適応障害

適応障害は、明確に確認できる精神的ストレスにより、身体症状や精神症状を呈している状態のことを指します

適応障害とは

適応障害は、明確に確認できる精神的ストレスにより、身体症状や精神症状を呈している状態のことを指します。具体的な症状としては、「寝つきが悪い(入眠困難)」、「もっと眠りたいのに毎日早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)」、「仕事や作業などでミスが増えてしまう」、「気分が落ち込む(抑うつ気分)」、「胃のムカムカ、喉がつまっている感じ、めまいや耳鳴りなどが続く(身体化)」、「休みの日でもリラックスができず、趣味もやる気が起きない(意欲、興味関心の低下)」などです。その他にも、音や光が気になる、ちょっとしたことでイライラしやすいなど敏感さが強くなる患者さんもいらっしゃいます。

また、適応障害の患者さんの数はここ2007年から2017年の10年間で2.5倍増加していることが厚生労働省から報告されています。決して珍しい病気ではないため、「もしかしたら適応障害かも?」と疑った場合には、早期の精神科・心療内科受診が望ましいです。

参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_pdf/-char/ja

患者さんの特徴

仕事のミスで上司からひどく怒られてしまうことは稀なことではないかと思いますが、そういった状況で必要以上に「自分が悪いんだ」、「自分なんて必要とされていないんだ」と考えてしまう傾向のある方は要注意です。また、一人暮らしで気軽に相談できる人が周囲に少ない方や、自分の悩みを他の人に相談するのは気が引けてしまい一人で抱え込んでしまう方も適応障害を発症するリスクが高いことが知られています。
ストレスに対して適当に対応する「お気楽タイプ」な人に比べて、責任感が強い「真面目タイプ」の方が発症しやすい病気です。

適応障害かと思ったら

明確なストレスを感じた後に、前述した適応障害の症状に当てはまるかもしれないと感じた場合には、可能な限り早い段階で精神科・心療内科を受診しましょう。「適応障害」の診断を受けた場合には、適切な休養を取ることが必要です。また、症状が悪くなるリスクもあるため定期的な通院加療が重要です。

どれくらい通院するの?

一般的に適応障害の治療期間は、3か月程度(最長でも6ヶ月)です。適応障害診断基準[日本精神神経学会, 2014]でも症状が6か月以上持続しないことが必要とされています。治療期間に関しては、患者さんの生活環境、発症の原因となったストレスの内容やストレス負荷がかかっていた期間などによっても様々ですので、同様の病気で通院されている他の患者さんとあまり比べすぎないことが重要です。特に治療中は、「早く仕事に戻らないといけない」、「自分が休んでいると周りに迷惑がかかってしまう」と考えてしまうことが多く、治療を焦ってしまう患者さんが多いため、個々人のペースで治療を進めていくことが、早期の回復には重要となります。

どんな治療を行うの?

適応障害の治療の3本柱は「適切な休養及び環境調整(ストレスから距離を取る)」、「服薬治療」、「精神療法や心理療法」

(適切な休養、環境調整について)

前述した通り、「明確に確認できる精神的ストレス」が発症の原因となるため、ストレスから物理的かつ心理的に距離を取ることが治療の大原則です。仕事量の増加により症状が出現した方の場合は休職が必要ですし、大学のサークルの人間関係が悪化したことにより症状が出現した方はサークル活動をお休みすることが必要になります。
また、この休養に関しても数日~1週間程度ではなく、1~2か月以上の休養が必要になってきます。1週間程度の休みでは、ストレスが頭の中から完全に抜けることがなく、身体的にも精神的にも休まらないまま元の環境に戻ってしまうことが多いからです。
適応障害を発症する患者さんの多くは、治療の早期の段階で「早く元の環境(仕事、学校など)に戻りたい」と考えることが多いです。しかしながら、十分な休養を取らないまま元の環境に戻ってしまうと、最初に困っていた症状がぶり返してしまう(症状の再燃)ことが多いため、最低でも1か月は休養期間を設けることが早期回復につながります。

場合によっては、休職は行わずに職場内の配置転換や異動などで症状が改善することもあります。その場合は、診断書に部署や配置転換が望ましいという旨を主治医に記載してもらい、職場との調整を行う必要があります。しかしながら、配置転換等でも症状が改善しない場合には症状が悪化してしまう前に休職などの選択肢を取ることが望ましいです。

休養の後の復帰(復職、復学など)のタイミングに関しては、主治医と患者さんで相談しながら決めていくことが一般的です。復帰する場合にも職場や学校などと相談しながら、徐々に元の環境に戻っていくことが必要となります。

(薬物療法について)

適応障害では様々な症状が出現する可能性があります。眠れない、食欲がでない、やる気が出ない、気分が落ち込む等の精神症状はもちろんのこと、胃痛や腹痛、めまいや吐き気、身体の痛みや痺れなどの症状が出現する場合はあります。
適応障害に対する薬物療法は、「今現在困っている症状」に対して対症療法的に行うことが一般的です。具体的には、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠導入剤などが使用されます。

抗不安薬は、適応障害によって引き起こされる不安や緊張感を軽減する薬です。適応障害によって生じる不安や緊張感は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで引き起こされることが多く、抗不安薬は、この神経伝達物質のバランスを調整することで、不安や緊張感を緩和する作用があります。

抗うつ薬は、適応障害によって引き起こされる気分の落ち込みや憂うつ感を軽減する薬です。適応障害によって生じる気分の落ち込みや憂うつ感は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで引き起こされることが多く、抗うつ薬は、この神経伝達物質のバランスを調整することで、気分の改善を促す作用があります。

睡眠導入剤は、適応障害によって引き起こされる睡眠障害を改善する薬です。適応障害によって生じる睡眠障害は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで引き起こされることが多く、睡眠導入剤は、この神経伝達物質のバランスを調整することで、睡眠障害を改善することが可能となります。

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