A-ASDでわかることは?使用場面や注意点、受けられる場所を解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
A-ASDとは
A-ASDは18歳以上を対象とした自閉スペクトラム症(ASD)のスクリーニング検査(病気の可能性を持つ人を見つける検査)です。[1]
検査用紙に書かれた質問(男性35問、女性38問)に対し「あまりない」「ときどき」「しばしば」「いつも」から1つを選ぶ形式で、10〜15分程度で回答できます。
3つから1つ選ぶだけなら、検査を受けやすいですね♪
A-ASD for Femaleとは
A-ASD for Female とは、18歳以上の女性を対象とした自閉スペクトラム症のスクリーニング検査です。
自閉スペクトラム症は男女で現れる特性が異なり、女性では以下のような特徴がみられます。[2]
- 対人関係の取り方が受け身なため、いじめの対象になりやすい
- 周囲の人に助けを求められず、不登校や引きこもりになるリスクがある
- 現実から逃避し空想の世界に没頭しやすい
- 電車や乗り物よりも、人や動物への強いこだわりを持つ
- 完全主義や白黒思考(全か無にかたよる考え方)になりやすく、感情コントロールが困難である※A-ASD for Femaleの質問項目とは異なります。
女性の自閉スペクトラム症は男性に比べて症状がマイルドなため、大人になるまで気づかれないケースがあります。
A-ASD for Female は、このような女性の症状に注目したスクリーニング検査です。
女性ならではの質問がある検査なのですね!
ASDの他の心理検査は、下記の記事からご覧ください。
A-ASDの検査内容
A-ASDの検査には以下の項目があります。
以下では、それぞれに関連する自閉スペクトラム症の特徴について解説します。
心当たりがあるか確認しながら読み進めてくださいね。
自閉スペクトラム症にみられる特性20項目
自閉スペクトラム症にみられる特性20項目には、以下の内容が多く設定されています。
- コミュニケーションや対人関係における障害について
- 反復する行動や限定された興味および活動について
これらに関連した大人の自閉スペクトラム症の特徴として、以下のようなものが挙げられます。[3]
対人関係の問題 | ・距離感がつかめない(親密な付き合いが苦手、極端になれなれしい) ・他人への関心が乏しい(人と共感しない、同年代の仲間が作れない) |
コミュニケーションの問題 | ・たとえ話が理解できない ・抑揚のない話し方をする ・表情や身振り手振りを読み取れない |
想像力の問題 | ・自分なりの手順やルールの変化を嫌がる ・自分の世界に没頭し、切り替えが難しい。融通がきかない |
感覚の問題 | ・聴覚:ティッシュペーパーやエアコンの音を極端に気にする ・触覚:服のタグを紙やすりのように感じる・痛覚:痛みを感じづらい |
※A-ASDの質問項目とは異なります。
これらに関連した質問により、自閉スペクトラム症をスクリーニングします。
自閉スペクトラム症にみられやすい二次障害に関する9項目
自閉スペクトラム症では、約70%以上の人がひとつの精神疾患を持ち、約40%以上の人がふたつ以上の精神疾患を持つとされています。[4]
人間関係やコミュニケーションの問題から対人緊張や自己評価の低下が生じ、うつ状態をはじめとした二次障害に陥るのです。[3]A-ASDではこのような二次障害に関する質問も設定されています。
どの特性が原因で困っているんかが分かりますね
併発しやすい発達障害(ADHDなど)に関する6項目
自閉スペクトラム症では、注意欠如多動症(ADHD)や学習障害(LD)、知的能力障害を持ち合わせる方がいます。[3]
学習障害と知的能力障害以外は互いに持ち合わせる可能性があるため、発達障害の症状は人によって違いが大きくなります。[5](図1)
併発している発達障害を見つけることにより、自分の特徴をより深く理解し、対処法や治療法を考えやすくなるでしょう。
引用:LD と自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症(併存障害)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/58/2/58_236/_pdf/-char/ja
A-ASDが使われる場面
A-ASDは以下のような場面で使用されます。
- うつ病や不安障害および適応障害などで初めて病院を受診するとき
- 大学や企業などの心の健康診断のとき
自閉スペクトラム症の方は社会生活で失敗を繰り返すことが多く、そのストレスによりうつ状態になりやすいとされています。しかし、うつ病の症状が注目されやすく、ベースにある自閉スペクトラム症が見落とされるケースも少なくありません。
この場合、うつ病の症状が改善しても自閉スペクトラム症による「生きづらさ」は続くため、再発のリスクが高くなります。
そのため、A-ASDのようなスクリーニング検査で自閉スペクトラム症の存在を見逃さないことが大切です。[6]
「生きづらさ」の原因をしることは大切ですね
A-ASDの注意点
A-ASDは自己回答式の検査のため、正しい自己理解ができていないと自分の状態と結果にズレが生じます。
自閉スペクトラム症の方は「心を読む視点がずれている」とされ、通常とは異なる独特な視点で物事を捉えるため、正しい自己理解をすることが苦手とされています。
たとえば、相手の反応を読み取るのが苦手なAさんについて考えてみましょう。
Aさんの会話はいつも一方通行です。
同僚との会話では、相手の話をさえぎって自分の話に夢中になってしまいます。
それでも周りが困っていることにまったく気づきません。
どうやら自分のことを「社交的で雑談が得意」と思っているようです。
このように、自閉スペクトラム症では自分の状態を正しく理解できていないケースがあります。
そのため自己評価に基づく検査だけではなく、医師の診察や他の手段を併用して全体像を正しく把握する必要があります。[7]
さまざまな方向から診てもらうことは大切ですね
A-ASDを受けられる場所
A-ASDは医療機関で受けられます(医療機関によって取り扱う検査が異なるため、事前に確認が必要です)。
受診先がわからない方は、以下の機関に相談してみましょう。[8]
- 市区町村の福祉課(全国自治体マップ検索)
- 発達障害者支援センター(発達障害者支援センター 一覧)
市区町村では、医療に関することや日常生活に関する相談を受け付け、医療機関の案内もしています。
担当する課の名称は市区町村によって異なるため、事前にホームページで確認しておくとスムーズでしょう。
発達障害者支援センターは、発達障害に関する専門的な相談に対応し、必要に応じて医療機関や事業所などを紹介しています。無料で利用でき、発達障害の診断のない方やご家族による相談も可能なため、お困りの方は利用してみてくださいね。
まとめ
A-ASDは、18歳以上の方を対象とした自閉スペクトラム症のスクリーニング検査です。
自閉スペクトラム症の特徴や二次障害、併発しやすい発達障害についての質問もあるため、自分の状態を広い視野で捉えられるでしょう。また、うつ病や不安障害に悩む方の自閉スペクトラム症をスクリーニングすることも可能です。
生きづらさに悩む方は、医療機関や市町村、発達障害者支援センターなどに問い合わせてみてくださいね。
検査を通して自分の特徴について知り、あなたがより輝くきっかけになれば幸いです。
参考文献
[1]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=249
[2]女性の自閉スペクトラム症の臨床的特徴と治療・支援のあり方 女性の ASD の臨床的な特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmjournal/1/1/1_14/_pdf/-char/ja
[3]大人の発達障害と精神疾患の鑑別と合併 精神疾患の鑑別と合併 1.大人の ASD の特徴 Table 1 大人の ASD の主な特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/59/5/59_416/_pdf
[4]e-ヘルスネット|ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について 自閉スペクトラム症の併存症
[5]LD と自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症(併存障害) 1.はじめにhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/58/2/58_236/_pdf/-char/ja
[6]発達障害はなぜ誤診されるのか 新潮選書 岩波明
[7]心理検査を用いた青年・成人の軽度自閉スペクトラム症(ASD) のスクリーニングについて|2 .軽度 ASD の自己理解について|3 .軽度 ASD を対象とした質問紙検査によるスクリーニング
[8]発達障害者ナビポータル
https://hattatsu.go.jp/supporter/welfare/faq/welfare-faq01/