「親の期待に応えなきゃ」
「嫌でも断ると申し訳ない気がする」
そのように、親との関係に息苦しさを感じていませんか?
親子の絆は大切ですが、距離が近すぎるあまり互いに依存し合う「共依存」の関係になることがあります。
少しずつ自分の気持ちを大切にしながら「ちょうどいい距離感」を築いていくことが、共依存から抜け出す第一歩です。
この記事では、共依存が起きやすい親子の特徴や影響、抜け出すためのヒントをご紹介します。
「家族だから」とムリをしがちなあなたが、自分の本音に目を向ける手がかりとなれば幸いです。
親子の共依存とは
共依存とは、特定の人との関係に依存して離れられない状態です。
「依存」は、安心感や支えを求めて誰かに頼ることであり、人とかかわるうえで自然な感情です。
ただ「共依存」は、自分を犠牲にしてまで相手に尽くしたり、相手の問題を自分のことのように抱え込んだりしてしまう状態を指します。
親子間での共依存では、親が自分の問題を子どもに解決させようとし、子どもを精神的な支えにしてしまうケースが見られます。[1]
例として以下のような状態が挙げられるでしょう。
- 親の問題を子どもに解決させようとする
- 思い通りにならないとイライラして子どもを責める
- 子どもが自分の思い通りの存在になるように過剰な期待を押し付ける
子ども側も、親に逆らうことで怒られる(または悲しませる)という恐れから、自分のやりたいことを我慢したり、やりたくないことでもムリにやったりしてしまうことがあります。
親はいつまでも子どもを管理しようとし、子どもは知らず知らずのうちにコントロールされてしまうのが親子の共依存です。

気づいたら大人になっても自立できていない…
このようなケースも多くあります。
共依存が起こりやすい親子の特徴
共依存が起こりやすい親子の特徴として、以下のようなものがあります。[2]
それぞれ見ていきましょう。
親の口出しが多く考えを押し付ける
親がなんでも口出しをして考えを押しつけてくると、親子の共依存が生まれやすくなります。
たとえば、進学先や就職、休日の過ごし方まで細かく口出しされ「あなたのためだから」と正当化されると、子どもは反論できずに従うしかなくなります。
親の期待に応えようとムリを重ねた結果、次第に自分の気持ちがわからなくなってしまうでしょう。
このように、親の考えを一方的に押しつける関係性では、子どもが自立できず共依存を深める要因になります。
子どもが身の回りのことを母親に頼っている
子どもが日常生活のささいなことまで母親に頼っていると、親子の共依存が進みやすくなります。
このような関係では、母親が「自分がいないとこの子はダメ」と感じやすくなり、子どもも「お母さんがいないと不安」と依存を深めていきます。
たとえば、洋服のコーディネート、通勤の準備、食事の手配など、成人しても自分で決められない状態が続いていると、自立の機会が失われてしまいます。
その結果、母親も子どもも「相手がいるから自分の存在意義がある」と感じるようになり、親子の共依存が進みやすくなってしまうのです。
子ども扱いをやめられず自立を受け入れられない
母親が子どもをいつまでも「子ども扱い」することで、自立心や自己決定の感覚が育ちにくくなります。
これは、母親が「子どもは自分が思う通りの存在でいてほしい」と無意識に期待してしまうことが原因です。
たとえば「そんなのムリに決まってる」「あなたにはまだ早い」といった言葉で挑戦を止めたり、進路の選択に過干渉になったりするケースが挙げられます。
こうした関係が続くと、子どもも「お母さんの意見を優先したほうがいい」と考えるようになり、親との共依存が深まりやすくなるのです。
共依存が起こりにくい親子の特徴
共依存が起こりにくい親子の特徴として、以下が挙げられます。[2]
それぞれ解説します。
適度なコミュニケーションをとっている
親子の共依存を防ぐには、干渉しすぎずちょうどよい距離感でかかわることが大切です。
実際に対面での会話に限らず、メールや電話といった友だちのようなやりとりを続けている親子ほど、子どもの自立心が育ちやすい傾向があります。[2]
物理的に離れていても適度に連絡を取り合い、必要なときには頼れる関係性が子どもに安心感を与えてくれるためです。
このように距離はあっても、こころのつながりを感じられる親子関係が、自然なかたちで子どもの自立を後押ししてくれます。
母親が父親を信頼し良好な夫婦関係を築いている
母親が父親に対して信頼や尊重の気持ちを抱き、夫婦関係が安定していると親子関係にもよい影響があらわれやすくなります。
例として、以下のような夫婦関係が挙げられるでしょう。
- 子どもの前でも父親の意見や立場を尊重している
- 父親の悪口を言って子どもを味方にしようとしない
- 「お父さんもあなたのことをちゃんと考えてるよ」と自然に伝えている
このような夫婦関係が築けていると、母親が子どもを精神的な支えとしないため子どもは「家庭は安心できる場所」と感じて、自立しやすくなります。
娘に依存する母親の特徴を知りたいときは、こちらの記事を合わせてご覧ください。
温かく思いやりのある養育態度で子どもに接している
親が思いやりをもって子どもに接することは、共依存を防ぎ健やかな関係を育むうえで大切です。
温かく接してもらった経験は、子どもの「自分は大切にされている」という実感につながり、自立の土台になります。
たとえば、子どもを否定せず寄り添ったり「あなたなら大丈夫」と信じる姿勢を見せたりすることで、子どもは自分自身を信じられるようになるでしょう。
このように温かな態度で接する親の存在は、子どもが健全な距離感を保ちながら自分らしく育つ支えとなります。
親子の共依存による子どもへの影響
親子の共依存関係が続くと、子どもは支配されている感覚や息苦しさを抱えやすくなります。
その結果、自分で判断したり行動したりすることに自信を持てず、抑うつをはじめとした精神的な不調につながりやすくなるのです。
一方で、共依存ではない親子関係では、子どもが主体性や判断力、責任感などを持ちやすく、精神的な安定性が高まる傾向があります。
たとえば、お互いが自立している親子の例として挙げられるのは、以下のような関係性です。[2]
- 母親から子どもへの思い
- 子どもをひとりの人間として信頼し、温かく見守る。
「いろんなことを頑張っている。立派な大人になってくれて誇らしい」
- 子どもから母親への思い
- 親を尊敬し、相談できる関係性を築いている。
「いつも自分のことを考えて応援してくれる母だからこそ、今の自分がある」
このように親子のかかわり方によって、子どもの精神的な健康や人生への向き合い方は変化するのです。
共依存の親子チェック
以下のような思いに心当たりがある場合、親にコントロールされ共依存の関係になっている可能性があります。[1]
どのくらい当てはまるか、自分の気持ちに目を向けてみましょう。
▢ 親から否定されるとひどく落ち込んでしまう
▢ 親の世話をするのは私の役目だと感じることがある
▢ わたしの気持ちよりも親の気持ちが大切だと思うことがある
▢ 本当は嫌だけど責任を感じて親の愚痴を聞いていることがある
▢ 親から離れたいけど見捨てるみたいでできないと感じてしまう
▢ わたしのせいで親を傷つけてしまったかもしれないと感じることがある
▢ 親から離れたことで寂しい思いをさせたら申し訳ないと感じることがある
▢ 見捨てられそうで怖いから親が喜びそうなことをしようと思うことがある
▢ 親は自分の力で生きられないから私が助けてあげなければと感じることがある
▢ やりたいことをやっていると親を裏切っているようで申し訳ないと感じることがある
当てはまる項目が多いほど、無意識のうちに親との関係に縛られている可能性があります。
いま感じている違和感を大切にしながら、少しずつ自分の気持ちに正直になりましょう。
親子の共依存から抜け出す方法
親子の共依存から抜け出すには、あなた自身の気持ちを大切にすることがなによりも重要です。
以下のように、親と自分の間に境界線を引くイメージを持ちましょう。
- 自分の予定を優先する
- 親からの連絡をムリに返さない
- 会う頻度や連絡頻度を自分で決める
- 「親が悲しむから」を決めごとの理由にしない
- 親に頼まれたことでもやりたくないことは断る
最初は罪悪感や不安を抱くかもしれませんが、自分をすり減らす関係を見直すことはあなたの人生を大切にする前向きな一歩です。
たとえ親との関係であっても、自分の気持ちや生活を守ることはわがままではありません。
「親を大切にすること」と「自分を犠牲にすること」は違うのです。
少しずつあなた自身に正直になりながら、ムリのない距離感を築いていきましょう。
その積み重ねが親子関係をより健やかにととのえる力になります。
まとめ
親子の共依存はどちらか一方が悪いわけではなく、近すぎる関係性がつらさの原因になることがあります。
大切なのは親との絆を絶つことではなく、自分の気持ちを大切にしながら健やかな距離を築くことです。
少しずつあなたの感情や選択を尊重する時間を増やしていくことが、あなたの人生を大切にする一歩になるでしょう。
親との関係でこころが苦しいときは、おおかみこころのクリニックにご相談ください。
「こんなこと話してもいいのかな」と思うことも、わたしたちが丁寧にお聞きいたします。
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おおかみこころのクリニック
【参考資料】
[1]川島崇照|嫌いな親との離れ方 すばる舎
[2]江上園子|母と娘の密着関係における規定因と帰結の検討
https://www.ed.ehime-u.ac.jp/~kiyou/2018/pdf/13.pdf
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士