SDS(うつ病の心理検査)でわかること|メリットや質問項目・注意点

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

SDSとは

SDS(Self-rating Depression Scale)は、青年から高齢者を対象にうつ性(気分が落ち込んだ状態)[1]を評価する自己評価尺度です。

1965年に米国デューク医科大学の精神科教授であるツアン博士によって作成されました。

20項目の質問に自分で答える形式(自己記入式)で、10分程度で回答できます。

うつ病では何をするにもおっくうになりやすいため、SDSのように項目をしぼった簡単なテストが役立つのです。

「Global Rating」の欄には検査者が患者さんの印象を記入できるため、SDS得点との比較にも役立ちます。[2]

SDS以外にもうつ病の心理検査について知りたいときは、こちらをご覧ください。

SDSでわかること

SDSでは、患者さんが自覚している不調の度合いがわかります。[3]

チェックできる具体的な項目は以下のとおりです。[4]

  • 抑うつ感情(2項目)
  • 身体的症状(8項目)
  • 精神的症状(10項目)

憂うつ感や疲れやすさ、入眠障害などの不調を本人がどのくらい自覚しているかがわかります。

診察の待ち時間に患者さんがセルフチェックし、その結果をもとに診察できるため効率よく本人の状態を確かめられるのです。[1]

待ち時間に利用できるのは簡単でよいですね!

SDSのメリット

SDSのメリットとして、以下5つが挙げられます。[1]

  • 項目数が少なく、うつ病のように何かする元気がない方にも有用である
  • 回答は「ないかたまに」「ときどき」「かなりのあいだ」「ほとんどいつも」の4段階評価であり、無難な中間の回答ができない
  • 得点が逆転する項目がランダムに配列されているため、結果を予測して回答するのが困難である
  • 信頼できるデータが得られ、一般成人だけでなく青年期や高齢者に対しても有用である
  • 正常、神経症、うつ病の3群の平均値は危険率(仮説が正しいのに棄却してしまう確率[5])1%以下で有意差があり、妥当性が高いテストである

信頼性、有用性が高い検査であり、医療現場や企業など様々な場面で使いやすい検査です。

SDSの活用場面

SDSの活用場面として、以下が挙げられます。

  • 医療機関でのスクリーニング(病気の可能性がある人を見つける検査)
  • 職場のメンタルヘルスチェック[6]
  • 精神科・心療内科での重症度チェック
  • 治療前・治療中・治療後におけるうつ性の変化チェック

短時間で簡単に実施できるため、時間が十分に取れない環境(医療現場や企業など)で活用されています。

SDSの評価項目

SDSの評価項目は以下の20項目です。[1]

  1. 憂うつ
  2. 日内変動
  3. 啼泣(泣くこと)
  4. 睡眠
  5. 食欲
  6. 性欲
  7. 体重減少
  8. 便秘
  9. 心悸亢進
  10. 疲労
  11. 混乱
  12. 精神運動性減退
  13. 精神運動性興奮
  14. 希望のなさ
  15. 焦燥
  16. 不決断
  17. 自己過小評価
  18. 空虚
  19. 自殺念慮
  20. 不満足

SDSは20項目という少ない質問で幅広くうつ病傾向をとらえられます。

具体的な質問内容は心理検査出版 三京房さまにお問い合わせください。

SDSの採点方法・結果

SDSの採点方法は、以下のとおりです。[7]

  • ない か たまに=1点
  • ときどき=2点
  • かなりのあいだ=3点
  • ほとんどいつも=4点

それぞれの回答を合計すると最低20点、最高80点となります。

結果は以下を参考にしてください。[8]

  • 20~39点以下::抑うつ傾向は乏しい
  • 40~49点:軽度の抑うつ傾向あり
  • 50点以上:中等度か、それ以上の抑うつ傾向あり

点数が高いほど抑うつ傾向が高くなり、カットオフ値は40点です。

SDSの注意点

SDSは自己回答が可能な人のみに適応できます。

コミュニケーションに障害があり意思疎通をはかるのが難しい方には適応できません。

高齢者や視覚障害があり文字がよく見えない方は、SDS L判(A4版)を利用しましょう。

SDS L版では、文字・記入欄ともに大きくなっているため、セルフチェックの手助けになります。

Q:SDSでうつ病という結果が出たら必ずうつ病ですか?

「SDSでうつ病という結果が出たら必ずうつ病」というわけではありせん。

心理検査は病気の可能性を見つける検査であるため、カットオフ値(検査の陽性、陰性をわける区切りの値)を超えても、あくまでうつ病の「疑い」という解釈になります。

反対にカットオフ値を超えなかった場合も、うつ病の疑いがないとは言えないのです。

心理検査は医師が診断する際に参考にするもので、診断を下すためのものではないという点が大切です。[9]

心理検査の結果にかかわらず、心の疲れがたまっているときや原因がわからない不調に悩まされているときは、医療機関を受診しましょう。

診断は医師が診察して行います。
気になる症状があるときは、まず受診をしましょう

Q:SDSで中等度以上のうつという結果が出ました。入院や薬の増量をすすめられそうで不安です。

SDSの結果だけで患者さんの状態を判断したり、治療方針を決定したりすることはありません。

SDSを実施する目的は治療方針の決定のためではなく、うつ症状を客観的に評価して患者さんが感じているつらさをより理解するためです。

治療前、治療中、治療後におけるSDSの結果を把握し、治療が進むにつれて改善している部分を確認するためにも実施します。

入院や薬の増量などは医師の診察による総合的な判断の上で提案されるため、心理検査の結果のみで決められるものではないのです。

「心理検査の結果によって治療内容が変わるかも…」と身構えず、正直な気持ちを記入してください。

まとめ

SDSは青年から高齢者を対象にうつ性(気分が落ち込んだ状態)を評価する自己評価尺度です。

20項目の質問から構成される検査で、10分程度で抑うつ感情、身体的症状、精神的症状という幅広いうつ病の症状をチェックできます。

本人が自覚している不調の度合いを効率よく確認できるため、多くの医療現場や職場のメンタルヘルスチェックで使用されています。

SDSは自己記入式の検査であるため、コミュニケーションに障害があり自分の状態を評価できない状態の方には適応できません。

また、SDSは診断を確定させるものではなく、あくまで医師による診断の参考になるものであることにも注意が必要です。

SDSの結果にかかわらず、つらさを感じることがあれば医療機関に相談しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、日々うつ病の診察や治療を行っています。どんなことでもお気軽にご相談ください。自宅からの受診を希望される場合は、オンライン診療のご利用がおすすめです。

【参考資料】
[1]心理検査出版 三京房
https://www.sankyobo.co.jp/asds.html

[2]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=138

[3]労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/mental/10.html

[4]SDS(Zungの自己評価式抑うつ尺度)の質問文の表現に関連した応答バイアスの検証
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbhmk1974/26/1/26_1_34/_pdf

[5]言語統計学入門(5)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mathling/33/5/33_351/_pdf

[6]企業従業員の健康度自己評価:心身症状および健康指標との関連

[7]スモン患者の抑うつの研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610120B_upload/201610120B0007.pdf

[8]身近な人がうつかなと思ったら読む本 和田秀樹 小学館

[9]こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1522

目次