仕事終わると何もできない:自分を責めてしまう夜に知っておきたい「こころの落差」










職場のドアを出た瞬間、あるいは家の玄関を開けた瞬間に、まるで電源が切れたように動けなくなってしまう。
帰りの電車ではまだ少し気が張っていたのに、家に着いた途端、コートも脱げずに座り込んでしまう。

「今日も何もできなかった」
「ご飯を作る気力もないし、お風呂に入るのも億劫」

そんなふうに、自分を責めてしまう夜を過ごしてはいませんか。
仕事中は責任感を持ってテキパキと動けている人ほど、その反動が大きく出てしまうことがあります。

この記事では、仕事が終わると動けなくなってしまうその状態について、なぜそうなってしまうのか、今のこころと体で何が起きているのかを、少し立ち止まって整理してみたいと思います。
「怠け」や「甘え」といった言葉で片付けてしまう前に、いくつかの視点から今の状態を眺めてみましょう。

仕事中は動けるのに、終わると何もできなくなる理由

「会社では普通に話せるし、仕事も回せている。だから、ただ家でだらけているだけなんだ」
そう感じてしまう方が多いのですが、実は「仕事中に動けていること」こそが、帰宅後の動けなさにつながっている側面があります。

私たちは、社会生活を送る上で「役割」という名のスーツを着ています。
仕事中は、無意識のうちに緊張の糸を張り詰め、周囲の期待や自分の責任に応えようと、こころのエンジンを少し高めに回転させている状態です。

この「緊張状態」と「リラックス状態」の落差が大きければ大きいほど、糸が緩んだ瞬間の反動は大きくなります。
仕事が終わって何もできないのは、あなたが仕事中にそれだけのエネルギーを注ぎ込み、気を張って過ごしていたことの証左とも言えるかもしれません。

特に、周囲への気配りが得意な方や、完璧を求めがちな方は、知らず知らずのうちにエネルギーの前借りをしていることがあります。
家に帰って動けなくなるのは、こころが「これ以上動くと危ないよ」と、強制的にシャッターを下ろしている防衛反応という見方もできるのです。

「疲れているだけ」「怠けているだけ?」と感じてしまうとき

動けない自分を目の前にしたとき、どうしても湧いてくるのが「罪悪感」ではないでしょうか。

「同僚は帰ってから自炊もしているのに」
「休日に勉強したり、趣味を楽しんだりしている人もいるのに」

そんなふうに誰かと比べて、「自分は気合が足りないのではないか」「ただ疲れていると言い訳しているだけではないか」と、自分自身に厳しい言葉を投げかけてしまうことがあります。

けれど、疲労の感じ方や、ストレスへの反応は、指紋のように人それぞれ違います。
誰かが平気だからといって、あなたも平気でなければならない理由はありません。

「怠けている」と感じてしまうのは、あなたがそれだけ「本来はもっとちゃんとした生活を送りたい」「時間を有効に使いたい」という向上心を持っているからこそ、とも言えます。
まずは、「怠けている」と責めてしまうその気持ちの裏側に、真面目なあなたの願いがあることに気づいてあげてください。

こんな影響が出ていないか、静かに振り返る

今の「何もできない」状態が、単なる一時的な疲れなのか、それともこころが少し休息を求めているサインなのか。
それを知るために、今の生活への影響をいくつか振り返ってみましょう。
これらは診断のためのリストではありませんが、今の自分の現在地を知る一つの目安になるかもしれません。

  • 家事や身の回りのことが手につかない
    以前は当たり前にできていた部屋の片付けや洗濯が、とてつもなく高い壁のように感じられることはありませんか。郵便受けを確認するのが億劫で溜めてしまったり、ゴミ出しの曜日を気にする余裕がなくなっていたりするのも、余裕がなくなっているサインかもしれません。
  • 人とのやりとりが億劫になる
    仕事の連絡は返せるけれど、友人からのLINEや家族への連絡が返せない。「今度の休みに遊ぼう」という誘いに対して、嬉しいという気持ちよりも「疲れるな」という気持ちが先に立ってしまうことはないでしょうか。
  • 休日も回復しきらない
    週末に泥のように眠って過ごしたはずなのに、月曜日の朝、体が重くて仕方がない。休んでいる間も、頭のどこかで「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と考えてしまい、本当の意味で脳が休まっていない感覚があるかもしれません。
  • 楽しめていたことが色あせて見える
    好きだったドラマを見るのが面倒になったり、音楽を聴くのがうるさく感じたり。「感情を動かすこと」自体にエネルギーを使うのがしんどくなっている状態です。

今できる、小さな整え方

もし、今の状態がつらいと感じているなら、生活の中で少しだけ「自分を許す」工夫を取り入れてみてもいいかもしれません。
大きな変化を起こそうとする必要はありません。今の生活にそっと添える程度の、小さな整え方です。

  • 仕事後すぐ何かをしようとしない
    帰宅してすぐに「着替えなきゃ」「ご飯にしなきゃ」と焦るのを、一度やめてみるという選択肢があります。「まずは10分、床に座ったままでいい」と決めてしまう。あるいは、オンとオフの間に、意図的に「何もしない空白の時間」を挟むことで、切り替えが少しスムーズになることもあります。
  • 「今日はここまで」のハードルを下げる
    「お風呂に入れなかった」ではなく「メイクだけは落とした」、「自炊できなかった」ではなく「栄養補助食品は口にした」。そんなふうに、できたことに目を向けてあげる日があってもいいのではないでしょうか。
  • 物理的な刺激を減らす
    帰宅後のスマホやテレビは、疲れた脳には強い刺激になることがあります。少しの間だけ部屋を薄暗くしたり、無音の時間を作ったりして、目や耳からの情報を遮断してみるのも、脳の休息には有効かもしれません。

この状態が続くときに考えてもいいこと

「何もできない」状態がどのくらい続いたら相談すべきか、という明確な期限の決まりはありません。
ただ、もしもこの状態が2週間以上続いていたり、日常生活に支障が出て仕事に行くことさえつらくなってきたりしているなら、それは誰かの手を借りてもいいタイミングかもしれません。

また、期間に関わらず「このつらさを一人で抱え続けるのは、もう限界かもしれない」とふと感じたなら、それもまた、相談を検討していい大切なサインです。

自分ひとりでなんとかしようとすればするほど、深みにはまってしまうことはよくあります。
専門家と話をすることは、「病気を見つけること」だけが目的ではありません。今のあなたの生活リズムや、思考の癖、エネルギーの漏れ箇所を一緒に探し、荷物を少し降ろすための作戦会議をする場所でもあります。

最近では、仕事帰りにも立ち寄りやすい、新宿のようなアクセスの良い場所にあるクリニックも増えてきました。
「治療に行く」と身構えるのではなく、「こころのメンテナンスに行く」くらいの感覚で、選択肢の一つとして頭の片隅に置いておいていただければと思います。

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「仕事終わると何もできない」という悩みについて、いくつかの視点から整理してきました。

最後に、要点を3つほど振り返っておきます。

  • 動けないのは、仕事中にそれだけ気を張って頑張っている反動かもしれないこと
  • 「怠け」ではなく、こころのエネルギー切れのサインという可能性があること
  • 自分を責めるよりも、まずは「休みたい」という体の声に耳を傾けてあげること

「何もできない」と悩んでいるその時間は、あなたが自分自身の生き方や働き方を、より無理のない形に整えようとしている大切な調整期間なのかもしれません。

焦らず、まずは今日一日を乗り切ったご自身を、心の中で静かにねぎらってあげてください。
もし、ひとりで抱えきれない重さを感じたときは、いつでも私たちを頼ってくださいね。

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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