ストレスに関する心理検査(PSI育児ストレスインデックス・PSI-SF・PSIパブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

PSIとは

PSIとは、育児ストレスや親子の問題などについて評価する心理検査です。

関連した検査とそれぞれの特徴として以下が挙げられます。

  • PSI育児ストレスインデックス
    育児や家族などに関する78の質問に関する検査で、20〜30分程度の時間が必要。
  • PSI-SF 育児ストレスインデックスショートフォーム
    PSI育児ストレスインデックスの短縮版。
    短時間で実施できるため健診で使用されやすい。
  • PSIパブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー
    子ども用ストレスチェックであり、小学4年生〜高校3年生までが対象。

この記事では、それぞれの検査について詳しく解説します。

他のストレスに関する心理検査は下記の記事をご覧ください。

PSI育児ストレスインデックス

PSI育児ストレスインデックスは、生後3か月〜3歳までの子どもを育てている母親(おもな養育者)を対象に、育児ストレスや親子・家族の問題などを評価する心理検査です。[1]

78の質問に「まったく違う」~「まったくそのとおり」の5段階で回答し、結果は以下のように役立てられます。

  • 親自身:育児を客観的にとらえてストレスを緩和するきっかけとする
  • 支援者:援助が必要なケースを早期に発見したり、継続的に使用して援助の効果を確認したりする

検査を実施する流れは以下のとおりです。[2]

1.検査について説明し、同意を得る
2.質問・回答用紙を配布する
3.検査を実施する(20〜30分)
4.質問・回答用紙を回収する
5.集計、プロフィールを作成する
6.アセスメント、相談・援助する

質問数が多く20〜30分の時間を要するため、健診での使用はPSI-SF 育児ストレスインデックスショートフォームが適しています。

検査内容

PSI育児ストレスインデックスの質問は、大きく以下2つに分けられます。[3]

それぞれ解説します。

子どもの側面に関する質問項目(子領域)

子どもの側面に関する質問は、以下7つの因子から構成されます。[3]

1.親を喜ばせる反応が少ない(親を喜ばせる反応の少なさ)
質問例:
 ・私の子どもは思っていたよりずっと笑わない
 ・この子のために何かするとき、この子にあまり喜ばれていないと感じる

2.子どもの機嫌の悪さ(子どもが不機嫌になりやすい度合い)
質問例:
 ・私の子どもは、他の子どもよりずっと泣きやすく、 むずがりやすい
 ・私の子どもは、とても不機嫌で泣きやすいと思う

3.子どもが期待通りにいかない(子どもの発達や能力が母親の期待通りではないと感じるか)
質問例:
 ・私の子どもは、他の子どものように物覚えが早くない
 ・私の子どもは、私が期待していたほどのことができない

4.子どもの気が散りやすい/多動:(子どもの散漫性や多動性)
質問例:
 ・私の子どもは元気すぎて私が疲れる
 ・私の子どもは、思ったよりずっと活発だ

5.親につきまとう/人に慣れにくい(親への固執性や人に対する適応性の悪さ)
質問例:
 ・私の子どもは、いつも私につきまとって離れない
 ・私の子どもを人にあずけるのはいつもむずかしい

6.子どもに問題を感じること(子どもに感じる問題)
質問例:
 ・私の子どもは、思った以上に問題であるということがわかった
 ・私の子どもは、年齢がすすみ自立するに従い、問題が多くなるのではないかと不安に思う

7.刺激に過敏に反応する/ものに慣れにくい(刺激に対する過敏性やものに対する適応性の悪さ)
質問例:
 ・私の子どもは、いつも新しいおもちゃで遊び始めるまでしばらくかかる
 ・私の子どもは、大きな音や強い光に過敏に反応しやすい

親の側面に関する質問項目(親領域)

親の側面に関する項目を構成するのは、以下8つの因子です。

1.親役割によって生じる規制
質問例:
 ・子どもの要求を満たすために、私は思ったより自分の生活をあきらめていると思う
 ・この子を産んでから、 私は新しいことを始めることができない

2.社会的孤立
質問例:
 ・私は孤独で、友達がいないと感じている

3.夫との関係
質問例:
 ・子どもを産んでから、 私は夫と一緒にすることが少ない
 ・子どもを産んだことにより、夫との問題が思ったより多く生じている

4.親としての有能さ
質問例:
 ・私は子どもの世話をしているとき、有能でうまくできていると感じる(逆採点)
 ・私は物事をうまく扱えないと感じることが多い

5.抑鬱・罪悪感
質問例:
 ・私はいつも、子どもが何か悪いことをすると、私のあやまちだと感じてしまう
 ・子どもに対する感じ方について、罪の意識をもつことが多い

6.退院後の気落ち
質問例:
 ・子どもを連れて退院したあとの約1か月間、思っていたより悲しく、落ち込んでいることに気づいた
 ・子どもを連れて退院したとき、私は親としてこの子を扱えるか自信がなかった

7.子どもに愛着を感じにくい
質問例:
 ・子どもともっと親密で暖かい感情をもてると期待していたので、そのことが気になる

8.健康状態
質問例:
 ・身体的に、私は大体において調子がいい

結果

PSI育児ストレスインデックスの結果は「パーセンタイル表」に得点を記入し、プロフィールとして作成されます。

パーセンタイル表の形状をもとにした育児ストレスの特徴は以下のとおりです。

上半分の線が右側に突出している:子どもの特徴に関するストレスが高い
下半分の線が右側に突起している:親自身に関するストレスが高い

引用:サクセス・ベル株式会社

PSI-SF 育児ストレスインデックスショートフォーム

PSI-SF 育児ストレスインデックスショートフォーム(以下PSI-SF)は、PSI育児ストレスインデックスの短縮版です。[4]

生後3か月〜3歳の親を対象に育児ストレスや親子・家族の問題などを短時間で評価し、支援の方針をすみやかに見出せるように開発されました。

親の感じているストレスが「子どもの特徴に関するもの」か「親自身や環境に関すること」であるのかを把握できるため、親子の間に生じている問題を把握するときに有用です。

PSI-SFは、スクリーニング(援助の必要な親子を見つけること)や支援の効果を知るときに役立つため、以下のような場面で活用されます。

  • 育児相談
  • 1歳半健診
  • 診断の参考
  • 治療計画の立案
  • 研究用のツール

回答後には親自身がワークブックを使って検査結果を振り返るため、育児を客観的に見直してストレスを緩和するきっかけになります。

検査の流れは以下のとおりです。[4]

1.検査について説明し、同意を得る
2.質問・回答用紙を配布する
3.検査を実施する(約3分)
4.質問・回答用紙を回収する(2枚目のみ)
5.支援者:集計、プロフィールを作成する
  回答者(親):ワークブックでセルフチェックする
6.アセスメント、相談・援助する

検査内容

PSI-SFは19の質問から構成されており、各質問に以下の5段階で回答します。[5]

  • まったく違う
  • 違う
  • どちらとも言えない
  • そのとおり
  • まったくそのとおり

質問は以下のように「子どもの特徴に関するストレス」と「親自身のストレス」に分けられます。

■子どもの特徴に関するストレス(9項目)
質問例:
 ・私の子どもは、元気すぎて私が疲れる
 ・私の子どもは、他の子どもと比べて集中力がない

■親自身のストレス(10項目)
質問例:
 ・私は親であることを楽しんでいる
 ・子どもの世話について問題が生じたとき、助けやアドバイスを求める人がたくさんいる

結果

PSI-SFの評価は、以下のように支援者と親自身により行われます。

■支援者
 ・集計・プロフィール用紙に子どもの側面と親の側面の得点を計算する
 ・PSI-SFの得点は25点〜125点で評価され、得点が高いほど育児ストレスが高いことを示す[5]

■親自身
 ・ストレスタイプ別のアドバイスや各質問についての解説がされているワークブックを使い、セルフチェックする
 ・結果について気になることがあったときは、相談予約をしたり専門家や機関を紹介してもらったりする

PSIパブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー

PSIパブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー(以下PSI)は、子ども用のストレスチェックテストです。[6]

子どもの心の健康状態について、以下3つの尺度に従い回答します。[7]

・ストレス反応(心身の不調)
・ストレッサー(ストレスの原因)
・知覚されたソーシャルサポート(周りからの援助)

PSIは相談機関や学校などで使用され、検査対象に合わせて以下のいずれかを選択する形式です。

活用場面として挙げられるのは以下のとおりです。
・相談機関や学校で定期的な心の健康診断として使用する
・問題を抱えている子どもを早期に発見し、適切な援助をする
・日常的な観察では気づけなかった子どもの隠れた問題を発見する

実施時間、採点時間ともに10分程度であるため、普段の学校生活の中で実施できます。

子どものストレスが大きくなる前に
気づくきっかけになりますね!

検査内容

PSIは対象によって質問項目が異なります。

それぞれ解説します。

小学生用(33項目)

小学生用のPSIを構成するのは以下の質問項目です。[6]

■SR: ストレス反応(心身の不調)
 ・PHY:身体的反応(3項目)
 ・DEP:抑うつ・不安(3項目)
 ・IRR:不機嫌・怒り(3項目)
 ・HEL:無力感(3項目)

■ST:ストレッサー(ストレスの原因)
 ・TEA:教師との関係(3項目)
 ・FRI:友人関係(3項目)
 ・ACA:学業(3項目)

■SS:ソーシャルサポート(周りからの援助)
 ・父親(3項目)
 ・母親(3項目)
 ・担任(3項目)
 ・友人(3項目)

中学生用(44項目)

中学生用のPSIは以下の質問項目によって構成されます。

■SR: ストレス反応(心身の不調)
 ・PHY:身体的反応(4項目)
 ・DEP:抑うつ・不安(4項目)
 ・IRR:不機嫌・怒り(4項目)
 ・HEL:無力感(4項目)

■ST:ストレッサー(ストレスの原因)
 ・TEA:教師との関係(4項目)
 ・FRI:友人関係(4項目)
 ・ACA:学業(4項目)

■SS:ソーシャルサポート(周りからの援助)
 ・父親(4項目)
 ・母親(4項目)
 ・担任(4項目)
 ・友人(4項目)

高校生用(47項目)

高校生用のPSIを構成する質問は以下のとおりです。

■SR: ストレス反応(心身の不調)
 ・DEP:抑うつ・不安(5項目)
 ・IRR:不機嫌・怒り(5項目)
 ・HEL:無力感(5項目)

■ST:ストレッサー(ストレスの原因)
 ・TEA:教師との関係(4項目)
 ・FRI:友人関係(4項目)
 ・ACA:学業(4項目)
 ・CAR:進路(4項目)

■SS:ソーシャルサポート(周りからの援助)
 ・父親(4項目)
 ・母親(4項目)
 ・担任(4項目)
 ・友人(4項目)

結果

PSIは以下3つの構成要素により「高ストレス状態か、そうでないか」や「面接指導を要するか、そうでないか」をフィードバックします。[8]

  • SR:ストレス反応(心身の不調)
  • ST:ストレッサー(ストレスの原因)
  • SS:ソーシャルサポート(周りからの援助)

それぞれ解説します。

SR:ストレス反応

SR(ストレス反応)でわかるのは、子どもがストレス状態にあるときに表れる身体的・心理的な反応です。

得点が高いときの結果は以下を参考にしてください。[6]

■PHY:身体的反応 (小学生用・中学生用のみ)
ストレス反応が身体化されている可能性がある

■DEP:抑うつ・不安
不安や心配な気持ちがある・気持ちが沈んでいる

■IRR:不機嫌・怒り
イライラや怒りの感情に支配されている

■HEL:無力感
脱力感や根気のなさがみられる・意欲の低下が強い状態である

ST:ストレッサー

ST(ストレッサー)では、子どもが学校生活で経験することが多く、嫌悪的と感じやすい出来事の経験頻度を測定します。

得点が高いときの結果は以下のとおりです。[6]

■TEA:教師との関係
教師から叱責されることが多かったり、教師に対して何らかの不満を感じていたりする

■FRI:友人関係
クラスメートとの人間関係がうまくいっていない

■ACA:学業
授業内容が理解できない・自分自身が期待しているような成績が取れない

■CAR:進路 (高校生用のみ)
卒業後の進路が曖昧である・保護者を含む周囲からの支持がない

SS:ソーシャルサポート

SS(ソーシャルサポート)では、知覚されたサポート(自分がストレス状態にあるときに、周囲の人がどの程度助けになってくれるか)について評価されます。

「父親」「母親」「担任」「友人」から、どの程度のサポートを受けていると本人が自覚しているかがわかります。[6]

まとめ

PSIに関連した心理検査は以下の3つがあります。

利用場面や目的、検査対象に合わせて使用する検査を選択します。

PSIは心の状態を客観視してストレスとの付き合い方を見直したり、相談や支援の機会につなげたりするための検査です。

ストレスが病気に発展する前に心の健康診断をして、ストレスとの付き合い方を見直しましょう。

「病気ではないと思うけどストレスがたまっていてつらい…」とお悩みの方は、おおかみこころのクリニックにご相談ください。

【参考文献】
[1]サクセス・ベル株式会社
https://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/psi.html

[2]雇用問題研究会
https://www.koyoerc.or.jp/assessment_tool/psi.html

[3]日本版 Parenting Stress Index (PSI)の信頼性・妥当性の検討
https://hama-med.repo.nii.ac.jp/record/385/files/ShoniHoken-58_5-610.pdf

[4]サクセス・ベル株式会社
https://www.saccess55.co.jp/psi_sf.html

[5]育児ストレスショートフォームの開発に関する研究
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2005/006403/006/0408-0416.pdf

[6]千葉テストセンター心理検査専門所|PSIパブリックヘルスリサーチセンター版ストレスインベントリー
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=192

[7]中学生の精神的負担感による心身症状の現状調査とそのサポートシステムの構築

[8]千葉大学|子どものストレスチェック
https://www.cocoro.chiba-u.jp/rccmd/StressCheck/gaiyou.html

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