CARS2でわかること|検査対象や内容、判定について解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
CARS2(小児自閉症評価尺度)とは
CARS2(小児自閉症評価尺度)は「自閉症かどうか」「自閉症の重症度はどの程度か」を判断する検査です。
行動観察と保護者からの情報をもとに、自閉スペクトラム症の重症度を判定します。
ほかの心理検査や遊びなどに取り組む様子を観察するため、短時間で簡単に実施できるという特徴があります。[1]
小児の検査だから、短い時間でできるのは助かりますね♪
ASDの他の心理検査は、下記の記事からご覧ください。
CARS2の対象年齢と「標準版・高機能版」
CARS2の対象となるのは、自閉スペクトラム症の疑いがある2歳以上の方です。
この検査の評価に使う質問票には「標準版」と「高機能版」の2種類があります。
どちらを選ぶかは対象の「年齢」「IQ」「コミュニケーションレベル」で決まります。
標準版(CARS2‐ST)の対象は「2歳以上6歳未満」の方と「6歳以上でIQ79以下」の方です。
高機能版 (CARS2-HF)は、6 歳〜成人でIQ80 以上の方を対象としています(図1)。[1]
引用:千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=281
年齢やIQに合わせた質問票があるので、子どもに合った検査ができますね
CARS2の検査内容
CARS2の検査内容は以下の2つです。
ひとつずつ解説します。
行動観察
行動観察では、他の心理検査や遊びに取り組んでいる様子を観察します。
おもちゃや絵本のような検査道具は必要ないため、短時間で簡単に行動観察が可能です。
保護者からの情報
専用の質問用紙(保護者質問用紙)を使った面接により、保護者から子どもの情報を聞き取ります。
「他者と話しているときや他者の話を聞いているときに視線を合わせるか」
「興味のあるものを指して他者と共有するか」
などの質問が設けられています。[2]
日ごろを知るための質問ですね
CARS2の判定
行動観察や親からの情報をもとに「自閉スペクトラム症かどうか」「その重症度はどの程度か」を判定します。
CARS2を構成する「人との関わり」「言語性コミュニケーション」「非言語性コミュニケーション」などの15項目について、それぞれ1〜4点(0.5点刻み)の7段階で評価します。
判定は「自閉スペクトラム症のごくわずかな初見〜所見なし」「軽度〜中度」「重度」の3段階です(表1)。[2]
重症度 | 重度の自閉スペクトラム症 |
軽度~中度の自閉スペクトラム症 | |
自閉スペクトラム症のごくわずかな所見~所見なし |
CARS2の活用方法
CARS2の活用方法として、以下の2つが挙げられます。
ひとつずつ解説します。[3]
症状を理解する
CARS2は症状の理解に役立ちます。
「重度の自閉スペクトラム症」という結果だけでは「どのような理由で重度なの?」「これからどのようなことで困るの?」など、さまざまな疑問で混乱してしまいますよね。
CARS2は自閉スペクトラム症を「人との関わり」「言語性コミュニケーション」などの15の側面に分けて考えるため、以下のような特徴が明らかになります。
- どのような場面が苦手なのか
- どのような行動をとりやすいのか
- 物事をどのように理解しているのか
このように、症状を整理しながら自閉スペクトラム症を捉えていけるのです。
困っていることを知ることは大切です
サポート方法を考える
CARS2は、本人に合ったサポート方法を考えるときに有効です。
自閉スペクトラム症に関係する15項目を7段階で数値化します。
たとえば、下記のようなことを評価します。
- 「人との関わり」では対人関係においてどのような行動をとりやすく、重症度はどの程度なのか
- 「言語性コミュニケーション」では意思伝達においてどのような行動をとりやすく、重症度はどの程度なのか
検査結果を見れば、本人の得意な部分と苦手な部分の凸凹や行動の特徴が一目でわかるでしょう。
そのため、本人がどのような場面で困りやすく、どのようなサポートを必要としているのかを考えやすくなります。
また、医療機関と本人が生活する場所(家庭、学校など)の情報共有のツールとしても使用可能です。
医療機関と家庭、学校で共通理解を持ち、同様の対応をすることで本人の混乱を軽減できます。
困っている場面が明確になると支援計画をたてやすくなりますね
まとめ
CARS2は自閉スペクトラム症の疑いのある2歳以上を対象に「自閉スペクトラム症かどうか」や「自閉スペクトラム症の重症度」について評価する検査です。
検査で使う質問用紙には「標準版」と「高機能版」があり、年齢やIQなどでどちらを使うかは変わります。
検査では「人とのかかわり」「言語性コミュニケーション」などの15項目について7段階で評価するため、細かく症状を理解できます。
本人が得意なことや苦手なことを客観的に捉えられるため、より本人に合ったサポート方法を考えられるようになるでしょう。
CARS2を自閉スペクトラム症の症状理解や、本人に合ったサポート方法を考える出発点として活用してください。
参考文献
[1]ADI-R と ADOS-2、CARS2 1.ASD の診断尺度
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182091/201817011A_upload/201817011A0011.pdf
[2]発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン|小児自閉症評定尺度:CARS(カーズ)日本語版とCARS2-HF(カーズ・ツー・ハイファンクション) 4. CARS2-high function(カーズ・ツー 高機能版)
https://www.as-japan.jp/j/file/rinji/assessment_guideline2013.pdf
[3]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=281