「職場での人間関係が難しく感じる」
「仕事がうまく進められない」
「周りから変わっていると言われることが多い」
このような悩みを抱えている人は、大人の発達障害かもしれません。
大人の発達障害の人は、子どものころは順調に過ごしてきていても、社会に出ると生きづらさを感じることがあるのです。
この記事では、大人になって自覚する発達障害の特徴について解説します。
大人の発達障害の特徴を知り、仕事や今後の生き方に対しての向き合い方を考えるきっかけになれば幸いです。
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
大人の発達障害とは
発達障害とは脳機能の障害により、生まれつきコミュニケーション、社会性、学習、認知、行動に特定の偏りや問題が生じている状態のことです。[1]
発達障害の特徴は、基本的に乳幼児期からみられます。しかし、子どものころはその特徴が目立たないことも多く、大人になってはじめて発達障害と診断されるケースもあります。[2]
症状には個人差があり、軽症の場合は学生時代を問題なく過ごしていた人も少なくありません。しかし、社会人としての生活が始まると、困難を自覚するようになることがあるのです。
また、発達障害を持つ人はうつ病やパーソナリティ障害などのこころの病気が合併することもあります。こうした病気がきっかけとなり、発達障害が明らかになるケースもあるのです。[2]
学生のころは「時間割り」である程度スケジュールが決められていますが、社会人になると自分で考えなくてはいけません。そこで、困難を自覚することがあるようです。
大人の発達障害の特徴
発達障害は、大きく3つの種類に分けられます。
自閉スペトクラム症・アスペルガー症候群(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションや対人関係での困難、強いこだわりがあることが特徴の発達障害です。
原因は明確には解明されていません。自閉スぺトクラム症は100人に1人の割合で認められ、とくに男性に多い傾向があります。
自閉スぺトクラム症の主な症状は、以下のとおりです。
- 相手の気持ちがわからない
- 空気が読めない
- 柔軟に物事を進められない
- 自分の興味がある分野には深く没頭する
- 刺激に対して過敏に反応する(とくに音や光に対して)
自閉スぺトクラム症では約70%が精神疾患を伴うとされ、知的障害や注意欠陥・多動症(ADHD)の特徴がみられることもあります。[3]自閉スぺトクラム症は、3歳ごろまでに診断を受けることが多い発達障害です。ただし、知的障害がない場合は社会的な困難が目立たないことも多く、子どものころは見過ごされてしまうこともあります。[4]
その結果、大人になってから自閉スぺトクラム症と診断されるケースも多いのです。
※アスペルガー症候群は「自閉スぺトクラム症」と名称が統一されました。
注意欠陥・多動症(ADHD)
注意欠陥・多動症(ADHD)は、不注意、多動、衝動性を特徴とする発達障害です。
学齢期の子どもでは、約3~7%にこの障害がみられます。注意欠陥・多動症は、脳内物質であるドーパミンの機能異常や遺伝が原因と考えられています。
注意欠陥・多動症の具体的な症状は、以下のとおりです。
- 集中して物事に取り組むことが難しい
- 気が散りやすい
- 物を無くしやすい
- 計画を立てて進めるのが難しい
- じっとしていられない
- 感情をコントロールできない
これらの症状の多くは、子どものころからみられます。大人になると、金銭管理や仕事、人間関係など日常生活に困難を抱えることが多くなります。そのため、自己肯定感が傷つくことがあり、うつ病や双極性障害などの精神疾患を伴うこともあるのです。[5]
生きづらさを抱えているなら、一度クリニックに相談してみるのも良いでしょう
学習障害(LD)
学習障害とは、読み書きや計算などの学習能力に障害がある状態のことです。
学習障害の人は、知的障害を持っていなくても、書くこと、読むこと、計算することといった特定の能力に困難を抱えています。
また、学習障害を持つ人の中には、自閉スペクトラム症や注意欠陥・多動症を合併しているケースもあります。[6]
大人の発達障害による仕事での困りごと
大人になって自覚する発達障害により、仕事ではどんな困りごとがあるのかみていきましょう。
以下の項目にいくつか思い当たるものがある場合は、専門の医療機関で相談してみるのもひとつの選択肢です。
職場の人間関係での困りごと
発達障害の特性による、職場の人間関係での困りごとを以下にまとめました。[7][8]
- キレやすい(感情の波が激しい)
- 言葉が足りず誤解されやすい
- 雑談がうまくできない
- 上司や同僚をよく怒らせてしまう
- 話し方が失礼だといわれる
発達障害の人は、相手の立場に立って話すことが苦手で、物事を臨機応変に進められない人が多いといわれています。コミュニケーションがうまくとれず、人間関係に困難を抱えてしまうことも少なくありません。
仕事内容での困りごと
発達障害による仕事での困りごとを、以下にまとめました。[8][2]
- 遅刻が多い
- 集中力が続かない(または、興味があることには過度に没頭する)
- ミスが多い(同じミスを繰り返す)
- スケジュール管理やタスク管理ができない
- 頼まれた仕事を忘れてしまう
- 曖昧な指示に戸惑ってしまう
- 急な予定変更でパニックになる
- しないといけないことを先延ばしにしてしまう
発達障害の人はその特性によって、周りから「仕事ができない」と思われやすい傾向があります。仕事上のトラブルが続き、人間関係にも悪影響を与えてしまうこともあります。
大人の発達障害と診断されるまでの流れ
大人の発達障害の診断を受けるためには、医療機関への受診が必要です。
まず、精神科や心療内科を受診してみましょう。
診断までの一般的な流れは、以下のとおりです。
- 初診(現在の症状や困っている点について診察)
- 検査(心理検査、脳機能検査など必要に応じた検査)
- 診断(症状や検査結果から総合的に判断)
発達障害の診断を受けることは、自分の状態を客観的に理解し、適切な治療やサポートを受けるための第一歩です。診断を受けることで、今後の生き方や働き方を見直すヒントが得られるでしょう。
診断を受けることに対して、迷いやためらいがある人もいるかもしれません。どうすべきかを決断するのは自分自身です。身近な家族や病院で相談しながら答えを出すのもひとつの選択肢ですよ。[9]
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大人の発達障害と診断されたら|自分に合う働き方を見つける
発達障害の診断を受けたら、自分の特性とうまく付き合っていくことが大切です。
発達障害は生まれつきの特性であり、完全に治るものではありません。しかし、薬物療法によって症状が抑えられることもあり、治療しながら働き続けることもできます。発達障害があっても、自分の特性を職場で理解してもらいながら、活躍している人も多くいるのです。
また、ハローワークでは発達障害のある人に向けた就労支援も行っています。このような支援を活用して、自分に合った働き方を新たに見つけることもひとつの方法です。[10]
適切な治療や、特性とうまく付き合う方法を学び、自分に合った働き方で日常生活の困難を軽減しましょう。
症状や困っていることはひとり一人ちがうので、あなたに合った生活を一緒に探しましょうね!
まとめ
発達障害の特徴は一般的に子どものころからみられますが、大人になってからその特性を自覚し発達障害と診断されるケースもあります。
発達障害は、自閉スぺトクラム症、注意欠陥・多動症、学習障害の大きく3つに分けられます。ただし、それぞれの特性を合わせ持っている人もいるため、症状はさまざまです。こころの病気がきっかけとなり、発達障害の診断を受けるケースも少なくありません。
発達障害の診断を受けることで、適切なサポートを受けられたり、治療により症状を軽減できたりすることもあります。
自分の特性と向き合うことで、自分に合った働き方や生き方を見つけるヒントとなるでしょう。
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参考文献
[1]発達障害|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-049.html
[2]ひきこもりと発達障害|ひきこもり支援者読本
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/13103332/www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/handbook/pdf/1-2.pdf
[3]ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット
[4]自閉スぺトクラム症(ASD)|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease06.html
[5]ADHD(注意欠如・多動症)|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html
[6]学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット
[7]大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?特性の理解が大切!|NHK
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1071.html
[8]就職した自閉スペクトラム症者が困難に対処しながら働き続ける過程|The Japanese Journal of Autistic Spectrum 2019, Vol.17-1, 43-51
https://www.jstage.jst.go.jp/article/japanacademyofas/17/1/17_43/_pdf/-char/ja
[9]青年期・成人期 診断や医療機関への受診について|発達障害ナビポータル
https://hattatsu.go.jp/person_family/adult/about-medical-institution-consultation/
[10]発達障害者の就職及び雇用継続の促進に向けた支援事業(発達障害者雇用トータルサポーター)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001083456.pdf
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。