解離性障害

解離性障害における「解離」とは、通常統合されているはずの意識、記憶、知覚、アイデンティティ(自己同一性)などが、一時的に分離または分断される状態を指します。この状態では、患者は自己の統一感を失い、異なる部分やアイデンティティを経験し、それぞれが別々に活動します。意識、記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが、通常の一体性を持たなくなることが特徴です。

解離性障害とは

解離性障害の「解離」とは、通常一体に統合されているはずの意識、記憶、知覚、アイデンティティ(自己同一性)が、一時的に分離または分断される状態を指します。この状態では、患者は自己の一体性を失い、異なる部分やアイデンティティを経験し、それぞれが別々に活動します。意識、記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが、通常の一体性を持たなくなることが特徴です。

たとえば、ある特定の記憶が一時的になくなり、気づいたら別の場所にいたと感じる現象や、自分から意識だけが離れた場所から自分を見ているという感覚を持つことがあります。

解離は一過性の現象として誰にでも起こることがあり、特に子供の場合、心の防衛反応として一時的な解離がみられることが多いです。一過性の解離は通常治療を必要としませんが、心が破綻した状態において持続的にみられる解離は、治療が必要とされます。

解離性障害は、解離が持続的かつ深刻な症状として現れ、日常生活や対人関係に大きな影響を及ぼす場合に診断されます。解離性障害は、治療が必要であり、精神保健専門家の支援を受けることが重要です。

解離性障害の原因とは

解離性障害の発病メカニズムは未だに完全に解明されていないものの、主な要因として以下の点が挙げられます。解離性障害の発病要因は複雑で、個人の経験や状況によって異なることがあります。

  1. 心的外傷体験: 解離性障害は、心的外傷体験によるストレスが関連していると考えられています。虐待、暴行、災害、戦闘体験など、極端なストレスが解離のトリガーとなることがあります。
  2. 幼少期の愛着問題: 幼少期に安定した愛着関係が築かれなかったり、虐待的な環境で育った場合、解離性障害のリスクが高まるとされています。愛着問題はアイデンティティの形成に影響を与える可能性があります。
  3. 素質: 個人差があるものの、解離性障害にかかりやすい素質を持つ人もいます。遺伝的な要因や生まれつきの精神的な特性が関与する可能性があります。
  4. 現在のストレス: 解離性障害は、現在のストレスによって発病することがあります。過度のストレスや心的負荷が、解離症状を引き起こす要因となり得ます。

特に幼少期に虐待や愛着問題を経験した人は、解離性障害のリスクが高まります。虐待的な環境では、子供は自己防衛の一環として解離症状を発展させ、痛みや恐怖から逃れようとします。この過程で、異なる人格が形成されることもあります。

解離性障害は非常に複雑で多面的な疾患であり、治療には精神保健専門家の支援が必要です。治療の目標は、解離症状の軽減や管理、安定した自己同一性の回復に向けたものです。

解離性障害の症状や特徴

解離性障害はさまざまな症状を伴う複雑な疾患であり、以下は主な症状および特徴の詳細です。

  1. 解離性健忘: 強い心的ストレスやトラウマによって、特定の出来事や期間についての記憶がなくなる症状です。これは一時的なものであり、通常は記憶が回復しますが、長期にわたることもあります。
  2. 解離性とん走: 自分自身のアイデンティティが一時的に消失し、新しい場所で新たな生活を始める行動が起こる症状です。この期間中の行動についての記憶がないことが一般的です。
  3. 解離性同一性障害: 通常は「多重人格障害」とも呼ばれ、異なる人格が同一の個人内で共存し、交代しながら現れる症状です。各人格は異なる特性や記憶を持ち、個人の行動や感情を制御します。他の人格が支配している間、自己の記憶が欠落することがあります。
  4. 離人症性障害: 自己同一性の感覚が崩れ、自分自身が外部から見ているかのように感じる症状です。現実感が薄れ、自己とのつながりが希薄化します。
  5. 解離性昏迷: 急に言葉を発せず、身体を動かせなくなる症状です。意識は清醒しており、身体機能は正常ですが、運動や発声が制御できなくなります。

これらの症状は解離性障害のスペクトラム内に存在し、個人によって異なる形で表れることがあります。解離性障害は心的外傷や過去のトラウマ、愛着問題、ストレスなどが影響を与えることがあり、治療には精神保健専門家の支援が必要です。適切な治療を受けることで、症状の管理や回復が可能とされています。

解離性障害の診断

DSM-IV-TR(2000)によると、解離性障害は「通常は統合されているべき心の機能における破綻」という特徴を持つ精神障害です。この障害はいくつかのサブタイプに分類され、主なものには以下があります:解離性健忘、解離性とん走、解離性同一性障害、離人症性障害、特定不能の解離性障害。

しかし、患者さんの中には自身が解離症状を抱えていることに気付かないことが多く、他の心身の症状と混同されることもあります。そのため、解離性障害を確定診断することは困難な場合があり、他の精神障害、例えば統合失調症などとの鑑別診断が必要です。

解離性障害は他の精神障害と併存することがよくあり、心的外傷後ストレス障害、うつ病、境界性パーソナリティ障害、摂食障害、アルコールや薬物依存症などと共存することもあります。そのため、診断を行う際には詳細な精神医学的な面接が不可欠であり、他の精神障害の可能性を排除するための検査が行われます。

解離性障害の診断において、特に精神科医による綿密な面接が極めて重要です。診断が確定するまで、長時間にわたる面接や日誌の記録などが必要とされ、別人格の存在や健忘症状の詳細を把握するために医師が別人格との直接接触を試みることもあります。

解離性障害の治療法

解離性障害の治療法として、主に心理療法が推奨されています。しかし、別人格が形成されている場合でも、症状の即時改善を期待するのは難しいことがあります。

まず、患者さんと精神療法家との信頼関係を築くことが重要です。その後、複数の人格が現れた場合、それらに対処するアプローチや、トラウマ体験の記憶を扱う方法を提供することが行われます。これらのアプローチは、効果が期待されています。

一方で、解離性障害に対しては医療保険が適用される治療薬は存在しません。心的外傷後ストレス障害に対しては、SSRIなどの薬剤が使用されることがありますが、全ての患者さんに適用されるわけではありません。抗精神疾患薬の中には、患者さんの症状の種類や重症度によって逆効果を示すこともあるため、注意が必要です。

したがって、解離性障害の治療には時間をかけ、患者さんとの継続的な関与が欠かせず、心理療法をじっくりと続けていくことが重要です。

解離性障害の患者さんを持つご家族・周囲の方ができること

解離性障害の患者は、自身の解離症状に気づかないことがあり、それが原因で予期せぬトラブルに巻き込まれることがあります。この結果、自身や他人への不信感を抱き、社会生活から遠ざかりがちです。この状態が持続すると、他の精神疾患を併発するリスクも高まります。そのため、患者の周囲の支援が不可欠です。以下は、そのサポートに関するポイントです。

まず、解離性障害と解離症状について理解を深めることが大切です。この疾患に関する知識を持つことで、患者の状況を理解しやすくなります。

また、患者に大きなプレッシャーやストレスをかけないよう心がけましょう。解離性障害の症状は予測不可能な時に現れることがあるため、無理に約束を守らせる必要はありません。

さらに、患者が社会との接点を失わないようにサポートしましょう。孤立を防ぎ、社会生活への復帰を支援することが重要です。

最後に、グラウディングと呼ばれるテクニックを用いて、五感を活用し、現実感を取り戻す方法を教えることが役立ちます。これにより、解離症状の管理がしやすくなります。

解離性障害の患者は、ランダムに現れる解離症状により、約束を守れないなどの困難に直面しています。周囲の理解とサポートがあれば、社会生活への復帰がスムーズに進むでしょう。

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