離れて暮らす家族が、たまに物忘れをするっていうの。
大丈夫だとは思うけど、一人暮らしだから心配なんだよね。
自分の親や身近な人に感じるこんな違和感を覚えたことはないでしょうか。
認知症は誰にでもなる可能性があるため、口癖が認知症を直接的に引き起こすわけではありません。
しかし、口癖は【考え方の癖】が習慣化して現れます。
この記事では、認知症になりやすい口癖や、家族の小さな違和感が気になるという方に向けての対策も紹介しています。
ぜひ最後までご覧ください。
認知症になりやすい人の口癖5選
ネガティブな口癖は自己肯定感を下げ、なにもかも否定的にとらえてしまいがちです。
ここでは、認知症になりやすい人の口癖を5つご紹介します。
「今時の若い人は~」
「今時の若い人は我慢ができない」
「今時の若い人は根性がない」
認知症は加齢による認知機能の低下に伴い、周囲の変化に適応する柔軟性が失われていきます。
認知機能とは物事を理解・判断したり、予測を立てたりする機能です。
周囲の変化を受け入れられない、批判的な口癖は認知症になりやすいといわれています。[6]
「なんでもいい」
娘「お母さん、今日のご飯何食べたい?」
母「なんでもいい」
娘「食べたいものは何もないの?」
母「とくにないよ、決めていいよ」
自分の意見を言わずに、意思決定を相手にゆだねてしまう口癖も要注意です。
脳は考えることで活性化しますが、自分で考えずに人にばかり任せてしまうと考える機能が衰えてしまいます。
「もう年だから」
「年をとっているから仕方ない」
「もう年だから動きたくない」
自分自身で加齢を受け入れている反面、加齢に対するあきらめや言い訳として使うこともあります。
しかし他人から言われてしまうと、自尊心が傷つき機嫌を損ねてしまうこともあるため注意が必要です。
「やることがない」
「仕事を辞めたら何をしていいかわからない」
「やることがなくて毎日が退屈」
退職すると自由な時間が手に入る反面、仕事が趣味だった人や日々の楽しみがない人は、1日が長く感じてしまいます。
刺激のない毎日は、脳を急速に老化させてしまうため注意が必要な口癖です。[5]
「もうやらない」
「もう疲れたからやらない」
「もうおしまい」
集中力が続かない、すぐに疲れてしまうといった口癖も注意が必要です。
以前は好きだったことが楽しめない、したいと思えない、興味や関心の低下は認知症になりやすい口癖だといえるでしょう。
認知症になりやすい性格
性格的な特徴としてあげるとすれば神経質、物事をネガティブに考える人は認知症になりやすいといえるでしょう。[6]
神経質な人やネガティブな人は、ささいなことに対してもストレスを感じやすいため、人間関係にも影響を及ぼします。
その結果、社会とも疎遠になりやすく認知症になるリスクも高まるのではないかと考えられます。
しかし、認知症は誰にでもなりうる可能性があるため、この性格だから必ず認知症になるということは言い切れません。
生活背景もひとり一人違うため「なりやすい傾向にありますよ」ということですね。
認知症になりやすい人の生活習慣
認知症のなりやすさは、日々の生活習慣も関係しています。
以下のような生活習慣がある方は、注意が必要です。[1]
喫煙
タバコに含まれるニコチンには、脳梗塞や脳出血などの脳卒中のリスクを高めます。
脳卒中を発症した10人に1人は認知症を発症しているという報告もあるため、注意が必要です。[1]
喫煙は脳卒中以外にも高血圧や肺がん、心筋梗塞のリスクも伴うため、禁煙を心がけましょう。
大量の飲酒
大量に飲酒する人は飲酒しない人に比べて、認知症になるリスクが4.6倍高くなるといわれています。
飲酒量が増えれば増えるほど脳が委縮してしまい、記憶力の低下を引き起こすのです。
少量の飲酒※は認知症を予防する可能性があるという報告もありますが、飲酒習慣のない人が予防のために飲酒を始めることはおすすめできませんので、注意してくださいね。[3]
※1本・350mlのビールを1本以下/日程度
飲みすぎには注意ですね💦
運動不足
定期的な運動習慣がある人は、認知症や生活習慣病になるリスクが低いといわれています。
ふだんから運動している人は運動していない人に比べて、5年後の認知症になるリスクが31%低いと報告されています。[2]
定期的な運動は加齢による筋力低下を防ぎ、健康的な生活には欠かせない習慣だといえるでしょう。
認知症が気になるときに周囲ができる対策
認知症は完全に予防することができない病気です。
しかし、高齢の家族がいたり家族に認知症を疑う症状があったりする場合、あらかじめ備えておくことが大切です。
ここでは、身近な人の認知症が気になるときの対策を紹介します。
心の支えになる
身近な人の認知症が気になるという場合、連絡や会う回数を増やしてみたり、心配事はないかなど話に耳を傾けたりしましょう。
周囲が思う以上に本人は、物忘れをする自分に嫌気がさしたり日々変化していく自分に不安を感じたりしています。
日々変化していく自分に向き合うのは、とても不安で心細いものです。[1]
そんなとき、身近な人が心の支えになり一緒に向き合うことで、不安や孤独をやわらげることができるのです。
安心してもらうことが大切ですね♪
生活する上で不便に感じることはないかを知る
「最近、同じようなことを口癖のように言っている」
「物忘れが増えてきた気がする」と感じた場合は、本人に生活で不便に感じていることはないか聞いてみましょう。
たとえば、火の消し忘れが心配なら、
- 目のつく場所に「火の元確認」など注意を引くようなステッカーを貼る
- 可能な場合はガスコンロから、消し忘れ防止機能付きのIHコンロに変える
- 火をつけたときにキッチンタイマーをかける
物忘れに悩む家族と離れて暮らしていても、対策を取ることは可能です。
悩みに寄り添い、困っていることはないか、共に考えることが大切だといえるでしょう。
認知症に関する相談先を知っておく
身近な人が「認知症かも?」と気になったら、認知症について相談できる相談先を調べておきましょう。
認知症は早い段階で対処をすれば、進行を遅らせることもできます。
- 地域包括支援センター
- 地域包括支援センターは相談内容に応じて、認知症に詳しい専門的機関の紹介や保健福祉サービスなどの支援を行います。
以下のサイトでは全国の地域包括支援センターをご紹介しています。
参考にしてくださいね。
2.地域包括支援センターについて 全国の地域包括支援センターの一覧|地域包括ケアシステム|厚生労働省
- 市町村の高齢者福祉課
- 高齢者の相談、介護保険に関する相談や必要な福祉制度の案内や、情報提供を行います。[4]
使える地域支援を事前に知っておくと、いざという時に役立ちます!
まとめ
認知症は気づかないうちに発症することが多いため、この記事で紹介した口癖を言っているからといって必ずしも認知症を発症するとは限りません。
しかし、認知症になりやすい人の口癖や周囲ができる対策を知ることで認知症に対しての知識や心構えが備わることでしょう。
そのためには「あれ?おかしいな」「こんな口癖言っていたかな?」という小さな違和感に周囲が気づくことが大切です。
物忘れが気になる、身近な人の様子が最近違うといった違和感を覚える方は、お気軽に当院へご相談くださいね。
24時間予約受付中
(参考サイト)
[1]もしも |社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター|厚生労働
https://www.mhlw.go.jp/content/000521036.pdf
[2]あたまとからだを元気にするMCIハンドブック|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf
[3]アルコールと認知症|e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-007.html
[4]高齢化福祉課|浦安市
https://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/soshiki/1022197/1022235/1022240.html#:~:text=%E4%B8%BB%E3%81%AA%E6%A5%AD%E5%8B%99,%E6%95%AC%E8%80%81%E7%A5%9D%E9%87%91%E5%93%81%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82
(参考文献)
[5]刺激の少ない環境が成体期のマウスの空間認識や海馬におけるGAP-43およびシナプトフィジンの発現に及ぼす影響|宮本 満 杉岡 幸三 荒川 高光 三木 明徳
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2008/0/2008_0_A3P1028/_pdf/-char/ja
[6]認知症診断と神経病理学的負担の性格予測因子:個々の参加者データのメタ分析|Emorie D. Beck, Tomiko Yoneda,Bryan D.James,David A.Bennett,Jason Hassenstab,Mindy J. Katz,Richard B. Lipton,John Morris,Daniel K. Mroczek,Eileen K. Graham |アルツハイマー病協会
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.13523#
- この記事の執筆者
- 小久保有希
医療ライター。看護師経験15年。4年間精神科に勤務し、病棟・訪問看護に携わる。相手の気持ちに寄り添う記事が得意。