解離性健忘と恋愛|理想的な関係性や大切にすること、注意点とは

先生、恋人が記憶喪失のような状態になってしまいました。

私はどうしたらよいのでしょう?

浅田先生
浅田先生

それは解離性健忘という状態かもしれないよ。

あなたにできることを解説していくね

恋人の記憶が突然失われてしまったら、どうしたらよいかわからず戸惑ってしまいますよね。

支えていこうと決意しても、変わってしまった恋人をなかなか受け入れられない気持ちもあるかもしれません。

今回は、解離性健忘の恋人との理想的な関係性大切なこと注意点などについて解説します。

関係性を見直すタイミングについても解説しているため「相手も自分も大切にする」という視点を持ちながら読み進めてくださいね。

解離性健忘の記憶は戻るのか、気になる方はご覧ください。

解離性健忘の方との理想的な恋人関係とは

解離性健忘の方との恋人関係として、適度な距離感を保てる関係性が望ましいでしょう。

健忘症状を持つ本人が自分を責めず、あなたも恋人の対応で疲弊しないことが大切だからです。

解離性健忘の恋人と良い関係を築くためには、下記の2点を意識してください。

こころちゃん
こころちゃん

ひとつずつ解説します

課題を分離する

恋人だからこそ「相手の力になりたい」という気持ちが強くなりますよね。

自分にできることはないか、と一生懸命になることもあるでしょう。

しかし、あくまでも解離性健忘は「恋人の課題」です。

恋人が自分の力で乗り越えないと、本当の意味での回復にはならないのです。

治療は精神医学のプロである医療機関に任せ、病気との付き合い方は恋人に委ねましょう。

あなたはありのままのパートナーを「頑張ってるなぁ」と認めるだけで十分です。

心配や応援の気持ちを持ちながらも、病気は相手の課題であるという明確な線引きを持つことが必要です。

「恋人が元気になるために自分がしっかりしなきゃ」と頑張りすぎないようにしてくださいね。

こころちゃん
こころちゃん

自分を大切にすることがパートナーを大切にすることに繋がります

ひとりの時間を大切にする

意識的にひとりの時間を大切にしましょう。

この時間は「お互いに依存しないため」「個人としての自分を保つため」に必要です。

距離感が近くなりすぎたりお互いに依存しあったりすると、関係性に疲れて嫌気がさしてしまいます。

「何か有意義なことをしなくては」と焦らなくても、ゴロゴロしてテレビを見たり家の周りを散歩したりするだけで大丈夫です。

頭の中を空っぽにしてひとりで過ごすことで、自分の中に余裕が生まれ相手をより大切に思うことができるでしょう。

解離性健忘の恋人と過ごすうえで大切なこと

解離性健忘の恋人と過ごす上で大切なことは下記の3点です。

ひとつずつ解説します。

無理に思い出させようとしない

解離性健忘の方は特定の記憶がぽっかりと抜けているため、会話が噛み合わないことがありお互いに困惑することがあるでしょう。

恋人との思い出も忘れてしまい、お互いに傷つくこともあるかもしれません。

しかし多くの場合、解離性健忘の記憶は数日から数ヶ月で戻ります。

辛い記憶から心を守るために記憶に蓋をしているため、無理に思い出させようとしたり「何で忘れたんだ!」と恋人を責めたりしないことが大切です。

「心が受け入れられるようになったら記憶が戻る」とゆったりした気持ちで構えましょう。

こころちゃん
こころちゃん

不安になると思いますが、ゆったりと構えましょう

大きな決断は先延ばしにする

症状が落ち着くまでは、大きな決断を避けましょう。

解離性健忘の方は自分の言動に周囲とのズレを感じ、友人関係や社会生活を避けることがあります。

ときには「自分がいると迷惑をかける」という思いから、衝動的に恋人関係の解消や退職のような大きな決断に至ることがあります。

心の病気にかかっているときは、視野が狭くなり最悪のパターンを想定する傾向があるため、「大きな決断は回復してから」が鉄則です。

また社会との接点が失われると孤立が深まり、うつ病などの他の精神疾患を引き起こすリスクが高まります。

恋人が大きな決断をしようとしていたら「まずは療養に専念しよう。元気になってから一緒に考えよう」と声をかけ、結論を急がないようにしてください。

病院の受診を勧める

恋人が落ち込んでいる様子がみられたり、仕事に行けないなどの社会的な支障が現れたりしたときは、病院の受診を勧めましょう。

本人が受診に抵抗感を持っている場合は、家族や恋人が付き添うのもひとつの方法です。

付き添いの方が一緒に診察室に入室できるかはケースバイケースとなりますが、主治医から話を聞くことで本人をサポートする方法がわかるでしょう。[1]

解離性健忘による苦しみをふたりで抱え込まず、専門家に相談してください。

当院でもおふたりの心が軽くなるお手伝いをさせていただきます。

24時間365日予約を受け付けているので、まずはLINE登録だけでもしてみてくださいね。

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解離性健忘の恋人と過ごすうえで気をつけること

解離性健忘を持つ恋人と過ごす上では、次のことに気をつけましょう。

こころちゃん
こころちゃん

ひとつずつ解説します

無理に特別なことはしない

落ち込む恋人への気遣いから「気分転換に旅行に誘ってみよう」「自分が明るく振る舞わなきゃ」と周囲が気負ってしまうことがあるかもしれません。

しかし、解離性健忘によりこころのエネルギーが落ちている状態では、普段好んで行っていたことにも疲労感を感じることがあります

また、周囲に気を遣わせている自分や、気遣いに応えられない自分を責めてしまうこともあるでしょう。

本人に嬉しさや安心感を与えるのは「変わらずにいてくれること」です。

無理に特別なことは行わず、普段通りに過ごすことを心がけましょう。

こころちゃん
こころちゃん

恋人にとって、いつも通りのあなたがいてくれることが嬉しいはずです♪

共依存に陥らない

お互いに依存し合う「共依存」の状態に陥らないことが大切です。

共依存とは、お互いにとってよくないとわかっていても、離れられない状態をいいます。

次のような特徴に当てはまったら共依存の状態になっている可能性があります。[2]

  • 恋人に自分の価値を感じてもらうために努力し、過労に陥りやすい
  • 常に恋人を第一に考え、自分は犠牲になることを選択する
  • 恋人に尽くすことにより、その恋人の依存を助長する

上記の特徴が当てはまり、恋人との関係に疲れや息苦しさを感じているのであれば、関係性の見直しが必要です。

第三者に相談するなどして、お互いにとって心地よい距離感を探すようにしましょう。

自分を責めない

解離性健忘で苦しんでいる恋人を負担に感じたり、調子の悪さに引きずられる自分に嫌気がさしたりするかもしれません。

しかし、自分を責めなくても大丈夫です。

ふたりの結びつきが強ければ強いほど、お互いに影響し合うのは自然なことです。

自分を責めたり悲観的になったりしたときは、疲労がたまっているサインと受け取りましょう。

「恋人が悪い」「自分が悪い」と善悪のジャッジをせず、一度自分を休めてあげましょう。

つらいときは医療機関に相談してください。

誰もあなたを責めたり笑ったりしません。「解離性健忘を持つ恋人との関係で悩んでいる」と正直に伝えてくださいね。

精神医療の専門家によるアドバイスをもらい、心を軽くしていきましょう。

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自分が苦しいとき=関係性を見直すタイミング

恋人との関係に苦痛を感じたときは、関係性を見直すタイミングです。

距離が近すぎる、問題をふたりで抱え込みすぎているなど何かしらの問題があるはずです。

自分の精神状態が悪化したり、満たされない気持ちを抱えたりしているときは、相手を大切にすることはできません。

自分が幸せになれないのは相手のせいだと考えてしまうときもあるでしょう。

苦痛を伴ったままの交際を続けると、ふたりの関係性を憎んだり、不幸に陥ったりしても離れられない「共依存」の関係に陥ってしまいます。

関係性に苦痛を感じたときは、自分を大切にできているか確認しましょう。

自分を大切にできていないと感じたときは、少し距離を置いて心身を休め、冷静な考えを取り戻しましょう。

「自分が支えてあげなきゃ」という義務感で離れられないという方は、当院にご相談ください。

ふたりが疲労で倒れる前に、私たち医療機関を頼ってくださいね。

こころちゃん
こころちゃん

自分自身を見つめなおすために相談にきてもらって大丈夫ですよ

まとめ

解離性健忘の恋人を支えるには、自分を大切にしていることや自分自身が幸せであることが不可欠です。

恋人の課題を一緒に背負い込んでいたり、常に恋人を最優先にしていたりすると、共依存の関係になり疲れてしまいます。

ひとりの時間を持ち、お互いにとって心地よい距離感での交際を目指していきましょう

恋人との関係性に苦痛を感じるようになったら、関係性を見直すタイミングです。

少し距離を置き、お互いの心身を休めましょう。ふたりだけではよい方向に進めないと感じたときは、当院にご相談ください。

ふたりが幸せになる方法を一緒に考えていきましょう。

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[1] こころの耳|療養を支える
https://kokoro.mhlw.go.jp/families/

[2] 社会学的概念としての「共依存」|2.臨 床用語としての 「共依存」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kantoh1988/1993/6/1993_6_73/_pdf/-char/ja

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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