田中ビネー知能検査Ⅴで何がわかる?検査方法やWICS検査との違いなどを解説
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
「子どもの知能検査を勧められたけれど、難しそう…」と何から始めてよいか迷っていませんか?
この記事では「田中ビネー知能検査Ⅴ」について解説しています。検査内容を知ることで、子どもの知能検査をどのように進めればよいかがわかるでしょう。
田中ビネー知能検査Ⅴとは
田中ビネー知能検査とは、フランスのビネーが開発した知能検査をもとに、心理学者の田中寛一が作成した知能検査です。開発されたあとで何度か改訂され、2003年に田中ビネー知能検査Ⅴが発行されました。[1]
田中ビネー知能検査Ⅴは知能指数や精神年齢がわかる検査であり、お子さんの知能発達のペースが把握できます。年齢ごとに問題が分類されており、どの年齢の知能レベルまで理解できているのかわかりやすいのが特徴です。
対象年齢は2歳〜成人となっています。2〜13歳までは年齢ごとの問題が用意されており、14歳以上は「成人級」でまとめられています。対象年齢は2歳からですが、1歳級の問題が解けない方には「発達チェック」が用意されているので、それに沿って評価することが可能です。[2]
最新版の田中ビネー知能検査Ⅴは、現代の子どもの発達に合った尺度に改良されています。幼児でも取り組めるよう、検査用具を大きくしたり資料をカラーにしたりといった工夫がなされています。
子どもが取り組みやすい工夫がされていて助かりますね
一方、成人用では4つの分野ごとに問題を分け、DIQ(偏差知能指数)により分析的に知能を測定・診断できるようになっているのが特徴です。日本人向けに作られているため、個人の特性に合わせた学習方法の理解などにも役立ちます。
田中ビネー知能検査Vでわかる3つのこと
田中ビネー知能検査Vでは知的能力の評価だけでなく、知能遅れの有無や個々に適した学習方法などがわかります。ここでは、その内容を3つ解説します。
知的能力と特徴
田中ビネー知能検査Ⅴはさまざまな要素を掛け合わせて問題が構成されているため、多角的な視点から知能を評価できます。実際には、以下の内容などが盛り込まれています。
- 思考
- 言語
- 記憶
- 数量
- 動作
- 推理
- 構成 など
こまかく分類されていることから、検査を受ける人の基礎的能力を把握する点にすぐれています。なにが得意でなにが苦手なのかを把握できるため、一人ひとりにおける知能の特徴がわかります。今まで気づかなかった、潜在能力を引き出すこともあるかもしれません。
知能発達遅れの有無
田中ビネー知能検査Ⅴは、知能発達があるかどうかを判断する材料にもなります。
この検査は、年齢級(年齢ごとに応じた問題)に分けて問題が用意されているのが特徴です。問題が解けなかった年齢級と生活年齢(実年齢)の比によって、どの年齢のレベルまで知的能力があるかを見極められます。[2]
たとえば実年齢が10歳にもかかわらず、5歳にあたる年齢級の問題が解けない場合には、同年代よりも知能が遅れている可能性があるということです。ただし発達障害を確定するテストではありませんので、あくまで目安として次のステップに進むための手段です。
被検査者に合った学習方法や支援内容
検査結果から個人の得意不得意がわかるため、長所を伸ばしたり苦手を克服したりする対策や学習方法を検討できるでしょう。分類ごとにこまかくチェックできるため、年齢や特性に合わせた勉強方法の手がかりが見つかります。
また田中ビネー知能検査Ⅴの問題は実生活に関連した内容もあり、生活に取り入れながら実施できるトレーニング方法や支援を考えられるのが利点です。[2]
実年齢がわかることで、その子にあった支援を考えることができますね!
田中ビネー知能検査Vのやり方と内容
では実際に、田中ビネー知能検査Ⅴの検査方法と内容を解説します。
問題は以下のように構成されています。
- 1~13歳級:96問
- 成人級(14歳以上):17問
- 発達チェック(1歳級が解けない方)
年齢によって検査の方法は異なります。
【生活年齢(実年齢)2歳0ヶ月~13歳11ヶ月】
子どもの生活年齢と同じ年齢級の問題から始めます。
1つでも解けない問題があったら、下の年齢級の問題へ移ります。全問正解する年齢級まで進めましょう。
一方で生活年齢と同じ問題にすべて正解したら、年齢級を上げます。全問不正解になる年齢級まで挑戦しましょう。
13歳級の問題を1問でも正解した場合には、成人級に進んで構いません。原則、各問題は番号順に解きましょう。
【生活年齢14歳0ヶ月以上】
成人級の問題のみを実施して、基本的には下の年齢級には下がりません。
検査を受ける人によって、かかる時間には差が出るんだね
また、検査中の行動や態度も評価の対象となります。万が一発達の遅れが想定される場合、生活年齢から始めると解けない問題が続き、検査を受ける方の意欲低下につながるおそれがあります。その場合には、開始する年齢級を下げるなど工夫しましょう。[3]
田中ビネー知能検査Ⅴの結果の見方
田中ビネー知能検査Ⅴの検査結果は、できた・できないが〇×で記載されるため、一目瞭然で苦手な分野がわかります。
生活年齢級から始め、問題をこなせた年齢級における点数の合計から、精神年齢が算出されます。そして、問題が解けなかった年齢級と生活年齢(実年齢)の比で知能指数(IQ)が割り出される仕組みです。
採点方法は以下の順番で行います。
生活年齢(CA)の計算 → 精神年齢(MA)の計算 → 知能指数(IQ)の計算
各数値の算出方法は、検査セットに入っている採点マニュアルなどを確認しましょう。
IQスコアの平均値は一般的に100といわれており、数値が高いほど知的能力が高いことを意味します。ただし知能はあらゆる視点で評価されるため、一概にIQだけで判断はできません。あくまで目安として捉え、学習や支援に活用することを目的としましょう。
田中ビネー知能検査VとWISC検査の違い
知能検査の1つに「WISC検査」があります。比較対象とされることもある検査ですが、特徴や対象年齢が異なります。
WISC検査の対象年齢は5〜16歳であり、田中ビネー知能検査Ⅴよりも限定的です。対象年齢の幅が広い田中ビネー知能検査Ⅴは、2歳からでもこなせる問題なので、難易度は低いといえるでしょう。
得意不得意を把握して、今後の支援や学習方法の手がかりを得る目的は、田中ビネー知能検査Ⅴと同じです。一方でWISC検査は、以下の4つの指標をもとに、知能指数(IQ)を数値化する検査になっています。
- 言語理解
- 知覚推理
- 処理速度
- ワーキングメモリー
4つの指標にそってそれぞれの知能指数を評価するため、より詳細に知的能力を把握できるとされています。[4]
どちらの検査が有効かは、検査する人によっても異なります。迷うことがあれば、専門の医療機関や各自治体にある特別支援教育課などに相談してみましょう。
他の知能検査は下記の記事よりご覧ください
まとめ
田中ビネー知能検査Ⅴは、知能指数や精神年齢がわかる検査です。結果から知的能力だけでなく、得意不得意な分野や発達の遅れが把握できます。
検査キットが販売されているので自宅でも検査可能ですが、心配な方は、専門の医療機関や自治体の特別支援教育課などに相談してみましょう。
【参考文献】
[1]立命館大学人間科学研究所/田中ビネー知能検査開発の歴史
https://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_06/093-112nakamura.pdf
[2]田研出版株式会社/田中ビネー知能検査V(ファイブ)
http://www.taken.co.jp/vinv.html
[3]山口県/研修テキスト支援をつなぐ-研修編-
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/77079.pdf
[4]杉並区公式ホームページ/わが子の育て辛さを感じたら「WISC(ウィスク)検査と発達障害」(令和元年9月1日、4年3月28日更新)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kosodate/yakudatsujoho/sugilabo/news/r01/1055217.html