自分に自信がなくて仕事もプライベートもうまくいきません。
どうしたら自己肯定感を上げられますか?
実は、自己肯定感を上げるのは難しいんだ。
まずは『自己効力感』を高めることが大切だよ!
『自己効力感』ってなんですか?
記事の中で説明するね!
自己効力感とは、根拠なく「自分なら大丈夫」と思える自信です。
自己効力感が高い方は何事にも気軽にチャレンジできるため、努力や成功の体験をとおして自己肯定感も高められます。
今回の記事では「自己肯定感と自己効力感の意味」や「自己効力感を高める具体的な方法」などについて解説します。
簡単なセルフチェックもあるので「自分にはどのくらいの自己効力感があるのかな?」と考えながら読み進めてくださいね。
自己肯定感については下記の記事をご覧ください。
この記事の内容
自己肯定感と自己効力感
「自己肯定感と自己効力感の違いがわからない…」とお考えかもしれません。
以下では、ふたつの言葉の意味について確認しましょう。
自己肯定感
自己肯定感とは「自分には価値がある」「どんな自分も好き」と自分の存在そのものにOKを出せる状態です。[1]
自己肯定感には「他者評価によるもの」「自己受容によるもの」「絶対的なもの」の3種類があります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。(表1)[2]
自己肯定感の種類 | 特徴 |
他者評価による自己肯定感 | 周囲の評価や人との比較により自分を肯定する |
自己受容による自己肯定感 | 自分の個性(長所や短所)を自分自身で受け止め肯定する |
絶対的な自己肯定感 | 保護者からの愛情により自分の存在そのものを肯定する |
自己肯定感は「周囲に認められた」「成功した」など、自分に価値があると感じた経験によって高まります。
自己効力感
自己効力感とは「私は周囲の期待に十分に応えられる」という自信です。
セルフ・エフィカシーともいい「私ならできる」「きっとうまくいく」と根拠なく信じられる状態でもあります。[3][4]
自己効力感は、人の行動にも影響を与えます。
例として「成功できる環境は整っているが、うまく行動できるかわからないとき」について考えましょう。
- 自己効力感が高い人
- 「やってみよう」「努力すればきっとできる」と考えチャレンジする
- 自己効力感が低い人
- 「失敗したらどうしよう…」「どうせ自分にはムリ」と考えチャレンジしない
自己効力感が高い方は、目標に向かって迷わず行動できるでしょう。
結果として成功の可能性が高まるため、自分の生き方を肯定的にとらえられるのです。[5]
自己肯定感と思っていたことは、自己効力感だったー!
自己効力感は自己肯定感よりも高めやすい
自己肯定感を積み上げるのは簡単なことではありません。
自己肯定感を高めるためには、周囲に認められたり成功したりする経験が必要だからです。
とくに「他者評価による自己肯定感」は周囲の評価や人との比較により高まるため、何かのきっかけで崩れ去ることもあります。
一方で、自己効力感は自分の「考え方」を変えるだけで高められます。
ネガティブな考え方が浮かんだときは、以下のように変換しましょう。(図1)
はじめは嘘のように感じても、考え方が少しずつ変化し「自分なら大丈夫かも」という自信が芽生えるはずです。
自分に自信を持ちたい方は、自分次第で手軽に高められる自己効力感を高めましょう。
はじめは嘘でも思い込んじゃえば、そのうち本当の自信になってくるんですね!
自己効力感セルフチェック
自己効力感のセルフチェックとして「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」があります。
以下の質問に「はい」「いいえ」で答え、自己効力感の高さを確認してみましょう。(表2)[6][7]
自分の回答をメモしておくと採点しやすいかもしれません。
1 | 仕事をするときは自信を持ってやる |
2 | 過去の失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある |
3 | 友人より優れた能力がある |
4 | 仕事を終えたあと「失敗した」と感じることが多い |
5 | 人と比べて心配性である |
6 | なにかを決めるとき、迷わずに決定するほうである |
7 | なにかをするとき「うまくいかないのでは」と不安になることが多い |
8 | 引っ込み思案だと思う |
9 | 人より記憶力がよい |
10 | 結果の見通しがつかない仕事でも積極的に取り組む |
11 | どうやったらよいか分からず仕事に取りかかれないことがよくある |
12 | 友人よりも優れた知識を持っている分野がある |
13 | どんなことでも積極的にこなす |
14 | 小さな失敗も人より気にする |
15 | 積極的に活動するのは苦手である |
16 | 世の中に貢献できる力があると思う |
回答が終わったら、以下の基準に合わせて採点、評価してください。(表3)(表4)
質問番号 | 配点 |
1、3、6、9、12、13、16 | はい=1点 いいえ=0点 |
2、4、5、7、8、11、14、15 | はい=0点 いいえ=1点 |
得点 | 結果 |
11~16点 | 自己効力感が「高い」 |
9~10点 | 自己効力感が「平均」 |
8点以下 | 自己効力感が「低い」 |
自己効力感が高い人が得られるもの
自己効力感が高い人が得られるものとして、以下の2つが挙げられます。
それぞれ解説します。[8]
新たなことに挑戦しやすい心
自己効力感が高い人は、新たなことに挑戦できるしなやかな心を持っています。
はじめてのことに取り組むときは、多くの人が「自分にできるかな」「できなかったらどうしよう」と不安な気持ちを抱くでしょう。
ただし、自己効力感の高い方は「努力すればきっとできる」という自信があるため、不安に負けずに飛び込んでいけるのです。
この挑戦がさらに自分への信頼感を高め、新たな挑戦を怖がらない心を育てます。
自分を助けてくれる出会い
自己肯定感が高まると、よい出会いに恵まれやすくなります。
前向きにチャレンジする姿に周囲が惹きつけられ、サポートしてくれる人との出会いにつながるのです。
自己効力感が高い方のチャレンジには、周囲にプレッシャーを与えない以下のような特徴があります。
- 失敗を悪いことと考えない
- チャレンジそのものを楽しむ
応援や協力しやすい雰囲気が作られるため、よい出会いに恵まれやすくなります。
みんな頑張っている人に惹かれて、新たな出会いにつながるんですね!
自己効力感が高い人が持つ4つの要因
自己効力感が高い人は、以下の4つをもとに自己効力感を作り出しています。
それぞれ解説します。[9]
■ 成功の経験
成功の経験とは、実際に行動して目標を達成することです。
実際の経験によって作られた自己効力感は、もっとも強く安定したものとなります。
■ モデリング
モデリングとは、自分に似た環境や能力の人が成功するのを見ることです。
成功までの過程を見ることで「自分にもできそう」という自己効力感が作り出されます。
■ 言葉による説得
言葉による説得とは「あなたならできる」と周囲に励まされたり「私はできる」と自分で暗示をかけたりすることです。
言葉による説得だけで高められた自己効力感は、実際に困った状況に陥ると消えやすいとされています。
あくまで補助的な手段と考えましょう。
■ 身体の反応
身体の反応とは、自然な身体の反応をどのようにとらえるかを意味します。
自己効力感が高い人と低い人では、身体の反応に対する考え方が異なるのです。
例として「大勢の前で緊張して口が渇いたとき」を考えてみましょう。(図2)
このように、自己効力感の高さによって身体の反応のとらえ方が異なるため、同じ状況でも結果に差が生じます。
自己効力感を高める具体的な方法5選
自己効力感を高める具体的な方法として、以下の5つが挙げられます。[5]
それぞれ解説します。
能力は努力で伸びると考える
自己効力感の向上のためには「能力は努力で伸びる」と考えるとよいでしょう。
芸術やスポーツなどあらゆる分野で成功している方には、そういった考え方が見られることがわかっています。
一方で、以下のように考えている方は成功に近づくことができません。
- 能力は生まれつき決まっているから頑張ってもムダ
- この仕事はどうせ自分には向いていない
このように考えると自己効力感が下がるため、努力をやめてしまうのです。
「今はできなくても続けてみよう」と考えて努力を継続し、能力は努力で伸びることを実感しましょう。
この過程で「自分にもできた」という自分への信頼感を築くことで、自己効力感を高められます。
失敗した自分にOKを出す
自己効力感を高めるためには、失敗した自分を認めることが大切です。
ネガティブな気持ちを感じたときは、以下のように自分の心に寄り添うことで気持ちが和らぐことがわかっています。
- 自分なりによく頑張った
- こういう失敗も私らしい
ありのままの自分を受け入れることで「また自分なりにやってみよう」という自己効力感を作り出せます。
小さな成功体験を繰り返す
大きな目標に立ち向かう自己効力感を育てるために、小さな成功体験を積みましょう。
このときに大切なのは、自分で行動できる目標を設定することです。
たとえば「周囲に認められる立派な社会人になる」という目標では、自分が取るべき行動が定まっていません。
どのような社会人になりたいのかという大きな目標を決め、そこに向かう小さな目標を設定します。
- 自分からあいさつする
- 前回と同様のミスをしない
- 1日20分の勉強時間を作る
ひとつずつ目標を達成したという自信が自己効力感を生み出してくれるでしょう。
他人ではなく自分と比べる
自己効力感を高めるためには、他人ではなく過去の自分と比較しましょう。
自分より年収が高い人や容姿が優れている人などは、探せば探すほど見つかります。
以下のように過去の自分よりも成長した部分に焦点を当てましょう。
「去年の年収よりは○○円アップした」
「半年前の自分に比べて○○ができるようになった」
自分軸で成長を実感することで、他人に左右されない揺るがない自己効力感を作り出せます。
モデルとなる人を見つける
自己効力感は、人の行動を見ることでも高められます。
自分と年齢や生活状況、目指す場所が似ている人を「モデル」に設定しましょう。
モデルを見て頭の中で成功を体験したり、うまくいくコツや行動のポイントを聞いたりしましょう。
擬似体験をとおして「自分にもうまくできそうだ」という自信が得られ、自己効力感を高められるのです。[10]
「この人のようになりたい」
「この人は似た環境だマネしてみよう」と思うやつですね!
まとめ
自己肯定感は実績や周囲の賞賛より「自分には価値がある」と思える状態を意味し、自己効力感は「自分はできる」という根拠のない自信を意味します。
自己肯定感を高めるためには成功体験や周囲の評価が必要ですが、自己効力感は考え方次第で比較的簡単に高められます。
「何事にも自信がない」「自分は自分のままでよいと思えない」という方は、まずは自己効力感を高めましょう。
小さな成功体験を繰り返したり、モデルをとおして成功を疑似体験したりすると「どうせ自分には無理」という考えが「もしかしたら自分にもできるかも」という考えに変化します。
「自分にもできた」「努力を続けられた」という積み重ねにより、次第に自分に自信が持てるようになるでしょう。
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参考文献
[1]子どもの自己効力感を育む本|松村 亜里 著 WAVE出版
[2]子どもたちの自己肯定感を育む 2.自己肯定感とはどのようなものなのか(1)自己肯定感の二つの側面と「絶対的な自己肯定感」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2017pdf/20170908065.pdf
[3]自尊感情と自己効力感が大学生の精神科受診意図に与える影響[問題と目的]3.自己効力感
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cou/48/1/48_11/_pdf
[4]自己効力感研究の現状と今後の可能性Ⅰ.はじめに
http://54.64.211.208/dspace/bitstream/11178/104/1/kokubun57-8.pdf
[5]こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1633/
[6]一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み 調査Ⅰ 結果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/12/1/12_KJ00008937421/_pdf/-char/ja
[7]日本コミュニケーション能力認定協会
https://www.ca-japan.org/leaders-method/high-self-efficacy.html
[8]誰もが幸せに成長できる 心理的安全性の高め方 松村 亜里 著 WAVE出版
[9]自己効力感研究の現状と今後の可能性 Ⅱ.特性的自己効力感研究の動向 1.自己効力感とは ④自己効力感の4つの情報源
http://54.64.211.208/dspace/bitstream/11178/104/1/kokubun57-8.pdf
[10]e-ヘルスネット|セルフ・エフィカシーを高めるポイント
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。