「子どもが学校を休みがち」
「なんとか登校はしているけれど保健室で過ごしている」
このようなケースは「隠れ不登校」かもしれません。
隠れ不登校とは「子どもが学校には行っているけれど、教室には行かずに保健室や図書室で過ごしている状態」や「教室にいるけれど本当は学校に行きたくないと思っている状態」を指します。
この状態が続くと、完全に学校に行けなくなったり、心の状態が悪化したりするかもしれません。つらい状況が長引く前に、早めの対策が必要です。
この記事では、隠れ不登校の原因と対策について解説しています。お子さんが無理なく教室に戻れるようになる手助けができれば幸いです。
隠れ不登校とは
隠れ不登校とは、登校していても「保健室や図書室などで過ごしている状態」や「学校に行きたくないと思っている状態」のことです。
以下の項目に分けて詳しく解説していきます。
隠れ不登校の定義
日本財団は、調査(2018)の中で隠れ不登校を以下の4つに分類しています。[1]
教室外登校 | 校門や保健室、図書室、校長室などには行くけれど、教室には行かない。 |
部分登校 | 基本的には教室で過ごすが、授業に参加する時間が少ない。 |
仮面登校A(授業不参加型) | 教室で過ごすが、皆とは違うことをしており、授業に参加する時間が少ない。 |
仮面登校B(授業参加型) | 教室で過ごし、皆と同じことをしているが、心の中では学校に通いたくない、学校がつらいと感じている。 |
登校はしていても教室には入らないケースや、一見普通に教室で過ごしているように見えても実はつらさを感じているケースなど、さまざまなパターンがあることがわかります。
隠れ不登校の実態
日本財団の調査によると、隠れ不登校の状態にある中学生は、全中学生約325万人の10.2%にあたる約33万人。
約10人に1人が隠れ不登校であるという結果が出ています。[1]これは、文部科学省が調査した不登校の中学生数の約3倍です。[2]
これらの調査結果から、不登校として把握されている人数よりも実際には多くの子どもたちが苦しみを抱えていることがわかります。
隠れ不登校5つの原因
隠れ不登校の原因として以下の5つが考えられます。
心の不調
思春期は、周りの影響を受けながら自立していく時期です。
親から自立をしたいと思う一方で、まだ親へ甘えたいという気持ちも残っている複雑な心境です。
とくに友達や仲間の役割は非常に大きく、友達関係のトラブルは子どもたちの心に大きな影響を及ぼします。友達との関係がうまくいかないと、それが原因で学校に行くのがつらくなるのです。[3]
お友達関係も複雑になってくるお年頃です
体の不調
思春期は自律神経のバランスが崩れやすい時期です。
その結果、睡眠に問題が生じることや立ちくらみ、体のだるさ、頭痛などが続くことがあります。[4]
朝、立ち上がるときにめまいや気分不良を感じることが続くケースでは「起立性調節障害」と診断されることもあります。[5]
心当たりがある人は一度医療機関を受診してみましょう。
おおかみこころのクリニックでは、心の病気の診療経験が豊富な医師が在籍しています。お気軽にご相談ください。
起立性調節障害については、こちらで詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
学習面のつまずき
学習面のつまずきから、学校に行くのがつらくなる人もいます。
日本財団の調査では、隠れ不登校の原因の上位に以下の項目が挙がっています。
- 授業がよくわからない・ついていけない
- 小学校のときと比べて良い成績がとれない[1]
中学や高校に入ると勉強の難易度はぐんと上昇。周囲が定期試験や受験に向けて努力をする姿を見て、自信をなくしてしまったり雰囲気についていけないと感じたりするでしょう。
そうした周囲とのギャップや、劣等感により隠れ不登校となることもあります。
人間関係のストレス
人間関係のストレスも、隠れ不登校の原因です。
年齢が上がるにつれて友達関係も変化します。仲良くしたい人と一緒にいられない、無視されている気がする、など悩みも増えていきます。
また、メールやSNSによるトラブルも。思春期を取り巻く多様な人間関係のストレスが、学校生活に大きな影響を及ぼしているのです。[4]
学校の制度に対する抵抗感
校則や制度など学校の決まりに対して強い抵抗感を抱くことも、隠れ不登校の原因になります。
思春期は自主性を獲得していく時期。その過程で反抗的態度が強く出ることもあります。[3]
親や先生に従うことに抵抗したり、ルールの中で生活することを嫌がったりするのです。それらの不満が、隠れ不登校の一因となります。
隠れ不登校の影響
隠れ不登校を放置すると、以下のような影響があります。
- 精神状態の悪化
- 学習の遅れ
- 不登校への移行
隠れ不登校の原因が解消されないまま無理して登校を続けると、つらい状態が長く続き、精神状態が悪化する可能性があります。また、教室で過ごしていないケースでは孤立感が高まることでもメンタルの悪化が心配されます。
さらに、授業に出られないことで学習の遅れが出てしまい、登校しづらさが強くなることや最終的には進学や就職に影響する可能性もあるのです。
そして、隠れ不登校が続くことのストレスや不安から、いつしか完全に学校へ行けなくなることも考えられます。
「隠れ不登校かな」と気づいたら、早めに対応することが大切です。
子どもと関わる時間を増やすことも大切です
隠れ不登校の対応策
隠れ不登校への対応策として、以下の3つが挙げられます。
学校と連携して学習のサポート
学校と連携して、子どもの学習環境をサポートしましょう。
先生と情報交換を行い、子どもが学校に行けない理由を探ります。そしてそれを解決する方法を一緒に考えていくのです。
また、登校できなくても学習の遅れが出ないようにサポートをお願いすることも大切です。文部科学省が発表した不登校対策「COCOLOプラン」では、教室に入りづらい子どもにはオンラインで授業やテストが受けられるようにするよう推奨されています。[6]
教室へ行けない期間は別の方法で学習できないか相談してみるとよいでしょう。
家庭でのメンタルと生活のサポート
家庭でのサポートも重要です。
隠れ不登校の状態で一番つらいのは子ども本人です。子どものつらい気持ちに寄り添い、きっかけや理由を把握してサポートしていく必要があります。
明確な理由は本人もわからないことがありますが、しっかりと時間をとって子どもと向き合うことが大切です。
また、生活のサポートも対策のひとつです。
精神的な安定は、規則正しい生活とバランスの取れた食事から。[7]
まずは早寝・早起き・朝ごはんの習慣を意識しましょう。朝早く起きてしっかり朝食をとれば、夜も早めに寝ることができます。子どもの生活リズムの安定には、家庭でのサポートが不可欠です。
精神科や心療内科を受診し医学的なサポート
睡眠障害や起立性調節障害など、治療が必要と考えられるときは医療機関を受診することも必要です。
医師に相談することで適切な治療やアドバイスが受けられ、状況が改善することがあります。早めのご相談をお待ちしています。
まとめ
隠れ不登校は、子どもが学校には行っているものの、実際には学校生活に大きなストレスを感じている状態です。
「心や体の不調」「学習面のつまずき」「人間関係のストレス」など、さまざまな原因があります。
この記事で紹介した対策を早めに行うことで、精神状態の悪化や不登校への移行を防ぐことができます。必要に応じて精神科や心療内科を受診しましょう。早めの対応が、子どもが無理なく学校生活に復帰するための鍵となります。
子どもとのかかわり方に悩んだら、ひとりで抱え込まずにおおかみこころのクリニックにお気軽にご相談くださいね。
【参考文献・サイト】
[1]不登校傾向にある子どもの実態調査|日本財団
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/new_inf_201811212_01.pdf
[2]平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について|文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/1410392.pdf
[3]思春期のこころの発達と問題行動の理解 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[4]Adolescence わからないことがここにある|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/adolescence.pdf
[5]令和2年度 厚生労働省 母子保健指導者養成研修「起立性調節障害~明日から使えるテクニック~」
https://boshikenshu.cfa.go.jp/assets/files/history/r2/tr7_lecture_4.pdf
[6]COCOLOプラン 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策|文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf
[7]生活リズムをととのえる|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_03.html
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