反抗挑戦性障害は困った行動で周囲に迷惑をかけやすいため「どう関わればよいかわからない」「わざと周りを困らせようとしている」と感じやすいですよね。
「困った子」「問題児」として扱われることが多い反抗挑戦性障害ですが、実は本人がいちばん困っているのです。
問題行動=本人のSOSであるとらえ「本人が何に困っているのか」「どんなサポートが必要なのか」を考えることで、少しずつ困った行動を減らしていけます。[1]
まずはこちらの記事で反抗挑戦性障害の症状やなりやすい人の特徴、対応方法などについて確認していきましょう。
記事の中では関わり方をチェックする質問を用意しているので、自分の関わりを振り返りながら今後の対応方法を考えてみてくださいね。
反抗挑戦性障害とは
反抗挑戦性障害とは、大人や社会に対して反抗的・挑発的な態度をとり、学校や家庭、社会生活などに支障をきたしやすい状態です。[2]
反抗は正常な発達の過程で必要であるため「反抗すること」が問題ではありません。
度重なるトラブルや日常生活への悪影響となるときに、反抗挑戦性障害と診断されるのです。[2]
反抗挑戦性障害を持つ人の割合は2~14%ですが、注意欠如多動症(ADHD)をあわせもつ人の割合は高く、約50%にものぼります。[3]
反抗挑戦性障害と注意欠如多動症をあわせ持つ人は症状が悪化しやすく、将来的に精神疾患にかかるリスクが高まるため、早い段階で治療することが大切です。[3]
早めに気づき、適切な対応をとることが大切です。
【チェックあり】反抗挑戦性障害の症状
反抗挑戦性障害の症状は、大きく以下の3つに分けられます。
反抗挑戦性障害と診断されるのは、以下8つの症状のうち4つ以上が当てはまり、6か月以上続くときです。[4]
当てはまるかどうかチェックしながら読み進めてくださいね。
■怒りっぽい気分
①かんしゃくを起こしやすい
②神経質でイライラしやすい
③しばしば怒り腹を立てる
■口論好き・挑発的な行動
④目上の人と口論する
⑤目上の人の要求や決められた規則に反抗したり拒否したりする
⑥わざと人をイライラさせる
⑦自分の失敗や失礼な言動を人のせいにする
■執念深さ
⑧意地悪で執念深い様子がある
(5歳未満:過去6か月の間にほとんど毎日)
(5歳以上:過去6か月の間に1週間に1回)
重症度は、これらの症状がいくつの場面でみられるかによって判断されます。
軽度:症状が1つの状況に限られている(例:家庭のみ)
中等度:症状が2つの状況でみられる(例:家庭と学校)
重度:症状が3つ以上の状況でみられる(例:家庭と学校、友人関係)
反抗挑戦性障害になりやすい人が持つ5つの特徴
反抗挑戦性障害になりやすい人の特徴について、以下5つの視点から解説します。
それぞれみていきましょう。
本人の気質
以下の気質を持つ人は、反抗挑戦性障害になりやすいとされています。[2]
- 自己主張が強い
- 好き嫌いが激しい
- 感情の振れが大きい
環境的な要因や発達障害など、他の要因が重なったときに症状が現れやすくなります。
この気質の人が全員なるわけではありませんよ
環境的な要因
環境的な要因として挙げられるのは、以下の3つです。
- 「望まれない子ども」として生まれ育った
- 親に反抗挑戦性障害を含む反社会的な症状がある
- 母親にうつ病や気分障害、依存症(アルコールや薬物など)がある
このような環境では親に対しての安心感が得られず「自分は大切にされている」という感覚が育ちづらくなります。
周囲に認められたい気持ちから反抗的・威圧的な態度をとるようになり、問題行動につながってしまうのです。
発達障害の合併
発達障害のある人も反抗挑戦性障害になりやすいとされています。
発達障害の子どもは落ち着きがなかったり衝動性が高かったりするため、幼いころから叱責される経験が少なくありません。
本人の中に不満や怒り、無力感などが重なり、反抗や暴言などのネガティブな行動が増えてしまうのです。[1]
切り替えの苦手さ
気持ちの切り替えが苦手な人も、反抗挑戦性障害の症状が出やすくなります。
多くの人は周囲の反応を見たり注意を受けたりして行動を修正しますが、気持ちの切り替えが苦手な人はなかなか修正できません。
その結果、強い口調で注意されたりトラブルになったりするため、相手に警戒心を抱きやすくなり攻撃的な態度で自分を守ろうとするのです。[1]
自己イメージの低さ
自分に自信がない人も反抗挑戦性障害になりやすいとされています。
「自信のなさを隠さなきゃいけない」「周りができないことをやる自分はすごい」という気持ちから、あえて常識はずれなことをして相手より優位に立とうとするのです。
例として以下のようなことが挙げられます。
- 親や教師などの大人に反抗する
- 校則を破って派手な装いをする
- 夜遊びをして悪い仲間とつながる
行動がエスカレートすると飲酒や喫煙、薬物などに手を出すリスクがあるため、早い時期から大人が適切なサポートをしましょう。[1]
反抗挑戦性障害と関わり方チェック
「問題児」になりやすい反抗挑戦性障害の人が抱えているのは「怒られてばかり」「どうせわかってもらえない」という周囲への不信感です。
以下の5点を意識すると、本人の中に「わかってもらえる」「味方がいる」という感覚が芽生えやすく、少しずつ言動が変化していきます。
質問に答えながら自分の関わり方を振り返ってみましょう。[5]
- 本人と話し、本当の気持ちを聞く機会を持てていますか?
- ADHDがある場合「忘れ物」「遅刻」など、本人の努力だけでは解決できないことに対して怒っていませんか?
- 本人の悩みやできないことに対して、いっしょに改善策を考えていますか?
- 本人がカッとなったときに、気持ちを切り替える方法がありますか?
- 学校生活の中で、本人が活躍できて自信を取り戻せる場面がありますか?
「できていなかった」「具体的にどう関わればいいかわからない」と感じる方は、適切な対応方法を参考にして関わり方を見直していきましょう。
できそうな関わりから始めてみましょう!
反抗挑戦性障害の対応方法
反抗挑戦性障害の対応として挙げられるのは、以下の5つです。
それぞれ解説します。[4]
抱え込まない
つらさやストレスを抱え込まないようにしましょう。
反抗や暴力が身近にある状況では心身の安全が守られないため、大きなストレスを受け心身ともに疲れ切ってしまいます。
ひとりで抱え込んだり我慢したりせず、学校や病院、児童相談所などに助けを求めましょう。
警視庁の「ヤングテレホン」では20歳未満の子どもに関する相談を24時間受け付けています。
専門の警察官や心理職が相談に応じてくれるため、心がつらいときはすぐに連絡してください。[6]
暴力を振るわない
子どもが言うことを聞かなくても、暴力を振るってはいけません。
しつけの方法として暴力を使うと「問題解決のために暴力を振るっていい」というメッセージを子どもに与えてしまうためです。
もしも「今は体罰で子どもが言うことを聞く」という場合でも、子どもが成長し自分が年を重ねたときに力でのコントロールができなくなります。
一緒に暮らすのが難しくなったり事件に発展したりする可能性があるため、絶対に体罰で子どもをコントロールしないでください。
暴力を受容しない
どのような状況でも、暴力を受け入れてはいけません。
反抗挑戦性障害を持つ子どもの親や支援者には「いつか気づいてくれるはず」「他人に暴力を振るうくらいなら…」と自分が暴力の対象になる人がいます。
ただ暴力を受け入れることで問題が解決することはありません。
暴力で相手を支配した感覚を覚えた子どもは、どんどんエスカレートしてしまいます。
暴力を振るう気持ちや背景を理解することは大切ですが、暴力そのものを許さないようにしましょう。
暴力は絶対に受け入れてはいけません💦
接する時間を増やす
ゆっくりと関わる時間を5分だけでも作りましょう。
一緒に遊んだり話をしたりして、楽しい時間を共有することが大切です。
話をするときは、本人の話にアドバイスや注意をしない方がよいでしょう。
考えを否定したり修正したりすると「やっぱりわかってもらえない」という感覚を与えてしまいます。
本人の考えを受け入れ聞き役に徹することが大切です。
避難する
暴力がある場合は、非難したり警察を呼んだりして自分の身を守りましょう。
「騒ぎにしたくない」という気持ちがあるかもしれませんが、暴力を自分の中で抱え込んでも解決にはつながりません。
お互いに距離をとったり第三者に介入してもらったりすることで、落ち着いてもう一度話し合う機会が持てるようになります。
自分の心身が傷つく危険性を感じたときは、すぐに非難したり警察に助けを求めたりしてください。
反抗挑戦性障害の治療と将来
反抗挑戦性障害の治療として行われるのは、薬物療法と心理・社会的な面への働きかけです。
薬物療法では、イライラや衝動性などの困った症状を抑えることで社会に適応しやすくなります。
心理・社会的な面への働きかけで扱うのは、家族の関わり方や学校、友人関係の問題です。
専門家と一緒に問題に向き合いながら、人との適切な関わり方を身につけることを目指します。
反抗挑戦性障害の将来として多いのは、症状が落ち着くケースです。
反抗挑戦性障害と診断を受けた3分の2は、将来的に診断基準を満たさなくなります。[4]
本人や家族が根気よく治療に取り組むことで、成長とともに症状が落ち着いていくのです。
残りの3分の1は素行症(非行を繰り返す状態で行為障害ともいわれる[7])へと発展し、反社会性パーソナリティ障害(違法行為を繰り返すような状態[8])に至ってしまいます。
治療を始めるにあたって「もう遅い」という状態はありません。
早めに医療機関を受診して治療を始めましょう。
まとめ
反抗挑戦性障害の問題行動の背景には、自信のなさや困った気持ちなどが隠れています。
厳しく対応したり暴力を行使したりしても問題は解決しないため、本人が必要とするサポートを探っていくことが大切です。
本人と周囲が前向きに治療に取り組むことで、反抗挑戦性障害と診断を受けた3分の2は症状が落ち着いていきます。
ときには反抗的な態度や暴力的な言動に心が折れてしまい「もうサポートできない」と感じてしまうことがあるかもしれません。
そのようなときは児童相談所や医療機関などに相談して、ストレスや疲労を抱え込まないようにしてください。
おおかみこころのクリニックでは、いつでもご相談をお待ちしております。ぜひお気軽にご連絡ください。
【参考資料】
[1]行為障害と非行のことがわかる本|小栗正幸 講談社
[2]国立特別支援教育総合研究所 第3章 発達障害に関連のある行動障害について
https://www.nise.go.jp/josa/kankobutsu/pub_b/b-208/b-208_03.pdf
[3]注意欠如・多動症が合併した反抗挑発症の児童に対する多職種連携による行動的介入の効果 問題と目的
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbct/49/2/49_21-030/_pdf/-char/ja
[4]非行と反抗がおさえられない子どもたち 富田拓 合同出版株式会社
[5]発達障害とこころのふしぎ 田中哲 ミネルヴァ書房
[6]警視庁 ヤング・テレホン・コーナー
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/shonen/young.html
[7]こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1551
[8]反社会性人格障害傾向者における遅延ならびに確率による報酬の価値割引 問題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/17/1/17_1_50/_pdf/-char/ja
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