睡眠障害の心理検査(AIS・ISI・ESS・PSQI)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

睡眠障害の心理検査における目的

睡眠障害の心理検査は、患者さんの睡眠の状態を正確に把握し適切な治療につなげるための重要なツールです。

心理検査を行う目的には、次の2つがあります。

  • 症状を客観的に把握する
  • 診断を確定する際の参考にする

睡眠障害は、患者さんの主観的な訴えだけでは正確な診断が難しいです。そのため、心理検査を通じて症状の種類や重症度を詳しく確認することが大切です。不眠の程度や日中の眠気の状態など具体的な数値として症状を評価できるため、より適切な診断ができます。

心理検査の結果から、医師は薬物治療や生活習慣の改善など治療法の選択を客観的なデータに基づいて行えるのです。

睡眠障害の症状や重症度を判断するために行います

睡眠障害の心理検査一覧

睡眠障害の心理検査には、次の4種類があります。

異なる側面から睡眠の状態を評価でき、診断や治療に役立つ情報を提供します。それぞれの検査の特徴を見ていきましょう。

アテネ不眠尺度(AIS)

アテネ不眠尺度は、不眠症の診断の参考には欠かせない世界標準の評価ツールです。

WHO(世界保健機関)が中心となって作成した検査で、世界共通の基準として活用されています

それぞれの質問に0(良い)~3(悪い)の4段階で回答し、合計点を求めてみましょう。

寝床についてから実際に寝るまで、時間がかかりましたか?0123
夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?0123
希望する起床時間より早く目覚めて、それ以降眠れないことはありましたか?0123
夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?0123
全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?0123
日中の気分はいかがでしたか?0123
日中の身体的及び精神的な活動の状態はいかがでしたか?0123
日中の眠気はありましたか?0123

引用:長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル

合計点から症状の重症度を以下のように判断できます。

  • 0~3点:睡眠がとれている
  • 4~5点:不眠症の疑いあり
  • 6点以上:不眠症の可能性が高い

患者さんの負担を抑えながら、症状を正確に評価できます。世界共通の基準に基づいて、不眠の重症度を客観的に判定することが可能です。

不眠症重症度質問票(ISI) 

不眠症重症度質問票は、不眠症に特化した評価方法として世界中で活用されている検査です。

この質問票では、不眠症の主観的な重症度を詳しく測定できます。たとえば、寝つきの悪さや睡眠の質などのさまざまな角度から不眠の状態を評価します。それぞれの質問に0(良い)~4(悪い)の5段階で回答し、合計点を求めてみましょう。

寝つきの困難01234
睡眠維持の困難01234
目が覚めるのが早すぎる問題01234
現在の睡眠パターンにどの程度、満足/不満足ですか?01234
睡眠の問題が、日中の機能(日常の能力、集中力、気分等)をどの程度妨げていると考えますか?01234
他の人から見たら、睡眠の問題があなたの生活の質を妨げている程度はどのくらいですか?01234
現在の睡眠の問題が、どの程度、心配/不快ですか?01234

引用:不眠症重症度質問票|にいじゅく組合診療所

合計点から、以下のように不眠症の分類がされます。[1]

  • 0~7点:不眠症なし
  • 8~14点:不眠前段階
  • 15~21点:中等度不眠
  • 22~28点:重度不眠

不眠症重症度質問票は、不眠症のスクリーニング検査としても優れた性能を発揮するのです。

エプワース眠気尺度(ESS)

エプワース眠気尺度は、日中の眠気を正確に測定するための検査です。

日常生活の8つの場面を想定し、それぞれの状況で眠くなりやすい程度を評価します。それぞれの質問に0(うとうとする可能性がほとんどない)~3(うとうとする可能性が高い)の4段階で回答し、合計点を求めてみましょう。

座って本を読んでいる0123
テレビをみている0123
公共の場でじっと座っている0123
休憩をとらずに車に同乗している0123
用事がない午後に横になって休んでいる0123
座っておしゃべりをしている0123
昼食後に静かに座っている0123
運転中に渋滞で数分間信号待ちをしている0123

得点が高いほど重度と判定され、11点以上は日中の過剰な眠気があるとされています。[1]

臨床現場で広く使用されている眠気の評価方法であり、治療の必要性を判断する重要な指標です。

ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)

ピッツバーグ睡眠質問票は、睡眠の質を詳しく調べるための標準的な質問票です。

寝つきの良さや睡眠時間、睡眠の満足度など、睡眠に関するさまざまな面を確認できます。患者さんの睡眠の状態を詳しく把握できるため、医師が最適な治療方法を選ぶ際の重要な判断材料となります。具体的には次のような質問項目があります。

【質問例】

  • 過去1か月間において、通常何時ごろ寝床につきましたか?
  • 過去1か月間において、寝床についてから眠るまでにどれくらい時間を要しましたか?
  • 過去1か月間において、実際の睡眠時間は何時間くらいでしたか?これは、あなたが寝床の中にいた時間とは異なる場合があるかもしれません。
  • 過去1か月間において、どれくらいの頻度で、眠るために薬を服用しましたか(医師から処方された薬あるいは薬屋で買った薬)?

引用:ピッツバーグ睡眠質問票

検査の結果は、次の7つの項目で評価します。

  • どれだけ良く眠れたか(睡眠の質)
  • 何時間眠れたか(睡眠時間)
  • 寝床に入ってから実際に眠るまでの時間(入眠時間)
  • 実際に眠れた時間の割合(睡眠効率)
  • 夜中に目が覚めるなどの問題(睡眠困難)
  • 睡眠薬を使っているかどうか
  • 日中眠くなってしまうか

それぞれの項目に点数をつけ、合計点が高ければ高いほど、睡眠に問題があると考えられるのです。

睡眠障害の心理検査における注意点

睡眠障害の心理検査における注意点は、患者さん自身が自分の症状を過小評価してしまう傾向があることです。[2]

たとえば、日中の眠気について「それほどでもない」と感じていても、実際にはかなりの眠気を感じているケースがあります。実際の睡眠について身近な人による具体的な観察内容は、診断や治療方針の決定につながるのです

睡眠障害の心理検査では、患者さんの自己評価と周囲の観察の両方を考慮した総合的な症状評価を行うことが望ましいでしょう。

検査をすることで、患者さんが自分の症状と向き合うきっかけにもなります。

まとめ

睡眠障害の心理検査は、睡眠の問題を適切に診断し治療につなげるための重要なツールです。

心理検査には、不眠症重症度質問票(ISI)やエプワース眠気尺度(ESS)など目的に応じたさまざまな種類があります。心理検査の結果は、治療方針の決定や症状の客観的な評価に活用されます。

ただし、検査結果の解釈には注意が必要です。症状の過小評価を防ぐため、身近な人にも協力してもらいましょう。適切な心理検査と正確な評価により、より効果的な睡眠障害の治療ができるのです。

【参考文献】
[1]睡眠,尾﨑章子
http://jachn.umin.jp/pdf/chiikikangoindex/No11_suimin.pdf

[2]睡眠時無呼吸症候群について Epworth sleepiness Scale ESS|福井県
https://www.pref.fukui.lg.jp/kenkei/doc/kenkei/naka8-naka700_d/fil/gozonjidesuka.pdf

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