発達障害を持つ高校生の子どもが不登校になると、留年や退学が心配になってしまいますよね。
「このまま家で様子を見ていい?」「心療内科や精神科に行くべき?」と悩むこともあるでしょう。
そこで今回は、発達障害の高校生が不登校になる原因や対応、不登校中の過ごし方、進路や将来について解説します。
「心療内科や精神科を受診する目安を先に知りたい!」という方は、こちらから目を通してくださいね。
適切な対応方法を知り、子どもの自立に向けたサポートをしていきましょう。
発達障害を持つ方との接し方については、下記の記事もあわせてご覧ください。
この記事の内容
発達障害の高校生が不登校になる原因
発達障害の高校生が不登校になる原因は、以下3つにわけられます。[1]
それぞれ解説します。
本人の問題
高校生が不登校になる原因としてもっとも多いのは、本人に関係する以下の問題です。
- 無気力・不安:39.2%
- 生活リズムの乱れ・遊び・非行:14.9%
無気力とは、意欲や自発性が低下して感情の起伏が小さくなったり、周囲に無関心になったりする状態をさします。[2]
高校生に多い無気力の原因は、学習へのプレッシャーや友人関係のつまずきです。[3]
これらのストレスは生活リズムの乱れや非行にもつながり、不登校を引き起こします。
不登校については知りたい方は、こちらのサイトもご覧ください。
学校の問題
2番目に多い原因は、学校に関わる以下の問題です。
- 入学・転編入学・進級時の不適応:9.4%
- いじめ以外の友人関係の問題:9.1%
- 学業の不振:6.2%
1日の大半をクラスで過ごす高校生にとって、友人関係の問題や学校の雰囲気が合わないなどのストレスは非常に大きなものでしょう。[2]
高校受験を頑張って燃え尽きてしまったり、勉強についていけなかったりして不登校になるケースもあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
家庭の問題
3番目の原因は、以下のような家庭に関わる問題です。
- 親子の関わり方:3.4%
- 家庭内の不和:1.9%
- 家庭の生活環境の急激な変化:1.7%
親との関係がよい高校生は「生徒であることを誇りに思える」「先生を信頼しやすい」などの特徴があり、安定して登校できることがわかっています。[4]
親子関係が悪かったり家族仲に問題があったりすると、子どもは日常的な安心感を得られず不登校になりやすいのです。
発達障害の高校生が不登校になったときの対応5選
発達障害の高校生が不登校になったときの対応として、以下5つが挙げられます。
それぞれ解説します。
休んでも大丈夫と伝える
「休んでも大丈夫だよ」というメッセージを本人に伝えましょう。
不登校は心身ともに頑張りすぎてしまった結果、疲れて動けなくなっている状態です。
気力も体力もない状態で登校をうながすと、本人はますます追いつめられてしまいます。
親としては「このまま外に出られなくなるのではないか」と不安になりますが、なにより本人の回復が大切です。
「親自身の不安は親自身で解決する」ことを意識し、不安を子どもに押し付けないようにしましょう。
不安になることも多いですが、ドンッと受け止めてあげてください
なにに困っているかを知る
様子が落ち着いてきたら、ムリのない範囲で本人の気持ちを聞いてみましょう。
「なにに困っているのか」「どんなときにつらいと感じるのか」は、不登校の対策を考えるときに大切な情報です。
ただ、唐突に「困っていることはない?」と聞くと、本人は身構えてしまいます。
普段から何気ない会話を大切にして、話しやすい雰囲気作りを意識しましょう。
学校に行くことを目標にしない
不登校の高校生が目指す目標は、学校に行くことだけではありません。
学校復帰だけを目標にすると「不登校の自分はダメな人間」と感じ、自信を失ってしまうリスクがあるためです。
もとの学校に戻ることにこだわらず、通信制高校や定時制高校などを含めた幅広い視野で考えましょう。
詳しくは記事の後半でも解説しています。
先に読みたい方はこちらから目を通してくださいね。
学校と連携してサポートする
学校への復帰を希望するときは、学校との連携が必要です。
本人の体調や心配していることなどについて、以下の方と共有しておきましょう。
- 学級担任
- 養護教諭
- スクールカウンセラー
「どの程度サポートしてもらえるか」「困ったときは誰に相談できるか」が事前にわかると、学校生活がイメージでき安心感を得やすくなります。
公的機関や医療機関に相談する
学校以外の相談先として挙げられるのは、以下のような場所です。[5]
- 児童相談所・児童相談センター・児童家庭支援センター
- 18歳未満の子どもとその家族が対象。子育ての悩みや発達障害など、子どもに関するあらゆる相談ができる
- 教育センター
- 高校生相当の年齢までの子どもとその家族、学校関係者が対象。不登校やいじめ、発達障害など、教育場面での悩みを中心に相談できる
- 発達障害者支援センター
- 発達障害に関する相談ができる。必要に応じて関係機関と連携した支援が受けられる
気分の落ち込みや睡眠の問題が続く場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
受診の目安を知りたい方は、こちらを参考にしてくださいね。
発達障害を持つ不登校の高校生におすすめの過ごし方
発達障害を持つ不登校の高校生には、以下の過ごし方がおすすめです。
順を追って、見ていきましょう
生活リズムを整える
不登校中は、生活リズムを整えましょう。
昼夜逆転してしまうと生活リズムの立て直しに苦労し、学校の復帰や他の選択肢を選びづらくなります。
規則正しい生活のためには、以下のようなルールが有効です。
- 朝ごはんを一緒に食べる
- 午前中は図書館で過ごす
- 22時以降はスマホを預かる
親に一方的に決められたルールは本人のやる気を損ねるため、必ず本人と話し合いながら決めましょう。
好きなことに集中する
不登校中は本人が好きなことに取り組ませましょう。
好きなことに集中して気持ちが回復したAさんの事例を紹介します。
■絵を描くのが好きなAさん
不登校のAさんは、毎日絵を描いて過ごしていました。
黙って見守ってくれた両親の理解もあり「絵を通して自分の気持ちを表現できた」と感じたAさんは、少しずつ元気を取り戻します。
ある日「明日から学校に行こう」と思えたAさんは、登校を再開することができました。
Aさんは、絵を描くことでカタルシス効果(不安やイライラなどの感情を表現してスッキリすること)を感じ、元気を取り戻したのです。[6]
読書や音楽、スポーツなど本人が楽しめるものならなんでも構いません。
好きなことに集中できる環境を整え、心の元気を取り戻すサポートをしましょう。
楽しい時間が増えると、他のことへのモチベーションもあがります
疲れたときは休息を優先する
疲れている様子がみられたら、ムリせず休むように声をかけましょう。
本人や親が「勉強の遅れを取り戻さなきゃ」「早く学校に戻らなきゃ」と焦ると、かえって回復が遅れてしまいます。
必要以上に頑張っている様子や疲れている様子がみられるときは、親がペースを落とすように促してください。
自分にあった方法で勉強する
学校への復帰や進学を考えているときは、自分にあった方法で勉強しましょう。
本人の希望や特性に合わせ、以下のような方法を検討してください。
- 学習塾
- 家庭教師
- 通信教材
自宅で集中できないときは、フリースクールや図書館など自宅以外の場所を利用するのもよいでしょう。
サードプレイスの利用を検討する
サードプレイスとは、子どもが安心して過ごせる家や学校以外の居場所です。[7]
サードプレイの具体例として、以下が挙げられます。
- 習い事
- アルバイト
- ボランティア
- オンライン塾
- フリースクール
サードプレイスの利用により規則正しい生活リズムや学習習慣が身につき、人とコミュニケーションをとる機会が生まれます。
本人の体調や興味に合わせて利用を勧めてみましょう。
不登校の高校生が心療内科や精神科に行くべき目安
不登校の高校生が心療内科や精神科を受診する目安を、以下3つの視点から解説します。
ひとつずつ見ていきましょう。
本人の訴え
本人が以下のような症状を訴えるときは注意が必要です。[8]
- 気分が落ち込む
- 理由なく不安になる
- なかなか寝付けない
- イライラしてすぐ怒る
- 気持ちが落ち着かない
- 夜中に何度も目が覚める
- 誰もいないのに人の声が聞こえる
- 誰かに悪口を言われている気がする
- 何を食べても美味しくない、食べたくない
症状が一時的なものであれば、心と身体を休ませながら回復を待ちましょう。
ただ、症状が2週間以上続く場合は、こころの病気を抱えている可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
周囲が覚える違和感
本人の様子に違和感を覚えたときも注意が必要です。
以下のような様子が見られるときは注意しましょう。[8]
- 表情が暗い
- ぼんやりしている
- 急に痩せた、太った
- 感情の変化が激しい
- ひとりになりたがる
- ひとりごとが増えた
- ミスや忘れ物が多い
- 他人の視線を気にする
- 体に不自然な傷がある
本人らしくない言動が続くときは「疲れてるように見えるけど、調子はどう?」と体調を確認しましょう。
自分では症状に気づいていないケースがあるため、早めに医療機関を受診してください。
親自身のストレス
親自身がストレスを感じているときも、医療機関の受診が必要です。
子どもが不登校になると「自分の育て方が悪かったかもしれない」と自分を責めてしまうときがあるでしょう。
親が落ち込んでいたり暗い顔をしていたりすると「自分のせいで親が悩んでいる」と本人が自分を責めてしまいます。
親自身が安心できる時間が増えると、家族の雰囲気が柔らかくなり本人も安心して過ごせるようになるため、つらさを抱え込まず医療機関に相談してください。[9]
心療内科や精神科を受診する流れ
当院では「予約→受付→医師の診察→検査→会計」の流れで診察をしています。
おおかみこころのクリニックの詳しい受診の流れはこちらからご確認下さい。
医師の診察で「何を話せばよいのかわからない」「うまく話せるか不安」という方は、メモにまとめておくと安心です。
以下の項目を参考にしてください。
- どのようなことに困っているのか
- いつから・どのような症状があるのか
- 症状が出やすいのはどのようなときか
- 思い当たる原因はあるか
- 症状が出やすいのはどのようなときか
- どのような経緯で受診しようと思ったのか
診察中はメモを見ながら話していただいても構いません。
話すのが苦手な方は医師にメモを見せたり受付のスタッフに渡したりして、自分が安心できる方法で診察を受けましょう。
「親には話を聞かれたくない」と本人が希望するときや「子どもがいないところで話したい」と親が希望するときは、個別の対応も可能です。おおかみこころのクリニックにお気軽にご相談ください。
不登校に悩む高校生の進路や将来
不登校の高校生がもとの学校に戻る以外の選択肢として、以下3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
別の高校に編入する
もとの高校に戻りづらいときの選択肢として、別の高校への編入が挙げられます。
定時制高校や通信制高校なども視野に入れ、自分に合ったスタイルの高校を選びましょう。
いずれの場合もサポート体制や学習カリキュラムなどを比較して、じっくり見極めることが大切です。
「こうしてほしい」という親の期待を押し付けると、本人がムリをして再び登校が難しくなる可能性があります。
本人の希望や体調に合わせ、親子が納得できる選択をしましょう。
高卒認定試験を受ける
高卒認定試験(=高等学校卒業程度認定試験)とは、合格により「高校卒業と同等の学力がある」と認められ、大学や専門学校への進学が可能になる試験です。[10]
体調が悪いときはムリせず療養に専念し、回復してから高卒認定試験を受けるのもよいでしょう。
試験は年に2回実施されており、各都道府県にある試験会場で受けられます。
高卒の肩書きが得られるため、就職先の幅を広げるためにも有効です。
高校は合わなくても、大学は合うこともあるでしょう
就職を視野に入れる
学習に強い拒否感があるときは、就職を検討するのもよいでしょう。
不登校から就職を目指すときには、以下の専門機関に相談できます。
- 地域若者サポートステーション[11]
- 15〜49歳を対象とした厚生労働省委託の支援機関。就職サポートだけでなく、ビジネスマナーやコミュニケーション講座なども受けられる
- わかものハローワーク[12]
- 正社員雇用を目指す35歳未満を対象としたハローワーク運営の就職支援窓口。職業相談や紹介、応募書類の作成支援、セミナー参加などのサービスが受けられる
- 就労移行支援[13]
- 障害のある方を対象とした就職支援サービス。職業訓練や実習などを通して、社会復帰が目指せる
社会で活躍している人の中には、中卒や高校中退の人もたくさんいます。
ムリをして進学にこだわらず、就職を視野に入れながら専門機関に相談ましょう。
まとめ
発達障害のある高校生が不登校になったときは、本人に寄り添ったサポートが必要です。
不登校になったばかりのときは休息を優先し、本人の困りごとに合わせた支援方法を考えましょう。
不登校の支援は学校や専門機関と連携して行うことが大切です。
留年や退学への心配から結論を急ぐのではなく、お子さんに合わせて勉強や生活のサポートをしましょう。
お子さんの不登校で悩んだときは、親自身の心のケアをすることも必要です。
悩んだときは私たちこころの専門家に頼ってください。おおかみこころのクリニックは、あなたのご相談をお待ちしております。
【参考資料】
[1]文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_1.pdf
[2]e-ヘルスネット
[3]青年期の各学校段階における無気力感の検討 考察 2. 無気力感の関連要因
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/49/3/49_305/_pdf
[4]広島大学大学院心理臨床教育センター紀要 第15巻 高校生における家族機能と学校適応感の関連について 考察 1.家族機能と学校適応感の関連
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/42747/files/10538
[5]不登校やいじめ、ひきこもりなどの相談窓口|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/window_02.html
[6]不登校・登校しぶり 藤枝静暁 ナツメ社
[7]子ども第三の居場所 | 日本財団
https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/child-third-place
[8]こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/health_understanding.php#03
[9]厚生労働省 ひきこもりVOICE STATION #5家族はどうかかわればいいの?本人の回復のために
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/
[10]高等学校卒業程度認定試験 概要・パンフレット等|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/mext_01319.html
[11]サポステ|厚生労働省
https://saposute-net.mhlw.go.jp/
[12]わかものハローワーク|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181329.html
[13]就労移行支援(発達障害支援室) | 国立障害者リハビリテーションセンター
http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/General/training1/621/
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。