「大切にされているはずなのに、なぜか苦しい」
母親の干渉や重い期待に対して、このような想いを抱えている娘は少なくありません。
母親と適度な距離感を保てるようになると、自分の気持ちを優先できるようになり人間関係や将来への選択にも自信がもてるようになるでしょう。
この記事では、娘に依存する母親の特徴や背景や依存されている娘が感じやすいこと、そして親子関係を壊さずに距離を取る方法について解説します。
「家族だから」とあきらめる前に、自分のこころに耳を傾けるきっかけになれば幸いです。
娘に依存する母親の特徴的な言動
娘に依存する母親は、以下のような特徴的なふるまいをします。[1]
- 「あれをしなさい」「それはダメ」と指示してくる
- 「あなたはお母さんの夢だった」と期待を背負わせる
- 「自分を犠牲にして育ててきたのに」と過去を強調する
- 「あなたさえいれば何もいらない」と重い愛情を向ける
- 「お母さんの言うとおりにしていれば間違いない」と断定する
これらの言動は、いずれも「あなたのため」と言いながら、母親自身の不安や満たされない想いが根底にあるケースが多く見られます。
ひとつずつ見ていきましょう。
「あれをしなさい」「それはダメ」と指示してくる
「あなたが大切だから」「苦労をさせたくないから」と言い、進学や就職、交友関係などに細かく口出しをしてくるのが特徴です。
娘の選択を信じるより、先回りして正解を教えようとする姿勢が見られます。

何もかも指示されて育つと、それが普通と感じちゃいますよね💦
「あなたはお母さんの夢だった」と期待を背負わせる
「お母さんができなかったことをあなたにしてほしい」「○○させるのがお母さんの夢だったの」など、母親の願望を娘に託してしまうパターンです。
娘が母親の夢を叶えるために生きているような気持ちになり、自分の軸を見失ってしまうことがあります。
「自分を犠牲にして育ててきたのに」と過去を強調する
「やりたいことも我慢してあなたを育ててきた」「お母さんの人生をかけてきたのよ」と、恩を強調するような言動が目立ちます。
娘に感謝や罪悪感を抱かせ、自由な選択をしづらくさせてしまうでしょう。
「あなたさえいれば何もいらない」と重い愛情を向ける
「いつまでも仲良し親子でいようね」「あなたはお母さんの親友よ」と親密さを強調し、娘との距離を縮めようとします。
一見すると仲のよい親子のようでも、母親が娘に感情のよりどころを求めすぎている状態といえるでしょう。
「お母さんの言うとおりにしていれば間違いない」と断定する
「絶対○○するべき」「言うとおりにしなかったからそうなるのよ」と、娘の判断や行動を否定し、従わせようとします。
娘の成長や自立心を尊重せず、母親の価値観で行動をコントロールしようとするのが特徴です。
娘に依存する母親が持つ背景の特徴
娘に依存する母親が持つ背景の特徴として、以下2つが挙げられます。[2]
それぞれ解説します。
夫婦仲が悪い
母親が夫との関係に満たされなさや孤独感を抱えていると、精神的な支えを娘に求めてしまうことがあります。
たとえば、夫婦仲が良好であれば「夫が話し相手になってくれる」「夫にわかってもらえる」と感じられるため、娘に強く依存する必要はありません。
しかし、夫との会話が少なかったり信頼関係が築けていなかったりすると「娘だけがわたしを理解してくれる」「この子がいないと孤独」といった思いが強まります。
その結果、母親の気持ちや期待がすべて娘に向けられるようになり、親子の距離が過度に近くなってしまうのです。
子どもや育児を最優先している
母親自身が「子どもを最優先にすることが正しい」「育児に人生をかけるべき」と強く思い込んでいると、娘への依存につながりやすくなります。
たとえば、育児を第一に考えて趣味や交友関係を控えてきた母親は、子どもが成長して手が離れると「自分の存在意義がわからない」と感じることがあります。
その空白を埋めるように、いつまでも娘に干渉したり「まだ必要とされたい」と感じたりする思いが、依存の背景にあるのです。
とくに、子どもに尽くしてきた時間や労力が母親自身の誇りになっているケースでは「今さら離れてほしくない」「この関係を手放したくない」と強く感じてしまうことがあります。

お母さんにとって子ども大切すぎたのでしょう。
母親に依存される娘が感じやすいこと
母親に依存される娘が感じやすいこととして、以下が挙げられます。[1]
ひとつずつ見ていきましょう。
楽しむことに罪悪感を抱く
母親の気分に振り回されやすく「わたしが元気でいなきゃ」「お母さんを支えなきゃ」と子どものころから頑張ってきた娘ほど、幸せを感じることにブレーキをかけてしまいます。
たとえば、友だちとの旅行や趣味の時間を楽しんでいても「こんなに楽しんでいていいのかな」と不安がよぎり、こころからリラックスできないことがあるでしょう。
常に周囲に気を配ってしまうため「場を盛り上げなきゃ」「空気を読まなきゃ」と自分の気持ちを後回しにしてしまうのです。
母親の機嫌を取ることが習慣になっていたり「自分さえ我慢すれば家庭がうまくいく」と感じたりした経験により、幸せをこころから受け取りづらくなってしまいます。
自立に対しての不安が強くなる
母親に依存された娘は、自立に対して強い不安を抱きやすくなります。
子どもの頃から母親がすべてを決めていた場合、自分で考える・選ぶ・責任を取るという経験が少なくなります。
そのため、「自分でやっていけるのか」という不安が大きくなりがちです。
たとえば、就職や引っ越し、結婚など人生の節目で「母の意見なしでは決められない」と感じたり、家事やお金の管理など日常の場面でも自信を持てなくなったりするでしょう。
結果として、30代や40代になっても経済的・精神的に自立しづらくなってしまうのです。
過干渉な親のもとで育つと自分で選んで生きる力が育ちにくくなり、大人になっても親の存在なしでは不安を感じる状態につながりやすくなります。
親子関係が共依存になっているときは、下記の記事もあわせてご覧ください。
夫よりも母親の存在が大きくなる
母親への依存が強いと、夫より母親を優先してしまい、夫婦関係に影響を及ぼすことがあります。
困ったときに娘が真っ先に母親を頼り、母親もそれに応じて深くかかわる関係が続くと、夫婦で乗り越えるべき問題までも親子で解決するようになるのです。
たとえば、夫との関係に悩んだときに母親へ相談すると「あなたは悪くない」「お母さんもそう思う」と共感してもらえ、安心感が得られます。
その結果「やっぱりお母さんのほうが夫より頼りになる」と感じるようになり、夫婦関係が悪化する原因になるでしょう。
このように、大人になったあとも母親との距離が近すぎると、夫婦関係のバランスが崩れやすくなります。
親子関係を壊さずに適切な距離をとる方法
親子関係を壊さずに適切な距離をとる方法として、以下が挙げられます。[3]
それぞれ解説します。
苦痛を感じたら断る
親子関係であっても、苦しく感じることは断りましょう。
断ることは「親に逆らう」ことではなく、自分のこころを守るための大切な選択です。
たとえば、愚痴を聞かされてつらくなってきたときは「ごめんね、ちょっと疲れちゃった」と伝えてもかまいません。
親はあなたに解決してほしくて愚痴を言っているわけではなく、ただ話すこと自体が目的であることも多いのです。
親の気持ちよりも、自分が苦痛を感じるかどうかを断る判断基準にしましょう。

あなたが心地よい過ごし方を目指しましょう。
自分を中心に考える
親との関係に悩むときこそ「自分がどうしたいか」を軸に物事を考えてみましょう。
これまで親の期待や感情を最優先にしてきた人ほど「自分の気持ちを中心にするなんてわがままでは?」と感じてしまうかもしれません。
ただ、自分の感情を無視し続けることのほうが、こころをすり減らす結果につながります。
たとえば「お母さんが寂しがるから帰省しないと」ではなく「今は休息が必要だから今回は帰省を控えよう」と、あなたの気持ちを主語にして考えることが大切です。
気持ちを伝えるときは「わたしはこう感じた」「わたしはこうしたい」とアイメッセージで話すと、相手を責めずに自分の意思を示しやすくなります。
親との距離を考えるときほど自分のこころに軸足を置いて、ムリのない選択を重ねていきましょう。
自分の感情と親の感情を分けて考える
親の気持ちに引っ張られすぎず、自分の感情と親の感情を分けて考えましょう。
「親が悲しむかもしれない」「冷たいと思われたらどうしよう」と不安になることもありますが、親の感情にまで責任を持つ必要はありません。
たとえば、親があなたの意思を否定したり価値観を押し付けてきたりすると、しんどさを感じるのはごく自然なことです。
「わたしが拒否したら親が悲しむかも」と自分を責める必要はありません。
親の感情ではなく「自分がどう感じているか」を大切にしましょう。
あなたのこころに正直になることが、親子の健やかな距離感をつくる第一歩になります。
まとめ
母親との関係は、人生に深く影響を与える大切なものです。
ただ、母親の気持ちを優先しすぎて、自分の感情を後回しにしてしまうのは健やかな親子関係とはいえません。
親と疎遠になる必要はありませんが、適度な距離を保つことでお互いにとって心地よい関係を築くことができます。
親との関係に悩んだときは、おおかみこころのクリニックにご相談ください。
あなた自身のこころと人生を大切にする選択を、一緒に考えていきます。
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おおかみこころのクリニック
【参考資料】
[1]大美賀直子|長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか さくら舎
[2]江上園子|母と娘の密着関係における規定因と帰結の検討
https://www.ed.ehime-u.ac.jp/~kiyou/2018/pdf/13.pdf
[3]石原加受子|「苦しい親子関係」から抜け出す方法 あさ出版
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士