ストレスに関する心理検査(SCI・EAS・職業性ストレス簡易調査票)
この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。
ストレスの心理検査とは
ストレスに関する心理検査は、心の病気になる前の段階で強いストレスを感じている人を見つけ、医師や相談機関による適切な指導や状況の改善につなげるのが目的です。[1]
あくまでも心の病気を防ぐためにストレスが高い人を見分けるためのものであり、うつ病をはじめとした心の病気を診断するものではありません。
今回はSCIラザルス式ストレスコーピングインベントリー、EAS自我態度スケール、職業性ストレス簡易調査票について解説します。
ストレスに関する他の心理検査についてはこちらをご覧ください。
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリー
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリーは、生活の中で形成された行動の傾向や習慣、クセを調べ、ストレスへの反応や対処の傾向を理解する検査です。[2]
ストレス対処行動の2つのストラテジー(心理的・行動的な過程やその経験によって生じる結果)と8つの対処型のプロフィールを評価できます。
検査対象は18歳以上で10分程度で実施でき、自己採点によりすぐに結果を把握できる簡便さが特徴です。
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリーは、以下の場面で活用されています。
- 病院や福祉施設などでの臨床活用
- 大学や専門学校などにおける学生相談
- 職場のメンタルヘルスや産業カウンセリング
EAS自我態度スケールとの併用により、日常生活の困難や圧力、悩みなどにうまく対処する方法を考えやすくなります。[3]
検査内容
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリーは、以下2つの調査に分かれています。
■調査Ⅰ:ストレスコーピングインベントリー
最近体験した「強い緊張を感じた状況」と「対処方法」について、以下3段階で回答する(全64問)
・あてはまる
・少しあてはまる
・あてはまらない
■ 調査Ⅱ:ストレスに対する体験調査(カウンセリング資料用)
30項目の中から現在感じているストレスや不安(とても困ったりつらいと感じたりしていること)を3つほど回答する
結果
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリーの結果により、2つのストラテジーと8つの対処法の評価が可能です。[4]
■2つのストラテジー
1.認知的ストラテジー:事件に対してチャレンジする傾向や積極性(問題志向)
2.情動的ストラテジー:事件の圧迫に耐えられず、情動の軽減を図る傾向、消極性(情動志向)
■8つの対処型
1.計画型:よく考える・慎重性、計画性がある
2.対処型:自己信頼感が強い・問題に積極的に対処する・自信がある
3.社会的支援模索型:社会へ適応力がある・他者を信頼する・依頼心が強い
4.責任受容型:従順型。現実的、具体的に自分の役割を自覚する・責任感が強い
5.自己コントロール:自分の感情や行動を制御する・慎重型・他人の気分を害さない
6.逃避型:問題解決の意欲を失う・やけになる・問題を他人のせいにする
7.離隔型:自分とできごとの間を切り離す・問題を忘れる
8.肯定評価型:自己発見、自己啓発・自己改革の機会ととらえる・経験を重視する
得点は各項目とも以下の5段階に分けられます。[5]
5:その特性傾向が非常に強いといえる
4:その特性傾向がかなり強いといえる
3:その特性傾向が普通程度に認められる
2:その特性傾向が比較的少ないといえる
1:その特性傾向がほとんど認められない
EAS自我態度スケール
EAS自我態度スケールは、18歳以上を対象にストレス対処行動に影響を与える人格の特徴や社会との関係性の特徴を調べる検査です。[6]
検査の結果は、ストレスへの対処行動をよりよい方向へ変えていくために役立ちます。
実施時間、採点時間ともに10分程度で、自己採点方式の検査のためスピーディーな結果の把握が可能です。
SCIラザルス式ストレスコーピングインベントリーとの併用により、自分の特性をより深く自覚できます。
10分ほどでストレスへの対処法を
変えるきっかけが作れるのはよいですね!
検査内容
EAS自我態度スケールは、自分自身、他者、社会に対する傾向を94項目の質問を通して確認します。
各質問は以下7つの評価項目に分かれています。
- 批判性:責任、主張、正義
- 養育性:保護、記憶、慈愛
- 円熟成:親和、統合、博愛
- 合理性:現実の吟味、情報収集、理性
- 自然性:自由、愛情、衝動
- 直感性:好奇心、創造、操作
- 適応性:従順、忍耐、しつけ
それぞれの質問に「あてはまる」から「あてはまらない」の3段階で回答します。
結果
EAS自我態度スケールでわかるのは、ストレス対処行動に関連した自我態度の傾向です。
各項目の得点は以下の5段階に分けられます。[5]
5:その特性傾向が非常に強いといえる
4:その特性傾向がかなり強いといえる
3:その特性傾向が普通程度に認められる
2:その特性傾向が比較的少ないといえる
1:その特性傾向がほとんど認められない
傾向が強い場合と弱い場合の特徴は以下のとおりです。[5][7]
■批判性
強い:信念や責任感が強い・批判が多く厳しい・リーダーシップに優れている
弱い:のんびりしている・規律を守らない・受身的
■養育性
強い:人を育てるのが上手・おせっかいで過保護になりやすい
弱い:客観的に物事を見る・配慮がなく共感性に欠ける
■円熟成
強い:人間味あふれる・個人を犠牲にしても世のため人のために尽くす
弱い:自己中心的・やさしさに欠ける
■合理性
強い:現実を把握し、行動手段を整える・計算高い
弱い:人間味がある・感情に流される
■自然性
強い:天真爛漫・感情豊か・傍若無人・ありのままの自分を表現するのが得意
弱い:控えめ・暗く無気力
■直感性
強い:創造性豊か・予測がよく当たる・理論の裏付けが苦手
弱い:カンが鈍い・じっくり時間をかけて決断する
■適応性
強い:対人関係がよい・感情が出せず抑うつ的
弱い:自由気まま・自分勝手・人とよくぶつかる
職業性ストレス簡易調査票
職業性ストレス簡易調査票は、職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策として導入されている検査です。[1]
労働者が50人以上いる事業所で「1年に1回」「すべての労働者に対して」実施が義務付けられています。
ストレスチェックの目的は以下の3つです。
- 労働者が自分のストレス状態を客観的に知ること
- 事業者が労働者のストレスレベルを正しく把握すること
- 仕事の軽減や職場環境を改善し、うつ病をはじめとした病気に発展させないこと
職業性ストレス簡易調査票は医師の指導が必要な人を発見するものであり、うつ病をはじめとした心の病気を診断するものではありません。
検査の結果、ストレスが高いと評価された人やメンタルヘルス不調が確認された人は、本人が希望すれば医師との面談が可能です。
医師との面談によりストレスの原因が職場環境にあると判明した場合、会社は職場環境の改善をする努力義務があります。
ストレスチェックは大切な業務です!
検査内容
職業性ストレス簡易調査票は57の質問により、現在のストレス状況を数値化して評価するものです。
質問内容は以下のA~Dに分かれています。[1]
- A:仕事の内容や質に関する質問群
職場環境や人間関係が自分から見て気分がよいのか、不本意なものではないのかについて
- B:心身のストレス反応に関する質問群
「へとへとだ」「ゆううつだ」などの気持ちの変化や「体のふしぶしが痛む」「動悸や息切れがする」などのうつ病にみられる体調不良について
- C:周囲のサポートに関する質問群
ストレスを抱えたときに身近に相談したり悩みを打ち明けられたりする人がいるかについて
- D:家庭と家族に対する満足度に関する質問群
仕事や家庭に対してどの程度満足しているかについて
実際にこちらから職業性ストレス簡易調査票を受検できます。
5分程度で回答できるため、気軽な気持ちで実施し心身の健康に役立てましょう。
結果
職業性ストレス簡易調査票の判定では、合計得点を使う方法と粗点換算表を使う方法があります。
以下で解説するのは合計得点を使う方法です。
職業性ストレス簡易調査票では、以下のいずれかを満たす場合に「高ストレス者」と判断されます。[8]
・領域Bの合計点数が77点以上(最高点は4×29=116点)であること
・領域AとCの合算の合計点数が76点以上(最高点は4×17+4×9=104点)であり、かつ領域Bの合計点数が63点以上であること
職業性ストレス簡易調査票の結果は個人情報の保護に関する法律に従い、回答や結果が本人の同意なく職場に知られないよう注意深く扱われます。
まとめ
ストレスに関する心理検査は、病気になる一歩手前の段階において高ストレス状態の人を見つける検査です。
職業性ストレス簡易調査票のようにネット上でも手軽にできるストレス検査を活用し、自分の心身の健康度をチェックする習慣をつけましょう。
ストレスが高いという結果が出た場合は「今の働き方は自分に合っているかな?」「人間関係でムリしていないかな?」と振り返るきっかけになります。
医師や相談機関と面談し、自分の状態を客観的に振り返るのもよいでしょう。
おおかみこころのクリニックに「心理検査の結果ストレスが高くて…。ちょっと話を聞いてほしいんですが…」とお気軽にご相談ください。
あなたがストレスから身を守り、のびのびと生活できる環境や方法を一緒に考えていければ幸いです。
【参考文献】
[1]身近な人がうつかなと思ったら読む本|和田秀樹 小学館
[2]千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=186
[3]教育評価研究所
http://www.test.co.jp/products/detail.php?product_id=327
[4]サクセス・ベル株式会社
https://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/sci.html
[5]理学療法学科生の実習成績と情意特性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/21/2/21_2_131/_pdf
[6]千葉テストセンター心理検査研究所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=187
[7]作業療法学専攻学生の対面授業とオンライン授業受講によるストレスと個人特性の関係
https://ghs.hirosaki-u.ac.jp/ot/wp-content/uploads/2005/03/Graduate_Thesis_vol.19_2023.pdf
[8]厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150803-1.pdf