POMS2とは|気分状態を評価する7つの尺度とTMD得点

この記事は検査の内容を含むため、
結果に影響を与える可能性があります。
検査を受ける本人でない場合のみ、お進みください。

目次

POMS2とは

POMS2とは、気分の状態を評価する心理検査です。[1]

1994年から日本で使用されているPOMSを改訂して作成されました。

POMS2には以下4種類の検査用紙があり、対象者の年齢や検査目的に合わせて使い分ける必要があります。

気分について十分な評価が必要なとき
  • 成人用(18歳以上)/全項目版
  • 青少年用(13~17歳)/全項目版
モニタリングやスクリーニング・対象者の負担を減らしたい・時間が制限されているとき
  • 成人用/短縮版
  • 青少年用/短縮版

不安に関するほかの心理検査については、こちらの記事をご確認ください。

POMSからの変更点

POMSからPOMS2における変更点として、以下5点が挙げられます。[1]

  • 時代に合わなくなった項目が変更された
  • 新たに「友好」尺度が追加され、7尺度(POMSは6尺度)から気分状態を測定できるようになった
  • 総合的気分状態得点である「TMD得点」が標準化された
  • 対象年齢が拡大し、発達段階を考慮した「青少年用(13〜17歳)」が作成された
  • 以下の時間枠を設定し、目的に応じて使い分けられるようになった
     ・今日を含めて過去1週間
     ・今現在
     ・希望の時間枠

活用場面

POMS2の活用場面は以下のとおりです。[2]

🔳医療・看護・福祉・カウンセリング
  ・治療効果のモニタリング
  ・職員のストレスマネジメン
  ・個人・集団のスクリーニング
  ・患者の気分状態を知るツール

🔳企業・各種団体
  ・健康診断をはじめとした社員のメンタルヘルスケア

🔳スポーツ
  ・オーバートレーニングの予防
  ・選手の疲労度チェックやコンディション調整

🔳その他
  ・医薬品や食品、森林浴などによる気分変化の把握
  ・実験的研究によるリラクセーション効果の判定や疲労感の測定

検査内容

POMS2は検査用紙の質問に「まったくなかった」から「非常に多くあった」の5段階で回答する形式です。

質問数は検査用紙によって異なり、以下のように設定されています。

  • 成人用/全項目版:65項目
  • 成人用/短縮版:35項目
  • 青少年用/全項目版:60項目
  • 青少年用/短縮版:35項目

POMS2で評価できるのは以下7尺度とTMD得点です。[1][3]

🔳怒り~敵意(AH):怒りと他者への反感・強烈な怒り・内心の腹立たしさ・他人に意地悪したいなどの思いの強さ

🔳混乱~当惑(CB):当惑と認知能力の低さ・頭が混乱して考えがまとまらない状態

🔳抑うつ~落込み(DD):自分に価値がない・希望が持てない・罪悪感があるなど自信が喪失している状態

🔳疲労~無気力(FI):疲労感があり、意欲や活力が低下している状態

🔳緊張〜不安(TA):緊張や不安の高まり・神経が高ぶりや落ち着かない状態

🔳活気〜活力(VA):元気さ、躍動感、活力の高さ

🔳友好(F):ポジティブな気分状態・対人関係の影響

🔳総合的気分状態(TMD):怒り・抑うつ・不安などのネガティブな気分状態の強さ[4]

結果

POMS2では、7つの尺度と総合的気分状態 (TMD)から気分状態を評価します。[5]

7つの尺度のうちネガティブな気分状態を表す尺度は以下の5つです。

ネガティブ
  • 怒り~敵意(AH)
  • 混乱~当惑(CB)
  • 抑うつ~落込み(DD)
  • 疲労~無気力(FI) 
  • 緊張〜不安(TA)

これらの得点が高ければ高いほど、対象者の精神状態がネガティブであることを意味します。

ポジティブな気分状態を表す尺度は以下2つです。

ポジティブ
  • 活気〜活力(VA)
  • 友好(F)

これらは得点が高いほど精神状態がポジティブであると判定されます。

TMD得点は総合的な気分のネガティブさを表す指標で、得点が高いほどネガティブな感情が強いことを意味します。

POMS2の各尺度で高得点(60点以上)を示す人の特徴は以下のとおりです。[6]

🔳怒り~敵意(AH):イライラしやすい・不機嫌になりやすい・他人に反感を持ちやすい・怒りを表出する

🔳混乱~当惑(CB):混乱している・考えがまとまらない

🔳抑うつ~落込み(DD):自分は価値のない人間だと感じる・ものごとに対処できない・孤独を感じる・悲しい・罪悪感を持つ

🔳疲労~無気力(FI):疲れ切って元気がない・活力が低い

🔳緊張〜不安(TA):気が立っている・不安が動作に現れる(例:震え)

🔳活気〜活力(VA):活力がある・ポジティブな感情を感じる

🔳友好(F):他人に対してポジティブな感情を抱く

🔳総合的気分状態(TMD):ネガティブな感情が強く、気分をコントロールしづらい

注意点

POMS2は時間枠の設定ができますが、基本的に「過去1週間」における心理状態の測定を想定して開発された検査です。

そのため「今現在」の心理状態には適切でない項目も含まれています。

たとえば「すぐかっとする」「どうも忘れっぽい」などは、長期的な心理状態や個人的な特性を表す項目です。

研究課題や実験などの前後における「今現在」の心理状態としては回答しづらい項目も含まれています。[7]

また、POMS2は病気を診断するものではありません

あくまで気分の状態を知り、ストレスの改善や精神的な疲労の改善に役立てるためのものです。

ネガティブな気分が強い=精神疾患があるというわけではないため注意しましょう。

POMS2の結果のみで精神疾患の有無を判断することはできないため、診断には医師の診察が必要です。

まとめ

POMS2は気分の状態を調べる検査です。

評価は以下により行われます。

  • ネガティブな感情を表す5つの尺度
  • ポジティブな感情を表す2つの尺度
  • ネガティブな気分状態を総合的に評価するTMD得点

POMS2は精神疾患の有無を診断する検査ではありません。

診断には医師の診察が必要であるため、つらい気持ちを抱えているときは医療機関を受診しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、あなたの相談をお待ちしております。

【参考資料】
[1]POMS2 日本語版|千葉テストセンター心理検査専門所
https://www.chibatc.co.jp/cgi/web/index.cgi?c=catalogue-zoom&pk=154

[2]POMS2 日本語版 ( Profile of Mood States 2nd Edition) |サクセス・ベル株式会社
https://saccess55.co.jp/untitled514.html

[3]心身の状態がすぐわかる『POMS』検査に迫る|金子書房
https://www.note.kanekoshobo.co.jp/n/n3e1aa83f6f13

[4]青年女性を対象にした自己診断疲労度チェックリストの妥当性の検討https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2019/29/2019_526/_pdf

[5]大学体育におけるこころの準備運動としての「笑い準備運動」の教育効果
https://2020.daitairen.or.jp/dtr2020/wp-content/uploads/2023/03/daigakutaiikusportsgakukenkyu_No20_p33-47.pdf

[6]保育実習生のストレスマネジメント支援に関する基礎調査~ POMS2 を用いた実習前後の気分調査とストレスコーピングの変化~
https://meilib.repo.nii.ac.jp/record/571/files/miyazakigakuentankidaigaku_kiyou-vol9_15watanabe.pdf

[7]感情・覚醒チェックリスト(EACL)を用いた 1 ヵ月の心理状態の測定の信頼性・妥当性の検討https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_93.21313/_pdf/-char/ja

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