「薬を飲んでもうつがよくならない」
「新しい治療法を試したいけど、費用や条件がわからなくて不安」
このように、うつ症状がなかなかよくならずつらいとき、新しい治療法を検討したくなる一方で、制度や費用がわからず不安になる方も少なくありません。
rTMS治療は、薬が効きにくいうつ症状に対して効果が期待される治療法です。
現在は一定の条件のもとで、保険診療として受けられるケースもあります。
この記事では、rTMS治療の保険適用に関する条件や費用の目安、自由診療との違いなどをわかりやすく解説します。
rTMS治療の費用
rTMS治療の費用を「保険適用」と「自由診療」に分けて解説します。
保険適用
保険適用では、rTMS治療にかかる費用は1回につき約1.2万円で、自己負担3割の場合は約3,600円です。[1]
このほかに初診料や再診料、検査料などが加算されるため、実際の負担額はやや増える傾向があります。
ただ、rTMS治療は「高額療養費制度」が適用される治療法です。
高額療養費制度とは、1か月の医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分が支給される制度です。[2]
入院時の食事代や差額ベッド代など、保険適用外の費用は対象外となる点に注意しましょう。
rTMS治療は約6週間にわたって行われるため、2か月分の高額療養費が適用される計算になります。
日本人の平均である年収460万円の場合、2か月分の自己負担額の上限はおよそ16万程度です。[3][4]
そのため、rTMS治療1回あたりの実質的な自己負担額は1回あたり約5,300円(160,200÷30=5,340)となります。
高額療養費制度の自己負担上限額は、年齢や収入、保険の種類によって異なるため、詳細は加入している健康保険の窓口へご確認ください。
自由診療
rTMS治療を自由診療で受けるときは、医療機関ごとに料金設定が異なるため治療費は施設によって差があります。
また、以下のような費用が追加で発生するケースも想定しておきましょう。
- 初診料・再診料
- 検査料(例:心理検査)
- 診療に付随するサービス料(自由診療ならではの付加サービスなど)
自由診療では、初診料や再診料がセット料金に含まれている医療機関もあれば、別途必要となるケースがあるため、事前に医療機関へ確認すると安心です。
また、自由診療は高額療養費制度の対象外となるため、治療にかかるすべての費用が自己負担となります。
ただ、うつ病の治療を目的として受けたrTMS治療費は、年末の確定申告で医療費控除の対象になる場合があるため、医療機関や税務署に確認しましょう。
おおかみこころのクリニックのrTMS治療費については、お気軽にお問合せください。
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rTMS治療の保険適用には条件がある
rTMS治療の保険適用は、すべての方が対象になるわけではありません。
保険適用の対象となるかどうかは、国が定めた基準(診療報酬上の条件)を満たしているかどうかによって決まります。
これまでの治療歴や診察などをもとに、基準にあてはまるかを医師が確認し、必要に応じて説明や対応をする流れです。
また医療機関側も、治療を保険診療として提供するためには以下のような基準を満たす必要があります。[5]
- 精神科を専門に扱う医療機関であること
- 経験豊富な常勤の精神科専門医が在籍していること
- 認知行動療法の施設基準および国が指定する施設基準を届け出ていること
- 関連学会が認める適正使用指針に基づく講習を受講した精神科専門医がいること
保険診療でのrTMS治療を希望するときは、あなたが保険適用の対象かだけでなく「病院が保険診療に対応しているか」も合わせて確認が必要です。
保険診療の有無がホームページに掲載されているケースもありますが、確実な情報を得るために医療機関に問い合わせるのがよいでしょう。
rTMS治療が保険適用される具体的な条件
rTMS治療が保険適用される条件を、患者側と病院側に分けて見てみましょう。
患者側の条件
rTMS治療はすべてのうつ病の方に適用されるわけではなく、以下のような条件を満たした場合に限り保険適用の対象となります。[6]
- 18歳以上の成人であること
- 薬物治療で十分な効果が得られていないこと
- 抗うつ薬による治療を適切な量・期間で受けた経験があること
- 中等度以上のうつ病であること(幻覚・妄想などの精神病症状や、強い希死念慮を伴う重症例は対象外)
このように、rTMS治療を受けるためには明確な条件があります。
「自分が対象かどうか分からない」という場合は、まずは主治医に相談しましょう。
病院側の条件
rTMS治療を保険診療として実施するには、医療機関側にも以下のような条件が求められます。[5][6]
- 精神科専門医の管理下で行われること
- 日本で保険適用が認められているrTMS装置を使用していること
- 国が定めた治療クール(1日40分、週5日、4週から6週間)に基づいて実施されること
rTMS治療を保険で受けるには、医療機関側の体制や設備も重要なポイントです。
保険診療での治療を希望する場合は、rTMS治療を受ける予定の医療機関に適応の有無を確認しましょう。
rTMS治療の保険適用が限定される理由
rTMS治療の保険適用に条件がある理由として、以下が挙げられます。
それぞれ解説します。
医療費が高額だから
rTMS治療は、1クール(約4〜6週間)で数十万円の費用がかかる高度な医療技術です。
日本の健康保険制度は、病気やけがをしたときに必要な医療を受けられる仕組みですが、保険が使えるのは医学的に必要と認められた治療に限られています。
もし、rTMS治療のような高額な医療に広く保険を適用すると、医療費全体の増加につながるおそれがあります。
そのため国(厚生労働省)は、まずは効果が期待できる限られたケースに絞って、段階的に保険適用を進める方針を取っているのです。
rTMS治療に関しても、現在は「薬が効かない中等度以上のうつ病」の方に限って保険が使える仕組みになっています。
専門の医師と設備が必要だから
rTMS治療は、専用の機器や高い専門性をもつ医師の管理下で行う高度な治療です。
そのため、安全かつ効果的に治療を行うには、医療機関側にも一定の体制や設備が求められます。
こうした背景から、厚生労働省は保険診療としてrTMS治療を実施する医療機関に厳しい基準を設けており、現時点では保険適用が限られた施設にとどまっているのです。
自由診療のrTMS療法が向いている方
rTMS治療は保険が使えないケースでも、医師が必要と判断すれば自由診療として受けられるケースがあります。
自由診療のrTMS治療が向いている方は、以下のような特徴があります。
■抗うつ薬の服用に不安や抵抗がある
薬による副作用が心配。できるだけ薬に頼らずに治したい
■比較的軽度のうつ症状で悩んでいる
保険適用の対象外でも、気分の落ち込みや集中力の低下などに早めに対処したい。ただ、実施されるのは医師がrTMS治療が必要と判断したケースのみ
■入院ではなく外来で治療を進めたい
仕事や家庭の都合で通院治療を希望している
おおかみこころのクリニックでは自由診療によるrTMS治療を行っており、症状やライフスタイルに合わせた治療計画をご提案しています。
「まずは話だけでも聞いてみたい」というときも、お気軽にご相談ください。
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まとめ
rTMS治療は、薬だけでは改善が難しいうつ症状に対して、新たな選択肢となる治療法です。
現在は保険が使えるケースが限られていますが、保険の対象外であっても必要に応じて自由診療という形で治療を受けられます。
おおかみこころのクリニックでは、rTMS治療に関するご相談を随時受け付けています。
「自分は対象なのか」「どのような治療法が合っているのか」というお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。
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【参考資料】
[1]治療抵抗性うつ病に対するrTMS保険診療の実施状況調査からみえてきた適切な普及にとっての問題点と今後取り組むべき課題
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1260090589.pdf
[2]厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
[3]国税庁|令和5年分 民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2023.htm
[4]厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
[5]厚生労働省|医療機器の保険適用について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000494014.pdf
[6]日本精神神経学会 反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS_202309.pdf