統合失調症の症状を落ち着かせる方法|精神科OTが実際に行っている接し方




息子が統合失調症なんですけど、荒れたとき困ってるんです。

そんなときの落ち着かせる方法ってどうしたらいいんですか?

浅田先生
浅田先生

大人になった息子さんが荒れると大変ですよね。そんなときにご家族がどのように対応したらいいのかについてお伝えしますね!

「統合失調症の方をどうにか落ち着かせたい」

「どのように接したらいいのか分からない」

「妄想や幻聴にどう対応したらいいのか分からない」

このように悩んでいるご家族の声を多く聞きます。

統合失調症は、育て方や関わり方によって発症する病気ではありません

約100人に1人の割合で起こる比較的身近な病気です。[1]

この記事では、統合失調症の方を落ち着かせる方法や、実際に精神科作業療法士(以下:OT)が統合失調症の患者さんと接するときに気をつけているポイントについて解説します。

統合失調症の方を落ち着かせる方法

統合失調症の方が妄想や幻聴の影響で、落ち着かずに荒れてしまうことがあります。

しかし、この状況は統合失調症の方の病気の部分がそうさせてしまっているのです。そのため、落ち着かず荒れている場合は、下記のような3つの方法を取りましょう。

頓服薬があるなら服用する

症状が悪いときや興奮状態のときの頓服薬が処方されている場合は、頓服薬を飲みましょう。[1]

もし、処方されていない場合は、診察のときに「この前~~~~こういうことがあったので、そんなとき落ち着かせる薬ありませんか?」と聞いてみるといいでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

家族が困っていることも相談して大丈夫ですよ

本人が一人で受診している場合は、家族が事前に病院に連絡をしておくと診察時にスムーズに処方されます。

落ち着くまで刺激しない

刺激の多い場所にいるなら、静かな落ち着ける場所に移動するようにしましょう。

周りの騒音や他の人の動きが刺激になり、さらに興奮状態を引き起こすことがあるため、移動できそうなときは、静かな環境に移動したほうがいいです。

その場から逃げる

症状によって荒れてしまうと、その後どんなことが起こるのか予測できません。もし自分の身の危険を感じた場合は、その場からすぐに逃げましょう。[1]

入院患者さんと病院スタッフが関わっているときも、なにかの拍子に患者さんが暴れることはあります。患者さんがたとえ華奢な女性でも、病院スタッフ数名で対応することがほとんどです。

ひとりで頑張って立ち向かうのではなく、携帯を持ってトイレに逃げ込むなど、病院や警察に助けを求める準備をしつつ逃げましょう

統合失調症の方との接し方のポイント

統合失調症だからと特別にかまえずに、その方が安心できる生活を送れるように関わっていけば大丈夫です。焦らせずに、相手のペースを大切にして接していきましょう。また、話しかけるときは、持ちが明るくなるポジティブな声かけを心がけるのがおすすめです。[2]

例)なかなか家から出ない
〇「あなたのペースで大丈夫だよ。長い人生そんな時期もあるものよ」
×「いつまで引きこもってんの!早く出てきなさい」

統合失調症の妄想や幻聴への対応の仕方

妄想や幻聴は、病的な世界の話です。統合失調症の方の「症状によって起きている」ということを理解していなければなりません。[2]

ここでは、妄想や幻聴へどのように対応したらいいのかを解説していきます。

自分から妄想や幻聴の話を聞かない

統合失調症の方が妄想や幻聴の話をしていないにもかかわらず、「最近、幻聴とか聞こえる?」「今は何か見える」など、自分から聞くことはやめましょう。

これは、統合失調症の方を病的な世界に入らせてしまうきっかけになりかねません。

日常生活の中で、妄想や幻聴などの病的な世界にいる時間を減らすことが治療をしていく上で大切になります。

妄想や幻聴の話が始まったら話を逸らす

「おじさん(実際にその場にいない)が○○って言ってくる」や「外からスパイが狙ってる」などの現実的ではない話が始まった場合は、できる限り話を逸らしましょう。

テレビを見ているならば、テレビの話をしたり一緒にお菓子を食べてみたりなど、現実世界とつながりのあるものを引き合いに出して会話をはじめてみるのもいいでしょう。[2]

こころちゃん
こころちゃん

それでも話が逸れなかった場合の受け答えは次で説明します

妄想や幻聴の話がはじまったときの返答例

妄想や幻聴の世界は、本人にとっては『本当に存在している世界』なので、会話をするときは下記のことを気をつけましょう。[2]

  • 内容を否定も肯定もしない
  • 話を引き延ばさない
  • 説得しても意味がない

では、妄想や幻聴の話に対して、どう受け答えするとよいのか…実際の返答例を用いて解説していきます。これは、あくまでも一例ですので、状況や関係性で変わってきますので参考程度にしてください。

例1「外からスパイが狙ってくる」

不適切な対応
「スパイなんかいるわけないでしょ!何言ってんの!」
本人は狙われて怖い思いをしているので、全否定すると「この人は自分のことをなにも分かってくれない」と信頼関係にヒビが入る可能性があります。
よりよい対応
「○○さんにはそう見えるんですね。わたしにはちょっと見えないけど…それは怖いですね」と言いつつ、本人はスパイに狙われて怖いので窓のない部屋に移動するようにうながしましょう。

例2「女の子がバーカって言ってくる」

不適切な対応
「どんな女の子なんですか?」
妄想や幻聴の話を広げないようにしましょう。その話は病的な世界の話です。話を長引かせることで、本人を病的な世界にいる時間を長くさせてしまいます。
よりよい対応
「そうなんですね。わたしには聞こえないけど…バーカって言われるのは嫌ですね。」
自分事にすることで、相手の言動を否定することなく、その言葉は自分には聞こえないという旨を伝えることができます。

統合失調症の方との接し方で家族が病む前に相談しましょう

家族や友人が統合失調症で、興奮状態になったときの落ち着かせる方法を探して悩んでいる方は多くいます。自治体や病院では家族のための家族会や相談会などを開催しているところもあります。

もしもない場合は、受診しているクリニックや病院で相談するのもよいでしょう。

あなたが少し相談してくれることで、その悩みをきっかけに治療上の新しい関わり方が見つかるかもしれません。心の病気の治療には、周りのサポートが欠かせません。家族や友人との接し方で悩んだときは気軽に相談してくださいね。

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参考文献

[1]訪問支援で使える統合失調症情報提供ガイド(家族心理教育編)| 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/documents/kazokushinrikyoikuhen.pdf

[2]精神疾患の理解と精神科作業療法|朝田隆、中島直、堀田英樹 中央法規出版株式会社

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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