【完全版】精神科の心理検査一覧|発達検査・知能検査・人格検査を詳しく
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
自閉スペクトラム症(ASD)の検査
自閉スペクトラム症に関する検査として、以下の11個を解説します(表1)。
表内の「スクリーニング」とは、病気の可能性を持つ人を見つける検査を意味します。
興味のある検査に目を通してみてくださいね
検査名 | 対象年齢 | 検査目的 |
---|---|---|
改訂 乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(M‐CHAT‐R) | 生後16ヶ月~30ヶ月 | スクリーニング |
自閉症スペクトラム指数(AQ) | 児童用:6~15歳成人用:16歳以上 | スクリーニング |
SRS‐2対人応答性尺度 | 2歳半~18歳 | 重症度測定や他の疾患との鑑別 |
親面接式自閉スペクトラム症評定尺度 テキスト改訂版(PARS‐TR) | 3歳以上 | 不適応と自閉スペクトラム症の関係確認 |
ADI‐R | 2歳以上 | 診断評価 |
ADOS‐2 | 12ヶ月以上 | 行動観察アセスメント |
小児自閉症評定尺度 第2版(CARS2) | 2歳以上 | 重症度の測定 |
ASSQ‐R | 7~16歳 | スクリーニング |
成人期ASD検査(A-ASD) | 18歳以上 | スクリーニング |
発達障害者の要支援度スケール(MSPA) | 幼児~成人 | 生活場面における要支援度の評価 |
SP感覚プロファイル | 3~82歳 | 感覚異常の把握 |
※検査の判定結果だけでは自閉スペクトラム症の診断はできません。
医師による問診や日常生活への適応などから総合的に診断されます。
改訂 乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(M‐CHAT‐R)[1]
乳幼児期の自閉症チェックリストです。
生後16ヶ月〜30ヶ月における自閉スペクトラム症(ASD)のスクリーニングに有効とされています。
検査は子どもの普段の様子について保護者に尋ねる質問形式です。
M-CHATの主な目的は、より多くの自閉スペクトラム症を発見することです。
そのため「自閉スペクトラム症の可能性が高い」とされた子どもの中には、自閉スペクトラム症ではない「偽陽性」の方が多く含まれています。
偽陽性の子どもは他の発達障害や発育遅延の可能性が高いと考えられ、注意深く経過を観察していく必要があります。
自閉症スペクトラム指数(AQ)
高機能自閉症やアスペルガー障害をはじめとした自閉スペクトラム症のスクリーニング検査です。
成人用(16歳以上)は自己評価、児童用(6〜15歳)は保護者などによる他者評価で行われます。
評価できる領域は以下の5つに分かれています。
- 社会的スキル
- 注意の切り替え
- 細部への関心
- コミュニケーション
- 想像力
各項目ごとの点数を確認できるため、自分の特性をより詳しく知ることができるでしょう。
SRS‐2対人応答性尺度
自閉スペクトラム症に特徴的な対人行動やコミュニケーションの傾向、反復・情動行動などを評価する検査です。
重症度測定や他の障害との鑑別にも有効とされています。
対象は2歳半〜18歳です。
検査は保護者や教師など、子どもの様子をよく知る大人が回答する形式で行われます。
SRS‐2では表2の項目について評価します。
社会的気づき | 社会的な手がかりを拾い上げる能力 |
社会的認知 | 社会的な手がかりを解釈する能力 |
社会的コミュニケーション | 表出的な社会的コミュニケーションを含む |
社会的動機付け | 社会的、対人行動への参加にどの程度動機づけられているか |
興味の限局と反復行動 | 自閉症に特徴的な常同的な行動や興味の特徴を含む |
親面接式自閉スペクトラム症評定尺度 テキスト改訂版(PARS‐TR)
3歳以上を対象として、子どもの不適応の背景に自閉スペクトラム症があるかを調べる検査です。
検査は母親や主な養育者との面接を行い、自閉スペクトラム症の発達や行動、症状に関する57項目について質問する形式です。
検査を通して発達や行動の特徴を知れるため、子どもに対する保護者の理解を深められるでしょう。
子どもが困りやすい場面の特徴を把握し、効果的な支援方法の検討にも役立ちます。
ADI‐R
自閉スペクトラム症の診断に活用される検査です。
2歳0ヶ月以上から成人まで幅広く使用できます。
ADI-Rでは以下の分野について評価します。
- 対人関係の障害
- 意思伝達の障害
- 限定的・反復的・常同的な行動
- 生後36カ月までに現れた発達異常
子どもの発達歴や行動の特徴について詳しく把握し、治療に役立てることができます。
ADOS‐2
検査用具の使用や質問により、自閉スペクトラム症に関連する行動を観察する検査です。
1時間程度の行動観察後に、以下の5領域を数値化し評価します。
A.言語と意思伝達
B.相互的対人関係
C. 遊び/想像力
D.情動行動と限定的興味
E.他の異常行動
検査内容は対象者の発達年齢に合わせ、表3のモジュールから選択されます。
モジュールT(乳幼児モジュール) | 無言語〜二語文(推奨年齢12〜30カ月) |
モジュール1 | 無言語〜二語文レベル(推奨年齢31カ月以上) |
モジュール2 | 三語文で話すレベル |
モジュール3 | スラスラと話すレベル(子ども・青年) |
モジュール4 | スラスラと話すレベル(青年・成人) |
検査の結果は、ADOS‐2の診断分類により評価されます(図1)。[2]
引用:金子書房(https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b200309.html )
ADOS‐2の結果のみで診断を確定させることはできません。
あくまで自閉スペクトラム症の可能性を調べる「スクリーニング検査」である点に注意しましょう。
スクリーニング検査とは、
「病気を可能性を見つける目的で行う検査」のことです。
小児自閉症評定尺度 第2版(CARS2)
2歳以上を対象として、自閉スペクトラム症の重症度を測定する検査です。
中でも「軽度〜中度」と「中度〜重度」の自閉スペクトラム症の鑑別に有効とされています。
対象者の行動観察や保護者への聞き取りにより検査を実施します。
子どもの特徴を保護者にわかりやすく提示できるほか、治療計画を作成する際にも利用できる方法です。
ASSQ‐R [3]
7〜16歳を対象とした自閉スペクトラム症のスクリーニング検査です。 [4]
自閉スペクトラム症に見られる「社会性」「言語」「行動」「興味」の特徴がどの程度当てはまるかについて、保護者や教師に質問します。
得点が高いほど自閉スペクトラム症の特性が強いことを示します。
成人期ASD検査(A-ASD)
18歳以上の自閉スペクトラム症のスクリーニングをする検査です。
A-ASDでは、以下に関する質問に回答します。
- 自閉スペクトラム症の特性である「社会的コミュニケーションの障害」と「行動、興味、活動」に関する20項目
- 自閉スペクトラム症に多い二次障害に関する9項目
- 併発しやすい発達障害(ADHDなど)に関する6項目
女性は成人期女性の自閉スペクトラム症に特化した「A-ASD for Female」の受検も可能です。
発達障害者の要支援度スケール(MSPA) [5]
生活場面における支援ニーズをレーダーチャート型に図示したものです。
検査では「コミュニケーション」「集団適応」などの特性ごとに、支援を必要としない「1」からより特別な支援を必要とする「5」までを9段階で評価します(図2)。
MSPAは、一般的な心理検査のように質問紙に答える形ではなく、本人の困り感を聞きながら共同作業で作成していくものです。
そのため、本人がどの程度の困り感を自覚しているかが明確に分かります。
また、発達障害者をサポートする方(社会や学校、医療など)の共通理解を助け、認識のズレを防ぐ役目も担っています。
引用:MSPA(Multi-dimensional Scalefor PDD and ADHD)**
「発達障害用の要支援度評価スケール」|Ⅱ.MSPA の説明https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/57/4/57_481/_pdf/-char/ja
SP感覚プロファイル
3〜82歳を対象として、感覚の過敏さや鈍感さなどの特徴を知る検査です。
視覚、聴覚、触覚などの幅広い感覚について把握でき、感覚過敏(または鈍感さ)を持つ自閉スペクトラム症の方に有用です。
日常生活で感じる困難さを客観的に評価し、家族を中心とした支援に活用できます。
注意欠如多動症(ADHD)の検査
注意欠如多動症に関する検査として、以下の6つを解説します(表4)。
表内の「スクリーニング」とは、病気の可能性を持つ人を見つける検査を意味します。
興味のある検査に目を通してみてくださいね。
検査名 | 対象年齢 | 検査目的 |
---|---|---|
ADHD‐RS | 5~18歳 | スクリーニング重症度評価 |
Conners3 | 6~18歳 | 注意欠如多動症と関連症状の評価 |
CAARS | 18歳以上 | 重症度の評価 |
ASRS | 18歳以上 | スクリーニング |
成人期ADHD検査(A-ADHD) | 18歳以上 | スクリーニング |
CAADID | 18歳以上 | 注意欠如多動症の関連症状の評価 |
※検査の判定結果だけでは注意欠如多動症の診断はできません。
医師による問診や日常生活への適応などから総合的に診断されます。
ADHD‐RS [6]
5〜18歳を対象に注意欠如多動症(ADHD)のスクリーニングや重症度評価をするための検査です。
全18問の質問のうち、奇数番号の項目が「不注意」、偶数番号の項目が「多動・衝動性」を評価するものです。
保護者が回答する「家庭版」と教師が回答する「学校版」に分かれており、判定基準の点数は年齢により異なります。
Conners3 [7]
注意欠如多動症の主な症状である「不注意」「多動性」「衝動性」や、持ち合わせている可能性の高い問題(反抗挑戦性障害や不安、抑うつなど)について評価する検査です。
検査用紙は「本人用」「保護者用」「教師用」に分かれており、対象年齢は6〜18歳(本人用のみ8〜18歳)です。
同じ年齢や性別の子どもと比較して、どの程度の症状が現れているかが分かります。
CAARS
18歳以上における注意欠如多動症の重症度を評価するための検査です。
スクリーニングや治療の効果を確認する目的で活用されます。
社会生活の中で経験する行動や症状(「うっかり口をすべらせてしまう」「イライラする」など)についての質問が66問設定されています。
注意欠如多動症の特徴を持つ人とそうでない人を判別するための「ADHD指標」が含まれるのが特徴です。
ASRS [8]
18歳以上を対象とした注意欠如多動症のスクリーニング検査です。
全18問の質問が設けられており、以下の2部で構成されています。
パートA:注意欠如多動症の診断に役立つ6問
パートB:症状に関する情報を得られる12問
(ASRS-v1.1 スクリーニング・バージョンはパートAのみの回答です)
検査結果をもとに家庭や職場の人間関係や子ども時代について聞き取りを行い、診断・治療に役立てていきます。
A-ADHD
18歳以上の注意欠如多動症をスクリーニングする検査です。
A-ADHDは、以下の項目が設定されています。
- 「注意散漫」「多動性」「衝動性」に関する20項目
- 注意欠如多動症に多い二次障害に関する9項目
- 併発しやすい発達障害(アスペルガー症候群や学習障害)に関する6項目
女性は成人期女性の注意欠如多動症に特化した「A-ADHD for Female」の受検も可能です。
CAADID
18歳以上の注意欠如多動症の関連症状を評価する検査です。
成人の注意欠如多動症の診断にあたっては、子どもの頃に同様の症状があったかどうかを確認する必要があります。
そのためCAADIDでは「成人期」と「小児期」にわけて症状をチェックできます。
質問はパートⅠとパートⅡの2部構成です。
- パートⅠ:学校、職場での様子や成長過程、かかったことのある病気について回答する
- パートⅡ:「話しかけられたときに聞いていないように見える」「毎日の活動を忘れてしまう」などの問題について、成人期と小児期にわけて回答する
検査の結果は治療方針の検討や治療効果の確認にも利用されます。
発達の特徴を測る検査(発達検査)
発達検査の目的には以下の3つがあります。 [9]
- 心身の発達のバランスや特徴を調べる
- 発達障害の傾向を調べる
- 支援の方法や学習環境の検討に活用する
今回は、発達検査として以下の6つを解説します(表5)。
興味のある検査に目を通してみてくださいね
検査名 | 対象年齢 | 検査目的 |
---|---|---|
新版K式発達検査 | 0歳~成人 | 発達状態の評価 |
遠城寺式乳幼児発達検査 | 0ヶ月〜4歳8ヶ月 | 発達傾向の分析 |
新版S‐M社会生活能力検査 第3版 | 乳幼児〜中学生 | 社会生活能力の測定 |
津守式乳幼児精神発達診断法 | 0~7歳 | 発達状況や行動特徴の把握 |
Vineland‐Ⅱ適応行動尺度 | 0~92歳 | 適応行動の評価 |
子どもの行動のチェックリスト(CBCL) | 幼児版:2~3歳年長児版:4~18歳 | 情緒と行動の問題を評価 |
新版K式発達検査 [10]
子どもの発達状態を多面的に評価する検査です。
0歳〜成人を検査対象としています。
おもちゃなどの日常的な道具が使用されるため、子どもの自然な様子を観察しやすい検査です。
表6の検査項目について、それぞれの発達年齢や発達指数を計算します。
姿勢・運動 | 片足立ち、スキップなどの体の動かし方を見る |
認知・適応 | 大人の動きの真似や、指示に沿った動きができるか見る |
言語・社会 | どの程度の言葉を覚えているか、社会的なルールが身についているかを見る |
全領域 | 全体を総合した発達状態を見る |
それぞれの領域の発達バランスをみながら、子どもの全体像を把握していきます。
遠城寺式乳幼児発達検査
0ヶ月〜4歳8ヶ月を対象とした発達の傾向を分析する検査です。
特に心身障害児の発達状況を簡単に検査できます。
検査項目は、運動・社会性・言語の3分野から構成され、「移動運動」「手の運動」「基本的習慣」「対人関係」「発語」「言語理解」の6つの領域に分けられています(表7)。 [11]
運動 | 社会性 | 言語 | |||
移動運動 | 手の運動 | 基本的習慣 | 対人関係 | 発語 | 言語理解 |
検査の結果から子どもの個性を知り、発達指導に役立てられます。
新版S‐M社会生活能力検査 第3版
乳幼児〜中学生の子どもを対象に、自立と社会参加に必要な力がどの程度備わっているか調べる検査です。
検査は以下の6領域から構成され、保護者や教師などが質問に回答する形式となります(表8)。
身辺自立:SH | 衣服の着脱や食事、排泄などの身辺自立に関する能力 |
移動:L | 行きたい所へ移動するための能力 |
作業:O | 道具の扱いなどの作業に関する能力 |
コミュニケーション:C | 言葉や文字などによるコミュニケーション能力 |
集団参加:S | 社会生活への参加の具合を示す能力 |
自己統制:SD | 自分の行動に責任を持ち、目的に向かう能力 |
社会生活年齢(SA)と社会生活指数(SQ)が算出でき、知的障害や発達障害の子どものサポート方法を考える際に役立ちます。
津守式乳幼児精神発達診断法
0歳〜7歳の子どもについて、発達状況や行動の特徴を把握できる検査です。
子どもの普段の様子を知る主な養育者が質問に答える形式です。
0〜3才用は主に家庭での様子、3〜7才用は主に幼稚園などの様子をもとに以下の領域について評価されます。
- 運動
- 探索
- 社会
- 生活習慣
- 言語
子どもの発達について得意な部分と苦手な部分を知ることで、保育に役立てることができます。
Vineland‐Ⅱ適応行動尺度
適応行動(個人的、社会的な日常活動の能力)を評価する検査です。
0〜92歳という幅広い年齢に使用できるという特徴があります。
「強み(S)」と「弱み(W)」が分かるため、対象をサポートする際に役立ちます。
この検査では、評価できる領域は表9の通りです。
コミュニケーション | 受容言語・表出言語・読み書き |
日常生活スキル | 身辺自立・家事・地域生活 |
社会性 | 対人関係・遊びと余暇・コーピングスキル |
運動スキル | 粗大運動・微細運動 |
不適応行動 | 不適応行動指標・不適応行動重要事項 |
不適応行動の特徴も数値化できるため、本人の困り感の理解やサポートに役立ちます。
CBCL [12]
子どもの「情緒」と「行動」の問題を評価するチェックリストです。
2〜3歳用の幼児版と4〜18歳用の年長児版に分かれています。
記入用紙は以下の3種類が用意され、子どもが持つ傾向を総合的に評価できます。
- CBCL:主な養育者が記入する
- YSR:11歳以上の子どもが自分で記入する
- TRF:教師や保育士が記入する
CBCL/4-18は8つの領域から構成され、結果は問題行動尺度として得点化されます(図3)。
引用: 児童思春期精神保健研究会(https://www.spectpub.com/CBCL/CBCLaboutASEBA.pdf)
子どもの行動や情緒の特徴を理解することで、適切なサポートに役立てられます。
知的機能や記憶を測る検査(発達知能検査)
発達知能検査には以下の目的があります。[13]
- 物事の捉え⽅の特徴、脳機能のバランスを見る
- 症状により弱まっている機能、維持されている機能を知る
- 治療の影響や効果を見る
今回は、発達検査として以下の5つを解説します(表10)。
興味のある検査に目を通してみてくださいね
検査名 | 対象年齢 | 検査目的 |
---|---|---|
ウェクスラー式知能検査(WPPSI、WISC、WAIS) | ・WPPSI:2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月 ・WISC:5歳0ヶ月~16歳11ヶ月 ・WAIS:16歳0ヶ月~90歳11ヶ月 | 個人の知能発達レベルや、得意なこと、苦手なことのバランスの測定 |
K‐ABC | 2歳6ヶ月~12歳11ヶ月 | 認知特性や習得度の測定 |
DN-CAS認知評価システム | 5歳0ヶ月~17歳11ヶ月 | 認知処理過程(考え方のプロセス)の評価 |
田中ビネー知能検査Ⅴ | 2歳~成人 | 知的側面の発達状態の測定 |
グッドイナフ人物画知能検査 | 3歳~8歳6ケ月 | 知的水準の測定 |
ウェクスラー式知能検査(WISC、WAIS、WPPSI)
個人の知能発達レベルや、得意なこと、苦手なことのバランスを測る検査です。
医療機関や児童相談所、教育相談などで広く使用されています。
ウェクスラー式知能検査の分類は以下の通りです。
- WPPSI:幼児用(2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月)
- WISC:学童用(5歳0ヶ月~16歳11ヶ月)
- WAIS:成人用(16歳0ヶ月~90歳11ヶ月)
検査により得意分野を活かして、苦手分野をフォローする方法が検討できます。
知能の高い、低いを周囲と比較するためではなく、個人の中の得意・不得意を見つけるための検査という点に注意しましょう。
K‐ABC [14]
2歳6ヶ月〜12歳11ヶ月を対象として、子どもの認知特性や習得度を測定する検査です。
認知検査では「脳の働き方の特徴や個性」を評価し、新たな刺激や状況をどのように処理するかを見ます。
習得検査は「語彙」「読み」「書き」「算数」の習得に関する検査です。
子どもの得意とする部分を明らかにし、教育や指導に活かす目的があります。
DN-CAS認知評価システム
5歳0カ月〜17歳11カ月を対象とし、子どもの認知処理過程(考え方のプロセス)を評価する検査です。
以下の4つの領域に分けて評価されます(表11)。
プランニング(P) | 効果的な解決方法を考えたり選択したりするプロセス |
注意(A) | 不要なものに気を取られず、必要なものに注意を向けるプロセス |
同時処理(S) | 情報をまとまりとして捉える認知活動(例:画像のように全体的・視覚的に理解する) |
継次処理(S) | 情報を順序だてて捉える認知活動(例:手順をひとつずつ順番に理解する) |
DN-CAS認知評価システムは、新しい課題に対処する力の測定に適しています。
LDやADHD、高機能自閉症などの認知的な偏りの傾向を捉え、効果的なサポート方法を検討できます。
田中ビネー知能検査Ⅴ
2歳〜成人を対象とした知的側面の発達状態を測る検査です。
おもちゃを使った課題が多く、子どもが楽しんで取り組めるため児童相談所の発達相談や手帳取得の目安として広く使われています。
問題が年齢ごとに分かれているため、検査を受けることで「実際の年齢は10歳だけど、検査で測ると9歳くらい」という比率が分かるようになります。
年齢的な指標が分かることで、保護者や教師がケアする際のイメージを持ちやすくなり、子ども自身の精神的、身体的な負担の軽減にもつながるでしょう。
グッドイナフ人物画知能検査
3〜8歳6ヶ月を対象とし、知的水準を測定する検査です。
検査では子どもに「人をひとり描いてください。頭の先から足の先まで全部ですよ」と伝え、描かれた絵を観察します。
- 低年齢の幼児:丸に点々が描かれている絵
- 幼児後期:全身を捉え表情がついている絵
このように、発達に応じた絵が描かれているかを確認し、知覚・認知能力、手の操作を中心とした運動能力、視覚・運動を連動させる能力などを評価します。
低年齢の子どもや言葉を話せない子ども、言語や情緒面に障害のある子どもも実施しやすいのが特徴です。
気分や性格を測る検査(パーソナリティ検査)
パーソナリティ検査の目的として以下の3つがあげられます。[15]
- ⾏動パターンや対⼈関係の特徴を調べる
- 気分やストレスの状態を測定する
- 体の不調に⼼の問題が影響しているか調べる
今回解説するパーソナリティ検査は以下の8個です(表12)。
検査手法は被験者の内面を映し出す「投影法」と、質問に答えてもらう「質問紙法」に分かれています。
興味のある検査に目を通してくださいね。
検査名 | 検査手法 | 検査目的 |
---|---|---|
P‐Fスタディ(欲求不満絵画テスト) | 投影法 | 欲求不満状況から性格傾向を分析する |
バウムテスト | 投影法 | 描かれた木から性格傾向を分析する |
文章完成法 (SCT) | 投影法 | 完成した文章から知能や性格などの全体像を捉える |
YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査) | 質問紙法 | 性格特性を把握する |
新版TEG3 東大式プログラム | 質問紙法 | 性格と行動パターンを把握する |
ロールシャッハテスト | 投影法 | インクの模様の見え方から内的世界や認知の特徴を分析する |
主題統覚検査(TAT) | 投影法 | 語られた物語から性格の特性や隠された欲求、精神的な葛藤を明らかする |
HTP・HTPPテスト | 投影法 | パーソナリティや知能を評価する |
P‐Fスタディ
欲求不満状況による反応から、その人の性格傾向を把握する検査です。
検査は年齢ごとに以下の3つに分かれています。
- 児童用:小学生・中学生
- 青年用:中学生・高校生・大学生
- 成人用:20歳以上の一般成人と大学生
ふたりの人物画が書かれたイラストを見て、片方の人のセリフに対し「この人は何と答えるか?」を答えるものです。
図4のような図版をイメージしてください。
回答内容からアグレッション(欲求不満を解消するための対処法)の「方向」と「型」を組み合わせ、性格傾向を分類します。
適応性や攻撃性、対人関係の特徴を把握したり、主訴や問題行動との関連を理解したりするときに役立ちます。
バウムテスト
A4程度の紙に一本の木を描く検査です。
性格傾向やその時の精神状態、発達の問題などの評価ができます。
発達障害では不器用さや衝動性、こだわりの強さなどの特徴がみられる傾向があります。 [16]
バウムテストのみでは対象の心理を捉えられないため、他の検査と併用したり絵を通じて心の中の言葉を引き出したりする過程が大切です。
SCT(文章完成法)[17]
「私はよく___」のような空欄を埋め、文章を完成させる検査です。
出来上がった文章から、知能や性格、意欲や興味・関心、生活史や人生観、心の安定性などの全体像を捉えていきます。
面接では答えにくいような質問(例:「あなたにとって父親とは?」)も、文章なら書き出しやすい方もいるでしょう。
文章完成法は、表に出しづらい気持ちを出す手助けをする役割もあります。
YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)
小学2年生〜成人を対象に、その人の性格特性を調べる検査です。
小学生用:96問、中学・高校・一般用:120問の質問から構成されています。
YG性格検査で明らかにできる項目は表13の通りです。
行動特性 | 内向的 or 外交的 |
情緒の安定 | 抑うつ感情を経験しやすいか、心配性か、不信感や不満感が強いかなど |
人間関係の特性 | 社交的か、人間関係で気分が変わりやすいかなど |
仕事に取り組む姿勢 | 困難に積極的に取り組むか、計画的に取り組むかなど |
リーダー資質 | リーダーへの適性 |
集団や社会への適応性 | 攻撃的行動が生じやすいか |
知覚の特性 | 主観型(思い込みが強いタイプ)か客観型(冷静に物事を見るタイプ)か |
性格傾向は心身の健康や社会への適応などに大きな影響を及ぼすため、性格傾向に合った治療法や自分に合った職業、働き方を考える際にも有用です。
新版TEG3 東大式プログラム
16歳以上を対象に性格と行動パターンを明らかにする検査です。
自分の性格的な特徴や行動パターンに気づき、自己理解を深める際に活用できます。
性格のよい・悪いを測るものではなく、表14の「5つの心」の強弱から自己理解を深めるものです。
CP(Critical Parent):批判的な親 | 責任感が強く厳格。理想に向かって行動する |
NP(Nurturing Parent):養育的な親 | 思いやりがあり世話好き。受容的である |
A(Adult):大人 | 現実的で冷静沈着。客観性を重んじる |
FC(Free Child):自由な子ども | ストレートに感情表現し明朗快活。創造的である |
AC(Adapted Child):順応した子ども | 他者を優先し遠慮がち。人の評価を気にする |
TEGで性格や行動の特徴を把握すると、他者との違いに気付いたりコミュニケーションの取り方を見直したりするきっかけになります。
医療機関をはじめ、企業の研修や教育現場でも使用されている検査です。
ロールシャッハテスト
紙に垂らしたインクを見て「何に見えたか」「インクのどの部分に見えたか」を直感で答える検査です。
ロールシャッハテストでは、「こう解釈したら正常に発達している」のような絶対的な指標は存在しません。
発達障害ではインクの一部の特徴にこだわったり、焦点づけの問題(独特な区切り方やぼんやりとした捉え方)が明らかになったりします。[18]
このように本人が意識していない内面的な世界や、認知の仕方を知るために実施されます。
ロールシャッハテストでは、試験前に図版を見ることで検査結果に影響することがあります。
もし今後受ける予定のある方は、図版を知らない方がよりよい検査結果を得られるでしょう。
TAT(主題統覚検査)[19]
さまざまな受け取り方ができる絵を見て、過去・現在・未来にわたる物語を作る検査です。
小学4年生〜成人を対象として、語られた物語から性格の特性や隠された欲求、精神的な葛藤を明らかにします。
発達障害では以下のような特徴が見られます。
- 人と人との情緒的な交流が少ない
- 絵の細部にこだわり、物語としてまとまらない
- 登場人物と情緒的なつながりのある他者や他者イメージが登場しない
- 登場人物の感情にあまり触れない
- 不確実な言い回しやイラストへの感想、矛盾点の指摘が多い
このように、語られた内容からは、語り手のコミュニケーションの特徴やコンプレックスなどが明らかになります。
検査の分析からは語り手の気質や言語能力、情緒面の特徴、認知傾向などの評価が可能です。
HTP・HTPPテスト[20]
家、木、人の絵を描いて対象のパーソナリティや知能を評価する検査です。
HTPとは、家(HOUSE)、木(TREE)、人(PERSON)の頭文字をとったものです。
解釈の手がかりを見つけるために、絵を描いたあとにPDIとよばれる質問がされます。
社会的な熟成度の問題や、無意識の自己像、人間関係の問題を把握しやすいとされています。
まとめ
今回は、発達障害に関する心理検査を解説しました。
心理検査はその日のコンディションや状況が結果に影響を及ぼすことがあります。
特に子どもの場合は、親と離れる不安や緊張から普段の能力を発揮できない場合もあるでしょう。
心理検査は「○○だったらよい、悪い」という良し悪しを測るものではなく、個人の特性を知り生きやすくするためのツールです。
心理検査だけで病気の診断の確定はできないため、検査結果をもとに医師の診察を受けたり、家庭や学校、会社での対応方法を検討したりして有効活用することが大切です。
参考文献
[1] 改訂 乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(フォローアップ調査付き)(M-CHAT-R/F)T
https://mchatscreen.com/wp-content/uploads/2021/08/M-CHAT-R_F_Japanese.pdf
[2] ADOS-2 日本語版 主な特徴
3. ADOS-2 日本語版からわかること
② DSMの診断モデルに基づく判定が行えます
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b200309.html
[3] ASSQ 日本語版の心理測定学的特性の検証と短縮版の開発方法 ASSQ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/85/3/85_85.13213/_pdf
[4]児童養護施設における高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)のスクリーニングの課題対象と方法file:///C:/Users/ckva8/Downloads/P053-059.pdf
[5] MSPA(Multi-dimensional Scalefor PDD and ADHD)**「発達障害用の要支援度評価スケール」|Ⅱ.MSPA の説明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/57/4/57_481/_pdf/-char/ja
[6] 国立保健医療科学院【分野15】精神医学15‐001
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/birthcohort/data/part2-3.pdf
[7] 国立保健医療科学院【分野15】精神医学15‐002
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/birthcohort/data/part2-3.pdf
[8] Adult ADHD Self-Report Scale-V1.1 (ASRS-V1.1)Symptoms Checklist
https://www.hcp.med.harvard.edu/ncs/ftpdir/adhd/18Q_Japanese_final.pdf
[9] 国立精神・神経医療センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/docs/shinri_01.pdf
[10] 新版K式発達検査の特徴と現場における臨床的応用検査項目とプロフィール
https://core.ac.uk/download/pdf/277538709.pdf
[11] 円城寺式分析的発達検査法についてⅠ 円城寺式分析的発達検査法の成り立ち
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/23/2/23_45/_pdf
[12] 児童思春期精神保健研究会
https://www.spectpub.com/CBCL/CBCLaboutASEBA.pdf
[13] 国立精神・神経医療センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/docs/shinri_01.pdf
[14] 子どもの心理検査・知能検査 保護者と先生のための100%活用ブック|熊上崇・星井純子・熊上藤子 合同出版
[15] 国立精神・神経医療センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/docs/shinri_01.pdf
[16] 精神科クリニックを受診した幼児のバウムテスト おわりに
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/76/0/76_3PMC09/_pdf
[17] 子どもの心理検査・知能検査 保護者と先生のための100%活用ブック|熊上崇・星井純子・熊上藤子 合同出版
[18] 児童青年期精神科臨床とロールシャッハ法 |Ⅳ.発達の問題か,精神医学的な問題か
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/60/3/60_328/_pdf/-char/ja
[19] 高機能広汎性発達障害をもつ 男性のTAT反応一 デイケア治療前後の比較一I 問題と目的
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhr/18/2/18_KJ00008577589/_pdf/-char/ja
[20] 不適応を示 した学生の指導過程の分析 ―HTPテストを活用した学生理解―3 不適応行動を示すまでの学生の状況
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/13/1/13_19900401005/_pdf/-char/ja