不安に関する心理検査(STAI 状態・特性不安検査、新版STAI、MAS 顕在性不安尺度、CMAS 児童用不安尺度)

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

不安に関する心理検査とは

不安に関する心理検査は、本人が抱えている不安や自分では気づいていない不安を数値化し、本人や周囲が理解を深めるために行います。

社交不安障害の診断補助として利用されたり、うつ病をはじめとした精神疾患の治療効果を見たりするときに役立てられます。

今回は、以下の心理検査について解説します。

不安に関するほかの心理検査については、こちらの記事をご確認ください。

STAI 状態・特性不安検査

STAI 状態・特性不安検査(以下STAI)は、中学生以上を対象に不安に関する以下の2因子を測定する検査です。[1]

  • 状態不安:特定の場面で一過性に感じられる不安
  • 特性不安:状況に影響されず長期的に感じている不安

40の質問に10分程度で回答したあと自己採点をするため、すぐに結果を把握できます。

検査内容

STAIの質問は「状態不安:20問」「特性不安:20問」の計40問で構成され、それぞれ4段階で回答します。

状態不安は、現在置かれている状況に関連した質問です。[2]

  • 気持ちが落ち着いている
  • ホッと心休まる感じがする
  • 何か悪いことが起こりはしないかと心配だ

特性不安は不安や心配の傾向を示し、以下のような質問があります。

  • 物事を難しく考えすぎてしまう
  • 幸せそうな人を見ると自分もそうなりたいと思う
  • 失敗するとひどくこたえてなかなか頭から離れない

回答者は先に状態不安について回答し、次に特性不安について回答します。

結果

カットオフ値(不安が高いと判定される値)は以下のとおりです。[3]

・状態不安:男性48点、女性46点以上
・特性不安:男性49点、女性48点以上

得点が高いほど不安が高いことを示します。

新版STAI

新版STAIは、不安測定の検査である英語版「STAI-Y」を改良し、日本の文化的な要因についても考えられた検査です。[4]

日本人が持ちやすい感情を考慮することで、より正確に回答者の不安を測定できるようになりました。

新版STAIは18歳以上を対象に、以下のような場面で利用可能です。

  • 学生相談
  • 病院でのスクリーニング
  • 職場でのメンタルヘルスチェック

STAIと同様に40の質問に10分程度で回答し、15分程度で自己採点を行います。

日本人向けに改良された検査ですね

検査内容

新版STAIを構成するのは、STAY Y-1とSTAY Y-2の各20問です。

🔳STAI Y-1
状態不安検査(「今まさに、どのように感じているか」に関する検査)
20項目:「全くあてはまらない」 から 「非常によくあてはまる」までの4段階で回答する

🔳STAI Y-2
特性不安検査(「ふだん一般、どのように感じているか」という不安体験に関する検査)
20項目:「ほとんどない」 から 「ほとんどいつも」までの4段階で回答する

状態不安得点が高いほど現在の不安が強く、特性不安得点が高いほど不安を感じやすい性格傾向であることを示します。[5]

結果

新版STAIの結果は以下のように評価されます。[6]

段階1:35点未満
段階2:35~45点未満
段階3:45~55点 未満
段階4:55~65点未満
段階5:65点以上

段階 1、2は低不安段階 4、5は高不安です。

MAS 顕在性不安尺度

MAS顕在性不安尺度(以下MAS)は、総合的な不安の程度(身体的不安・精神的不安)を測定する検査で、不安のスクリーニングテストとして使用されます。[7]

顕在性不安とは、精神的・身体的な徴候として表出される不安です。[8]

MASは16歳以上を対象に不安感や身体的な現れを測定し、不安の程度を明らかにすることを目的として作成されました。[9]

検査は10〜15分で実施できるため、診察の待ち時間を利用した実施が可能です。

統合失調症や心身症などによる不安の測定や、心理療法の効果確認などに利用されています。

検査内容

MASは以下の65項目により構成されています。[9]

  • 不安に関係した50項目
  • 回答の妥当性を判定するための15項目(虚構点)

虚構点は回答者が自分をよく見せようとする意図を検出するために作られたものです。

虚構点に該当するものが11個以上ある場合は、妥当性に疑いがあるとみなされます。

MASでは、各項目について「そう」「ちがう」のどちらかに〇印を記入し「どちらでもない」ときは両方に✕印を記入するように指示されています。

結果

MASの結果は以下のように整理されます。[9]

Q尺度:×印の項目数
L尺度:虚構点の15項目に○印がつけられた数
MAS得点:不安に関連した50項目に○印がつけられた数

MAS得点が高い人の特徴は以下のとおりです。

  • 自信がない
  • 身体的な訴えが多い
  • 集中力を保ちにくい
  • 不幸感と無能感をもつ
  • 他人の反応に敏感である
  • 大体いつも興奮している・落ち着かない

MAS得点が男性:19点以上、女性:22点以上のときに「不安傾向がある」と判断されます。

CMAS 児童用不安尺度

CMASはMASの児童版であり、小学4年生から中学3年生を対象に総合的な不安の程度を測定する心理検査です。[10]

CMASでは、状況に影響されず長期的に感じている不安(特性不安)を測定します。

検査の妥当性を測定する虚構性項目も設定されているため、結果の信頼性についても検討可能です。

子どもが受けやすい検査内容になっています

検査内容

CMASは以下の53項目で構成されています。

  • 不安を測定する42項目
  • 検査の妥当性を測定する11項目

質問には理解しやすい言葉が使用されており、児童の負担にならないよう工夫されているのが特徴です。

不安尺度には以下のような質問が含まれます。

例)
・ときどき胸がどきどきすることがある
・何をやっても集中できず気が散りやすい

回答は「はい」「いいえ」「わからない」の中からひとつを選び、それぞれ◯や×を記入する形式です。

検査は約10分程度で回答し、2分程度で結果を整理します。

結果

CMASにより測定された不安の程度は、合計点により以下の5段階で評価されます。

・Ⅰ:非常に低い不安
・Ⅱ:低い不安
・Ⅲ:正常 
・Ⅳ:高い不安
・Ⅴ:非常に高い不安

結果は神経症や心身症などの診断や、心理療法をはじめとした治療効果を確認するときに利用されます。[11]

まとめ

不安の心理検査は目に見えない不安を評価できるため、本人や周囲の人が不安を理解しやすくなります。

不安を数値化して評価することで、心の病を防いだり治療効果を確認したりするときに有用です。

「検査で不安が高いという結果が出る=必ず精神疾患がある」というわけではありません。

精神疾患の診断には医師の診察が必要なため、不安感が強い人は医師に相談しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、不安に悩む方の相談をお待ちしております。

オンライン診療ではご自宅からの受診が可能ですので、お気軽にご相談ください。

【参考資料】
[1]STAI 状態・特性不安検査(FormX)|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=143

[2]状態―特性不安尺度(STAI)の検討およびその騒音ストレスへの応用に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh1946/43/6/43_6_1116/_pdf

[3]厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)「拠点病院集中型から地域連携を重視したHIV診療体制の構築を目標にした研究」令和2年度 分担研究報告書
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202020003A-buntan3.pdf

[4]新版STAI 状態・特性不安検査(Form-JYZ)|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=144

[5]日本語版 Managing Uncertainty in Illness Scale-Family Member Form(病気に対する不確かさ尺度-家族用)の信頼性および妥当性の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/34/1/34_201427/_pdf

[6]Clearing A Space による状態不安の低減
https://www.akira-ikemi.net/ewExternalFiles/2012KU-uemura.pdf

[7]MAS 顕在性不安尺度|サクセス・ベル株式会社
https://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/mas.html

[8]MAS 不安尺度|教育評価研究所
http://www.test.co.jp/products/detail.php?product_id=70

[9]咽喉頭異常感患者に対するManifest Anxiety Scale(MAS)の臨床経験
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo1958/41/2/41_2_132/_pdf

[10]CMAS 児童用不安尺度|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=237

[11]厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2002/000208/200200374A/200200374A0004.pdf

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