社交不安障害の重症度を測定する検査です。[1]

検査では社交不安障害の「対人緊張度」と「日常生活への障害度」を測定します。

最終的な診断には医師の診察が必要であり、心理検査だけで社交不安障害を診断するものではありません。

社交不安障害のスクリーニング検査(病気の可能性を判定する検査)や治療効果を確認する検査としても使用されています。

検査内容

社交不安障害検査は29問の質問により構成されます。

10分程度で回答し5分程度で自己採点を行いますが、最終的な診断には医師の診察が必要です。

過去1か月の状態を思い出しながら、以下の4項目について回答します。

  • 日常生活上のさまざまな状況における恐怖度
  • 日常生活上のさまざまな状況における回避度
  • 不安の身体症状
  • 日常生活支障度

回答は「ない」「軽度」「中等度」「高度」「非常に高度」の5段階です。

LSAS-J リーボヴィッツ社交不安尺度

LSAS-Jリーボヴィッツ社交不安尺度(以下LSAS-J)は、社交不安障害を測定するための検査です。[2]

24問の質問に10分程度で回答し、2分程度で結果を整理します。

24のさまざまな状況に対する「恐怖感・不安感の程度」と「回避の程度」を0〜3までの4段階で回答する形式です。

検査内容

 LSAS-Jの質問を構成するのは「行為状況」と「社交状況」の2種類です。

行為状況には、社交場面での行動に関連する項目が含められています。

  • 少人数のグループ活動に参加する
  • 観衆の前で何か行為をしたり話しをする

社交状況で質問されるのは対人的やり取りについてです。

  • 権威ある人と話をする
  • あまりよく知らない人たちと話し合う

各項目について過去1週間に「どのくらいの恐怖感や不安感を感じたかの程度(0〜3)」「どのくらい回避したかの確率(0〜3)」を4段階で回答します。

質問の状況を経験していない場合は、そのような状況に置かれた場合を想像して回答しましょう。[3]

結果

LSAS-Jの得点は0〜144 点で評価され、高い値になるほど社交不安の症状が強いことを示します。

正常域とのカットオフは30点とされ、重症度の判定は以下のとおりです。[4]

  • 50~70点:中等度
  • 70〜90 点:日常生活に支障をきたすほどの著しい症状
  • 90点以上:日常生活に大きな支障をきたすほど重度の社交不安症

CAS不安測定検査

CAS不安測定検査(以下CAS)は、中学生から大学生を対象に心のSOSをキャッチする「心の健康診断」ともいえる検査です。[5]

欲求不満やストレスなどによる不安傾向をいち早く把握し、以下のような事態を防ぐ効果が期待できます。

  • いじめ
  • 不登校
  • 反社会的行動

心の健康診断として定期的に実施することで、心理的ストレスや不安を抱える生徒を早期発見し、問題に発展する前に対応できるのです。

CASは、不安に強く関係する性格傾向に着目した検査であり「今現在、強い不安を感じている人」を見つけるのに最適な検査とされています。

何度も繰り返し使用できるため、カウンセリングや治療の効果を確認するときにも有用です。

検査内容

CASは全40問であり、5〜10分程度という短時間で実施できます。

CASが測定するのは、不安と関係が強い以下5つの因子とその総合的な内容です。[5]

人格統御力の欠如感情や行動をコントロールする力の不足度合いを示す
・得点が低い:自己統制力に富む
・得点が高い:自己統制力が弱く、性格的に弱い
自我の弱さ自我の成熟不足を示す
・得点が低い:安定した自信のある性格
・得点が高い:情緒的に不安定・自信が乏しく引っ込み思案な性格
疑い深さ疑い深さの度合いを示す
・得点が高い:疑い深く、対人関係が悪化しやすい・孤独になりがちな性格
・得点が低い:順応しやすく、サッパリとした性格
罪悪感無価値観や憂うつ感を示す
・得点が高い:不安感が強く、臆病でくよくよする
・得点が低い:自信がある・順応性に富む
欲求不満による緊張欲求不満による緊張度を示す
・得点が高い:衝動による緊張感が高く、興奮しやすい・怒りっぽい・神経質
・得点が低い:冷静・落ち着いている

結果

CASは5つの因子と総合が1〜10点で示され、一人ひとりの傾向を把握できます。

総合点による不安傾向のレベルは以下のとおりです。

  • 1〜3:精神的に安定している(欲求に乏しい場合もある)
  • 4〜6:一応落ち着いているが、不安を感じることもある(普通のレベル)
  • 7〜8:原因を追求し、不安を取り除く指導が望まれる(要注意レベル)
  • 9〜10:専門医の診断、治療が必要(不安感がかなり強く問題あり)

CASは不安の原因を取り除くと得点が低下するため、カウンセリングや治療効果を見る目的においては継続的に使用されます。

SCAS スペンス児童用不安尺度

SCASスペンス児童用不安尺度は、子どもの不安症を測定する目的で開発された心理検査です。[6]

小学3年生から中学3年生を対象に、以下6つに相当する各不安症状の程度を測定します。

  • 分離不安症
  • 強迫症
  • 限局性恐怖症
  • 全般性不安症
  • 社交不安症
  • パニック症

検査内容

SCASは全38問で構成され、5〜10分で実施可能です。

質問は児童にもわかりやすい文面が使われ、難しい漢字には振り仮名が付けられています。[7]

回答は「いつもそうだ」から「ぜんぜんない」までの4段階です。

子どもが取り組みやすい検査内容です

結果

SCASの得点は高いほど不安傾向が高いことを示し、以下の6つについて評価します。[8]

・分離不安症:保護者から離れることへの強い不安
・強迫症:不安によって引き起こされる脅迫行為の程度
・限局性恐怖症:特定の恐怖症
・全般性不安症:過剰な心配・恐怖
・社交不安症:対人場面での不安
・パニック症:不安に伴った身体症状・パニック症状

まとめ

不安の心理検査は本人の中にある不安を数値化して評価するため、本人や周囲が不安を理解しやすくなります。

目に見えない不安をキャッチすることで、以下のような場面で有用です。

・心の病や不登校などの事態を未然に防ぐ
・カウンセリングや薬物治療の効果を確認する

不安の程度を測定しますが「不安が高い=精神疾患がある」という意味ではありません。

精神疾患の診断には医師の診察が必要であるため、不安感が強い人は医師に相談しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、不安を持つ方の相談をお待ちしております。

どのような悩みもお気軽にご相談ください。

【参考資料】
[1]社交不安障害検査|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=145

[2]LSAS-J リーボヴィッツ社交不安尺度 Llebowitz Social Anxiety Scale|サクセス・ベル株式会社
https://www.saccess55.co.jp/lsas_j.html

[3]社交不安症の診断と評価
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsad/7/1/7_4/_pdf

[4]大学生における社交不安と英語学習
https://web.opar.ehime-u.ac.jp/wp1/wp-content/uploads/2019/06/J17-2_miura.pdf

[5]CAS 不安測定検査|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=142

[6]SCAS スペンス児童用不安尺度|サクセス・ベル株式会社
https://saccess55.co.jp/scas_supensujidouyoufuansyakudo.html

[7]SCASスペンス児童用不安尺度|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=231

[8]広汎性発達障害児を対象とした「気分は変えられる」プログラム作成の試み
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/113081/201122007B/201122007B0022.pdf

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