不登校と起立性調節障害|知らなきゃマズイ原因と治療、親にできること

起立性調節障害だと不登校になりやすいと聞いたのですが…

浅田先生

実は、不登校の約3〜4割が起立性調節障害とされているんだ。記事の中で解説するね

起立性調節障害とは、立ち上がるときや動作を始めるときに血圧が下がり、立ちくらみや動悸がする病気です。[1]

とくに身体の成長が進む思春期に目立ちやすく、起床時に強い症状が出て学校に行けなくなることもあります。

夜は元気に過ごせることから「サボり」や「怠け」と言われやすい起立性調節障害ですが、れっきとした身体の病気です。

今回は、起立性調節障害の原因治療法親にできることを解説します。

記事の後半では実際の回復例を紹介しているため、回復までの過程をイメージしてみてくださいね。

この記事を参考に起立性調節障害や子どもの苦しみへの理解を深め、子どもが再び登校できるようサポートしていきましょう。

目次

不登校の約3〜4割が起立性調節障害

不登校の子どもの約3〜4割が起立性調節障害とされています。[2]

不登校に関連する起立性調節障害の特徴は、朝の起きづらさと午前中の体調不良です。

たとえば、以下のような症状がよくみられます。[1]

  • 目は覚めるけど起き上がれない
  • いつまでも布団の中でゴロゴロする
  • 朝は調子が悪く夜になると元気になる

起立性調節障害は子どもの意思の問題ではありませんが「サボり」「怠け」と言われることも少なくありません。

親でさえ子どもの症状を理解できず「サボってるだけでしょ」「いい加減にしなさい」と本人を否定してしまうこともあるでしょう。

そのような声を聞いた子どもは「自分はダメ人間だ」と思いつめてしまい、より学校に行く元気をなくしてしまうのです。

ただ眠たいだけの状態との区別が難しそうです💦

起立性調節障害の原因

起立性調節障害の原因として、以下のようなものが挙げられます。[2][3]

  • 遺伝
  • 自律神経の乱れ
  • 精神的なストレス

起立性調節障害の原因ははっきりしていませんが、遺伝や自律神経の乱れ(心身を活発にする神経とリラックスする神経のバランスが乱れること)、ストレスが関係します。

中でも精神的なストレスは症状を悪化させる原因で、不安や心配を言葉にする力が弱かったり自分の気持ちを押し殺したりしていると、身体の症状となってあらわれるのです。

精神的なストレスが強い場合は、薬を飲んだり生活リズムを整えたりしても症状は改善しません。

「起立性調節障害が原因で学校に行けない」と考える前に、起立性調節障害につながりそうな不安を抱えていないか確認しましょう。[1]

起立性調節障害のチェックリスト

起立性調節障害のチェックをしてみましょう。

子どもの状況にあてはまる部分にチェックを入れてください。(表1)[3]

よくあるたまにあるない
頭が痛い
食欲がない
顔色が青白い
乗り物に酔いやすい
少し動くと気持ち悪くなる
おへそのあたりに腹痛がある
体のだるさや疲れやすさがある
立ちくらみやめまいをおこしやすい
朝なかなか起きられず午前中は調子が悪い
立っていると気持ち悪くなったり倒れたりする
入浴時や嫌なことを見聞きしたときに気持ち悪くなる
表1:起立性調節障害のチェックリスト

チェックリストで「しばしば」「たまに」が3つ以上の場合、起立性調節障害の可能性があります。

お近くの小児科や心療内科などを受診し、医師の診察を受けましょう。

簡単にできるので、ぜひやってみてください!

起立性調節障害を持つ不登校の治療

起立性調節障害の治療は「薬物療法」と「非薬物療法」です。

薬物療法では「メトリジン」や「リズミック」などの薬を使い、めまいやふらつきを抑えます。

起立性調節障害にはストレスや不安が関連しているケースが多いため、薬物療法だけではなかなか改善しません。

そのため、非薬物療法としてカウンセリングや日常生活の指導が必要です。

カウンセリングでは「起立性調節障害は怠けや努力不足が原因ではない」と説明しながら本人が持つ不安を解消します。

回復には周囲の理解が不可欠のため、親も一緒に起立性調節障害について医師や心理士から説明を受け、本人の回復をサポートしましょう。

日常生活の注意点としては、以下のようなことが伝えられます。

  • 適度に運動すること
  • こまめに水分をとること
  • 同じ時間に寝て起きること
  • 立ち続けるときは足踏みすること
  • ゆっくり時間をかけて立ち上がること

薬物療法と非薬物療法を一緒に行うことで治療の効果を高められるため、本人と周囲が前向きに治療に取り組むことが大切です。[3]

起立性調節障害の子どもに親ができること

子どもが起立性調節障害で学校に行けないときは、何よりも子どもの味方になることが大切です。

朝はぐったりしているのに夜は元気な子どもの姿を見ると「本当に病気なの?」と疑ってしまうかもしれません。

ただ、起立性調節障害は心身の病気であり、子どもの意思の問題ではないことを知っておきましょう。

病気と知らず子どもを責めてしまい「私がもっと早く起立性調節障害を知っていたら…」と涙を流される方もいます。

まずは起立性調節障害を理解し、以下のような方法で子どもをサポートしましょう。

  • 朝日が入るように部屋のカーテンを開ける
  • 学校の先生に事情を説明し遅刻を認めてもらう
  • 怠けや努力不足ではないと理解していることを伝える

病気について正しく理解したり協力方法を考えたりするためには、専門的な知識が必要です。

おおかみこころのクリニックでは、起立性調節障害の相談をお待ちしております。ぜひお気軽にご相談ください。

起立性調節障害で不登校だったAさんの回復例

起立性調節障害で不登校だったAさん(15歳)の回復例を紹介します。

■Aさん(15歳・女性)
Aさんは16時頃に起床し、明け方に就寝する生活をしていたため不登校の状態です。
学校に行かず夜は元気に過ごすAさんを母は理解できず、本人の前で人格を否定する発言をして親子関係はひどく悪化しました。
昼夜逆転の生活やリストカットなどの症状が続いたため、Aさんは入院して以下のような治療を受けることになります。

  • メトリジンを服用する
  • 就寝時間のルールを決める
  • カウンセリング治療を受ける

少しずつ午前中に起きられるようになったAさんは、学校に行きたい気持ちを持ち始めます。
勉強の遅れが不安だったAさんはまずフリースクールを利用し、夏休み明けの2学期から元の学校へ登校を始めました。
Aさんの様子を見た母親は無理解だった自分を反省し、態度を改めたことで親子関係も改善されていきます。

Aさんは学校への復帰も順調に進み「学校、楽しかった。『明日も来てね』って言われた」と嬉しそうに話し、少しずつ学校に戻れるようになりました。[4]

まとめ

起立性調節障害は「起き上がれない」「身体がだるい」などの症状が朝に出やすく、欠席につながりやすい病気です。

周囲からの理解されにくく「サボり」「甘え」などと言われやすいため、本人も「自分は意志の弱いダメな人間だ」と自分を責めてしまいます。

ただ、起立性調節障害は身体の病気であり本人の気持ちの問題ではありません。

起立性調節障害の症状にはストレスや不安が大きく関係しているため、周囲の理解が必要です。

「病気を治そうと一生懸命なことはわかっているよ」と親がいちばんの味方となることで、子どもは安心して治療に取り組むことができます。

起立性調節障害の正しい理解と治療のためには、専門家に相談した方がよいでしょう。

おおかみこころのクリニックでは、起立性調節障害の相談もお待ちしております。ぜひお気軽にご相談ください。

【参考文献】
[1]不登校に陥る子どもたち 成重竜一郎 合同出版

[2]厚生労働省 母子保健指導者養成研修 研修7.「子どもの心の診療医」指導医研修https://boshikenshu.cfa.go.jp/assets/files/history/r2/tr7_lecture_4.pdf

[3]岡山県教育委員会 起立性調節障害対応ガイドライン
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/604493_5061359_misc.pdf

[4]東京都医師会 学校精神保健に関する事例とその解説(4)
https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/gakkou/application/pdf/cc31176cd310a81aeba096776b0631ca.pdf

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