友人関係や勉強などが複雑になる中学生は、自分の気持ちを理解したり上手に人を頼ったりすることが難しい時期です。
そこで今回は、学校に行きたくない理由がわからなくなるワケや、学校に行きたくない理由をつきとめる方法、悩みを相談できる場所について解説します。
記事の最後には「学校を休んでいることを友達になんて説明する?」「SNSにはどう返信すべき?」というよくある質問にも回答しているので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。
【保護者の方へ】
こちらの記事では、子どもが自分の気持ちと向き合うワークをご紹介しています。
子どもが自分の不登校の理由がわからず悩んでいるときは「こんな方法があるみたいだよ」と教えてあげてくださいね。
不登校の子どもへの話の聞き方や気を付けるポイントはこちらの記事で解説しています。
ぜひ参考にしてください。
学校を休み始めた理由と「休み続ける理由」は違う
学校に行きたくない理由がわからなくなるのは「学校を休み始めた理由」と「休み続ける理由」が違うからかもしれません。
たとえば「友達と気まずくなった」ことが原因で学校を休み始めたとしても、次第に「勉強がわからない」「友達にどう思われているか不安」などの理由で行けなくなることもあるでしょう。
そのため、休み始めた理由(例:友人関係)が解消されても登校しづらいことがあるのです。
以下では、文部科学省の調査からわかる「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」と「最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由」を見てみましょう。
最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ
中学生が「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として、以下の5つが挙げられます。[1]
- 身体の不調(32.6%)
- 勉強がわからない(27.6%)
- 先生のこと(27.5%)
- いやがらせ・いじめ以外の友達のこと(25.6%)
- いやがらせ・いじめ(25.5%)
それぞれの具体例は以下のとおりです。
■身体の不調
学校に行こうとすると体調が悪くなる、登校しようと思っているが朝起きられない
■勉強がわからない
授業が楽しくない、テストの点数が悪い
■先生のこと
先生と合わない、体罰がある
■友達のこと
いじめやいやがらせがある、友達とケンカした
決定的な理由がなくても、小さな「つらいな」「嫌だな」という気持ちが積み重なって学校に行きづらいと感じることがあります。
気づかないうちにストレスが溜まり続けると、糸がプツンと切れたように学校に行けなくなってしまうのです。
最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由
最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由として、以下の3つが挙げられます。[2]
- 勉強が分からない(42%)
- 生活リズムの乱れ(35%)
- 友達のこと(いやがらせ・いじめ以外)(33%)
具体例として挙げられるのは、以下のようなものです。
■勉強がわからない
欠席中に授業が進んでついていけない、勉強の遅れを取り返せる気がしない
■生活リズムの乱れ
昼夜逆転して朝起きられない、早く寝ようと思っても眠れない
■友達のこと
休んでいる理由をどう説明すればよいかわからない、友達にどう思われているか不安
このように、休み始めたきっかけが解決したとしても休み続けるうちに別の不安が大きくなるため、再登校が難しくなってしまいます。
学校に行きたくない理由のつきとめ方
学校に行きたくない理由がわからないときは、以下の方法で自分の心の中をのぞいてみましょう。[3]
ぼんやりとしている「つらい」と感じていたことを分解すると、自分を苦しめているものの正体がわかって気持ちが軽くなることがあります。
自分の気持ちを周りに説明するときにも役立つため、ぜひ取り組んでみてくださいね。
1.自分に何がおきているのかを知る
まずは、自分の周りで何がおきているのかを整理します。
学校生活で「嫌だったな」「つらかったな」と感じた場面を無理のない範囲で思い出してみましょう。
思い浮かんだ場面を「ストレスを感じる場面」に書き、そのときの「つらさレベル」も書いてみてください。(表1)
つらさレベルは1(少しだけつらい)~10(ものすごくつらい)の10段階で評価します。
途中でつらくなったり具合が悪くなったりしたときは、無理せず中断してくださいね。
例では、ストレスを感じる場面に「AちゃんとBちゃんが私に内緒で遊びに行っていた」ことを挙げ、つらさレベルを「8」としています。
そのほかにも「数学の授業を受けているとき:5」「授業でふたり組を組むとき:8」のように思いつくものを書いてみましょう。
2.きっかけとなった出来事を知る
続いては、学校に行きたくないきっかけを探っていきます。
「嫌な気持ちの正体を確認しよう」の表でつらさレベルが高かったものについて、以下の表に沿って考えてみましょう。(表2)
この表は誰かに見せたり提出したりするものではないので、自分の素直な気持ちを書いてくださいね。
自分で自分を知るために書くので素直に書くことが大切です!
この表に沿って考えることで「こんなことがあると自分はつらくなるんだな」「自分なりによく頑張ってたんだな」と気づくことができます。
自分の素直な気持ちを書くことでモヤモヤしていた気持ちの正体が見え、気持ちが軽くなったり自分の心と向き合うきっかけになったりするでしょう。
この表で自分を苦しめている原因がわかったら、親や周囲の人に「実はこんなことがあって学校に行きたくないんだ」と説明してみてくださいね。
学校に行きたくない気持ちの相談先
「学校に行きたくないけど身近な人には相談しづらい」「つらい気持ちを誰かに聞いてほしい」というときは、以下のような相談先を利用しましょう。[3]
■24時間子供SOSダイヤル
いじめやその他の子どもの悩みに24時間いつでも対応しています。
電話相談の通話料はかからないので安心して利用してくださいね。
■チャイルドライン
18歳までの子どもが電話やチャットで相談できる場所です。
電話が苦手な人はチャットで相談してみましょう。
■Mex(ミークス)10代のための相談窓口まとめサイト
子どもの悩みが相談できる場所を紹介しているサイトです。
10代の悩みに寄り添ったコラムや動画も紹介されています。
おおかみこころのクリニックも「学校に行きたくない」という子どもたちの相談に乗っています。
「家の人に話を聞かれたくない」という方は、保護者の方と別の診察室で話を聞くこともできるのでお気軽にご相談くださいね。
Q:学校を休んでいる理由を友達にどう説明したらよいかわからない
友達に学校を休んだ理由をどう説明するか考えるときは、以下の表に沿って「言ってもいいこと」「言いたくないこと」を分けてみましょう。[3](表3)
表の記入ができたら「言ってもいいこと」の中から友達に伝えることを選びましょう。
たとえば表の中から「朝お腹が痛くなる」「病院でちょっと休もうと言われた」を選び、以下のように伝えてみてください。
毎日お腹が痛くなるから病院で診てもらったんだけど、医者に「ちょっと休んだ方がいい」って言われちゃったんだよね。
このときの注意点は、作り話はしないことです。
いつか嘘がバレてしまい、友達から「嘘をついた」と言われてしまうかもしれません。
あなたがつらい思いをするため、作り話はしないようにしましょう。
Q:SNSにどう返信すればよいかわからない
SNSの通知が憂うつだったり、いつも通り楽しんだりできないときは「SNSと距離を置いた方がよい」というサインです。
あらかじめ「SNSを少しお休みします。元気になったらまた戻ってくるね!」というメッセージを残したり、家の人にスマホを預かってもらったりして距離を置きましょう。
「大丈夫?」「なんで学校に来ないの?」と心配する友達もいるかもしれませんが、無理して返信したり説明したりする必要はありません。
不登校のときは心身のエネルギーが少なくなっている状態なので、元気になってから「体調が悪くて返信できなかったんだ。心配してくれてありがとう」と返信すれば十分です。
無理してみんなとつながっていると心身が休まらないため、連絡を取るのは秘密を守ってくれる信頼できる人だけにしてくださいね。
まとめ
学校に行きたくない理由がわからないのは、学校を休み始めたきっかけと休み続ける理由が異なるからかもしれません。
自分の気持ちがよくわからないときは記事の中で紹介したワークに取り組み、自分の気持ちと向き合ってみましょう。
悩みを誰かに聞いてほしいときは、記事の中で挙げた相談できる場所やおおかみこころのクリニックに連絡してください。
あなたを助けてくれる場所はたくさんあるということを忘れないでくださいね。
【参考資料】
[1]文部科学省 令和年2度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要 最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ②
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf
[2]文部科学省 令和年2度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要 最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由②
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf
[3]学校では教えてくれない自分を休ませる方法 井上祐紀 KADOKAWA
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