強迫性障害の心理検査(OCI-R・MOCI・Y-BOCS)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

強迫性障害の心理検査とは

強迫性障害の心理検査は症状の程度を客観的に評価するために行われ、次の3つの役割があります。

  • 治療の進捗を見れる
  • 家族に情報提供できる
  • 治療の計画を立てられる

まず、強迫性障害の治療の進捗を確認できます。検査を受けることで、症状がどのくらい改善しているかを数値で把握できるのです

次に、家族に症状を説明する際の情報提供として活用できます。専門的な検査結果があると、周囲から強迫性障害への理解を得やすくなるのです。

また、検査結果をもとに具体的な治療計画を立てられます。患者さんの回復をサポートする重要なツールとして活用されています。

適切な治療計画をたてる参考になります

強迫性障害の心理検査一覧

強迫性障害の心理検査には、おもに次の3種類があります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

強迫性障害症状改訂版(OCI-R)

強迫性障害症状改訂版(OCI-R)は、強迫性障害の症状を総合的に評価できる心理検査です。

質問は18項目あり、0(全くあてはまらない)~4(非常にあてはまる)までの5段階で評価します。質問は、強迫行為と強迫観念の2つから構成されています。[1][2]

たとえば「物に触れた後、手を洗わないと不安になる」「何度も確認しないと気が済まない」などの質問に回答するのです。

OCI-Rは0~72点で評価され、一般的に点数が21点以上であれば、強迫性障害の可能性があるとされます。[1]

モーズレイ強迫神経症質問紙(MOCI)

モーズレイ強迫神経症質問紙(MOCI)は、強迫性障害の症状を検査する質問紙形式の心理検査です。

質問は30個あり、1(そうではない)~3(その通りだ)の3択で回答します。質問内容は、3項目から構成されています。[3]

  • 確認行為:何度もチェックをする
  • 清潔・洗浄行為:キレイにしようとする
  • 疑惑・強迫的思考:自分の行為や思考に対して強く疑う

強迫性障害でよくみられる症状を網羅しており、日常生活での具体的な場面を想定した質問が特徴です。たとえば「ドアの鍵を何度も確認する」「手を洗う回数が多すぎると思う」などの質問があります。

MOCIは13点以上だと、強迫性障害の可能性があるとされています。簡単に実施でき、症状の深刻さを正確に評価できる検査です。

エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)

エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)は、強迫性障害の症状がどのくらい日常生活にきたすかを調べる心理検査です。

強迫観念と強迫行為の両方について、10個の質問それぞれに0~4で評価を行い、合計得点で症状の重症度を判定します。[4]

詳しい質問内容については、こちらの日本不安症学会の質問用紙をご覧ください。

Y-BOCSの点数が16点以上になると、強迫性障害の可能性が高いとされています。[5]結果から、1日のうちどのくらいの時間を強迫的な考えや行動に費やしているか、それによって日常生活にどの程度支障が出ているかなどを確認できます。

強迫性障害の心理検査における注意点

強迫性障害の心理検査を受ける際には、2つの注意点があります。

  • 事前に質問紙の内容を調べない
  • 強迫症状を引き起こす状況を想定して答える

まず、事前に質問紙の内容を調べないようにしましょう。質問の内容を知っていると、正確な評価ができなくなってしまいます

また、質問には強迫症状が出やすい状況を想像して答えましょう。その状況を回避しようとすると、実際の症状よりも軽く評価される可能性があります。たとえば、外出先でドアノブを触らなければいけない状況で、肘でドアを開けたりハンカチを使ってドアノブを触ったりする(回避)と想像するのはやめましょう。

回答する際は、行動したら自分がどう感じるかを想定して、答えるようにしてください。

「日ごろの自分だったら…」という気持で回答しましょう

まとめ

強迫性障害の心理検査は症状を客観的に評価し、適切な治療につなげるための大切なツールです。

おもな心理検査には、OCI-R、MOCI、Y-BOCSの3種類があります。検査を受ける際は事前に内容を調べず、強迫症状が出やすい場面を回避せずに回答するようにしてください。

心理検査の結果は、治療の進捗確認や家族への説明に活用できます。強迫性障害の正確な診断と評価のために、医師から心理検査を提案されたら受けてみてくださいね。

【参考文献】
[1]Obsessive Compulsive|OCI-R|Greenspace (US)

[2]強迫性障害を自己診断|日本精神医学研究センター
https://japan-seishin-research.org/psychological/ocd

[3]リアリティ・モニタリング・エラーと強迫神経症傾向の関連
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/77/0/77_1EV-053/_pdf

[4]自己記入式YALE-BROWN 強迫観念・強迫行為評価スケール(Y-BOCS)日本語版
https://jpsad.jp/files/JSARD_recommended_scale_Y-BOCS.pdf?1623318296

[5]強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113840.pdf

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