不登校になりやすい家庭に特徴はありますか?
いくつかの特徴があるから記事の中で解説するね
子どもが不登校になると「家庭に原因があるのかも」と不安になってしまいますよね。
そこで今回は、不登校になりやすい家庭の特徴について解説します。
記事の中では、不登校になりやすい家庭でしてはいけないことや改善策についても紹介しています。
よくある質問にも回答しているので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。
不登校になりやすい家庭の特徴5選
不登校になりやすい家庭の特徴として、以下の5つが挙げられます
それぞれ解説します。
親が過干渉である
過干渉な親を持つ子どもは不登校になりやすいとされています。
すべてを親に決められてしまうと、以下のような問題が生じるからです。
- 自分の意見を持てなくなる
- 相手の顔色をうかがう癖がつく
学校では意見を求められる機会が多いため「自分の意見を言うのが怖い」「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが強くなり、対人ストレスが高まります。
学校でも相手の反応を気にして小さなことに傷つき、登校したくない気持ちが強まってしまうのです。[1]
親が勉強を重要視していない
親が勉強の必要性を感じていない場合、子どもが不登校になりやすい傾向があります。
勉強に対する親のネガティブな発言が、子どものモチベーションを低下させるからです。
以下では、不登校親子のインタビューでの発言を見てみましょう。
親「自分も勉強が嫌いだったから『別にいいじゃん』みたいな感じ」
子「勉強について言われたことないから、ほとんどやってない」
親「(勉強を頑張る子どもに)辞めなさい、そんなに頑張らなくていいって言った」
子「親は勉強についてほとんど言わなかった」
親のネガティブな発言や勉強への拒否感は「勉強に関心の低い親」という印象を子どもたちに与え、モチベーションを低下させます。
勉強のモチベーションが低下すると学校に行く意味を感じなくなるため、不登校になりやすいのです。[2]
子どもの自主性に任せすぎている
親が子どもの自主性を重視しすぎると、不登校のリスクが高まります。
親自身が以下のような状況の場合、子どもの自主性に任せ過ぎる傾向があります。
- 子どもの将来を考える力が不足している
- どうしてよいかわからず困っている
子どもはまだ考える力や経験が不足しているため、登校の手助けをしてもらったりフリースクールのような場を準備してもらったりする必要があります。
子どもの自主性に甘えて親がこれらの責任を放棄してしまうと、子どもは簡単に不登校になってしまうのです。[2]
親が不登校に肯定的である
親が不登校に賛成している場合、子どもは不登校から抜け出しにくくなります。
不登校の初期から親が賛成すると、子どもは登校復帰を諦めてしまうのです。
以下のインタビューでは、親が不登校に賛成している様子がうかがえます。
親「私からは何も言っていません」
子「お母さんはそんなに『行きなさい』とか言わなかった」
親「『それもまたいいんじゃないの』って」
子「『学校行かない』って言ったら、お母さんが『いいよ』って」
子どもが不登校になった場合、どのように対応すべきかはケースによって異なります。
ただ、不登校に賛成するだけでは状況の改善はできず、子どもの不登校を加速させてしまうでしょう。[3]
父親の存在感が薄い
父親の存在感が薄い家庭は、不登校のリスクが高まるとされています。
父親の協力やサポートが得られない場合、子どもの問題行動が起こりやすくなるためです。[4]
父親の存在感が薄い不登校の家庭では、以下のような発言がみられました。
親「この人に何話してもしょうがないって思っちゃったから」
子「(父親が)家にいると居づらくなる」
親「主人には分からないと思う」
子「(父親に対しては)あんまりイメージない」
父親の存在感が薄い家庭では、不登校という予期せぬ事態にも母親ひとりで対応しなければなりません。
家庭で子どもをサポートする体制が不十分なため、子どもが不登校になりやすいのです。
不登校になりやすい家庭でしてはいけないこと
以下の3つは子どもに負担を与えるため、家庭でやらないよう注意しましょう。
それぞれ解説します。[6][7]
子どもに期待する
過剰な期待は子どもを疲れさせてしまいます。
「期待なんてしていない」という方も、以下のような無意識の期待がないか確認してください。
■休まずがんばること
社会では、休まず努力するのがよいとされています。
そのような価値観の中で育った大人は、子どもにも休まずがんばることを期待しがちです。
■文句を言わずにがんばること
大人は無意識に「子どもはがんばるのが当然」という考えを持っています。
社会に通用する人間になるため、つらさに耐えて結果を出すことを期待します。
■ひとりでがんばること
「自立した人間になって欲しい」という思いから、子どもひとりで考えて問題を解決することを期待しがちです。
子どもは親の期待を敏感に感じ取り、それに応えるためにがんばりすぎてしまいます。
その結果、不登校という手段で自分を守ろうとするのです。
「よいこと」「悪いこと」で判断する
すべてを「よい」「悪い」で裁く態度は、子どもを追いつめてしまいます。
自分の言動が常にジャッジされる環境では、子どもは自分の気持ちを無視するようになるためです。
以下の例のように、子どもの「気持ち」に注目しましょう。
よい例:「正直に言ってくれてありがとう。あなたの心と身体が学校で傷つけられていないか心配だよ。話す気になったらいつでも聞くからね」
悪い例:「なんで休むの?ずる休みなんて許さないよ。甘えてないで行きなさい」
よい例では、善悪の判断をせず子どもの気持ちに注目していますが、悪い例では「学校を休む=ズル休み」とジャッジしています。
行動のジャッジは子どもに「自分の気持ちではなく周囲の評価を大切にしろ」というメッセージを与えてしまうのです。
心身に問題が生じるリスクがあるため、子どもの気持ちに注目するよう心がけましょう。
結果だけを重視する
不登校では「今日は学校に行けたかどうか」が重視されますが、結果だけにこだわるのは避けましょう。
もっとも大切なのは「学校に行くか行かないか葛藤した」という過程です。
子ども自身も本当は登校した方がいいことは分かっているため、欠席の決断は簡単なものではありません。
それでも休みたいのは、行くべき気持ちを上回るほどのつらさを抱えているからです。
結果だけを重視して登校を強制されると、子どもは「誰も味方になってくれない」と感じ、がんばる気持ちをなくしてしまいます。
休みたいと伝えてくれた勇気を受け止め「挨拶だけなら行けそう」「保健室なら行けそう」などの自主性が芽生えるのを待ちましょう。
考えた過程を褒められると嬉しい!
不登校になりやすい家庭の改善策
不登校になりやすい家庭の改善策として、以下の5つが挙げられます。
それぞれ解説します。
子どもが「好き」に触れる機会を増やす
好きなことに触れる機会を作ると、子どもが自分の気持ちに気づきやすくなります。
不登校の中には「自分の気持ちがわからない」と悩む子どもが少なくありません。
好きなものを通して自分を理解することで、苦しみを乗り越えるエネルギーを作り出せます。
また、好きなものに親が興味や関心を持ってくれると、子どもはありのままの自分が認められたような気持ちになります。
「好き」をとおして子どもの内面を理解することで、信頼関係を築きながら不登校に向き合うきっかけが作れるでしょう。[7]
子どもが意見を言う練習をする
子どもが意見を言う機会を増やしましょう。
不登校の子どもは、親の反応を気にして「なんでもいいよ」と答えているうちに、自分を見失うことがあります。
自分の意見が分からないため、先生や友人とのコミュニケーションにもストレスを感じるのです。
まずは「夕飯はハンバーグかパスタ、どっちがいい?」と、選択形式で意見を言う練習をしましょう。
家庭内で発言する機会を増やすうちに、気持ちの伝え方や声をかけるタイミングが分かるようになります。
家庭での練習が学校での自信にもなるため、少しずつ練習することが大切です。[7]
選択肢を与えることで答えやすくなります。
感謝の気持ちを伝える
小さなことでも、子どもに感謝の気持ちを伝えましょう。
不登校の中には、自分に自信を持てない子どもが少なくありません。
以下のように、小さなことから感謝の気持ちを伝えてください。
- お皿を運んでくれてありがとう
- 仕事に行く前に顔を見れてよかった
- 教えてくれてありがとう
さりげない行動にも「ありがとう」「あなたがいてくれてよかった」と伝えることで、子どもが自分に自信を持てるようになります。
家庭での自信が「学校でも同じ体験をしたい」という気持ちを作り、登校の再開を後押ししてくれるでしょう。[7]
家庭以外に子どもの居場所を作る
家庭の外で子どもが安心できる場所を探しましょう。
不登校が続くと親子ともにその状態に慣れてしまい、行動を変えづらくなるためです。
「学校か家庭か」という2択の選択肢から、フリースクールのような第3の選択肢を取り入れましょう。
同じような悩みを持つ仲間と関わることで、人と過ごす楽しさや自信を取り戻せます。
社会の中に自分の居場所を見つけることは、子どもにとって大きな自信となるでしょう。[7]
親が周囲のサポートを受ける
不登校の子どもがいる家庭では、親自身が周囲のサポートを受ける必要があります。
子どもの不登校により、親が以下のような問題を抱えるからです。
- 親自身が孤立する
- 世間体を気にする
- 正解が分からず不安になる
親がこのような問題を抱える原因は「不登校=子育ての結果=親(特に母親)の責任」という思い込みです。
自身の孤独や不安は子どもに伝わり「自分のせいで親が困っている」と自分を責めてしまいます。
親が専門家から正しい説明を受けたり、不登校を経験している親から話を聞いたりするなどして、心の負担を軽減するサポートを受けましょう。[8]
親の心の余裕も大切です
よくある質問
不登校と家庭環境についての質問として、以下の2つが挙げられます。
それぞれ解説します。
Q:不登校になりやすい家庭の原因は母親ですか?
勉強や学校に対する母親の考え方が子どもに影響するのは事実ですが、不登校の原因がすべて母親にあるとはいえません。
子どもの問題行動の予防には、父親の協力やサポートが不可欠だからです。
ただ、子育てに関わるのは主に母親のため「私の関わり方が間違っていたのかも」と自分を責めたり、周囲から「母親がしっかりしていないからだ」と責められたりすることもあるでしょう。
母親に責任を押し付けるのではなく、母親を支援することが重要です。[9]
Q:母子家庭は不登校になりやすいですか?
母子家庭が不登校になりやすいとは限りません。
ただ「性的暴行により妊娠した未婚の母」のようにトラウマを抱えていたり、若年妊娠により経済的に苦しかったりする場合は、子どもが不登校になりやすいとされています。
このような母親のもとで育つ子どもは、周囲の大人に対して不信感や怒りを持つことがあるためです。
とくに言葉での表現が苦手で集中力が弱い子どもは、学校や授業での悩みを誰にも相談できず、不登校になってしまいます。
母親ひとりでの対応が難しい場合は、医療や行政の力を借りるのがよいでしょう。
ある市で不登校家庭を訪問・支援したところ、不登校の子ども9人のうち6人が学校に復帰しています。
仕事、家事、育児のすべてを母親ひとりで抱え込まず、公的なサポートの利用を検討しましょう。[10]
まとめ
不登校になりやすい家庭の特徴として、以下の5つが挙げられます。
- 親が過干渉である
- 親が勉強を重要視していない
- 子どもの自主性に任せすぎている
- 親が不登校に肯定的である
- 父親の存在感が薄い
親の考え方や態度が子どもの不登校に影響するのは事実ですが、すべてが親のせいではありません。
思い当たる部分がある場合は、子どもとの関わり方を見直したり不登校の親のためのサポートを受けたりして、状況を改善しましょう。
周りに相談できる人がいない方やどうしてよいかわからず悩んでいる方は、お気軽に当院にご相談ください。
【参考文献】
[1]親の養育態度が大学生の不登校傾向に及ぼす影響 -賞賛獲得欲求・拒否回避欲求および対人ストレスを媒介変数として- 結果
[2]不登校現象の家庭要因に対する一考察:「学校への意味づけ」に関わる文化的再生産 5.「語り」から見えてくるもの 5.1弱い勉強への動機づけ
[3]不登校現象の家庭要因に対する一考察:「学校への意味づけ」に関わる文化的再生産 5.「語り」から見えてくるもの 5.2 抑制される登校促進意欲
[4]子どもの問題行動の発達 Externalizingな問題傾向に関する生後11年間の縦断研究から 結果 (4)防御因子 (protective factor)について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/10/1/10_KJ00003367713/_pdf/-char/ja
[5]不登校現象の家庭要因に対する一考察:「学校への意味づけ」に関わる文化的再生産 5.「語り」から見えてくるもの 5.3 継続する父親不在
[6]学校では教えてくれない 自分を休ませる方法 井上祐紀 KADOKAWA
[7]なぜ不登校児に好きなことだけさせてはいけないのか 渡邉恵里 minpro syuppan
[8]不登校児童生徒の母親の支援方法の検討
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~scsc/bulletin/vol19/19_17.pdf
[9]不登校児童生徒の母親の支援方法の検討
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~scsc/bulletin/vol19/19_17.pdf
[10]経済的困難を抱えた不登校の子どもに対する学校の家族支援の在り方 2. 3. 1 サイレントマザーからサイレントチルドレンへ 4. 3. 1 大阪府泉大津市の訪問型家庭教 育支援事業
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