うちの子はHSCなのですが、親のせいなのでしょうか?
親のせいとは言えないよ。記事の中で解説するね
HSC(Highly Sensitive Child)とは「親の心を読む」「大きな変化に対応しづらい」などの特徴を持つ敏感性の高い子どもです。[1]
子どもにHSCの特性があると「育て方に問題があったのかな」「学校や社会でうまくやっていけるのかな」と心配になりますよね。
そこで、今回の記事ではHSCが親のせいではない理由や、HSCが持つリスク、HSCのために親ができることなどについて解説します。
記事の後半では、親のNG行動やHSCのよさを伸ばす関わりについても解説しているので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。
HSCは親のせいではない
HSCが親のせいではない理由として、以下のふたつが挙げられます。
- HSPではない親からもHSCが生まれるから
- 敏感さのあらわれ方は環境により異なるから
HSCは遺伝することもありますが、HSP(Highly Sensitive Person:感受性が高く敏感な成人)ではない親からHSCが生まれる場合もあります。
また、HSCの遺伝子をもって生まれてきても、育つ環境によって敏感さのあらわれ方が異なります。
たとえば、周囲の人に愛され肯定されて育った場合は、HSCの気質を持っていても精神的な問題を抱えることはありません。
一方で、HSCが虐待やいじめなどにあった場合は、敏感さが強くあらわれうつや引きこもりなどの問題を抱えやすくなります。
HSCには生まれ持った本人の気質や家庭外の環境も大きく影響するため、すべてが親のせいとは言い切れないのです。[1]
【親のタイプ別】HSCが持つリスク
親のタイプにより、HSCが持つリスクが異なります。
今回は以下のふたつのパターンに分けて見ていきましょう。
それぞれ解説します。
親がHSPの場合
親がHSPの場合に考えられるリスクは、社会的なスキル(自分で考えたり感じたりする力)の低下です。
HSPである親は子どもの繊細さを理解しているため「子どもが傷つかないように」と過保護、過干渉になりやすいとされています。
例として、以下のケースを見てください。
■HSCのAちゃん(10歳)とHSPのお母さん
Aちゃんはクラスの男子が怖くて教室に入れず、特別支援学級にお母さんと一緒に登校しています。
お母さん自身もHSPのため「Aちゃんの気持ちが分かるのは私しかいない」という思いから、Aちゃんを放っておけません。
Aちゃんはお母さんの顔色をうかがいながら、親が喜ぶようなことばかりしています。
このケースからわかるように、過干渉は無意識に子どもを支配するのです。
過干渉の親のもとで育つと親の顔色をうかがう癖がつき、引っ込み思案の性格になってしまいます。
自分で考える力や感じる力が低くなるため、世の中でうまくやっていけないリスクがあるのです。[2]
親がHSPではない場合
親がHSPではない場合、HSCは自分の感情を押し殺して常に親の意向に合わせるリスクがあります。
HSPではない親は子どもの敏感さを理解できないため「気にしすぎだ」「そんなこと言うのはお前だけだ」とイライラしやすいかもしれません。
さまざまな場面で否定されて育つことにより、子どもに「自分はダメな人間だ」という思い込みが生まれます。
その結果、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先し、常に相手の意向に合わせるようになるのです。[2]
HSCのために親ができること
HSCのために親ができることとして、以下の3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
自分と子どもを分けて考える
「自分と子どもは別の人間」と心の中で境界線を引きましょう。
子どもが乗り越えるべき課題にまで親が手を出すのは過干渉です。
過干渉は「やさしい虐待」ともいわれ、無意識に子どもを支配しようとします。
その結果、子どもは自分で考えたり失敗したりして成長する機会を逃してしまうのです。
子どもを心配する気持ちは一度脇において「本当はどうしたいのか」を子ども自身が決められるように見守りましょう。[2]
子どものよい部分に注目する
子どものよいところに目を向けましょう。
HSCを育てていると「引っ込み思案で友人の輪に入っていけない」「何をするにも慎重で進まない」のように、子どもの心配なところに目がいきがちです。
子どもの弱点ばかり気になってしまうときは、以下のような言い換えをしてみましょう。[3]
- 気が弱い:思いやりがある
- 慎重:冷静で観察力がある
- 主体性がない:協調性がある
ささいなことに傷つきやすいHSCにとって、親が自分のよい部分を見てくれているという安心感は大きな自信になります。
子どものよい部分を共有しながら「あなたはあなたのままでよい」というメッセージを伝えましょう。
子どものペースを尊重する
HSCを育てるときは、本人のペースを尊重しましょう。
HSCには「自分のペースを尊重してくれる」「自分を分かってくれる人がいる」という安心感が必要です。
ときには、親が理解できないことを怖がったり嫌がったりするかもしれません。
しかし「怖くない!」「そんなこと言ってると何もできないよ!」と親のペースに巻き込まないようにしましょう。
子どもは本当はどうすべきかを理解していますが、それでも不安だから「待って」と助けを求めているのです。
自分で「大丈夫」と思って一歩を踏み出したとき、子どもは自分に自信を持つことができます。
大人の基準で判断せず、子どもの感じ方やペースを尊重しましょう。[3]
HSCにしてはいけないこと
HSCにしてはいけないこととして、以下の3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
子どもの感じ方を否定する
本人の感じ方を否定するのはやめましょう。
HSCの中には、周囲が怖がらないことを非常に怖がる子がいます。
例として挙げられるのは、以下のような場面です。
- 遊園地のアトラクションを怖がる
- 子どもに人気のテレビ番組を怖がる
- お祭りやショーなどの人混みを怖がる
親は「なんでうちの子だけ他の子と違うんだろう」と思ってしまうかもしれませんが、子どもの感じ方を否定したり責めたりするのはやめましょう。
子どもが「自分はダメな人」「周りと違う変な人」と思い込み、自信を失ってしまいます。
本人の感じ方を否定せず「今は怖いんだね」「びっくりしたね」と動揺する子どもの気持ちに寄り添いましょう。
恐怖がずっと続くものではなく、慣れれば平気になると伝えるのも効果的です。
「慣れたら意外と平気だった」という体験が「今度は別のものに挑戦したい」という子どもの自信につながります。[2]
子どもが嫌がるのに褒める
子どもが褒められるのを嫌がる場合は、言葉で褒めないよう注意が必要です。
HSCの中には、褒められるとプレッシャーを感じてしまう子がいます。
たとえば「上手だね」と褒められると、いつも上手でなければいけないと感じてしまうのです。
このような場合は、褒める代わりに存在を肯定するのがよいでしょう。
子どもの好きな遊びやゲームを一緒に楽しんだり、ハグやタッチなどのスキンシップをしたりして「あなたを大事に思っているよ」という気持ちを伝えるのです。[2]
楽しい時間を共有したり身体のあたたかい感覚で包んだりして、言葉を使わずポジティブなメッセージを届けましょう。
HSCであることを心配しすぎる
HSCであることを心配して、子どもを守りすぎないように気を付けましょう。
子どもの問題に関わりすぎると過干渉となり、自分で考える力や感じる力を奪ってしまいます。
その結果、自分の気持ちに従って行動しなくなり「本当の気持ちがわからない」と子どもが悩んでしまうのです。
子どもが持つ力を信じて、失敗したときや傷ついたとき帰れる場所を作りましょう。
「何があっても私たちはあなたの味方だよ」と日頃から子どもに伝え、適度な距離感を保って見守ることが大切です。
HSCのよいところを伸ばす関わり
HSCのよいところを伸ばす関わりとして、以下の3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
得意な部分を伸ばす
HSCの得意な部分を伸ばしましょう。
本人の得意に磨きをかけることで、苦手な部分が克服できるケースがあります。
例として「ピアノを弾くのが得意だけど、人前に出るのは苦手なBちゃん」について見てみましょう。
Bちゃんは得意なピアノの演奏に磨きをかけることで、次第に「みんなに演奏を聴いてほしい」という気持ちが芽生えました。
その結果、全校生徒の前で校歌の伴奏をしたりピアノのコンクールに出場したりできるようになったのです。
このように、得意を伸ばすことで苦手とする能力が引き上げられることがあります。[2]
HSCが持つ得意な部分に目を向けて、子どもがいきいきと自信を持てるようにしましょう。
よい刺激を多く与える
HSCには意識的によい刺激をたくさん与えることが大切です。
HSCは周囲の悪い刺激に影響を受けやすいのと同様に、よい刺激からも多くのものを受け取ります。
以下のようなものを与えることを意識しましょう。[2]
- 美しい芸術や景色
- 存在を肯定する愛情
- 本人に合った学習環境
よい刺激に囲まれているとストレスを受けにくくなったり、傷ついたときの回復が早くなったりします。
周囲の環境に影響を受けやすいHSCだからこそ、意識的によい刺激を与えることが大切です。
興味のあることに取り組ませる
本人が「やりたい」と積極的になれる習い事や部活に取り組ませましょう。
親から見て向いていないと思っても、子どもが望んだことは試しにやらせてみてください。
例として「ピアノをやりたい」と言ったCちゃんのケースを紹介します。
Cちゃんは聴覚過敏(音に敏感に反応し、人よりも疲れたり困ったりすること)があったため、親はピアノに否定的でした。
しかし実際にレッスンに通い始めると、聴覚過敏の耳のよさがプラスに働き、みるみるうちに上達したのです。[2]
Cちゃんはピアノ教室の先生や友人という新たな仲間を見つけて、普段の表情も明るくなりました。
このように、親から見た適性よりも本人の気持ちを尊重することで、夢中になって没頭できるものが見つかります。
自信が芽生えて心身が安定する効果も期待できるため、本人が興味のあることには積極的に取り組ませましょう。
まとめ
HSCは親のせいではありません。
敏感さのあらわれ方には、本人が生まれ持った気質や学校を含めた家庭外の環境も影響するため、すべてが親のせいとは言い切れないのです。
HSCを育てるときには、過干渉にならないことや本人のペースを尊重することに注意しましょう。
本人の感じ方を否定したり、HSCであることを心配しすぎたりしないというのも大切なポイントです。
HSCには「観察力がある」「優しくて気がきく」のようなよい部分がたくさんあります。
「あなたはあなたのままで素晴らしい」と愛情をたくさん注いで、HSCのよさを伸ばしましょう。
【参考文献】
[1]我が子にHSC傾向を感じる母親の 幼稚園就園へ向けた活動プロセス Ⅰ.問題と目的 1.HSCとはhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/reccej/61/1/61_67/_pdf/-char/ja
[2]子どもの敏感さに困ったら読む本 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼 睦雄 誠文堂新光社
[3]HSCの子育てハッピーアドバイス 明橋大二 1万年堂出版
コメント