会食恐怖症とは人前でご飯を食べられず、震えや吐き気などの症状が出る状態のことです。人から注目されることに強い苦痛を感じる「社交不安障害」の不安症状のひとつとされています。
会食恐怖症では初対面の人との食事が難しいため、職場や学校などで人間関係を深められない可能性があるでしょう。会食恐怖症の治し方は、薬物療法と精神療法の2種類です。会食恐怖症の対策には、食事の量を調節したり、相手に注意を向けたりするなどの方法があります。この記事では、会食恐怖症の治し方、原因について解説します。治し方や対策などを知って、周囲との関係をより深められるようにしましょう。
会食恐怖症の原因
会食恐怖症の原因には、以下のようなものが考えられます。
- 給食を残してはいけないと怒られた
- たくさん食べることを強要された
- 早く食べなきゃいけないと言われた
日本会食恐怖症克服支援協会が実施したアンケートによると、「ご自身の会食恐怖症のきっかけに、学校給食における完食指導が関わっていると思いますか?」という設問に対して、642中323人が「はい」と回答しました。50.3%の人が給食でのトラウマが発症の原因と考えているのです。[1]
学生のときに運動部だった人は、力をつけるためにたくさん食べることを強要されたことがあるでしょう。食べきれないと怒られたり、連帯責任で罰を与えられたりすると、その経験もトラウマとなってしまう恐れがあります。
昔は「全部食べてあたり前!」な考えが多かったですよね💦
会食恐怖症の症状
会食恐怖症では、人前での食事をする際に以下のような症状があらわれます。[2]
- 吐き気
- お腹の不快感
- 口の渇き
- 動悸
- 強い緊張感
- 不安感
- 顔面蒼白
- 声や手足の震え
- 発汗
- 嚥下障害(飲み込めない)
- 息苦しさ
- めまい
症状が出るのを避けるために人との食事に行かなくなると、人間関係がうまくいかなくなる可能性があります。たとえば、新しく入った学校で友人と親睦を深められなかったり、会社で上司や同僚と仲良くできなかったりするでしょう。
会食恐怖症を発症している人の中には、親しい友人や家族は大丈夫という人もいます。リラックスした環境であると、症状が緩和されることもあるのです。
「症状が出ても大丈夫」と思える相手との食事は、リラックスした環境といえるでしょう。
会食恐怖症の治し方
会食恐怖症の治し方には、おもに2つあります。
それぞれ見ていきましょう。
薬物療法
会食恐怖症を含む社交不安障害の薬物療法では、以下の薬がおもに使用されます。[2]
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- 抗不安薬
- β遮断薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、社交不安障害に効果があるとされており、根本的な治療を目指せる薬です。抗不安薬は、脳神経の興奮を抑える「GABA」の働きを強くし、不安や緊張を和らげる効果が期待されています。β遮断薬は、交感神経を興奮させる「ノルアドレナリン」の結合を阻止して、興奮を抑えます。
薬物療法で用いる薬には、作用と副作用があります。どんな作用・副作用があるか、説明をしっかりと聞くようにしましょう。薬を服用する際は、決められた用法を守って、途中で飲むのをやめないようにしましょう。もし副作用がつらいときは、すぐに医療機関に相談してください。
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精神療法
会食恐怖症を含む社交不安障害で使われる精神療法には、以下のものがあります。[3]
- 認知行動療法
- 曝露療法
認知行動療法では、ものごとの捉え方を改善して、考え方の癖をなくします。[4]認知行動療法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
曝露療法とは、不安を感じる行動に徐々に慣れることで、不安を減らしていく方法です。不安を回避しようとすると、行動するときに余計に不安を感じやすくなってしまいます。曝露療法は段階的に不安に慣れていくため、不安症に効果があると報告されているのです。[5]
精神療法には、副作用の危険性がなく、再発率は薬物療法よりも低いと考えられています。ただし薬物療法よりも症状の改善に時間がかかるため、根気が必要となるでしょう。
会食恐怖症の対策
会食恐怖症の対策は、以下の5つです。
ご自身に合う方法から試してみてくださいね。
徐々に慣らしていく
会食恐怖症を克服するためには、徐々に人前での食事に慣れていくことが大切です。[2]
人前での食事を避け続けていると、不安が長期化したり、悪化したりする可能性があります。[5]まずは会食恐怖症を受け入れてくれる友人と、数分だけでもいいので食事をしてみましょう。いきなり初対面の人との食事をすると、挫折するかもしれないので、徐々に試してください。
友人との食事を楽しめるようになったら、次は時間を長くしたり、関係の浅い人を選んでみましょう。段階を踏んでいくことで不安を減らせるようになります。
少しずつ少しずつ…焦らずにやってみましょう!
食事の量を調整する
食事の量を減らして調整することは、会食恐怖症を克服するために大切なことです。
食事の量が多いと「食べきらなきゃいけない」と考えて、不安を増加させる恐れがあります。自分が食べきれる分の食事量に調整できれば、不安を減らすことにつながるのです。実際に小学校の給食では、子どもたちが苦手な食べ物を減らしたり、食事の量を調整したりするなどの取り組みが行われている学校もあります。
人前での食事を自分のペースで楽しむためにも、少しの量を食べることから始めていきましょう。
相手に注意を向ける
相手に注意を向けることは、会食恐怖症を改善する対策となります。
会食恐怖症を含めた社交不安障害の人は、自分に注意が向きすぎている傾向があります。そのため「自分が他人からどう思われているか」を気にしてしまい、不安になったり、緊張したりしてしまうのです。[2][6]
自分だけではなく、相手にも注意を向けるようにしましょう。「どんな服装をしているか」「顔立ちはどうなっているか」など、相手を観察してみてください。相手に注意を向けることで、自分への注意をそらせるようになります。
リラックスする
会食恐怖症の症状を改善するには、心身をリラックスさせましょう。症状が出るときは、活動するときに働く「交感神経」が優位になっているため、リラックスするときに働く「副交感神経」を優位にすることが有効です。
副交感神経を優位にする方法には、ストレッチがあります。[7]
ストレッチは筋肉の緊張を緩めて血行の流れを良くするため、心身をリラックスさせるとされています。呼吸を止めずに、首や肩などゆっくりと10~30秒伸ばしてみてください。[7][8]ストレッチができないときは、腹式呼吸を繰り返して、深い呼吸を意識して気持ちを落ち着かせましょう。[9]
不安を受け入れる
会食恐怖症を治すためには、不安を受け入れましょう。不安は誰にでも起こる感情なので、まったく感じないということは難しいです。[2]
不安とうまく向き合うためには「不安は欲求の裏返しである」とおさえておきましょう。人前での食事を楽しめるようになりたいと思うと、現在の自分に不安や焦りを感じるかもしれません。ですが、不安を感じることは悪いことではありません。
不安を抑えようとするほど、不安は強くなってしまいます。不安を感じている自分を少しずつ受け入れていきましょう。
まとめ
会食恐怖症の治し方には、薬物療法と精神療法があります。会食恐怖症は社交不安障害の不安症状のひとつなので、社交不安障害で用いられる治療法を実施していきます。
会食恐怖症を克服するためには、食事の量を調整して、徐々に人前での食事に慣れていきましょう。まずは一緒にいてリラックスできる友人や家族との食事から始めてみてください。
おおかみこころのクリニックでは、LINEでの予約を24時間受け付けています。カウンセラーもいますので、日常で困っていることや不安に感じていることがあれば、お気軽に相談にお越しください。症状を改善できるように、サポートさせていただきます。
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【参考文献】
[1]一般社団法人 日本会食恐怖症克服支援協会
[2]薬に頼らず、今日から出来る!会食恐怖症改善トレーニング
https://amzn.asia/d/fzhkgwF
[3]社交不安障害の診断と治療
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1170060413.pdf
[4]面白いほどよくわかる!臨床心理学,下山 晴彦,西東社
https://amzn.asia/d/bonNkMY
[5]エクスポージャー療法 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[6]社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113841.pdf
[7]ストレッチングの効果 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[8]ストレス|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-6_0003.pdf
[9]腹式呼吸をくりかえす|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_03.html