別室登校とは、教室に行けない子どもや不登校の子どもが学校に通いながら、教室とは別の場所で学習する支援方法です。完全な不登校状態から教室復帰へのステップとされています。
似ている制度に「保健室登校」があります。保健室登校との違いは、通う場所が保健室以外の相談室や空き教室などです。また、養護教諭ではなく、学校のカウンセラーが担当するケースもあります。
この記事では、別室登校のメリット・デメリット、教室復帰のステップについて解説します。別室登校を検討している親にとって、子どもが教室復帰できるように役立てれば幸いです。
保健室登校については下記の記事をご覧ください。
別室登校とは
別室登校とは、教室で過せない子どもが教室以外の場所で過ごし、サポートを通じて教室復帰を目指すことです。別室登校には2種類あるとされており、 不登校から再登校までの「慣らし登校」的に行われるケースと、長期にわたって休む可能性のある子どもを食い止めるケースがあります。
2009・2010年に京都府教育委員会は京都府のすべての小・中学校(京都市を除く)での別室登校に関する実態調査を行いました。全小学校の25.8%、全中学校の77.8%で別室登校が実施されていました。[1]
別室登校は、生徒の状況に応じて柔軟に対応できるため、学校生活に少しずつ慣れることができます。
自分のペースに合わせられるのはいいですね!
別室登校を始める手順
別室登校を始める手順は、一般的に以下のようになります。[2]
- 本人の状況を整理する
- 本人と親と学校で面談をする
- 別室での学習計画を立てる
- 定期的な面談で進捗状況を確認する
親や兄弟、友人関係、学習の状況など、本人に関する情報を担任が整理します。その後、親と子どもが学校の先生と面談し、現状や希望を伝えます。学校側と相談をして、別室登校の実施を決定するのです。
実施が決まったら、生徒の状況に合わせた学習計画を作成します。家庭でも、勉強に不安はないかを聞いてあげましょう。別室登校を開始したら、定期的に面談を行い、本人の様子や進捗状況を確認します。状況に応じて計画を調整しながら、最終的には教室復帰を目指すのです。
別室登校のメリット・デメリット
別室登校には、生徒にとってのメリットとデメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット
別室登校のメリットには、以下の点があります。
- 人の出入りが少ない
- 本人のペースで勉強できる
- 段階的に学校生活に慣れる
保健室登校とは違って、相談室や空き教室に登校します。それらの部屋に入る人が限られるため、人の出入りが少なくなります。人目を気にしやすい人にとっては、気兼ねなく登校できるでしょう。
個人のペースで学習できるのも、メリットのひとつです。通常の授業では、クラス全体のペースに合わせる必要がありますが、別室登校では個人の状況に応じて学習が可能です。苦手な科目にじっくり時間をかけたり、得意な科目を効率的に進めたりできます。
段階的に学校生活に慣れていけるため、負担が軽くなります。最初は短時間から始め、徐々に滞在時間を延ばしていけば、無理なく学校生活に適応できるのです。
子どものペースで無理なく登校できます
デメリット
別室登校には、以下のデメリットもあります。
- 友人関係をつくりにくい
- 学校行事の参加が制限される
- 別室登校に罪悪感を感じやすい
別室登校では、友人関係がつくりにくい点があります。通常の教室と離れて学習するため、クラスメートとの交流が限られます。保健室登校では、保健室に来る生徒がいるため交流できますが、別室登校では交流する機会が減ってしまうのです。
学校行事や部活動に参加しづらくなってしまいます。学校生活にとって大切であり、不参加によって学校生活の楽しさを味わえなくなるでしょう。
別室での学習が長期化すると、教室復帰への不安が大きくなることがあります。慣れた環境から離れることに抵抗感が生じ、教室復帰のタイミングを逃してしまう可能性があるのです。
別室登校から教室復帰への3つのステップ
別室登校から教室復帰するまでには、3つのステップがあります。
それぞれのステップについて見ていきましょう。
別室で登校する
最初のステップでは、相談室や空き教室などの別室に登校しましょう。
本人の状況に合わせて、無理のない範囲で登校します。たとえば、最初は週に1回、1時間だけの登校から始めてみてください。慣れたら徐々に登校日数や滞在時間を増やしましょう。
別室登校に慣れ、学習のリズムを取り戻すのが目標となります。焦らずにゆっくりと進めていくことが大切です。
給食の時間・好きな教科だけ教室に行く
次のステップでは、少しずつ教室に慣れるために、給食や好きな教科だけ授業に生きましょう。
給食の時間は比較的リラックスできる時間なので、教室の雰囲気に慣れやすいでしょう。苦手な教科や不安を感じる時間は、引き続き別室で過ごせるため、学校側と相談してみてください。
クラスメートとの交流も少しずつ増えるため、無理のない範囲で交流を深めていくことも大切です。
学校へは通っているため先生のサポートも受けやすいですね
教室復帰した後もサポートを受ける
最後のステップでは、教室に完全復帰した後もサポートを受けてください。
教室に復帰したからといって、すべての不安がなくなるわけではありません。定期的にカウンセリングを受けたり、別室を居場所として活用したりしましょう。
教室復帰後も子どもの状況に応じて柔軟にサポートを行えば、安定した学校生活を送れるようになります。
別室登校を始めるときの注意点
別室登校を始める際には、いくつかの注意点があります。以下の点に気をつけましょう。
- 無理をしないペース設定
- 家庭の様子を学校と共有する
別室登校を始める際は、無理のないペース設定が大切です。生徒の状況に合わせて、ゆっくりと段階的に進めましょう。最初は週1回1時間程度から始め、徐々に増やしていきます。生徒の体調や気分の変化に注意を払い、柔軟に対応するのも必要です。焦らずに生徒のペースを尊重すれば、着実に学校生活に慣れていけます。
また、家庭と学校の密接な連携も重要になります。定期的に家庭での様子を学校と共有しましょう。睡眠リズムや食事の状況、趣味や不安などの情報を伝えることで、学校側は適切な支援計画を立てられます。同時に、学校での様子を家庭にフィードバックし、双方向のコミュニケーションを築きます。
まとめ
別室登校は保健室登校とは違い、人の出入りが少なく、本人のペースで勉強を進められるメリットがあります。一方で友人関係をつくりにくい、学校行事に参加できないなどのデメリットがあるのです。
別室登校から教室復帰するためには、別室登校に徐々に慣れたら、給食・好きな授業から教室に行くようにしましょう。教室に復帰できた後も、学校からのサポートを受けてください。
事情があって教室に通えず、悩みを抱えている人は、おおかみこころのクリニックにご相談ください。経験豊富なカウンセラーが、悩みを解決するためにサポートいたします。
【参考文献】
[1]別室登校についてー効果的な保健室登校指導についての一考察ー
https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000004942/19-231.pdf
[2]教育相談 第131号|鹿児島県総合教育センター
http://www.edu.pref.kagoshima.jp/research/result/siryou/shidosiryou/h24/1756-soudan131.pdf
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