「うつ病の治療をずっとしているけど治らない」
「rTMS治療って見たけど、どんな治療なのかな?」
「薬と違って機械を使うなんてなんだか心配…」
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)は、薬物療法や心理療法と違う、うつ病の新しい治療法として注目されています。
ただ、聞きなれない治療で「安全なのかな」「痛いのかな」と不安を感じている方も少なくありません。
この記事では、rTMSについてやTMSとrTMSの違い、治療方法、rTMSを受けたいときの伝え方について解説します。
まずは「こんな治療法もあるんだ」と知ることから始めましょう。
rTMSは脳の活動を促す治療法
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)は、磁気の力で脳を刺激し、こころの不調をやわらげる治療法です。
こころの病気はストレスや性格、環境などさまざまな要因が複雑に重なって起こることがほとんどです。
一方で、脳の神経細胞同士がうまく情報をやりとりできなくなることも、原因のひとつだと考えられています。[1]
この神経細胞同士の情報のやりとりに働きかけるのが、電気けいれん療法やrTMSです。
rTMSは、日本では2017年9月に承認された比較的新しい治療なため、詳細が分からずに不安を感じることもあるでしょう。
rTMSは、脳に磁気刺激を与える専門の機械を用いて行います。
治療中は専門の訓練を受けた医師に見守られながら行うため、不安だったり怖かったりしたらすぐに相談できます。[2]
また、rTMSは身体への負担や副作用が少ない安全な治療と言われています。
ただし、副作用がまったくないという訳ではありません。
報告されている副作用には、以下のような一時的で軽度なものがあります。[3]
- 眠気
- 吐き気
- 頭皮の痛み
- 軽い頭痛 など
rTMSの副作用については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
TMSとrTMSの違い
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)と似ているTMS(経頭蓋磁気刺激)は、1985年に脳機能の研究で用いられたのがはじまりです。[3]
TMS(経頭蓋磁気刺激)は、磁気によって脳に刺激を与える治療法の総称と考えてください。
TMS治療は1回だけ行う単発TMSや2連発TMS、繰り返し刺激を与えるrTMSのように、さまざまな刺激パターンがあるのです。[4]
さらに、rTMSにもさまざまな刺激方法があり、そのひとつにTBS(シーターバースト刺激)という治療があります。[6]
TBSは、従来のrTMSよりも短時間で脳の神経活動を調整できるのが特徴です。
TBSには、おもに以下のような2つのタイプがあります。
- iTBS(間欠的な刺激パターン):一定の間隔をあけながら刺激をくり返し脳の活動を促進する
- cTBS(持続的な刺激パターン):休みなく刺激を連続して与え脳の活動を抑える
rTMSは、特定の脳領域を繰り返し刺激することで神経活動に働きかけ、刺激が終わってからも一定期間効果が続くことがわかり、うつ病の治療として活用されているのです。
そのため、薬の副作用がつらかったり治療を続けているのに良くなったと感じられなかったりするときに、rTMSは新しい治療の選択肢として注目されています。
おおかみこころのクリニックでは、iTBSを用いて治療を行います。
「どんな治療か気になる…」と思ったらお気軽にお問い合わせください。
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rTMS治療の方法と流れ
rTMSの方法と流れを、日本精神神経学会の指針をもとに紹介します。[2]
rTMSは訓練を受けた医師が決められた手順に沿って、脳に刺激をあたえる装置を用いて行います。
rTMSのおもな治療の流れは以下のとおりです。[2]
- 初回の診察でrTMSの治療ができるかを医師が判断する
- 初回治療では刺激部位と強度の調節を行う(約20 分)
- 専用の椅子に座り左前頭部にコイルをあてる
- 約40分間、刺激をあたえる(iTBSは3~6分)
- 治療終了後に医師が副作用や精神症状を確認する
治療中は、医師や看護師がそばで見守ってくれているため、一人きりになることはありません。
また、初めてのrTMSでは刺激による痛みや不快感を抱くことがありますが、慣れによって軽減するという報告があります。[2]
もし、刺激中の痛みが強いときは刺激の強さを調節できるので、ムリをせずに医療スタッフに伝えましょう。

気になることは何でも聞いてくださいね!
rTMS治療|対象者・期間・費用
実際にrTMS治療を考える際に気になることを、以下の3つに分けて解説します。
rTMSの対象かどうかや、治療期間があなたの生活に適しているかの参考にしてください。
rTMS治療の対象者
rTMS療法は、適応・禁忌・適応外と細かな実施基準があります。
ここでは、実施基準の一部を紹介します。[2]
- 適応
- 18歳以上の成人
抗うつ薬を一定期間使用しても効果が出ない中等症以上のうつ病の方
- 禁忌の一例
- 頭部やその近くに金属が埋め込まれている(人工内耳、心臓ペースメーカーなど)
- 適応外
- 18 歳未満の方
明らかな認知機能障害や脳の病気がある方
ただし、ここで紹介した条件がすべてではありません。
rTMS治療に適応しているかどうかは、医師があなたの症状や状態をもとに判断します。
「ちょっと気になっているだけなんだけど…」という気持ちでも、まずは相談してみてください。新しい治療との出会いになるかもしれません。
さらに細かいrTMS治療の対象条件については、下記の記事をあわせてご覧ください。
rTMS治療の期間と通院頻度
rTMS治療について「どれくらい通わないといけないの?」「仕事と両立できるかな?」と心配になる方も少なくありません。
治療スケジュールは以下の通りです。[2]
- rTMSの治療時間:約40分
- iTBSの治療時間:3~6分
- 治療頻度:週5日
- 治療期間:4週間~6週間
rTMS治療の時間は40分ですが、おおかみこころのクリニックではrTMSのひとつであるiTBSを用いるため3~6分の実施時間で治療ができます。
ただし、効果を感じる期間や効果の感じ方には個人差があります。
そのため「3日目から効果を感じます」「4週後から効きます」のような断言はできません。
治療期間については、効果や安全性を見ながら医師があなたに合った治療計画を立ててくれます。
rTMS治療にかかる費用や保険診療
rTMS治療は、日本で2017年9月に承認され、2019年6月に保険適応となりました。
ただし、治療を受ける人や医療機関が条件を満たす必要があるため、必ず保険診療になる訳ではありません。[5]
医療機関が保険でrTMS治療を行えるかは、細かな条件を満たす必要があるため、2023年12月の時点では全国で約50施設程に限られているのです。[5]
そのため、自由診療でrTMSを行っている病院やクリニックは多くあります。
rTMS治療を保険でできるのかや費用については、主治医や近くのrTMS を実施している医療機関に確認しましょう。
rTMS治療を受けたいとき主治医への相談のしかた
「rTMS療法が気になる…」と思っても「主治医の先生にどう伝えればいいのかわからない」「否定されたらどうしよう」と、不安になることもあるでしょう。
治療についての希望や疑問を伝えることは、よりあなたに合った治療法を探すために大切です。
ムリに上手に伝える必要はありません。あなたの思いをそのまま伝えて大丈夫です。
たとえば、以下のように聞いてみてください。
「rTMSという治療法があるみたいですが、わたしにも適応になりますか?」
「薬の副作用がつらくて、少しでも身体に負担の少ない治療があれば知りたくて…」
もし、主治医がrTMS治療に詳しくないときは、専門の医療機関を紹介してもらえることもあります。
また、セカンドオピニオンとしてrTMSに詳しい医療機関を受診するのもひとつの方法です。
気になることや不安なことは、ひとりで抱え込まずに医師や看護師に相談してみましょう。
まとめ|まずは相談してみよう
rTMSは、これまでの治療で十分な効果が得られなかったうつ病の方にとって、新たな治療法です。
「薬の副作用がつらい」「症状がやわらぐ感じがしない」と悩んでいるあなたにとって、rTMSは身体的な負担が少ない新しい治療法となるかもしれません。
まずは「こんな治療法もあるんだ」と知ることから始めましょう。
少しでも気になる気持ちがあるなら、主治医や専門医に相談してみてください。
おおかみこころのクリニック秋葉原院では、rTMS治療を開始します。LINE予約も可能です。いつでもご連絡お待ちしております。
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【参考文献】
[1]日常生活機能を改善する先端的治療ー新しい脳刺激法による統合失調症の治療ー|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/activities/research8.html
[2]日本精神神経学会 反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針 令和6年4月(改訂)ver2|公益社団法人 日本精神神経学会 ECT・rTMS 等検討委員会rTMS 適正使用指針作成ワーキンググループhttps://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS_202404ver2.pdf
[3]反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の臨床と基礎|朴 秀賢
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyushuneurop/68/3_4/68_95/_pdf/-char/ja
[4]経頭蓋磁気刺激(TMS)の基礎と臨床|伊津野拓司 岩波明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/74/6/74_628/_pdf
[5]治療抵抗性うつ病に対する rTMS 保険診療の 実施状況調査からみえてきた適切な普及にとっての 問題点と今後取り組むべき課題|髙橋 隼、松田 勇紀、鬼頭 伸輔、中村 元昭、伊津野 拓司、野田 賀大
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1260090589.pdf?utm_source=chatgpt.com
[6]シーターバースト刺激Theta Burst Stimulation(TBS)|山口智史、松田雅弘、春山幸志郎、高橋容子、藤野雄次、眞壁 寿、藤原俊之
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/5/59_59.496/_pdf