保健室登校とは、教室に行くのが難しく、学校生活を保健室で過ごす状態です。心や体の不調で教室に通えない子どもにとって、保健室は安心して過ごせる場所となります。
子どもが学校に通うのを嫌がっているため、保健室登校を検討する人もいるでしょう。保健室登校に関する具体的なルール、メリットやデメリットについて気になりますよね。
この記事では、保健室登校の出席扱いと成績への影響、教室復帰へのステップについて解説します。保健室登校の段階を踏んで、教室に通えるようになる手助けができれば幸いです。
別室登校については下記の記事をご覧ください。
保健室登校とは
保健室登校とは、教室で授業を受けたり、クラスメートと過ごしたりするのが難しく、保健室で過ごす状態です。保健室登校する子どもにはさまざまな理由があり、「授業についていけない」「仲間外れにされている」などが挙げられます。[1]
2001年度の調査によると、保健室登校をする生徒がいる学校の割合は、以下のような結果となりました。[2]
小学校 | 12.3% |
中学校 | 45.5% |
高等学校 | 22.9% |
中学校の約半分は、保健室登校をする生徒がいる状況でした。調査するたびに、小学校と高等学校では増加率があまり上がりませんでしたが、中学校では保健室登校の増加率が上がると示されています。[2]
保健室登校では、教室に戻るためのステップとなり、子どもが安心して過ごせる環境を提供します。不登校になっている人や、教室での授業に抵抗を感じる人にとって、有効なサポート手段となるのです。
教室に行くには難しいときに、保健室ですごす状態です
保健室登校になるには
保健室登校になるには、まず担任や保健室の先生に相談します。その後、担任、学年主任、親などの関係者と話し合いをして決めます。保健室登校を始めるときは、以下を確認してから実施されるのです。[1]
- 子どもの支援計画が立てられる
- 本人が保健室登校を望んでいる
- 保健室登校に対応できる校内体制が整っている
- 保護者が保健室登校を理解しており、協力できる
- 全教職員(校長、担任、学年主任など)が理解し、協力できる
学校が保健室登校の必要性を認めると、具体的なスケジュールや学習内容が決定されます。子どもが安心して保健室登校できるためにも、保護者の協力が必要になるのです。
出席扱いと成績への影響
学校によって異なりますが、保健室登校は出席とみなされます。ただし、小学校と中学校は義務教育のため出席扱いされますが、高等学校では出席扱いにならない可能性もあります。通っている学校に確認してみてください。
成績は、ワークの課題を提出するなどの対応で反映されることがあります。[1]ただし、それぞれの学校や教育委員会の方針によるため、保健室での学習がどう反映されるか、事前に問い合わせましょう。
保健室登校のメリットとデメリット
保健室登校には、さまざまなメリットとデメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット
保健室登校のメリットには、以下の点が挙げられます。
- 一人ではない安心感がある
- 体調不良や緊急時に対応できる
- 学校生活のリズムを維持できる
有村(2006)が行った調査によると、学生時代に保健室登校をしていた人の中には「保健室の先生が自分を受け入れてくれた」という回答がありました。保健室登校では一人ではない安心感を得られ、自分の居場所となるのです。[3]
保健室の先生が常駐しているため、体調不良や緊急時にも迅速に対応してもらえます。体調を崩しやすかったり、精神的なストレスを抱えたりする子どもにとって、保健室は大切な環境となります。
保健室登校をすれば、学校生活のリズムを維持することが可能です。決まった時間に登校し、昼に給食を食べて、夕方に下校する一日を過ごします。このリズムに慣れておけば、教室復帰をスムーズにできる可能性が高まるのです。
教室復帰がスムーズになりますね!
デメリット
保健室登校のデメリットには、以下の点が考えられます。
- 他にも出入りする人がいる
- 学校がサポートできない可能性がある
- 教室に行けない自分に不甲斐なさを感じる
他の生徒や教職員も出入りするため、完全なプライバシーが確保されにくいです。人目が気になる人に対しては、まわりかた見えないようにする対策が必要になるでしょう。
保健室登校では、学校が十分にサポートできない可能性があります。学校の体制が整っているかを確認してみてください。
また、教室に行けない自分に対して不甲斐なさを感じる人もいます。保健室登校は一時的な解決策であり、最終的には教室復帰を目指す必要があります。しかし、思うように進まないときは、子どもが自己評価を下げてしまうリスクがあるのです。
保健室登校のデメリットを理解し、適切な対策を考えることが大切です。
保健室登校から教室復帰への3つのステップ
保健室登校から教室復帰を目指すためには、段階的なアプローチが重要です。以下の3つのステップを通じて、子どもが無理なく教室に戻れるよう支援します。
それぞれ見ていきましょう。
保健室に登校する
最初のステップとして、保健室への登校から始めます。
保健室は、教室に比べて静かで落ち着いた環境です。少しずつ学習を再開し、学校生活のリズムを取り戻します。養護教諭が常駐しているため、子どもが安心して過ごせるようサポートしてくれます。そのためにも、養護教諭との信頼関係を築くことが大切です。
子どもが保健室登校に徐々に慣れるのを目標にしていきます。
他の子どもを交えて保健室で過ごす
次に、他の子どもと交流する機会を少しずつ増やしましょう。
保健室登校をする他の子どもと一緒に過ごせば、徐々に社会的な交流ができます。少人数での交流から始めれば、子どもの不安を減らしつつ、徐々に周囲と関われるようになるのです。
グループ活動や簡単なゲームなどを通じて、他の子どもとのかかわりを持つと、教室復帰への準備ができます。ただし、無理に交流を強いるのではなく、子どもの状況に応じて段階的に進めましょう。
好きな授業や給食のときだけ教室に行く
最後のステップとして、好きな授業や給食のときだけ教室に行きます。子どもが興味や関心を持つ授業に限定して教室に戻ることで、教室への抵抗感を減らすためです。
たとえば音楽や体育など、子どもが得意とする授業に参加することから始めましょう。また、給食の時間は自由な雰囲気があるため、教室の雰囲気に慣れるのに適しています。
子どもの様子を見ながら、徐々に教室で過ごす時間を増やすのが大切です。子どものペースに合わせて進めれば、最終的には完全な教室復帰を目指せるでしょう。
保健室登校を始める際に親ができること
保健室登校を始める際には、親の役割は非常に重要です。子どもの状況を理解し、適切なサポートを行えば、スムーズな保健室登校の開始と教室復帰につながります。以下に、親ができる具体的な行動を紹介します。
- 学校と密接に連携をとる
- 家庭でも子どもを支える
- 子どもの気持ちを理解し、受け入れる
学校とは、密接な連携をとりましょう。担任や養護教諭と定期的に情報交換を行い、子どもの状況や進捗を共有してください。学校の様子・家庭の様子を互いに伝え合えば、一貫したサポート体制をつくれます。
家庭でも子どもをしっかり支えてあげましょう。起床・就寝時間を一定に保ち、バランスの取れた食事を提供するなど、基本的な生活習慣の確立をサポートします。また、課題を一緒に確認してフォローをすれば、学習の遅れを防げます。
また、子どもの気持ちを理解し、受け入れることが大切です。「学校に行きたくない気持ちはよくわかるよ」と共感して、親子の信頼関係を築けるのです。
まとめ
保健室登校では出席扱いとなり、課題を提出すれば成績に反映されることがあります。ただし、学校によって対応が異なるため、通っている学校に確認が必要です。
保健室登校から教室復帰をするためには、保健室登校に慣れていき、他の子どもと少しずつ交流を深めましょう。徐々に教室で授業を受けられるようになるためにも、親の協力が欠かせません。
子どもの教室復帰を目指すためにも、家族と学校で一丸となって、サポートをしていきましょう。
【参考文献】
[1]教職員のための子供の健康相談及び保健指導の手引|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/__icsFiles/afieldfile/2013/10/02/1309933_01_1.pdf
[2]不登校にならないための学校づくりと義務教育終了後の進路|国立特別支援教育総合研究所
https://www.nise.go.jp/josa/kankobutsu/pub_b/b-200/b-200_p65-68.pdf
[3]保健室登校の教育的意義―保健室登校を経験した人への面接調査の分析―
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8558989&contentNo=1
コメント